【完結】 ギター爪弾きのバラッド   作:はま0821

11 / 69




メガロマニア!!!!!






ざっけんなよ、そんなくそったれた液体になんざならなくても、1つにはなれるんだよ…!なぁ!そうだろ!?松っ!!




11 らいぶ あ らいぶ!!!!!

 

 

 

 

 

ちゃーんちゃんちゃんちゃらーんちゃーん。…うん。もうだいぶ様になってきたね。コード押さえる際の指運びが大分滑らかになってきた喜多さんに伝える。理想はその指運びを手元見ないでやる感じか。

 

 

「ほんと!?やった!青木くんに合格点もらっちゃったわ!」

 

 

「とは言え、今回は喜多さんはボーカルの方に注力すべきだ。ギターボーカルはギター弾くのとボーカル。両方やんなきゃいけないからね。ギターボーカルが手元見ながら演奏するとすこぶる評判悪いけど、喜多さん下向かない自信ある?」

 

 

「…まだ、ないわ」

 

 

「リョウ先輩が簡単に書き換えてくれた譜面がある。コイツを今回は猛練習で手に落とし込んで、あとはボーカルで引っ張る感じだね!」

 

 

「…結局、またわたしはみんなのお荷物なのね」

 

 

「うん?なんでだ?逆にみんなに頼りにされるだろ?」

 

 

「えっ?」

 

 

「ちょっと前まで結束バンドはインストバンドだったんだ。そこにボーカルの喜多さんが加わったんだ。みんな頼もしいだろ、ボーカルの役割はデカいぞ?」

 

 

「ふふ。…一度、逃げたけどね」

 

 

「ギターではね。ボーカルでは逃げなきゃいい。ていうか喜多さんは、もう逃げる気なんか毛頭ないだろ?」

 

 

 

「…うん。うん!よっし!頑張るわよ!ライブがなんだ!って感じよ!」

 

 

 

「その調子その調子!喜多さんファイト!ロックンローラー!!」

 

 

 

「ありがとう青木くん!」

 

 

 

 

 

 

 

結束バンドのみんなの練習が熱をおびている。それもそのはず。結束バンド初のライブがもうすぐそこまで迫っているのだ。みんな暇さえあればスタジオに篭って合わせの練習してる。そして今俺は喜多さんのギターボーカルの個別練習に付き合っている。ギターボーカル。ちょっと前まで素人だった喜多さんが手を出すには荷が勝ちすぎてるかな、と思っていたが。中々どうして。ボーカルの方はよく分からないが、ギターの方は凄い成長スピードをしている。先生がいいのかな。だが、もちろん喜多さん自身の吸収スピードもある。まさにスポンジだ。スポンジ喜多さん。

 

 

「いやー!可愛くないわ!もっと可愛く例えてよ青木くん!」

 

 

「なぬっ、むむむ…砂丘喜多さん?」

 

 

「輪をかけて可愛くないわー!」

 

 

「鳥取砂丘喜多さん!」

 

 

「治すのそこじゃないでしょう!?」

 

 

「どだい俺には女子高生のカワ(・∀・)イイ!!基準を満たすなんざ無理な話やね。…でもホントにすごいスピードで成長してるよ喜多さんは。ゴッチの教え方がいいんだろね。ほら俺感覚派だからさ」

 

 

「青木くんの教えもとっても役に立ったわよ!Fコードの押さえ方とか目からウロコだったわ!」

 

 

「役に立ったならなにより」

 

 

基本的にはゴッチが教本通りの技術を伝えて、俺は裏技みたいなのを喜多さんに提供してる。光と闇が合わさり最強に見える。頑張れ喜多さん。結束バンドの可否は君の成長にかかってるぞ

 

 

 

 

 

 

ところかわってスタジオ。今は喜多さんは別でボーカル練習してるので、俺がリズムギターとして練習に参加している。

 

 

「虹夏。ちょっとドラムもたついてる」

 

 

「うん…ごめん」

 

 

「虹夏先輩。なにか気になることでも?」

 

 

リョウ先輩の指摘に、らしくない小さな声で返す虹夏先輩。少しいつもより元気がないようなので聞いてみる。俺はライブには参加しないのだ。せめてみんなのメンタルケアくらいはしなきゃな!

