取材と銘打ってまた江の島に遊びに行こかな。しらす丼美味い。
なんだって他のみんなより早くにでてきて床掃除なんざせなあかんのか。この小説の主人公、青木遥はひとりごちる。
「遥がパチンコ打ちたい!とかアホなこと言い出すから。…全くなんでわたしまで…」
「共犯ですよね?ガッツリ一緒に楽しんでましたよね!?」
「わたしはパチンコ打ってない。競艇場だって廣井さんに出資しただけ。手は汚してない」
あれ!?そうかこの青髪ベーシストたしかに自身の手は汚してないのか…そりゃ付き合わせちまって悪いか…。
いや認めねぇ!理屈は分かる。だが俺の魂が!その理屈を否定している!!
「いーやリョウ先輩は共犯です!だいたい手汚してないとか言ってますけどパチンコ屋に未成年で入ってる時点でもうあかんのですよ!リョウ先輩もフツーにアウトです!!」
「ぐっ…!そ、それをいうならもともと遥が…」
「あんれー私語してていーのかなー?薬が足らなかったかぁ〜?」
ズバッ!きびきび!と仕事に戻る。鬼より怖い店長の登場だ。このあいだのペナルティでこの床掃除の時給は出ないらしい。とほほ…。
「まぁ〜正直気持ちはわかるぞ〜?あたしも学生時代パチンコやってたし。んでも今は時代が違うんだよ。どこで誰が見てるとも限らん。STARRYの評判を落とさないためにも締められるとこはきっちり締めてく。悪いなぁ〜」
「店長学生時代パチンコやってたの!?んじゃずるじゃん、わたしたちのこと言えないじゃん!」
「今は成人してるし店長なんだからいーんだよお前たちに注意したって。あと山田。大人はズルい生き物さ。よかったな〜勉強になって」
「ぐむむ…」
これはリョウ先輩の1本負けだな。ズルい大人こと店長の勝ちだ。
「な〜ンか失礼な波動を感じるな青木〜。給料カットすんぞぉ〜?」
さらりと恐ろしいことを口にする店長。すんませんでした誠心誠意やらせていただきます!!勘良すぎるだろエスパーかマジ!
「あっそういやお前らさ。ぼっちちゃんの様子がおかしいんだけどなんか知らね?」
「えっゴッチがですか?奴は大概いつでもおかしいでしょ」
「右に同じ意見。ぼっちはいつでもおかしい」
「お前らひどいな…」
奴は基本的には大人しく引っ込み思案なだけの美少女なのだがたまに呪言を吐く。まともに聞いてるとチョットだけネガティブになっちゃうから気をつけろ!などとゴッチの取扱説明書を頭の中で読み返しているとSTARRYの扉が開け放たれる。
「みんな!!緊急会議だよ集まって!」
「大変ですー!!」
伊地知虹夏さんと喜多さんの登場だ。あん?なぜ喜多さんだけフルネームじゃないのかだと?なんか怒るんだよフルネームで呼ぶと。可愛い名前なのにな郁代。
「どないしましたのん虹夏先輩。景気のいい話ですか?」
「悪い話!なんか…ぼっちちゃんが玄関先でずっとセミのお墓作ってるんだよ!」
「なんかよくわからない呪言吐きながら〜!怖いですー!」
なんだそら。奇行ここに極まれりだな。こっちは無賃労働してるってのに…手伝わせたろうか。
「てゆーかお前らさ。一緒に遊ぶこととかあるの?」
店長が脈絡なく聞いてくる。なんですか藪から棒に。
「なんかぼっちちゃん、こないだ夏休みの予定について話した時、予定は空いてるわけじゃなく空けてるんです!って力説しててさ。だれか誘ってやったのかな〜って」
ぼっちの難儀なところでとる…気持ちわかるけどね。断られるの怖いよね。だから誘わないよね、ゴッチ分かるぞぉ〜。
「お姉ちゃんそれもっと早くにいってよ!原因それじゃん!」
「つまり誰もぼっちちゃんと遊んでないと…わりとお前ら結束バンドのくせに結束感ないよな」
「えっ理由それ?明日からの学校が嫌すぎて変になってるのかと思ってた」
「きっとさまざまなイヤな気持ちが混じり合ってああなっちゃったんだわ…!早く後藤さんを浄化しないと!」
「じ、浄化するったってどうやって!?」
「………海だわ!」きたーん!
