【完結】 ギター爪弾きのバラッド   作:はま0821

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主人公にも悩みはあります!





10 夏と後藤家と唐揚げと敵

 

 

 

笹塚のマンションの自室。野外ライブの高揚感でなかなか寝付けずにいた俺は今日の姉御の言葉を思い出していた。あ、どうも。将来は様々な人にギターバラッド。ぎゅっと略してかわいげを足してギバちゃんと呼ばれたい今はただのグッドギタープレイヤー青木遥です。

 

 

「敵を見誤るな…か」

 

 

姉御は言った。音楽をする以上敵はいる。と。だがその方向を間違える人も多くいる。とそういった。敵とは…なんだろう?

 

 

競い合うライバルバンドたちかもしれない。確かにそうだ。ライバルたちにお客さんを奪われちまうとこちらの音楽を聴いてもらえなくなる。だがなんか違う。確かにこの言葉は俺にも向けられていたが、姉御は主に怖がっているゴッチに対してこの言葉を言ったように思うからだ。

 

 

怖がるゴッチ。果たして、なにを。なんとなく分かる。多分オーディエンスの反応が怖かったんだろう。失敗すること。期待を裏切ってしまうこと。それがゴッチが怖がってたもの。ならば、敵とは?

 

 

恐らく自分の中にある恐怖。得体のしれない恐れや過去の焼き回し、正体の分からない退屈や飢え。心の中にある闇。それを敵と表現したのかな。アーティストはジャンルこそ違えど、この最強の敵といつも戦わねばならない。これでいいのか?ちゃんと俺は俺でいられているか?

 

 

俺にも1つ心当たりがある。はっきりと恐れてるもの。俺はあまり恵まれた生まれではない。この生まれを結束バンドのみんなや、仲良くなれたみんなに知られてしまうのを恐れている。もちろん頭ではわかっている。面と向かって話もしてないのに勝手に相手の反応を想像して怯えているのだ。その時点で彼女たちの人格に対する侮辱である。でも、頭で分かっていてもどうしても体が硬直する。理屈じゃなく、怖いのだろう。小学や中学。仲良くなれた友達たちとも、同じようなことがあった。生まれを知られたときに、距離を置かれてしまうのだ。どうしていいのか分からないような、憐れむようなあの目が忘れられない。だからあまり自分から話しかけるようなことはしなくなった。

 

 

だが、高校になると変化はあった。前に踏み出してみたら、世界が変わった。やはり未来のことなど誰にも分からない。踏み出すことでその一足が道となる。尊敬するプロレスラーの言葉だ。今の俺は確かに怖い。足が竦んでる。それは認めよう。だが、俺は歩みを止めんぞ。明日駄目だろうが明後日。駄目ならば1ヶ月。周りにいてくれるみんなの言葉を食べてそのたんびに成長し、いつの日か己の中の敵にも打ち克って見せよう。

 

 

舐めるなよ。俺はギターバラッド。無人の荒野を1人ギターとともに征くものだ!たとえ生まれた場所が暗闇でもこの相方と一緒に蹴散らかしてくれるわ!!こういう自己陶酔は得意なのよな。まったく。陶酔でもしないとやってられんぜ。…後半だいぶ無駄なことにスパン使っちまった。寝ようもう。らしくねぇ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんと?ゴッチの家に行く?」

 

 

「うん!ライブするときのTシャツデザインしたくて!」

 

STARRYに来るたび虹夏先輩がこんなことを言い出す。別にここでやりゃよくない?

 

「やはり後藤さんは自分のお家のほうが集中力出るのかなって!伊地知先輩と決めたんです!」

 

 

ははあなるほど。この2人。たぶんデザインのほうは口実でゴッチの家を見たいだけだな。まあ俺も吝かではない。金沢八景駅までは行ったことあるが、ゴッチの家は見たことないしな。

 

 

「遥はどうするの?わたしは行くつもり。あの愉快な女が、どんな環境で生きてきたのか普通に気になる」

 

 

リョウ先輩にそのように問い掛けられる。気になるか。確かに俺も。ヤツのご両親が普通に気になる。娘にふつう「ひとり」なんて特異な名前付けんだろ。…妹がいるとか言ってたよな。ゴッチ。…まさか「ふたり」なんて名前じゃあなかろうか。

 

 

 

「よーし!なら今度の休み!みんなでぼっちちゃんちに呼ばれよーう!」

 