 

 

「うーん。やっぱりライブのこと。今さらだからさ。もう緊張とかはない、と思うんだけど…不思議。なんかやっぱ体が強張るんだよね。やっぱライブって、ステージって…。ううん。やっぱなんでもない」

 

 

「そこまでいったなら言いなよ虹夏。虹夏が頑張ってくれないとわたしは役に立たないリズム隊と後輩2人を抱えてやらなきゃならなくなる。重労働」

 

 

「…わかんない。…あんまネガティブなこと言いたくないけど…怖いのかも。心の中に、なんか引っかかるものがあって抜けない感じ。モヤモヤというか」

 

虹夏先輩は今更緊張はない。と言うけれど、アーティストである以上、プレッシャーからは逃れられない。今虹夏先輩を縛ってるのは多分それだな。などと思考を回していると、傍らにいたゴッチが虹夏先輩の意見に同調する。

 

 

「わ…わたしもわかります。なんかわからないけれど…竦むんです。あ、青木くんに言われてからイメトレの方もやってみてるんですけど…ライブの想像をするとやっぱり…」

 

 

ちゃんとイメトレしてるのか。えらいぞぉゴッチ。まるで想像してない場面にぶち当たるのと、ある程度想像して用意してるのでは天と地ほど差がある。…うし。テンアゲ出来るとびきりの発破をかけてやろう。右拳を前に突き出し高らかに宣言する!

 

 

「そんな君たちに迷いを振り払う名言を授けよう!」

 

 

「えっ!なになに?元気出る?」

 

 

「元気があればなんでもできる!知ってるフレーズがあったら、構うことはねぇや。真似してみてね!」

 

 

「おほん。この道を行けば、どうなることか。危ぶむなかれ」

 

 

リョウ先輩が少し目を見開いたあと口角を上げる。よければラスト、ご一緒に!

 

 

「危ぶめば道はなし。足を踏み出せば、その一足が道となり、その志がまた、道となる。迷わずいけよ。行けば分かるさ!いくぞーーーーーーーーーー!!!!!!!!!」

 

 

「あっそれ!そのいくぞーは知ってる!」

 

 

「あっえっあっ」

 

 

「ゴッチも見様見真似でついてこい!」

 

 

「「いーーーーーーーーーーーーーーーち!!!!!」」

 

 

「「「にーーーーーーーーーーーーーーーーーーーいぃ!!!!!!」」」

 

 

「「「さーーーーーーーーーーーーーん!!!!!!」」」

 

 

「さ、さーん!」

 

 

「「「ダァーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」」」

 

 

「だ、ダァー!!」

 

 

うむ。よくついてきたゴッチ。ちと気合が足らんがまあ贅沢いうまい!

 

 

「ヤバい。無茶苦茶ストレス解消になった」

 

 

「あ、あれ…なんだろ。みんなで叫んだらもやもやがが軽く…」

 

 

「そんなもんすよ迷いなんて。でけえ声出して好きな歌歌って吹き払っちまえ」

 

 

「やはりアント◯オ猪木…アント◯オ猪木は全てを解決する…!」

 

 

「今俺を通じてあの人の闘魂は結束バンドに乗り移りました。闘う心を持つ者の中にあの人はいつでもいます」

 

 

「迷わずいけよ。いけば分かるさの精神ですよ!ライブどーしようだと!?そんなもんライブのとき決めろ!今何すんだ!?練習だろ!今は全力で練習だ!ドラムをおもっきりダァーしろ!」

 

 

「いやドラムをダァー!ってなに!?…でも。なんかパワーでてきた!ライブがなんだ!ドラムがなんだ!力いっぱいぶっ叩いてやる!!」

 

 