突拍子のないこと言い出したぞこの子。ゴッチを海で浄化?あいつ塩分殺菌効くのかね。あとそのきたーん!ってどうやってんの?どこからともなく聞こえてくるけど。
「後藤さんを海に遊びに連れ出せばいいんですよ!青い空!白い雲!おいしいものい〜っぱい食べて楽しいとこ巡って!そしたら怖い呪言吐くこともきっとなくなるわー!!」
「な、なるほどそれはたしかに一理あるかも」
「そしたら江の島がいい。ここ下北からも電車1本で行けるし」
虹夏先輩が喜多さんの意見に賛同し、リョウ先輩が行く先を提案する。どうやら今日は、ゴッチを元気づけるため、遊びに行くって流れになりそうかな?
「どうやら方針はまとまったらしいな…山田、青木。ちょっと来い」
ひいっ店長!なななななにか粗相でも!?
「山田。パチンコで勝った金あるだろ。今日はそれ使ってぼっちちゃんによくしてやれ。悪銭は身につかねぇ。あるうちに有意義に使っちまうのが吉だ。分かったな?」
「え〜」
「分かったな?」
「…はい!」
流石だ店長。有無を言わせない迫力がある。
「青木。お前は今日は特別任務だ。なにせその集団の中で男はお前1人。女に群がってくる悪い虫もいるだろう。もし発見したら…あたしが許す。ヤれ」
「俺をヒットマンか何かだと勘違いしてません!?」
「特にぼっちちゃんと虹夏についた虫は徹底的にはたけ。ついでに喜多も」
「わ、わたしは!?わたしは心配じゃないの!?」
1人だけ含まれてなかったリョウ先輩が、店長に抗議の声を上げる。
「あ?あー忘れてた」
「ひどい…」
「…ほら」
そう言って店長は1万円をわたしてくれる。て、店長!?これは!?
「この時代に無賃労働させるほどあたしは鬼じゃねえよ。そいつ使ってぼっちちゃんたちにいい思い出、作ってやんな」
か、かっこいいたる〜!かしこまりました!
「ボディーガードの件。しかと賜りました!江の島から帰ってくるまでの結束バンドの身の安全!この青木遥がお預かりします!!」
「ふっ…頼んだぜ。じゃあ楽しんでこいよ」
店長がドアを閉める。俺たちは喜多さんたちがいるであろうSTARRY前へと階段を登る。
「遥だけズルい。店長から1万円もらって」
「たぶんみんなに。ってことだと思いますよ?俺ひとりで使うことはしないんで安心してください」
階段を登りきると喜多さんと虹夏先輩がまだゴッチの再起動に苦戦していた。ふと思い立ち持っていた1万円札でゴッチの顔をはたいてみる。札ビンタだいわゆる。
「うえっ!?青木くんどうしたのこんな大金!」
「気のいい店長からの差し入れです。今日はこいつで飲んで!食って!遊びましょーう!」
「やったぁ!」きたーん!
