【完結】 ギター爪弾きのバラッド   作:はま0821

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こないだ思いついた妄想なのですが。
ぼっちちゃんの誕生日パーティーで喜多ちゃんと虹夏ちゃんが緑黄◯社会のPA◯TYを熱唱すればぼっちちゃん号泣するのでは!?誰かそういうの書いてくれませんかね!?優しいやつ!暖かいやつ!


13 ギャンブラーはタガタメに啼く(あんた背中が煤けてるぜ?)

 

 

 

 

青木遥は享楽的な人間だ。基本的に興味の赴いたほうに首を振り法が咎めようが彼が意に介すことなどほぼない。夏休みも佳境に入ってきたある日。彼の思考は、興味はあるものへと向いていた。

 

 

「パチンコを…!!打ってみてぇ…!!!」

 

 

良い子は真似しないでね。未成年で賭博はご法度である。だが夏休みにしか出来ない特別体験!などという響きが彼の判断力を奪っていた。なぜ普通の、16歳らしい友達と花火に行くとか。海に行くとか、そういう発想に思い至らないのか。それが彼のぼっちポテンシャルの高さを物語っていた。だがこの青木遥にも居酒屋で食べ残されちまったフライドポテトひとかけら分の良識は残ってるようで、ほぼ仕送りで構成される生活費に手を出すのは憚られた。ならばどうする?どうやってパチンコの軍資金を捻出する!?考えた末に出した答えが…

 

 

「…路上ライブだ!」

 

 

コレである。まさにろくでなし。いや、ロックでなし。ある種思考はロックではあるのか?

 

 

「自分で稼いだ金でギャンブルするくらいならお天道様にもお目溢しをいただけるかもな…。あん?音楽の神様が怒る?ロックの神様なら大喜びじゃねぇか?だって自分でも言っちゃうがこの思考がなかなかにロックだろ!?」

 

 

そうと決まっちまえば善は急げ。善とは?相棒の入ったギグバッグとスコア片手に、猛暑日確定であろう強烈な日差しを放つ太陽のもとへと駆け出した!

 

 

 

 

 

 

ホームタウン下北沢に着くと適当な人通りの悪くない広場にどっかりと腰を落とし、床にスコアを広げる。おひねり入れ代わりにと開いたギグバッグを横にセットし準備完了。今日は通行人に女性が多いな…ガールズバンドでいくか!ジュディ◯リだな、ジュディ◯リ!よっしゃいくぜ!下北沢の方々!俺のギターを聴け!!

 

 

 

「へぇー!君ギター上手いねー!ちょっと前のやつでしょこの曲!懐かしかったよ〜!これあげる!また弾いてねー!歌は下手だったけど」

 

 

「懐かしい!思い出がよみがえったよ〜あの頃は良かったな〜!歌は下手だったけど」

 

 

「…なかなか上手かった。これ。少ないけど。歌は下手だったけど」

 

 

あざーっす!こんなありがてぇことねぇや。主には100円とかだけどたまに500円とかも入ってる!でも皆さん!歌が下手なのは自覚してるのですが示し合わせたように最後に言ってくるのやめてくれません!?

 

 

「…みてたよ。遥」

 

 

「…!リョウ先輩!いつからそこに!」

 

 

「ちょっと前から。…遥。ミュージシャンたるもの食ってく金は音楽で稼ぐべし。…私にも一口乗らせて」

 

 

「文字通り食べる金が今欲しい。昨日からマジで草しか食べてない。うまいカレーが食べたい!!…それに遥。ガールズバンドのコピーやるならボーカル必須なんじゃない?」

 

 

「…!そうか!リョウ先輩ボーカルもいけるのか!?うおおそしたら百人力ですよ!是非力を貸してください!」

 

 

「儲けは折半でいい。…さて…久しぶりに出すか。本気を」

 

 

「俺も本気でいきます!やってやりましょうぜリョウ先輩!曲なにでいきますか!?」

 

 

リョウ先輩が俺がもってきたスコアをめくる。フームと少し考えたあと。

 

 

「これなんかどう?リーガル◯リーのキラキ◯の灰」

 

 

「あれっすねアニメのエンディングだったやつっすね。そのアニメ好きだったんでよく弾いてましたよ!」

 

 

「リョーカイっす!みなさーん!今から軽いライブしますんでよければ聴いていってください!気に入ったらばおひねりいただけるとうれしいです!」

 

 

通行人の皆さんにそうアピールし!