「あの人は精神のにんにく。わたしもパワーでてきた。虹夏。わたしたちリズム隊がしっかりしてれば大崩することはない。がんばろう」

 

 

「うん!!ありがとっリョウ!」

 

 

「ゴッチもあれだ。心の中にナマケモノともう1人飼え。迷ったりビビったりしたとき引き出せ。ダァー!だ!」

 

 

「は!はい!な、なんかいいですねそのフレーズ、へ、へへ…」

 

 

偉大な男よ…あなたのフレーズを引用させていただきました。ありがとうございます。彼女たちも元気、でたみたいです

 

 

「わたしは!?わたしはのけもの!?」

 

 

ちょっと遅れて帰ってきた喜多さんがそんなこと言ってた。喜多さん。ダァー!だ!

 

 

 

 

 

 

スタ練を一瞬抜け出しSTARRYのホールに戻ってくるとPAさんと店長が天気予報を見ている。そういや台風来てんだよな。

 

 

「これ、当たらなければいいですね〜」

 

 

「いや、大丈夫だろ。逸れるって言ってるし」

 

 

「天気予報は外れるもんすからねぇ」

 

 

「おう青木。おつかれ、ほんで縁起でもないこと言ってんじゃねぇ」

 

 

「確かに。すんません」

 

 

PAさんがくすくす笑う。それと同時にスタ練を終えた結束バンドの面々も出てくて、店長たちと雑談を開始する。

 

 

「おつかれ、頑張ってんな」

 

 

「おねーちゃんおつかれ!あっこの台風イヤだよね〜ちょーどライブと日付被ってるんだよ!」

 

 

「せっかくのわたしのライブ。台風ごときに水さされたくない」

 

 

「わたしたちの、だろ!」

 

 

「でも、怖いですよね〜。あ!ならみんなでてるてる坊主作りませんか!台風さん逸れて〜って願いを込めて!」

 

 

「あっいいですね。みんなでの共同作業…なんか青春っぽい…!」

 

 

「そしたら、わたし道具持ってくるね!」

 

 

「きゃー!イソスタ映えするきらきらなてるてる坊主さんをつくりたいわー!」

 

 

 

ワチャワチャする結束バンドの面々を見ながら、只々胸の中に湧いた感情がそのまま口から出た。

 

 

「若いねぇ…」

 

 

「いやお前いくつだよ」

 

 

そう店長にツッコまれた。そういや俺も同い年だった。

 

 

「なんだかんだであいつらのこと気にかけてるよな。練習付き合ってやってたり」

 

 

「もちろん。虹夏先輩にいたっては恩人みたいなもんなのでそりゃ協力もしますよ」

 

 

「虹夏が恩人?」

 

 

「はい。あんま俺人に話しかけるの得意じゃないから。虹夏先輩にここに引っ張ってきてもらってなけりゃいまだに学校でぼっちしてたと思います」

 

 

「青木くんはバンドとかに興味はないんですか?ギターかなり上手いんだからひっぱりダコでしょ」

 

PAさんにそう問われる。…バンドか。悪くないんだけどな〜。

 

「興味はないことはないんですが焦ってはないですね。こうやってSTARRYで音楽に携われてる時点で幸せですんで」

 

 

「欲がないねぇ」

 

 

「よっほっ。よし、できた。どーすか店長。PAさん」

 

 

「…かわいいじゃん」

 

 

「あら。見事なてるてる坊主」

 

 

「でしょう。強そうにするために眉毛と口もいれるか…。おしっ!できた!虹夏先輩〜俺のも飾って〜!」

 

 

「…アイツにも無邪気な一面もあるんだな」

 

 

「普段少し大人びてますからね。…ライブ、できるといいですねぇ」

 

 

「…だな」

 

 

願いを込めたてるてる坊主どもが吊り下げられる。いよいよ間近に迫ったライブ。失敗してもそれはもうしょうがないが、せめて挑戦できるよう。せめてもの願いを俺はてるてる坊主に託した。だが…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

台風当日。いや間違ったライブ当日

 

 