いつも通り、元気に虹夏先輩が音頭を取る。一応俺は、無駄だと思うが確認を取る。

 

「…それは、ゴッチは了承してるんで?」

 

 

「これから了承とる!」

 

 

…なるほど。運命は決まったな。なぜならヤツに虹夏先輩の要請を断れるわけがないからだ。今度の休みの予定は決まった。

 

 

「み、みみみみみみみなさん…!何か相談事ですか…?わ、わたしにだまって、ということは、まさかわたしの除名処分にたいする秘密裏の話し合いとか…!」

 

うおう!いきなり背後から気配なく現れるなよゴッチ!しかも俺たちの会話内容の推察が陰湿すぎるだろ!?慌てて虹夏先輩が弁明する。

 

 

「わわわ!ちがうちがう!ねね!今度の休み、バンドのみんなでぼっちちゃんちに遊びに行きたくてさ!もしよければ予定確認してみてくれないかな?」

 

 

「えっ!?そんな、もちろん大丈夫です!みんな!みんな来てくれるんですか?リョウさんや喜多ちゃんも!?…青木くん、も?」

 

 

「もちろん。ぼっちのプライバシーをつぶさに観察させていただく」

 

 

「後藤さんのお部屋、興味あるわ!きっとロックでブルースな見た目してるのでしょうね!きゃーかっこいいわー!」

 

 

「金沢八景のライブのときは見損ねたからな。今度こそゴッチの家をおがんでやるぜ」

 

 

「う、うぉぉぉぉ…。ほ、ホントですか!初めてですうちに友達が来てくれるの…!あ…!ありがとう、ございます!!た、楽しみにしてます!」

 

 

「うんうん!よっし!次の活動は、ぼっちちゃんちでTシャツ作成だぁ!」

 

 

おー。ぱちぱちぱちぱち!なんか俺以外が全員女子なのがヒジョーに怖いがもはやこれは俺の周りの人口分布図見る限り致し方ない。大丈夫かなゴッチの親父さんにぶっ飛ばされたりしないかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一気に日付けは移ってすぐに遊ぶ日当日です。

 

 

「金沢八景〜金沢八景〜」

 

 

聞き覚えのあるアナウンスを聞きながらヤツの地元に降り立つ準備をする。2回目だもの。慣れたもんさ。

 

みーんみんみんみんみんみんみんみー!!!

 

セミが、自身の生を力の限りに絶叫する。真夏の太陽は雲一つない空から容赦なく、直接、直射日光を届けてくれる。足元はアスファルト。想像に難くないだろ?照り返しの高温で、体の中身まで焼き上げられるかのようだぜ。我々、ゴッチを除いた結束バンドの3人と俺は、控えめに言って地獄と化した、金沢八景の、住宅街へと降り立った。

 

 

「あっづぅ………………!」

 

言いたくもならあなあ。上は柄シャツに下はハーフパンツ。グラサンを掛けたいつも以上にラフな格好のリョウ先輩が思わず漏らした。

 

「あははっ。もうすっかり夏だねぇ!」

 

麦わら帽を被り、白シャツにこれまた茶色のハーフパンツを合わせた実に夏らしいコーデの虹夏先輩が、リョウ先輩に同調する。

 

 

「弱ってるリョウ先輩もカッコいいわ…!これ!このスポドリ!飲んでください!」

 

 

「ふう〜〜〜っ!ありがとう郁代。なんとか踏みとどまった」

 

 

(り、リョウ先輩の飲みかけ…!!!き、きゃー!きゃー!)

 

 

「喜多さんなんか邪なこと考えてなーい?」

 

 

「ぴえっ!青木くん!わわわわわたしがいつそんなことを考えたって証拠ですか!?失礼ですよもう!」

 

どうせ飲みかけがどうとか考えてたんだろ。そういう考えは中学で卒業しときなよ。などと考える。そういえば喜多さんの服装は、青い花柄のワンピースを着こなし、茶のベレー帽にグラサンだ。やはりこの日光にはグラサンは必須か。みんな似合っているなあ。…コレは、ゴッチの私服。今度こそ期待できるか?

 

 

「いつまでもこんなとこいたら干上がっちゃうね…喜多ちゃん。ぼっちちゃんちどっちだっけ?」

 

 

「ちょっと待ってくださいええっと…。こっちです!」

 

 

喜多さん先導のもと、閑静な住宅街を4人でゆく。ゴッチめいいとこ住んでんな。だが商業施設とかの数なら笹塚だって負けてない。…にしても。あづい!!30度はゆうに超えてんなこりゃ!

