機動戦士ガンダム外伝 Bloody 5   作:arikichi

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機動戦士ガンダム外伝 Bloody 5

 地球連邦軍の圧政に対して、不満を持つスペースノイドは多い。いやむしろ殆どのスペースノイドが反連邦と言っても良いだろう。

 

 私は普段、極めて過酷な作業をこなしている。モビルワーカーと呼ばれる5m程のパワードスーツを身につけて、コロニーの外壁工事や港のメンテナンスを行なっている。だが、宇宙での作業は危険と隣り合わせで、事故は日常茶飯事な出来事だ。今まで見た中で一番酷い事故は、知り合いの動かすモビルワーカーがコロニーから離れてしまい、そのまま行方不明になった事故だ。コロニー公団はいつものことだといって捜索隊すら編成せず、3ヶ月後に3機離れた別のコロニーで彼のモビルワーカーが回収された。内部からは恐怖で顔の歪んだ干からびた死体が見つかった。遺族にはその死体がビニール袋に粗雑に押し込まれた状態で届いた。夫の亡骸を抱えて泣き崩れる未亡人の目の前で、コロニー公団の役員は、彼のミスで発生した事故で、保険は降りない、と彼女を突き放した。

 

 そもそも我々は好んで宇宙に上がったわけではない。増えすぎた地球人口を処分するため、地球にしがみつきたい裕福層が結託して、我々貧困層を無理矢理宇宙に住まわせたのだ。宇宙人たる我々には当然参政権など無く、不平等な搾取でコロニーは永遠に成長できない。コロニー公団の連中は連邦と結託しているから、我々の政治的主張は常に無視される。

 

 だから私は、ジオンズムダイクンの提唱する、宇宙に進出した我々こそが進化の最先端にいるという思想を支持している。まあ、彼の主張を全て真に受けている訳ではない、スペースノイドがアースノイドより生物的に優れているとは言い過ぎだ。ただ、地球に住む人々からスペースノイドは独立し、対等な関係性を築く事ができれば理想的だろう、そう思っていた。

 

 だから連邦から独立しようとするジオンの思想に共感し、彼らに協力する道を選んだ。サイド5は元々連邦政府の支持者が多いコロニー郡で、独立を目指す我々は少数派だった。小規模な集会を秘密裏に開き、コロニー独立を目標に活動を続けていた…といっても実態は、連邦政府の愚痴を叫びながら、ジオンズムダイクンの演説をテレビで流し、酔って叫んでの何の意味もない時間が殆どだったが…

 

 様子が変わったのはある男が接触してきてからだ。後に分かった事だが、彼はキシリア機関という諜報機関の人間で、適当垂れ流す我々から少しづつ信頼を勝ち取ると、資金と武器を提供してくれるようになった。彼は情報を求めていた。コロニーの構造や管理体制、空調システムの制御やドックに停泊する船舶の事などを事細かに聞いてきた。彼は話の上手い男で、連邦の腐敗と圧政を誰よりも知っており、それを皆に面白おかしく話すものだから、酒の入った者たちは皆調子に乗って、言って良いこと悪いこと関係なく、知っていることを彼に洗いざらい話した。

 

 やがてニュースで、サイド7の独立運動の情報が流れるようになった。私は当初この流れを歓迎していた。正に我々の目指すべき行いの模範となる動きで、いつもの集会ではジオン立つべし、連邦を粉砕せよと皆で叫んだ。壁にはジオンズムダイクンの肖像画の隣に、デギンザビの肖像画が貼られた。湧き上がる高揚感とは裏腹に、僅かな戦争の危機を覚えた私は、家族のことが気になった。

 

 当然この活動は家族に話していない。家には妻と、2人の娘がいるのだ。私が危険を負うのは勝手だが、私の妻と娘達に罪は無い。彼女達を巻き込む訳には行かない。

 

 ジオン独立戦争が始まった。当初は宇宙の片田舎で集結する戦争だろうと皆思っていて、サイド5の住人たちは、皆この戦争の成り行きに楽観的だった。私もいつもの集会で皆と祝杯をあげながら、次はサイド5、俺たちの番だ、と大いに盛り上がった。そんな中、キシリア機関の男が、その場の皆の雰囲気を盛り上げるように、ジオンの艦隊がやがてサイド5に来るだろうといった。その瞬間、場の空気はその日最大の盛り上がりを見せて、皆ジオン、ジオンと叫んだ。そんな中、私は1人恐怖していた。この場所が戦場になるのか、なぜ皆その事に恐怖を感じないのか…キシリア機関の者は、そんな震える私の姿を見ていた。目が合うと、彼はニヤリと笑った。

 

 集会が終わった後、彼は私と2人で話したいと持ちかけてきた。私は了承した。

 

 「君だけ怯えていた」

 

 彼は公園のベンチに腰掛けると、缶コーヒーをプシュと開けて、一口それを飲んだ。

 

 「家族が居るのです。もしここが戦争になれば、私の家族は…」

 

 そう言いながら、私も彼の横に腰掛ける。上を見上げるとコロニーの内壁に張り付いて暮らす人々の生活の明かりが揺れる、私にはそれがどうしても頼りないものに感じた。

 

 「コロニーのメンテナンスなんかを仕事にしているからわかるんですよ、私たちの住むコロニーは実はとても脆弱で、おそらく戦争の流れ弾が数発当たれば大変なことになってしまう。私は反連邦を掲げて戦う覚悟はあります。だが、私の家族は、何も知らない家族は、もし巻き込まれたらと思うと…」

 

 消え入るように感情のこもった言葉を吐き出す。キシリア機関の者は自らの懐に手を入れると、三枚の紙切れを取り出した。

 

 「君の家族は、妻と高校生の娘が2人、計3人だったな」

 

 いつ調べたのだろう、集会の場で家族の話をした事は無かったはずだが、と驚く私の手にその紙切れを握らせると、彼はこう語った。

 

 「地球へのビザ三枚だ、これで家族を逃してあげなさい」

 

 私はそれを受け取った。すると彼はこういった。

 

 「頼みたい事がある」

 

 その時の私に、拒否権はなかった。

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