「土砂降りじゃん。どしゃ ぶりおじゃん」

 

 

朝、自宅マンションのカーテンを開け放してひとりごちる。天気予報をつけると台風は予想外の進路を取りここ東京にぶち当たっていた。

 

 

台風「来ちゃった♡」

 

 

お前と月曜日は来るな。これライブできんのか!?いやそもそも俺がSTARRYにたどりつけんのか!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なにも今日じゃなくてもいいじゃん…くそっ」

 

 

場所変わってライブハウスSTARRY。伊地知星歌はひとりごちていた。

 

 

「悪い予感…当たっちゃいましたね。みんな、気を落とさないといいんですけど」

 

 

「…バンドやってりゃこんな状況何回だってある。慣れていかなきゃ、なんだけど…ちっ。ままなんねぇな」

 

青木じゃねえが、あいつら結束バンドはまだ若い。PAの言うように、気を落とさなきゃいいが。と、妹を含むバンドメンバー達に思いを巡らせる。

 

 

 

 

 

 

 

「んもー、なんで狙ったかのように今日来るかなー!」

 

 

 

「バカ台風。空気読め」

 

 

「あ、あはは。やっぱりわたしの友達も今日来れないみたいです…」

 

 

「わ、わたしの両親も、ざんねんながら…」

 

 

「仕方ないよ、すごい天気だし。…青木くん、まだ来てないけど大丈夫かな?」

 

 

伊地知虹夏がそういうが早いか。STARRYのドアが開け放たれる!

 

 

「ヒーローは遅れて現る!」

 

 

「うはぁーすんげー雨!ぼっちちゃーん!きたよぉ〜!」

 

 

「青木くん!と…誰でしょう?」

 

 

喜多さんが、俺の隣にいるお姉さんに疑問を呈している。まあ当たり前だが。知らないもんな。廣井の姉御には、前の後藤ひとり単独ライブのときにお世話になったのさ。

 

 

「あっ、お姉さん…来てくれ、たんですか」

 

 

「もちろ〜ん!カッコよく決めなよ〜!あっせんぱ〜い。ぶいぶ〜い」

 

 

「前ぼっちちゃんが言ってた酔いどれベーシストってのはお前のことか」

 

うん?なんだ、店長がやけに気安いな?気になったので、姉御に問いかけてみる。

 

「あら。姉御と店長知り合い?」

 

「大学のときのセンパ〜い。あたしがバンド始めるきっかけになった人〜」

 

「あったなんなことも。何しに来たんだ?酒なんざね〜ぞ」

 

「ライブ見に来たに決まってんじゃーん!ほら〜チケット!お客だぞ〜ぅ!もてなせ〜ぃ!」

 

「はっ。そりゃお足元の悪いなかご苦労なこって。…こっちきて座れ。ビール1杯付けてやる」

 

「うぇぇっ!?なんか今日の先輩優しくな〜い?」

 

 

世間は狭いもんだ。偶然金沢八景でお世話になった人が、店長と知り合いだとは。

 

「あ、青木くん、お姉さんとは…」

 

「そこであったから一緒に来たのよ。しかし…ついてないねチミたちも」

 

 

「うぐぅ…。ホントだよ!台風のバカヤロー!」

 

 

「まあまあ、お客さん少なくなるだろうから緊張せずできるかもよ?プラス思考でいきましょーう」

 

 

「すごいね青木くん…」

 

 

マイナスに捉えたって何もなんないぜ?我が人生で学んでる。降伏は無駄だ。抵抗しろ。逆だって?いやいや合ってんのよ。だってそうだろ?降伏したって運命は決まってる。ならば、出来うる限り足掻くべし。

 

 

「あっひとりちゃん!」

 

 

「こんにちわ!」

 

この台風の中、ホントに来てくれるとは。この間チケット買ってくれた、大学生くらいのお姉さん達。ゴッチのファン。

 

 

「あ、この間のライブの人たち…!き、きてくれたんですか?」

 

 

「もちろん!わたしたち、ひとりちゃんのファンだもの!」

 

 

「台風、ぶっ飛ばしちゃうくらいのアツいライブ期待してるね!」

 

 

「わ…わたしのファン…!!!くひっくへっくへへへへ……!!!」

 

 

怖え。単純に。まあ沈んでるよりいいのか。いいのか?