 

 

「んでは遥。ギターきっかけでいいよ」

 

 

「んじゃボディー叩きますんで4回目で。ワン・ツー・スリーフォー!」

 

 

 

 

 

 

なんつーか。流石だなやはり。ベースとボーカル。両方やってるのにどっちにもまるでブレがない。なんか本人に言ったら怒りそうだが、意外と可愛らしい声してんなリョウ先輩。しかしあれだな。リョウ先輩のユニセックスなカッコ可愛い見た目とベーステク。そしてその意外な歌声のおかげで人がかなり集まってきたぜ!この人の前じゃ俺のギターなんざ添え物かもな!アニメの曲が終わったあとはSTARRYの宣伝も兼ねて結束バンドの曲も演奏し、暑さが限界なので通行人の皆さんにお礼を言って簡易ライブを締めた。これでうまいもんでも食いなと1100円くれたおじさん。この100円はなんですか?と聞くと、消費税さ。と答えてくれた。カッコよかった。

 

 

取り敢えず近場のコンビニでジュースとアイスを2人分購入(払わされた)そして戦利品の確認だ!

 

 

「いっせーの!オープン!!」

 

 

「ぱちぱちぱち」

 

 

ふぉぉぉぉ!結構入ってる!やっぱリョウ先輩が歌ってくれてから売り上げガンと伸びたな!やっぱボーカル有り無しはでかいわ!

 

 

「ざっと見て3000円はあるね。ヤベェ真面目に働く気がなくなる。ねえ遥。今日からわたしたちストリートミュージシャンとして生きていかない?」

 

 

「それもいーですかねー!いや~俺達才能あるのかもなー!だはははは!!」

 

 

「…遥。遥は私が入る前には1000円ぐらい稼いでた。わたしの取り分は1000円でいい」

 

 

「いいんすか?リョウ先輩」

 

 

「いい。これだけあれば美味いカレー食べられる。問題なし」

 

 

「ありがたく。よし!では向かうか!今日の真の目的!パチンコに!!」

 

 

ピクリとリョウ先輩が反応する。

 

 

「遥…パチンコってあの?1個4円の玉を盤上に躍らせて一喜一憂する大人の遊び?」

 

 

「はいっ!そのパチンコです!」

 

 

「ふっ…遥。物を知らないな。パチンコって未成年はやっちゃダメなんだぜぇ。店の前で止められちゃうでしょ」

 

 

「いやなんか調べてみたところ堂々としてればそう簡単にはバレないらしいですよ。それに…俺のこの顔で年齢確認されると思います?」

 

 

リョウ先輩は顎に手をやり俺の顔を見つめてう〜んと唸る。そして。

 

 

「…遥。ちょっと10分待ってて。後学のためわたしもパチンコ見てみたい。ちゃちゃっとカレー食ってくる」

 

 

「一緒に焼かれますか。ギャンブルに!」

 

 

リョウ先輩は振り返りグッとサムズアップ。俺もサムズアップで返す。ここに同盟の誕生だ。同盟の名前?クズ同盟?