 

 

「はい!目的地周辺です!この辺に後藤さんのお家があるはずですよ!」

 

 

喜多ちゃんナビが案内を終了する。この辺か。表札を探すか〜と視線を回していると。

 

 

 

「ぷふぉっ。ちょ…みんな。あれ見て」

 

 

リョウ先輩が肩を小刻みに揺らしながら指差す方向を全員で見る。横断幕がかかってる家が1軒。横断幕?なんだ地元の高校が甲子園にでも出るのか。結束バンド御一行様…。おい。あの女はしゃぎすぎだろ。

 

 

「か…歓迎はされてるみたいですねぇ」

 

 

「いや恥ずかしいわ!」

 

 

喜多さんと虹夏先輩が口々に感想をのべる。ここがあの女のハウスだな間違いない。気を取り直す。もう慣れてきたぜ奴の奇行にもな。

 

 

「では代表して…ゴッチー。来たぞー干上がるまえに上げてくれーい」

 

 

「マジで干上がるーぼっちー助けてー」

 

 

こんなことを宣いながらインターフォンを押すと、カチャリと鍵があき、ど、どうぞー。と中から聞こえる。どうせなら開けてくれよと思いながらドアを開くとパパンっと。乾いた音がした。

 

 

 

「い、イェーイ!う、うえるかぁーむ!」

 

 

乾いた音の正体はクラッカーだ。真っ暗な玄関先に虹色に光る星メガネのピンクジャージパリピが立っている。もっペン言うわ。はしゃぎすぎだろこの女。…私服じゃないのか。…ちっ!残念!!

 

 

「ぼっちちゃん楽しそうだね〜」

 

 

「ホント!楽しそうね後藤さん!」

 

 

陽キャ2人はえーほうに解釈してくれる。てゆーかマジで上げて、ゴッチ。干からびちゃうよ?4人の燻製が完成しちゃうから

 

 

「あっとりあえず私の部屋へどうぞ…2階です…」

 

 

「ぼっち、麦茶ちょーだい。きんきんに冷えたやつ」

 

 

「あつかましいわ。確かに欲しいけど」

 

 

「あっすぐに持っていきます…」

 

 

会話を交わしながらゴッチの部屋へ。変につっかからないように背負ってきたギグバッグを傍らに担ぐ。ふすまの部屋を発見、ここかな。すすっとふすまを横にズラすと。

 

 

真っ暗な部屋にミラーボール。真っ暗な部屋にミラーボール!

 

 

「さすがだわーぼっち。ロックだわー」

 

 

「すさまじいはしゃぎっぷり…だいぶ浮かれとんなこれは」

 

 

「遊びに来たわけじゃないんだけどなー」

 

 

「えっ違うんですか、映画のDVDとか持ってきちゃいました!」

 

 

「満々だなおい!ちがうでしょ喜多ちゃん、今日はTシャツデザイン考えるんだよ〜」

 

 

2人の会話が展開されているが俺は暗闇の中にうっすら見えるものに視線を奪われる…盛り塩。盛り塩だ。

 

 

「リョウ先輩リョウ先輩、あれもロックなんすかね?」

 

 

「どれどれ。むう。眼下に盛り塩。見上げれば御札。なに?でるのこの部屋」

 

 

「えっなにそれ怖いんだけど」

 

 

「わ、わたしちょっと怖いのは…」

 

 

なんか普通に4人してビビっていると突如として、背後から声がかかる。

 

 

「おねーちゃんの友達?」

 

 

 

イキナリ暗闇から幼女の声。状況が相まってマジで怖え!

 

 

 

「うわぁ!出た!ちょっ喜多さん電気!電気!」

 

 

「きゃー怖いわー!リョウ先輩ー!」

 

 

「おめー全然怖がってねーだろ!ちょっ電気どこだ…あった!」

 

 

大焦りして電気を付けると声の主が分かる。よくゴッチに容姿が似た、桃髪の幼女。…ミニゴッチ。ミニゴッチだ。そして、傍らに犬。

 

 

「えっ…!もしかして、ぼっちちゃんの妹さん?」

 

 

 

「はいっ!後藤ふたり5歳です!犬はジミヘン」

 

 

ジミ・ヘン!犬の名前ジミ・ヘン!カッコええ名前!ほんで、本当にふたりちゃんかよ。3人目生まれたらどうするつもりなんだ。さんにん。になるのか?