 

 

 

 

 

 

 

少し時は流れて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いよいよライブの時間も間近だ。まばらだけどお客さんも入りはじめている。ぱっと数えて…20人くらいかね。上出来じゃん台風にしちゃ。などと考えているとお客の中の2人の話し声が聞こえる。

 

 

 

「一発目。結束バンドだって。知ってる?」

 

 

「知らね。見とくのたるいね」

 

 

 

はっ。中々の言われよう。だが当たり前である。なぜなら彼女たちのお目当ては別のバンドであろうから。台風の中わざわざでてきてキョーミないバンドの曲聴かされにゃならんのだ。そりゃあ〜もなる。まあ結束バンド本人たちが聞いてたらこれは問題だがさっき楽屋にいったから今のは聞いて…。

 

 

「「「「………………………」」」」ドアそっとじ。

 

 

聞いてた!タイミング悪すぎだろあいつら!すると隣にいた店長が肘で俺を小突き。

 

 

「青木ぃ…。なんかハッパかけてこい」

 

 

「えっなんで俺が?」

 

 

「薄情なヤロウだな、記念すべき初ライブの前にネガティブボイス聞かされてんだぞ、掻き消すくらいのハッピーボイスお届けしてこいっつってんだよ!」

 

 

誰だよこの人のこと厳しそうとか言ってたの。激甘じゃねーか

 

 

「なはは〜センパイ激甘〜」

 

 

「うるせぇ酔っ払い!砂糖漬けにして出荷してやろうか!?」

 

 

店長と廣井さんのミニコントを尻目に結束バンドの楽屋に向かう。まったく最後まで世話が焼けるぜ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ…あははー。まだ結成したばっかだしね〜。まだ知られてないんだよー。」

 

 

「で、ですねー!」

 

 

「おのれ調子に乗り腐って。ベースで頭ポムってしてやる!」

 

 

「りりりりリョウ先輩!ど、どうどうです!」

 

 

やっぱ聞いてたみたいだな。少し動揺しているような空気が見て取れる。リョウ先輩だけはいつも通り。って感じか。ならばと、わざとらしくテンション高めに、結束バンドに話しかける。

 

 

 

「ふっ!悩みか結束バンド!」

 

 

「誰だお前は!?」

 

 

思わぬ返しだな、リョウ先輩!

 

 

「いやいや忘れないでよ。俺だよ俺!青木遥だよ!」

 

 

「ああ〜」

 

 

出鼻を挫かれたぜ。全くまったく。せっかくハッパの1つでもかけてやろうと思ってきたのによ!

 

 

「…ゴッチよ。前に姉御に言われた言葉を覚えてるか?」

 

 

「え?えっっっと………。」

 

 

「敵を見誤るなよ?だ。ゴッチにはその意味がわかったって言ってたよな。どういう意味だと思う?」

 

 

「え、えっと…た、多分…オーディエンスの中に、敵はいない、と思う…。わたしの、勝手な想像で、怖がってただけだった、から」

 

 

「そうだな。多分オーディエンスの中に敵はいない。さっきネガティブなこと言ってたお姉さんたちも敵ではない。ただのオーディエンスだ。ならば、敵とは、どこにいる?」

 

 

「えっ…えっとぉ……」

 

 

「俺なりに答えを出してみたんだ。敵とは。それは自分自身の中にある恐れや躊躇。戸惑いやら不安。自分の心の中に潜む闇」

 

 

「!」

 

 

「ここまで来てビビんなよ。前を見ろ結束バンド。そんなもんに支配されてたら指が、腕が。動かなくなっちまうぞ」

 

 

「…遥。それは言葉だよ」

 

 

「!」

 

 

…リョウ先輩。

 

 