 

 

リョウ先輩はマジで10分で帰ってきた。よほど気になるらしいなパチンコが。ほんで変装のつもりかグラサンかけてた。

 

 

「流石リョウ先輩。どっからどう見てもライブやっつけてきた治安の悪いバンドマンにしか見えませんよ…!」

 

 

「褒め言葉として受け取っておく。遥もなかなか。なんかふつうに制服じゃないだけで変装になってる。20代半ばにしか見えない」

 

 

やめて悪気はないかもだけどそれは俺の心にキクから。それにしても発想が被ったな。流石に素顔でやるのはなんだと。知り合いに見られたりしたら困るので俺も胸ポケットにしまっていたグラサンを取り出す

 

 

「うわー…。一気に輩感が増したわ。昨日新宿ですれ違ったっけ?」

 

 

「行ってませんよ!でもまあ…これで変装は完璧。行きましょうか…大人の園へ!」

 

 

「がってん」

 

 

 

すこし緊張しながら店の軒先をくぐる!ビビるなよ俺!バレちまうからな!

 

 

 

じゃんじゃららららら!!パラパラパラパラ!やかましー!!

 

 

「遥。めちゃくちゃうるさい。これふつうなの?」

 

 

「俺もわからんす!めちゃくちゃうるせぇなたしかに!隣にいるのに話し声すら聞こえねぇ!」

 

 

さてどこの席にしようか…この席選びから勝負は始まっている。最悪な席を選ぶとまるで当たらないらしいからな…先輩バンドマンがそんなこと言ってたぜ

 

 

「リョウ先輩…どこの席がいいと思います?」

 

 

「席で違いがあるの?」

 

 

「らしいですよ…。ここが勝負の分かれ目とも言ってましたよ、先輩が」

 

 

「ふむ…なんかあの台が気になる」

 

 

「あの台ですか。よし!あそこにしよう!頼むぞ俺の2000円!」

 

 

「まあ2000円じゃあたらないだろうからなぁぷぷぷ」

 

 

「ネガティブ禁止!!」

 

 

この2人は知らないことだがパチンコ台には仕様がある。もちろん個体差があるがある一定以上回すと必ず当たるという仕様だ。そして2人が選んだこの台は前の客が当たる前の限界まで回して諦めてしまった台!いわば据え膳…!!あと少し回せば必ず当たる台…!!僥倖…!!僥倖なのである!!そんな台に知らず座ればどうなるか…!

 

 

 

 

満点大当たり!!である!!

 

 

 

 

「やべえやべえ!!止まらねえよこれどうする!?」

 

 

「どどどどうする!?あとすこしであふれちゃうよこれ!?」

 

 

「とととりあえず落ち着いて!慌ててると怪しまれます!」

 

 

視線を回す。周りには悟られないよう最小限に。そして見つける!

 

 

「リョウ先輩!あれだあの箱!みんな箱に玉詰めて足元に置いてるんだあれ探してください!」

 

 

「がってん!…!あったあれか!」

 

 

すったもんだで箱を見つけなんとか事なきを得る。こんな勢いでその後も出続け気づけば1時間後…!

 

 

「「やべぇ…!!」」

 

 

「玉1発4円でしたよね?」

 

 

「…そのはず」

 

 

「ヤバいっすよこれ。箱にぎっちり4箱とちょっとぐらいでてます。元手2000円ですよねこれ?」

 

 

突然リョウ先輩が顔を抑え肩を揺らし始める。やめろぉ不自然な動きをするな!ここまで来て追い出されたらどうすんだ!

 

 

「換金。換金に行こう遥。わたしが大声で笑っちゃう前に!」

 

 

んな必死に抑えてるんすかそんな顔初めてみましたよ。これは急いだほうがよさそうだ!

 

 

 

 

 

 

 

換金所のおばちゃんの鋭い視線に怯えながらしかし悟られまいと毅然に振る舞う。そして。

 

 

「あい。じゃあ32000円。ありがとうございました」

 

 

「「…………………!!!!!!」」

 

 

無言で2人で換金所を出る。そのまま人がなるべく少ない広場を探して2人で戦果を見る。

 

 

「32000円…!どうみても32000円だ…!諭吉と栄一が3人おるよおい…」

 

 

「くくく………ははははは…………はぁーっはははははは!!!!!」

 

 

リョウ先輩そんなKOFの八神庵みたいな。

 

 