「ほら後藤さん起きて!あれだけあったらいっぱい飲んで食べれるわよ!」
「喜多ちゃん!続きは電車でやろう!ぼっちちゃん連れてきて!」
「ええ!?えっとぉ…!」
喜多さんが虹夏先輩に無茶振りされてる。確かに女子の中じゃ喜多さんは力がある方だが、流石に意識がない人1人を担いで駅までは、荷が勝つだろう。
「仕方ない。俺が担ごう。全く世話が焼ける…!」
「あ、ありがとう青木くん…」
よっととゴッチを担ぐ。意識手放してて力入ってないはずなのに軽いなコイツ。ちゃんと飯食ってんのか。などと思いつつ喜多さんの先導で下北沢の駅へと向かう。
5人で江の島行きの電車に揺られる。席が空いていたからゴッチはそこに置いといた。女の子4人は座っているが、俺は立って車窓を眺める。だがしかし…車窓というのは…嫌いではない。
「なんか不思議。ぼっち。こんなおもしろい生態してるのに学校でぼっちなんて」
「ほんとだよねーいつかぼっちちゃんの凄さをみんなに分かってもらえたらいいよね!」
「ふむ…確かに。俺みたいに明確にぼっちになる理由があるわけでもなくぼっちだとは。筋金入り」
「あ、青木くん、何かやらかしたの?」
「…ええ。少し」
「なにやったん遥?」
「語るも涙。聞くも涙。ちょっと寝起きで話しかけてきた女子にガン飛ばしちゃって。クラスで腫れ物扱いに…」
眉間に手を置きながら話す。新学期になったらちゃんとあの子には謝ろう…。
「ぷふっウケる」
「ウケないでくださいよ俺にとっちゃ死活問題だ。あ〜あ。話しかけるのはなんであんなに難しいんだろ。話しかけられればいくらでも話せるのに。誰か俺に話しかけてくれねーかなー!」
「新学期になったらきっと話しかけてくれる人、いるよ!頑張って青木くん!」にじかーん!
流行っとんのかそれ。虹夏先輩バージョンだとカジュアルに時間教えてくれてるみたいだな。
その後も女子たちは他愛ない話をしていたが俺は車窓を見ていた。片瀬江ノ島と江の島の違いってなんだ?なんてことを考えていたように思う。こーゆー無駄なことを考えてると時間はすぐに立つ。あっという間にその江の島だ。
ゴッチの意識はまだ戻ってない。まだ俺に運ばせるつもりかコイツ。そろそろ起きねぇかな。などと考えているうちにイタズラ心が顔を出す。よっほっと…膝の裏に手を回して背中を手で支えれば。お姫様だっこの完成だ。どうだゴッチ。この恥辱。やめてほしくば今すぐ起きろ!
無論この状態のまま駅を練り歩き改札を突破する。もちろんチラチラ見られるがそんなもん関係ない。オラオラ姫様のお通りだぞ。
「ぶふぉっあっはははははははは!!!!!遥ナイス!」
「ちょちょちょちょちょちょちょ青木くん!?なにしてんのさ恥ずかしい!おろしなさい!」
「きゃー!!お姫様だっこよー!女子の憧れよー!!」きたたーん!!
だって起きねんだもんコイツ。荒療治ですよ荒療治。動画撮っといてください動画。後で見せて遊んでやる。
そんなこんなやってるとゴッチの意識が戻る。なんか、はっ!とか言ってる。
「あ、あれ…わたしはなにを…」
「起きたかい?お寝坊姫?」
「あ、青木くん…ゔぁっ!?ああああああああああああ青木くん!?なななななななななんっで!?てゆうかこれ…わっわー!わー!!お、降ろして!自分で歩ける!!歩けるからぁ!!」
ジタバタと俺の腕の中で、ゴッチが暴れる。あらら?意外と乙女な反応だな。運ばせてしまってすいません…。とか言われるかと思った。
「おいおいとんだおてんば姫だな…言われなくても降ろすよ」
うん。ノリで芝居がかった喋りしてみたけどそろそろ自分にサブイボが立ちそうだ。やめよ。
「はーっ!はーっ!はーっ!も、もうっ!もうっ!あ、青木くん!き、嫌いです!」
「なんでだよ運んでやっただろ。嫌だったら今度から自分の足で歩いてくださーい!」
「む、むぅー!むむうー!」
「…なんかあれだよね。青木くん相手だとぼっちちゃん感情出すよね」
「仲がいいのは素晴らしきこと…後でぼっちに動画見せてあげよっと」
「なんか羨ましいです!お互い信頼してるのが伝わってきます!」
「確かにね!あとリョウはやめたげて!」
さてと!実は俺もだいぶテンションが上がっている!!江の島!サザンオール◯ターズのお膝元だ!しかもちょっと歩けば江ノ電もある!江の島の沿線はあの大人気アニメの聖地もあるぜ!!なにもたもたしてんだいくぞおい!!