「そりゃそうだろう。不安や迷い。簡単に吹っ切れたらどれだけいいか。怖いもんは怖い。そうでしょ?みんな。もう一声欲しい」

 

 

「……はっ、リョウ先輩は欲しがりだな。でも結束バンドは、そんな自分たちの中にある闇を振り払う物をすでに持ってるよ」

 

 

「だってさ。ここまで積んできただろ?4人で。時間があれば全員で合わせて。ギターを弾きベースをはじき、ドラムを叩いてあらんばかりの声で歌って」

 

 

「「「「……………!!!!」」」」

 

 

「そうだよ。お前たちは積んできた。自らの。そして目の前の暗闇を打ち払える唯一の物。心細いけど確かに燃えてる仄かな火を宿す松明。やっぱ練習しかないんだよ。ほんで自らを信じてやるしかねぇんだよ!大事なことだから何度かでも言うが、お前たちは積んできた!やってやれねぇことは、ねぇんじゃねぇか!?」

 

 

「さてと!偉大な男のチカラをまた借りるとしよう!危ぶむな!危ぶめば道なぞないぞ!前を向いて、しっかり踏み出せ結束バンド!そろそろ出番だ!客席で応援してんぞ!」

 

 

言いたいことを言いおわり、楽屋をあとにする。あとはヤツラ次第。失敗してもそれはいい経験。命取られるわけじゃなし。期待してるやつなんざいないんだから気楽にやれよ。結束バンド!

 

 

「…大したやつ。よくあんなにスラスラでてくる」

 

 

「…まったくだよ。自分がライブするわけでもないくせに。まったく生意気!クソ生意気な後輩!」

 

 

「おぉ?に、虹夏?」

 

 

「わかってんだよ…!全部!わかってんだよ!!生意気!ホントにクソ生意気!」

 

 

「全部アイツの言う通りなんだ!ホントにクソ生意気だよ!なんでことここに至るまで迷ってんだ伊地知虹夏!!態度が悪いオーディエンスがいようが台風が吹き荒んでようが!ステージに立ったらやることは1つだろ!!」

 

 

「に、虹夏ちゃん、あの…」

 

 

「ぼっちちゃん!肩かして!」

 

 

「は!はい!」

 

 

「喜多ちゃんとリョウも!」

 

 

「は、はい!」「応。」

 

 

結束バンドが円陣になる!

 

 

「やれるだけのことはやってきた。覚悟決めよう。結束バンドーーーーーーー!!!!!ファイヤーーーーーーー!!!!!!!」

 

 

「「「ファイヤー!!!!!!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はいはい。戻りましたよっと。

 

 

「ど…どうだったよ?」

 

 

「まああれであとはみんな次第すかね。言いたいことはあらかた言ってきました」

 

 

「そうか。よし。ナイス」

 

 

「おっでてきたよ〜」

 

 

廣井の姉御の言葉に、視線をステージに向ける。結束バンドの4人がステージに現れる。そして各々楽器の最終チェックを始める。そして、再び客席をを見据えた4人は。

 

 

「中々どうして…いい顔じゃんか」

 

フフン。俺の発破がやはり聞いたかな?などと思っていると、隣に座っている店長と廣井さんから、それぞれ言葉を投げられる。

 

 

「いやお前ほんとにいくつ?なんかそのセリフに貫禄すら感じるんだけど?」

 

 

「青木くんは相当メンタル強いよね〜おんなじステージやってみておもったよ〜」

 

 

さてと、賽は投げられた。魅せてみろ!結束バンド!!