「これだけあれば前から溜めてた分と併せてハイエンドイケる!遥!!これくれ!全部くれ!」

 

 

「イヤっすよたしかにあんまり金目当てじゃないですけど分け前ゼロはイヤっす!」

 

 

「なんだとぅ!?金は使われるためにあるんだよ欲しがってるもののもとにいくべきなんだよ!おねがーい遥ぁ!足でも靴でも土でもなんでも舐めるからぁ〜!」

 

 

「もっとプライドを持て!えっこれホントにさっきベースを弾いてた人と同一人物!?」

 

 

「プライドなんざ捨てられるときは捨てちまうんだよゲスススス!ダスターシュートにダンクシュートしたったゲスススス!」

 

 

ほんとにこれさっきあんなカッコよく歌ってたリョウ先輩と同一人物か!?金の魔力は恐ろしい…!人が変わる瞬間を初めてみてしまった…参ったな…!なかなかシャレにならないすったもんだを繰り広げていると背後に気配!

 

 

「いや~楽しそうだねおふたりさ〜ん」

 

 

しまった背後の警戒を怠った!俺とリョウ先輩の肩に手を置きつつ何者かが話しかけてくる!こ…この声は!

 

 

「きくりの姉御!なぜここに!?」

 

 

「なんだ〜あたしが下北歩いてちゃいけないっての〜?つれねぇな〜まあ〜そんなことよりぃ〜なかなか楽しそうなことしてたね〜?」

 

 

ぎくぎくぅ!や、ヤロウまさか見てたのか!?

 

 

「未成年がパチンコね〜よくない!よくないよ〜これは。あたしはそんなん怒る義務も義理もないけどぉ〜センパイが知ったら、どうなるかね?」

 

 

頭の中に指を鳴らしながらこめかみに十字路を浮かべる店長を幻視する。おぉおぉ。考えただけで恐ろしい!

 

 

「くっ…!な、何が目的なのですか!?」

 

 

赤ら顔でニヤけながら目の前に立つ女に対して問う。すると

 

 

ずしゃあ!…疾い。土下座、土下座だ!このスピードに俺が達したのはおそらく20代前半…。いや10代だわ!

 

 

「お願い!じつは君たちのことパチンコ屋からずっと見てたんだ!少ない元手だったろうにあそこまで勝った君たちの勝負運!見事だった!その勝負運を見込んで頼みたい!どうか!この廣井きくりに!力を貸して欲しい!!」

 

 

「…断ったら?」

 

 

無言で姉貴が土下座から姿勢を戻す。手にはバキバキに画面が割れたスマートフォン。読みづらいがどうもセンパイ。と書いた連絡先が表示されている。強制イベントってことね。くそったれ!!

 

 

「まずはわけを。わたしたちもわけを聞かないと協力しがたい。そして店長に連絡は勘弁して」

 

 

リョウ先輩…交渉事において相手に弱みを見せるのは悪手ですぜ。ですがたしかにわけを聞きたい。他人のギャンブルの勝ち分すら当てにしなければならないその理由を!

 

 

「え?えへへ〜。こないだも機材ぶっ壊しちゃって累計の借金が15万になっちゃって〜財布んなかには300円。にっちもさっちもいかないんですわ!」

 

 

この理由である。知らねーよ他人の15万の借金なんざよぉ!あんた売れっ子ミュージシャンだろ!?15万くらい音楽でどうにかしてみろよ!