 

 

「御札と盛塩はねーこの間おねーちゃんがおばけにとりつかれたから置いてあるんだー!以上!せつめいおわり!」

 

 

 

さらりとミニゴッチがスルー不可不可な言葉を口にする。やっぱ出るんじゃねーか怖えよこの部屋。

 

 

「ぴっ」

 

 

うん?なんだ人の顔を見て声を上げよって。心当たりがないわけでもないが。

 

 

「お、おじさん…だあれ?」

 

 

おじさんときたよ。横で顔を逸らしながら肩を揺らすリョウ先輩。楽しいか?人がおじさん扱いされるのがそんなに楽しいか!少しこめかみに十字路が浮かびかけるがこの程度では俺は動じない。これでも子供の扱いは得意なのだよ。

 

 

「ふっ…。ふたりちゃん。音楽好きでしょ〜、あのゴッチの妹さんだものね。おにいさんもギター弾けるんだ。一緒に歌うかい?」

 

 

いうが早いかギグバッグから相棒を抜き放つ。アンプになんざ繋がない。適当に畳に腰を下ろし弦ひとつひとつにピックを通して音を確かめる。

 

 

「わぁ〜すごい…お姉ちゃんみたい…!」

 

 

ふっ、ちょれえな。このぐらいの女の子ならこの曲で充分よ。エレキの生音で「きらきら星」を演奏する。

 

 

「あっふたりこの曲知ってる!」

 

 

「知ってるでしょ?次は一緒にやってみよ〜う!」

 

 

「へぇ〜すごいね青木くん。意外と子どものあやし方うまいんだ」

 

 

「ホントです!なんか手慣れてますよね!」

 

 

結束バンド元気担当の御2人からお褒めの言葉を授かる。実はホントに手慣れてるのよ。昔チビどもにいろいろ弾いてやったからな。あいつら元気にしてるかなぁ…おセンチになりつつふたりちゃんとのセッションを終える。

 

 

「すごい!すごい!おにいさんおねーちゃんみたい!ギターうまいんだね!もっと弾いて!」

 

 

「ふふふふたり!?なななんで!?おかーさんは!?」

 

 

おっ。ゴッチの登場だ。

 

 

「おねーちゃんのともだちがくるからって買い物行ったよ」

 

 

「おおおねーちゃんこれからみんなと大事な話があるからジミヘンと遊んどいてほしーなー」

 

 

(冷凍庫のアイス、食べていいから)

 

 

ゴッチが妹さんに何か耳打ちすると、妹さんの目が輝く。なにか交渉を仕掛けたな

 

 

「もーう!しょうがないなー!」

 

 

ぴーうと襖の向こうに去っていく。ジミヘンも一緒に。現金よな子供は。などと思いながら襖の向こうを見ていると、ひょこりと妹さんが戻ってくる。

 

 

「ありがとうおにいさん!たのしかった!またやろうね!」

 

 

「おーう。いつでもいいぜ?またやろう!」

 

 

「…さいしょちょっとこわがっちゃってごめんなさい。おにーさんほんとはぜんぜんこわくないんだね。またね!」

 

 

手を振ってくれたので、振り返しながらほのぼのとした気分で見送る。ふっ…子供は見る目があるぜ。そう!俺は怖くないのだ!

 

 

「遥。見事な手際」

 

 

「ホント。即興でよく弾けるね!」

 

 

「すごいわ〜わたしも練習したら弾けるようになるかしら!?」

 

 

「もちろん。喜多さんなんか成長早いからすぐ弾けるようになるぜ。てかみんな座れよ。立ってないで」

 

 

「わっわたしのへや…」

 

 

ああ悪いゴッチ。流れで先に座ってたからつい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よーし!はりきってデザイン決めちゃおーう!」

 

 

「そしてさっさと終わらせて映画を見よう」

 

 

「こら欲望が漏れてんぞ。真面目にやってよ〜?決めた案で発注するんだから〜」

 

 

ふむ…どうすんべ。デザインなんかやったことねぇ。

 

 

 

 

 

場面移り変わって後藤家キッチン。

 

 

 

 

 

「えっ、ホントに?ホントにひとりの友達来てんの?」

 

 

「イマジナリーじゃなく?」

 

ミニゴッチことふたりは、買い物から帰って来た、自身の両親であろう2人に、ことの顛末を説明する。

 

「うん!来てた!かわいいおねーさんふたりとかっこいいおねーさんとかっこいいおにーさん!」

 

 

「…ふたり。今なんて?」

 

聞き捨てならないセリフに、父親と思われる、小豆色の髪をした男が聞き返す。

 

 

「かっこいいおにーさん!ギターとっても上手いんだよ!おねーちゃんかと思っちゃった!」

 

 

「ふーんへーんほーん。カッコいいお兄さんね〜。ちょっお母さん。ふたり見てて」

 

 

「お母さんも行くわ〜なんだかとっても面白そうなToL◯VEるの香りがするもの〜」

 

 

「ふたりもいく〜」

 

 

わふっ!