「待った遥!ここの塩ソフトが美味いときく!」
「早速いきますか店長チェーマン!」
「あっズルいあたしも!」
「わたしも食べたーい!」きたーん!
「あっじゃあわたしも…」
あいよー!塩ソフト5人前!!今日は金には余裕がある!豪勢にいこうぜ!ゴージャスによ!
ふわあ〜デッケ〜鳥居。ほんで長い階段が上に続いているのね。しらす丼の呼び込みも目の前にはハマグリやらタコやら今まさに焼いてくれてる店もある。よりどりみどりだな。どうする!?
「遥!!あっちにたこせんだ!」
「なにィ!?なんですかたこせん?どこだー!」
「こらー!走るなー!あぶないでしょー!」
「ほら後藤さん!たこせんですって!行きましょ!」
「あっはい…」
パリッと。たこせんなるものを口にする。なんでもタコを1トンのチカラで叩き潰して作るらしい。タコがなにしたってんだ。まぁ、香ばしくて美味いから、いっか!
「わたし…美味しいものセンサー、抜群…!」
「あっ流石です…!」
「ぼっちちゃんも元気になってよかったよ〜」
「遥の荒療治のおかげで最初から意外とぼっちは元気」
「あ、あうぅ〜忘れて…忘れてください…」
「リョウやめたげて〜。せっかく出てきたぼっち元気がまた引っ込んじゃうよ!」
あれはいつまでも自分の足で歩かんゴッチが悪い。今度から言う事きかないとき、ちらつかせてみるか。
「さあ!みなさん!江の島のトップオブトップまで!登りましょーう!!」きたたーん!!
「えっ嫌だ」
「うぇぇ〜これ全部登るのぉ〜?」
「あっ、えっ、あっ」
なんだ意外と乗り悪いな。ちっと運動したほうが飯も美味いでしょ。この面子ならリョウ先輩を焚き付ければ、ほかの人間もなし崩し的に登るかな?
「リョウ先輩。頂上までたどり着いたら2000円あげますよ」
「なにやってる行くぞ遥!」
「チョロすぎて草はえる」
「伊地知先輩!後藤さん!行きましょ!!」きたたたたーん!!!!
ヴァッ眩し!ナニコレ光源どこ!?喜多さんから光来てるのこれ!?人間って光れるのか…!真夏の太陽光線でさらにパワーを増した喜多さんの陽キャパワーにぼっちとエンジェルが抗えるはずもなし…無事全員で登ることになりそうだ!
てくてくてく…江の島の神社?の階段を1段ずつ登っていく。流石に喜多さんは提案してくるだけあって早い。時折振り返りみんなを元気付けることも忘れない。そしてはるか後方に虹夏先輩とゴッチ。ははは。意外と虹夏先輩は運動できないのか。ゴッチは予想通りとしても。ちなみに本気を出したリョウ先輩がめちゃくちゃ早く現在1位だ。いや、競争というわけではないが。
全く仕方ない。来た道を戻って発破をかけにいく。
「おらどうしたゴッチ。情けねーぞー」
「はあっはあっんくっはーっはーっ。」
「疲れたーもう歩けないー!」
「またお姫様抱っこで運んでやろうか」
冗談混じりでそう提案すると手のひらではっきり拒否される。
「あ、あれは勘弁してください…!も、ものすごく恥ずかしいです…!!」
「ふっ…。確かにな。ほらほらなら頑張れ。まだ全然来てないぞ恐らくよ〜」
「むぐぐ…!この、程度で負けない…!虹夏ちゃん!行きましょう!辛いときはわたしが支えになります!」
「ぼっぼっちちゃん…!うん!ありがとう!あたしも、頑張ってみる!」
なんとかチカラを取り戻した後続組がふたたび歩き出す。なんか2人仲良くなってなーい?なんかあったのかね?