 

 

「次のライブ1週間後なんだ〜。ムリ。今回ばっかりはマジでお腹と背中がくっついちゃう物理的に。今日江戸川競艇場ででかいレースがあるんだ!当てれば借金完済どころじゃない!お願いだよもちろん分け前あるからさ〜!軍資金だけわたしに協力して?」

 

 

話がどんどん大きくなってきたぞ。だが…。

 

 

「いくら廣井さんの頼みでもそれは…」

 

 

「わかりました。乗りましょう」

 

 

「遥!?」

 

 

「リョウ先輩…。俺は別に金が欲しくてギャンブルやってるわけじゃない。金を賭けてギャンブルに焼かれる人間の魂の輝きが見たいんだ!!その点この姉御…!財布の中には300円!借金15万円!退くことの出来ない一世一代の大勝負!最高の輝きを見せてくれそうじゃないグッフッフ……………!!!!」

 

 

あ、ヤバいこの場に変態と弩級の債務者しかいない。と山田リョウは思った。

 

 

「乗ってくれるの少年!!」

 

 

「ええ。ええ。あなたの熱意に感激しました。出させていただきますよ軍資金!コレです!!」

 

 

いうが早いか俺は2万円を廣井の姉御に提示する。1万円はポケットの中だ。

 

 

(遥。勝ったのは3万では?)

 

 

(姉御にはこの2万で踊ってもらいましょう。最悪の場合はこの1万を2人でわって分け前としましょう。パチンコの大勝ちは夢でも見たと諦めて。)

 

 

(残念だけどそこら辺が落とし所かぁ…5000円でもないよりかはマシ…わかった)

 

 

この間アイコンタクトだけで0.2秒である。目と目で通じ合う。

 

 

「よし!じゃあ向かおうか!江戸川競艇場に!廣井きくり!!一世一代の大博打じゃあ!!」

 

 

「せいぜいキレイに燃え尽きてくださいよ〜!!!げっげっげっ!!」

 

 

「ヤーバイ遥が兵頭会長みたいになってる」

 

 

 

 

 

 

 

 

少しの時間列車に揺られる。江戸川競艇場。様々な賭け人たちに時に夢を見せ時に地獄に突き落とす。まさに人間の明と暗の交差点。ヒューマンスクランブル。まごうことなき大人の園だ。どんなドラマが見られるのか?興奮を禁じ得ないな…!!

 

 

けたたましい舟のエンジン音が鳴り響く。眼下に湖のように広いコースが広がる。ものすごいスピードで走る舟がぶつからんばかりの勢いでコースのインを取り合う。すげぇ!すげぇ迫力だ!ここが競艇場か!!初めてきたぜ!!

 

 

「これはすごい。とんでもない迫力。もっもっもっ」

 

 

「ねーあたしも始めてきたよ〜もっもっもっジュー!!っかーうめー!!」

 

 

「2人は流れるように何食ってんの!?」

 

 

「なんか名物のもつ煮。そこで売ってたよ。美味いもっもっもっ」

 

 

「ズルい俺も買ってきます!!」

 

 

待てよ。リョウ先輩はともかくとして姉御はすかんぴん…まさか。未成年にたかったのか。そこまで堕ちたか!

 

 

 

 

ややあってよく見えるところで3人で腰を下ろす。姉御がどこからかスポーツ新聞を取り出し。

 

 

「この4号艇がけっこー強いのに人気ないのよ〜コイツに賭ければ借金なんて…!」

 

 

「連単でいくんすか?それとも連複?もっもっもっ。ジュルル〜」

 

 

もつ煮をつまみにノンアルビールいきながら俺が問う。

 

 

「遥。連単、連複とは?」

 

 

「あれですよ。連単は順位まできっちり当てる。連複の方は順位関係なく勝つ舟を当てる。そんな感じですね。もちろん連単のほうがオッズは高くなります」

 

 

「へぇ~もっもっもっ。チビリ」

 

 

リョウ先輩はノンアル日本酒だ。この間のでハマったのかな?

 

 

「もちろん!連単2万1発勝負さ!この4号艇にあたしの!魂をかける!!」

 

 

「グッッッッド!!!これは1発目から最高の光を拝めそうだ!まばたきするのも惜しいなおい!!」

 

 

「わーすごーい。もっもっもっチビリ。(対岸の火事)」

 

 

三者三様の反応を見せる中、ついにレースの火蓋が切って落とされる。廣井きくり一世一代の大勝負だ。大儲けか。身ぐるみ全て剥がされて江戸川に浮かぶか。今決まる!