 

 

 

後藤家、来襲!

 

 

すぱあん!勢いよくふすまが開け放たれる。それと同時にスラッとした小豆色の髪の毛をしたイケメンと目が合う。よく顔がゴッチに似てるな。

 

 

「君かこのやろー。娘はやらんぞ」

 

 

「ちょちょちょちょちょ!なななななに言ってるのお父さん!」

 

 

やっぱゴッチのお父さんか。顔がいいな。さすがゴッチの遺伝子。なんか頓狂なことを言っていたがとにかく。

 

 

「すいませんお邪魔してます!後藤さんと同じ学校通わせてもらってる青木遥と申します!」

 

 

ズバッと立ち上がり45度。社会の基本よ!

 

 

「ぬうっ!なんか人間が出来てるな!だがその程度で娘は…」

 

 

「あら〜目鼻立ちが通ったイケメンね〜ちょ〜っと彫りが深いけど〜」

 

ゴッチのお父さんの後ろから、妙齢の美女が姿を現す。ゴッチと同じ、桃色の髪に、柔らかな雰囲気。一目で分かるわ。ゴッチの母君だな。そして。目鼻立ちが通ったイケメンですと!?あざっす!!

 

 

「ねっ!かっこいいよね!ギターもとってもうまいんだよ!ふたりとあそんでくれたんだ〜」

 

 

「むむ…。ふたりとも遊んでくれたとは。ギターうまいやつに悪いやつはいないからな…いいだろう1回保留にしてやる。だが審査は続いているということを忘れるな!」

 

 

「頓狂な男が頓狂なこと言って申し訳ありませんー。わたしは後藤美智代。ひとりの母です。こっちのは後藤直樹。いい年したギターバカです。ひとりの父親で〜す」

 

 

「あっすみません!お邪魔してます!」

 

虹夏先輩が思わず立ち上がって礼をする。それに遅れて結束バンドの面々が倣おうとするが。

 

 

「あ〜いいのよ座ったままで〜。今日はご飯食べてって〜ひとりが友達つれてきたのなんて初めてなんだから〜」

 

 

「食べ物…!」

 

御飯という言葉にリョウ先輩が反応する。お腹ペコペコかよ。

 

「よだれを拭けよだれを。えっでもいいんですか?迷惑じゃぁ…」

 

虹夏先輩がハンカチでリョウ先輩の口元を拭いつつ問い掛ける。するとゴッチのお父さんが答えてくれる。

 

「なにいってるんだ迷惑なわけないさ!ひとりが友達つれてくるなんてこんなめでたいことはない!腕によりをかけて唐揚げを揚げさせてもらうよ!」

 

 

「唐揚げ…!」ぱあぁっ!

 

 

「腹ペコなリョウ先輩も素敵…!!」

 

 

「恋は盲目だね喜多ちゃん…。じゃあ…。ありがとうございますっ!ご馳走になります!」

 

 

「もちろん!すぐ作っちゃうからちょっと待ってて!」

 

 

友達の家に行って、晩御飯を作ってもらう、大多数の人からしたら極自然な、当たり前のこと。父親…母親…家族…家族か。分かっては、いるんだがな。

 

 

「あ、青木くん?」

 

 

「ん…?どうした。ゴッチ」

 

 

「だ、大丈夫ですか?」

 

 

「ん…?なにがだ?」

 

 

「な、なんか、すごく哀しい目をして、たようにみえて…」

 

 

ぎく。コイツ鋭いな。だが気取られるわけにもいかん。

 

 

「大丈夫だ。腹が減ってるだけさ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後藤家にてご飯をいただく。サラダも唐揚げも本当に美味い。だが、俺の心は晴れないままだった。どうやら俺は自分が思っているほど人間出来ちゃいないらしい。この唐揚げみたいにサクッと思考を切り替えられたらな。

 

 