悠々と後続組の2人を追い越しながらふたたび頂上へと歩く。なんか隣からおぶってだの。担いでだの聞こえたが無視。自分の力で登れ。
さくさくさくさく。かる~く登り終えると広場がひろがる。終点か?いや…まだ上があるな。軽く視線を回すと喜多さんとリョウ先輩を発見する。
「あっ青木く〜ん!こっちこっち〜!」
「かひゅーっかひゅーっかひゅーっかひゅーっ…」
かわいそうなぐらい疲弊してるな。そんなに2000円が欲しいのか。前回といい人の欲とは恐ろしい…。
「リョウ先輩。俺今ちょっと引いてます。そんなに2000円が欲しいんですか」
「かひゅーっかひゅーっ…遥。男に2言はないよね」
「その執念見事です。上乗せしますよ1000円。俺の自腹で」
「なんだと…!?なんだとぉぉぉぉ!!おい!?ぼっち!虹夏!!早く来いなにしてんだ!!」
お…おもしれぇ…なんておもしれぇ女…!!
「青木くん!なに考えてるのか表情でだいたいわかるけどこれ以上はやめて!わたしのリョウ先輩のイメージが崩れちゃう!」
あまり夢見ないほうが喜多さんのためだと思いますがね。まあ恋は盲目。ともいいますか。大人しく後続組を待ちましょ。
「はあっはあっはあっ!に、虹夏ちゃん!あと少しです!」
「ぼ、ぼっちちゃん!ありがとう!まだまだ頑張れるよ!あたし!ホントだあと少しだ!!」
オーラスを迎えるにはまだ早いがな。なぜなら…。まだ展望台が残ってる。
「「ご、ゴーーーーーールぅ。…はあ、はあ。」」
お疲れ。まだ終わってないがね。
「ええっ!?まだ終わってないの!?喜多ちゃ〜んもう疲れたよ〜!もう引き返そうよ〜!」
「ここまで来たんです!展望台からの景色も見ていきましょう!ちなみにリョウ先輩はもう向かわれました!」
「うぉぉぉぉ3000円!!超えろ限界!滾れ魂!女山田リョウ!ここにあり!!」
「金がかかると人格変わるなマジで。ぼっちちゃん…まだ終わりじゃないみたい」
「はぁっはぁっはぁっ!そ、そんな…!」
「ちなみに俺がリョウ先輩に出した条件はエレベーター禁止。やっぱソッチのほうが達成感あるだろ?みんな頑張って階段で行こーぜー。そっちのが思い出にもなるでしょ!」
「ものすごく…!も、ものすごく余計な条件…!あ、青木くん…!やっぱり嫌いです…!」
ここまで来たなら一緒だろ。四の五の言わずに登れ。情けねぇぞギターヒーロー。ギターヒーヒーか?俺の覚え間違えか?