 

 

「4号〜!!行けぇ~〜!!!!」

 

 

「まくれ!!まくれ!!!!差せーー!!!!」

 

 

「おお。おおお!!おっおっおお!?」

 

 

エンジンの轟音鳴り響く江戸川スタジアム。あっという間に3周を回り終えたボートの主が空に腕を突き上げる。4号艇だ!!俺とリョウ先輩はいっせいに姉御に対して振り返る!き、きたのか…!?まさか!

 

 

「あ…当たった。当たったよ?えっ嘘…!」

 

 

「ちょっと貸してください姉御!!」

 

 

姉御からチケットをひったくり前方の大きなヴィジョンに映し出される勝ち舟とチケットの数字を確認する…!!4−2−3!4−2−3だ。えっ?待て待て待て!順番まで当たってるぞコレ!三連単だ!!まごうことなき当たりだ!三連単の大当たりだ!!

 

 

「えっ!?なになに!?遥なにが起こったの!?」

 

 

「すげぇこの姉御…。1発で決めやがった。4−2−3の配当は8倍。姉御2万賭けたんすよね。イッパツで16万だ借金完済ですよ!!」

 

 

「うっ嘘嘘!!いよっっっしゃああああ!!!!借金完済じゃあああああ!!!!!!」

 

 

「へぇ~すごいんだ。もっもっもっチビリ」

 

 

「なにシラフ決め込んでんですかリョウ先輩!これで姉御ブルジョアですよ一気に!媚び売っといたらイロイロ奢ってくれるかもですよ!」

 

 

「廣井様。何か御用はございませんでしょうか。誠心誠意対応させていただきます」

 

 

「なっはっは〜すんげー変わり身!苦しゅうないぞ〜リョウちゃん!」

 

 

「姉御!やっとる場合ちゃいますぜ!払い戻しにも期限がある!過ぎると一銭も戻ってきませんぜ!」

 

 

「うそっ!?どどどっち!?払い戻しどっち!?」

 

 

「あっちです行きやしょう!」

 

 

すったもんだしくはっくあってなんとか現金に換金してもらう。うおお〜16万だ。やっぱ現生は迫力が違うな!

 

 

「いよっしゃあ!これでもう1勝負!!16万の大博打じゃあ!!」

 

 

「リョウ先輩!!」

 

 

「がってん遥」

 

 

リョウ先輩が姉御を後ろからガッチリホールドする!その行動は読んでますよ!姉御!

 

 

「な!?なにすんだ!?少年!リョウちゃん!」

 

 

「へっへっへ…。姉御。ちぃ〜っと失礼しますよ?」

 

 

姉御のスカジャンのポケットに乱雑にツッコまれた16万を慎重に抜き出す

 

 

「あ!?やめろぉなにするんだ!それは今日の勝ち分!やめろぉ!」

 

 

後ろで何か聞こえるが構わず近くにあった封筒に慎重に数えた15万を分けて入れて封をする。そして残った1万円を姉御に渡す。15万の方は俺のポケットに慎重に。慎重〜にしまう。

 

 

「ど…どういうこと!?」

 

 

「姉御…。どうか冷静に。いくら勝負運全開の姉御でも、2回連続で勝てるかは分からない。ならば機材代の15万だけ分けといて、そのチェーマンだけで勝負すんすよ。真についてれば、チェーマンだけだって成り上がれるはず!」

 

 

「…振り出し。いや、さっきの賭け金の半額なわけだから後退か。いいね。燃えてきたよ!!まだわたしは死んでない!チェーマンでだって成り上がってやる!まだだ!まだ終わらんよ!!」

 

 

この女完全に目的忘れてやがるな。すでに機材代稼いでさらにまだギャンブル出来るのだ。大前進だと思うのだが。既に姉御の拘束を解いたリョウ先輩と目を合わせてやれやれ…とやる。欲とはここまで人間の目を曇らせるのか。げに恐ろしき…。

 

 

 