「うまい!うまい!!」

 

 

「うわあああ!少しは遠慮しろ!白飯何杯いくつもりだおい!」

 

 

「いっぱい食べる君が…!リョウ先輩がすき…!」

 

 

ガツガツと唐揚げを白米を吸い込むリョウ先輩を必死に止める虹夏先輩。いつもながら喜多さんはリョウ先輩専属のイエスウーマンだ。苦笑いしながら横のやりとりを眺める。なんか救われる。おかしな考えがもたれてくるのはほんとに腹が減ってるからかもな。そう思い立ち、唐揚げと白米を頬張る。マジ美味い。

 

 

「少年。どうした。悩んでいるな?」

 

 

ゴッチのお父さん…直樹さんから話しかけられる。そんな分かりやすいか。俺。

 

 

「あらあら〜審査対象なんじゃなかったの〜?」

 

 

「いや、なんか見てたら普通にいい奴っぽいし。娘はやらんが。しかもギターに関係ない悩みだろ。勘だが。どうだ、少年」

 

沈んでるのを見透かされちまったか。ゴッチの両親には、迷惑を掛けちまったかな。だが、コレは俺が自分で解決しなければならない問題。誰かの手を借りるわけにいかない。

 

 

「鋭い勘ですね。ですが、これは俺が向き合わなきゃならない問題。ネガティブな理由で悩んでるのではないのです」

 

 

「…なるほどな。少年。1つ覚えとけ。大人は子供に頼られるためにいる。抱えきれなくなったら、どうしようもなくなったら遠慮なく頼れ。俺じゃなくていい。信頼できる人とか、教師とか。いるだろう?」

 

 

 

心の中を見透かされるよう。俺の欲しい言葉をくれる。なんで俺が知り合う大人のギタリストはもれなくカッコいいんだろうな。

 

 

「…なんか、あれですね」

 

 

「おう?なんだい?少年」

 

 

「後藤さんは、大丈夫だな、って。思いました」

 

 

 

「この先音楽が上手くいかなくても。学校で友達が1人もいなくなっちゃっても、家に帰ればこんなに暖かな人達がいる。だから。後藤さんは大丈夫だなと、そう思いました。すんません。ナマこきました」

 

 

直樹さんは一瞬目を細めてから立ち上がり、俺の肩に手を置いて。

 

 

「きみも、大丈夫さ」

 

 

ただ1言。そういってくれた。

 

 

「ああああああ青木くん!怖い想像するのやめて現実になったらどーするの!マーフィーの法則を知らないの!?」

 

 

「遥。食わんなら唐揚げよこせ」

 

 

「まだ食う気かこのクソベーシスト!」

 

 

「いいですよ〜その感じのワチャワチャ〜!はいっチーズ!きゃーイソスタ用のいい写真が撮れたわー!」

 

 

 

はっ。なんか沈んでるのバカバカしくなってきた。おい山田!その唐揚げは俺んだ!サラダとともにいただくと絶品なんだやらんぞ!

 

若者がわちゃわちゃと自分たちが作った料理を奪い合う様子を微笑ましそうに眺めていた後藤夫妻が、会話を交わす。

 

「なかなかかっこよかったんじゃな〜い?」

 

「若者が悩むな。とは言わねぇさ。おおいに悩んだらいい。だが暗い顔は良くないな。暗い顔してる若者はほっとかない哲学ってだけさ」

 

少しだけ元気が戻ったように見える、先ほどまで沈んでいた少年を眺めながら、後藤直樹は満足そうに微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後藤家の夜は更けていく。なんか忘れてる気がするが気のせいだろう。…直樹さんには借りができたな。覚えてたら返そう。突っ返されそうな気もするが。

 

 

 

その後も総出で映画を見たりツイスターゲームやったり大富豪して遊んだり楽しみに楽しんで帰りしなに全員で今日の本来の目的、Tシャツ作りを思い出し、しかしもう時間はなく結局STARRYで作る羽目になったとさ。ほらみろ最初からSTARRYでよかったじゃん!!(ちゃんちゃん☆)

 

 






後藤直樹


だいぶ原作よりファンキーな性格。ギターヒーローの親父がカッコよくないわけないじゃん?いや、原作の直樹さんも物腰柔らかでカッコいいけどね。

彼が窓際族なのは原作と変わらないがこちらの直樹さんはギターにかまけてまったく仕事しないから。ちなみにいまだに全力のぼっちちゃんなみにギター上手い。
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