「う、うむむ…!うぉぉ!あと少し!虹夏ちゃん行きましょう!最悪の場合わたしが担ぎます!」
「あ、ありがとう…!う、うん!あと少し!頑張る!ぼっちちゃんも最悪の場合はあたしが担いでくから心配しないで!!」
「なんか疎外感…」ぷくー
「なに。あんまりにも遅ければ後ろから蹴りをいれる役を俺とやりましょう。きっと楽しいよ!」
「いやー!!そんな阿漕な役イヤだわー!!」
これはこれで楽しいって。ほんでホントに蹴りをいれるほど俺も鬼ではない。まあ…少しずつ行きましょ。トップは逃げないでしょ。
展望台の外に据え付けられてる階段をゆく。登りきれば今度こそ頂上だ。
たっぷりと時間をかけて虹夏先輩とゴッチがゆく。頑張れ〜。リョウ先輩待ちくたびれてないかね。
「はあっ〜。はあっ。はあっ。はっ。はあ〜っ。」
「あうう、…おえ。に、虹夏ちゃん…!が、頑張って…!」
「そ、そろそろゴールみたいだよぼっちちゃん…!ぼっちちゃんも…頑張って…!!」
早く歩かねぇかなコイツら。思わずケツに蹴りをいれたくなるが喜多さんの。
「人の心とか、ないの?」
との言葉に、閉口しだまって後ろを歩く。そろそろ頂上だ。すったもんだあったがみんなよく頑張ったな。
ここがまごうことなきゴール。江の島のトップオブトップ。頂上だ。展望室へとつながる扉の前に立つ!
「ど、どうぞ。ぼっちちゃん!」
「は、はい!虹夏ちゃん!う、うおりゃーーーー!!!」
ガチャリとドアが開け放たれる!冷房の科学的な涼しさが俺の肌をイヤでも喜ばせる!
「かひゅーっ!かひゅーっ!かひゅーっ!かひゅーっ!ゔぷっおえっ!かひゅーっ!」
2度目。天丼はあまり感心しませんなリョウ先輩。
「ん、かはっ!んなことはどーでもいい!約束だ。遥!四の五の言わずに寄越せ!あますところなく!!」
「もちろん。はいどうぞ3000円です。見事ですよリョウ先輩!」
「よっしゃらああああ!!!こんだけあれば江の島で不自由しない!!」
店長から軍資金もらったからよほど無駄遣いせんかぎりお金はだいじょーぶだよと。言ってやりたかったが、リョウ先輩の気迫の前にはそれは無駄だと悟った。
「はーっ!はーっ!な、なんとかたどり着きましたね虹夏ちゃん…!」
「はあはあはあ…。う、うんぼっちちゃん…なんとかなったね。…でもさ、あたし。たどり着いた達成感よりここの冷房の効きのほうがうれしいよ」
「に、虹夏ちゃんもですか…?じ、実はわたしもです…!」
「も、もー!!なんか2人だけ通じ合っててズルいわ!わたしも仲間に入れて!!」
グイグイと。ゴッチと虹夏先輩が手を繋いで座っている真ん中に喜多さんが体を捩じ込む。きたたーん!
「…ここが江の島のトップオブトップ…悪くない」
眼下には蒼く染まる海。永らく波に打ち付けられてリアス式に削れてしまったのであろう岩肌を見ながら感想を漏らす。
「ほら皆さん。きてよかったでしょ?」
「うん!クーラー涼しい!!」
「3000円!!わたしの愛した北里柴三郎!!これだよこれ!!」
「はぁっはぁっはぁっはぁっはぁっはぁっ、うぷっ。はぁっはぁっはぁっはぁっ……」
そ~いうことじゃないんだよなそ~いうことじゃよ〜1人感想すら言ってねぇし。いや2人か。
江の島のトップオブトップを堪能して暫く。さてと。そろそろ降りるか。皆さん!