だがしかし。そこからの姉御はまさに超人だった。第5、第6レースと当てチェーマンしかもってなかった姉御の所持金はなんと8万円にまで膨らんでいたのだ!マジで神でも付いてそうな快進撃。

 

 

「ぷっはー!勝利の幸せスパイラル〜!」

 

 

「廣井様。もつ煮のおかわりです」

 

 

「エビスビールをどうぞ」

 

 

「なっはっは〜!苦しゅうない!君たちもこれで好きにやりなさい!」

 

 

そう言って姉御は俺たちにチェーマンを差し出してくれる。

 

 

「「いよっしゃらぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」」

 

 

「カレー行こーっと!」

 

 

「俺はノンアルおかわりとラーメンだな!よっしゃ姉御のおかげで楽しくなってきた!」

 

 

「はぁ〜っはっは!!苦しゅうない!苦しゅうないぞよ!舟パーティー!舟パーティーじゃ!んがっはっはっはっはっ!!!!」

 

 

三馬鹿の宴は終わらない。姉御が負けない限り、終わらない…!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

きくり!大敗!!

 

 

き く り 大 敗 ! !

 

 

 

隣で山田リョウが割と冷めた目で見ている。もう十二分に分け前をゲットし引き際を見極めていたからだ。青木遥は隣で頭を抱える。確かにいつまでも勝ち続けられるかと言われると怪しいものだが終わるときはこんなにあっけないのか…!と。現実を受け入れられない!といったリアクションだ。

 

 

なぜここまでの大敗になったのか。理由は簡単。きくりが今まで堅実に負けても次も勝負できるように計算して賭けていたのだが、ここにきてなにをとち狂ったのか8万全賭けの三連単1本勝負に打って出たのだ!冷静に賛成も反対もしなかったのが山田リョウ。囃し立て今ならイケる!波来てるよ!と。背中を押してしまったのが青木遥。たぶん冷静な人に聞いたらこれがどれほど気狂いの所業か分かるだろうが、おそらく、廣井きくり。青木遥。この2人は飲まれてしまったのだろう。ボートレース場。その場所が持つ、魔力に。人知の及ばぬチカラに。

 

 

(そりゃそうでしょ。遥も廣井さんも、夢見すぎ。…んでもまあ、楽しめたかな。お腹いっぱいだし。満足)

 

 

山田リョウは1人、暮れなずむボートレース場の夕日を眺めながら胸中でごちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあ〜あぁぁぁ~〜〜〜〜〜〜。あそこでやめとけばなぁ〜。8万だったのに!機材代は稼げたけどそれ以外はすかんぴんだよぉ〜!」

 

 

「い〜や〜今日はいいもん見せてもらいましたよ。まさに姉御にギャンブルの神様がついてましたわ!後光見えてましたもん!」

 

 

「最後見放されてたけどね」

 

 

「うるさいリョウちゃん!」

 

 

夢と地獄が交差する江戸川競艇場をあとにし、ホームタウン下北沢を行く。しかし…なんか…やな予感がするな。

 

 

「おーうお前ら。廣井も。探してたんだよどこいってたんだぁ?」

 

 

げぇっ店長!やべぇ無意識にSTARRYの近く歩いてた!

 

 

「な、なななななんでしょうか…?あれっ?今日はバイト休みのはずでは…?」

 

 

「あーそれとは関係ねーんだ。まあ入れ、取り敢えず入れ」

 

 

何やら店長から殺気が漏れてるような…。後ろにはベーシストが2人、ガタガタと震えている。もしものときは道連れにしよっと。

 

 

STARRYに入り俺たちはなぜか床に正座する。誰からともなくである。思えばこの時点で思うところがあると認めるようなもので。語るに落ちていた。店の奥からはなんだなんだと、今日普通に仕事であろう結束バンドのほかの面々も見に来ている。

 

 

「あーお前ら。なんかわたしに言うことないか?」

 

 

「まさかそんなはははは。そんな店長に言わなきゃいけないことなんかなにも…」

 

 

「そそそそそうだよ。変装してパチンコ打ってそれ軍資金にして江戸川競艇場行ってたなんてことないし」

 

 

「「山田ぁ!!」」

 

 

俺と姉御の声がシンクロする!!