 

 

「け、結束バンドでーす!今日はお足元が悪いなか来てくれてありがとうございます!精一杯に演奏することで皆さんにはお返ししようと思います!!そ、それでは!いきまーす!!」

 

 

虹夏先輩のハイハットで曲が始まる!曲は前オーディションでもやった曲「ギターと孤独と蒼い星」だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

んむう。合わない。虹夏先輩ははしり気味。リョウ先輩がなんとか連れ戻そうとするも中々合わない。喜多さんは声が良くでてるがなかなかギターまでには手が回らんようだ。ゴッチは疾い。はしってる。全体的にだいぶはしり気味な演奏になっちまってる。でも…4人の顔を見る限り俺にはそんなに深刻なことのようには思えない。だって沈んだ顔はみんなしてないから。誰もが、ひとりひとりがなんとかしよう。なんとかしなきゃと足掻いてる。そんなふうに見える。…惜しいな。あとひとつ。なんかひとつ。きっかけみたいなもんがあれば…そんなうちに演奏が終わる。

 

 

「い、1曲目!ギターと孤独と蒼い星!でした!」

 

 

「やっぱ全然パッとしないわ」

 

 

「だね〜」

 

 

先のお客さんが、容赦なく演者にも届く声で言い放つ。これは手厳しい。リョウ先輩がピキッてるな。珍しい。ほかのは…萎縮してるか?などと考えていると。ステージに、雷鳴のような。この間、虹夏先輩にスマホで聞かされた、憶えのあるあのギターの叫びが響き渡った!!

 

 

ぐわわわわわ〜〜〜〜〜ん!

 

 

音の主に会場の人間全ての目が向く。音の主はゴッチだ!そのまま力強いストロークでギターソロを展開していく!即興か!?すげぇ!演者である結束バンドですらビックリしてるみたいだ。これは合わせじゃないな。ゴッチの独断だ。ギター1本で会場の空気変えちまった!流石はギターヒーロー!名前は伊達ではないらしいな!

 

 

ギターソロの勢いそのままに2曲目に移る!結束バンドの新曲(あのバンド)だ!そして!すげぇ!めっちゃみんなの息が合い出した!ゴッチの力強いギターが!意外と低くて鋭くてカッコいい喜多さんの声が!見た目の割にどでかく響き渡る虹夏先輩のドラムが!結束バンド扇の要のリョウ先輩のベースに乗っかって!1つの音になる!そうこれ!これこそグルーヴよ!これこそバンドよ!!おいおい2曲目は完璧じゃねーか!

 

 

「なにか1つきっかけがあればと思ってたが…まさかぼっちちゃんが前に出るとは」

 

 

「あの子は割と土壇場でこそチカラを発揮するタイプだとおもいますよ〜すごいぞ〜ぼっちちゃ〜ん!」

 

 

音楽玄人の店長と廣井さんも手放しに褒めてるぞ。やるじゃないの。かなりいいサウンドだ。これはあの手厳しい2人も納得なんじゃね?

 

 

演奏が終わる。と同時に我に返ったのか、ゴッチが蒼白な顔を錆びついたネジでも回すようなスピードで後ろに向ける。しまんねぇ女だなホント。振り返られた虹夏先輩は、ドラムのスティックごとのサムズアップと、満面の笑顔を返す。結束バンドの。虹夏先輩の迷いはギターヒーローがブチ破ったみたいだ。一歩近づいたんじゃねーかゴッチ。虹夏先輩の理想のギタリストによ。

 

 

「ちょっといいじゃん!」

 

 

「ねっ!」

 

 

覆した。やはり廣井の姉御の言う通りだ。オーディエンスの中に敵などいない。自分を信じて全力で取り組めば何らかの反応を返してくれる。結束バンドに教えられたぜ…間違いなくな。

 

 

「あ、ありがとうございました!2曲目!あのバンド!でした!続いて最後の曲です!」

 

 

 

 

 

もはや心配なかろう。よーやく安心して見れそうだ。と思った矢先。3曲目でゴッチが力一杯すぎたのかピックをぶっ飛ばしギターが10秒ほど行方不明になる事件があった。件の2人もこれには苦笑い。カッコよかったのになゴッチ。カッコよかったのになー!!別にオチつけなくていーんだよ!!

 

 








皆様に少しづつ読んでいただけてるようで感激です…!
どんな些細なことでも構いませんので感想やら、評価やら。いただけますと喜びます!


青木くんはプオタです。しかも昭和の
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。