「はあっはあっ。あ、青木くん…も、も少し休ませて…」
ふむう。いいけどさゴッチ。いくら休んだって、降りるときには相当体力を使うぜ?なにせ、この江の島エスカー。登るだけで下りはないからな。
そう告げた瞬間。結束バンドの喜多さん以外の皆さんが膝から崩れ落ちる。まあ、意図して伝えなかったんだけどな。これ言ったら登らない気がしてな。
「も、もう無理…!もう無理です…!あ、青木くん…!やっぱり嫌いです…!!」
「もう疲れたよわたしも〜!!誰かおぶって〜!」
「もう無理だ、遥。なんとかしろ」
結束バンドのみなさんの、思い思いの文句を聞き入れた後、全員に対してエールを送る。ほらほら。頑張れ頑張れ。
「頑張ってくださいリョウ先輩!わたしが付いてます!!」
「ううう…!郁代。降りたら何か奢って…」
「はい!だから頑張ってくださいリョウ先輩!」
素晴らしいな友情。愛情?喜多さんがリョウ先輩を励ましにかかる。
「ぐむむ…!うおおー!こうなったら、毒を食らわば皿まで!!行きましょう虹夏ちゃん!!」
「ど、どうやらそうするしかないみたいだねぼっちちゃん!や、痩せられそうな気がするよ今日一日で!」
「虹夏ちゃんはそれ以上痩せる必要はないです!」
「えっ!?あ、ありがとう…?ぼっちちゃん…」
「い、行きましょう虹夏ちゃん!意地悪な主催者に負けちゃ駄目です!」
「う、うん!わたしも頑張るよ!」
全く全く。なんか悪役みたいだな俺。まあ良いや。キリキリ降りろ貴様ら。俺もそろそろ腹が減ってきたぞ。
全員で息も絶え絶え下山した後、暫く乱れた息を、みんなで整えていたら、リョウ先輩が凄まじく珍しいことを言い出す。
「よし。ぼっち。奢ったげる」
「…え!?うっ嘘…や、ヤバい…これは、天変地異の前触れ…!!」
「おいこらどーいう意味だ。いやなに。店長に悪銭は身につかない。って教えてもらったんだ。普段からぼっちにはお世話になってるし…ここでご恩返し。させて」
リョウ先輩が似合わないことしてるな。コレも旅行特有の謎テンションって奴か。
「あ!リョウ!!あたし、しらす丼食べたい!昼は混みすぎてて入れなかったじゃん!!あそこ行きたい!」
虹夏先輩が出した意見をみなさんにお出しする。
「ディナーはそこで決定すかね。皆さん異論は?」
「ないわ!しらす丼も白くてキラキラしてて…!!映えそうよね!」
「なかなか楽しかった…。江の島サイコー。疲れたけど」
「うっくっ…うぅぅ〜」
「えええ!?どどうしたのぼっちちゃんなんで泣いてるの!?」
「わ、わたしみたいな残りカスクソ陰キャにこんなリア充テンプレートな夏休みイベントが舞い降りるなんてぇ…!!皆さんには感謝しかないです…!!あ、ありがとうございます!!」
「こちらこそよ後藤さん!これで充電完了よね!よーし明日から2学期頑張るわよー!!」
あっバカ!
「2学期…!学校…!!ヴッ頭が…!!」
「眠り続けろゴッチ…。辛過ぎる現実は、無理に焼き付けなくてもいい」
「いーからしらす丼食べに行こう!!お腹ペコペコだよ!」
「フッ虹夏…卑しい人」
「オメーに言われたくねんだよオメーに!」
流れるようにリョウ先輩にキャメルクラッチをかます虹夏先輩をみて苦笑い。いつもの流れである。はあ。明日から学校か。まったく今の時間というのが惜しいな。江の島の海に沈んでゆく夕日を見ながらそんなことを1人こぼすのだった。
江の島旅行の最後にはしらす丼を食べた。これがまた得も知らず美味かった。ゴッチじゃねーけど明日から学校か〜ヤダな〜。
皆々様ありがとうございます!評価うれしいです!感想も欲しいのです!ここがアカンとか!もっとこここうしろよとか!読んでいただいた上にぶつしけなのですが、なにぶん駆け出し!今月中に小説書き始めたばかりのクソド素人なのでわからないことだらけ!なのです!なにか感想をいただけますと助かります!マジで!
片瀬江ノ島駅には等身大のぼっちちゃんのあれなんてーんだ?タペストリー?が居ました。かわいかったです!