 

 

「なんなの!?バカなのリョウちゃん!!全部言っちゃってるじゃん余すことなく!」

 

 

「なにやってんだリョウ先輩!!せっかく俺がうまくごまかしてたのに!」

 

 

「う、うまくごまかしてなんかなかったし!あんなしどろもどろ、店長じゃなくたって気付くし!」

 

 

 

「あーいーんだいーんだ。どーせ全員同罪だから。なんかパチ屋のガラス越しに見たことあるような3人分の背中が見えたからカマかけてみたが…語るに落ちたな。山田」

 

 

 

ほら見ろやっぱり店長は確信持ってなかったんだよ、うまいことごまかしゃなんとかなったかもしれないのに山田ぁ!!

 

 

 

「あ、あたしは!?あたしはなんの罪!?成人してるしギャンブルしたって犯罪じゃないじゃん!!」

 

 

 

「監督不行き届き。成人のお前がいながらなんでのびのびコイツらは打ってんだ?」

 

 

 

「江戸川競艇場の軍資金。姉御に出させられました!」

 

 

 

「少年!?裏切るのか!?苦楽を共にしたこのあたしを!!裏切るのかぁ〜〜〜〜〜!!!」

 

 

「…ほぉ。それは初耳だ。廣井はコレとは別件であとで面貸すように。…さて。みんなが守ってる法律。破ったやつには罰が下る。わかってるよなぁ?」

 

 

ゴキゴキと指を鳴らしくきっと首を鳴らすと大魔神が立ち上がる。なんかオーラみたいなもん立ち上ってないか!?おい!?

 

 

「な…なんか事情は分からないけどぼっちちゃん!喜多ちゃん!もっと離れて!久々に出るかも…!お姉ちゃんの、アレが!」

 

 

「えっえっ!?お姉さんと青木くんだいじょうぶなんですか!?」

 

 

「きゃー!リョウ先輩の顔面がなくなったら日本の損失だわー!!なんとかリョウ先輩だけでも助けてー!!」

 

 

喜多さん俺は助けてくれないんだ。そっかそっか。

 

 

「さてと。三馬鹿。覚悟はいいか?」

 

 

眼前の店長の有無を言わさぬ迫力に、ぐっと全てを諦め目を瞑る。

 

 

「行くぜ必殺。岩山両斬波!!」

 

 

ばがあん!!!どうやったのかは知らないが3人の頭に同時にチョップが落ちる!それを認識するのが早いか。俺は意識を手放した…!

 

 

下北沢STARRYには伝説がある。伝説の店員。頭凹みだ。見た目はふつうの店員なのだが頭が。頭がまるでテンガロンハットの真ん中のように凹んでいる。なぜなのか。誰に聞いても苦笑いで明言を避けることから七不思議として下北沢に今でも語り継がれている…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わたしも学生の時分パチンコいってたしそんな強くはいえないんだけどな〜まあこないだ北斗の台で負けたからいいストレス発散になったぜ」

 

 

「おいお姉ちゃん。はぁ〜バンドマンってのはどうしてこう…」

 

 

「わ、わたし!もっとロックを理解したい!パチンコ屋さんに行けば少しはロックを分かるかしら…!?」

 

 

「だ、駄目です!喜多さん!」がしっ

 

 

あまり出番のなかった結束バンドの面々で締め。

 

 

お死枚!

 

 

 




重ねて言うが良い子は真似すんなよ。もしかしたらいるかも知れない読んでくれてる未成年の方々。法律には問われないけど、ふつうに学校に連絡いくし親にも連絡いくから。成人するまで我慢しな!!



評価、感想くれ!!



評価、感想くれ!!



主人公のイメージです。強面に顎髭!



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