【完結】 ギター爪弾きのバラッド   作:はま0821

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ま、まさかのインフル…!気をつけろみんな!コロナもきついがインフルはその2倍キツイぞ!もちろん諸説あるがね!てゆーかここまで原作寄りにお話を作ってきたのに文化祭前にこの話をやり忘れるという失態…!廣井さんすいません!お詫びにこんな話を作ってみました!


21 アフターダーク(偽)

 

 

ふうむ…日差しが眩しい。10月も後半だというのにまだ暖かいな。おはこんばんにちわみんなのギターバラッド、青木遥です。

 

今日はなんか結束バンドのみんなはゴッチのギター新調に付き合って御茶ノ水かなんかに行くらしい。

 

俺も行ってもよかったのだが、最近気付いたが、どうやら俺は1人で行動するのが好きなようだ。

 

バイトなしの休日。ガッコが終わって特に何もするでなく新宿の街をブラブラしていた。

 

…思えばなぜ、新宿を。よりにもよって新宿を選んでしまったのか。ここはあの女のホームタウンではないか。バッタリ出くわす可能性も0ではない。だが…この東京だけで1000万人は人がいるのだ。その中で2人が示し合わせたかのように出会うなんてそんなんもう運命じゃん。

 

などと俺は軽く考えていた。そして…失念していたのだ。かの女は、一時ではあるが賭け事で元手1万から、8万まで増やす豪運の持ち主であると。

 

「………………………………」

 

いた。なんか知らないけどいる。まるで地面が無二の親友であるかのようにべったり貼り付き、女はいた。何やってんだあれ。…トラブルの香りがする。このまま行き過ぎる訳にもいかんよな〜。…はあ。めんどくさ。

 

「ちょっと…。姉御。なにしてんすか往来の真ん中で。蹴っ飛ばされちゃいますよ?それともその排水溝が恋人だったりするんすか?」

 

「あう…やっべぇ飲み過ぎた…水…水を…」

 

「まったくおんなじセリフをどっかで聞いた気がします。はあ…分かりましたよちょっと待っててください」

 

マップで近くのコンビニを探し当て、しじみ汁とオニギリ。頭痛薬と2リットルの水を購入。俺も少しは現代人らしくなってきたかな?などと思いながら姉御のもとに戻ると。

 

「いい加減にしろ廣井こら!恥ずかしいだろせめてFOLTの中で倒れろ!」

 

「きくり〜大丈夫デスカ〜?」

 

2人のお姉さんが姉御を取り囲んでいた。なので取り敢えず。

 

「姉御の知り合いの方ですか?」

 

声を掛ける。2人はこちらに振り返る。何とか姉御を立たせようとしていたのは、黒髪にショートカットの、スカジャンを着こなした女性。そしてもう1人。長い金髪に派手な着物を個性的に着崩した女性。

 

「…えっと。君は…?」

 

「失礼しました自己紹介が遅れました。自分青木遥と申します。下北沢は秀華高校に通う1年生です。廣井さんとは多少縁がありまして、今日行き倒れてるのを発見したものですから、そのまま行き過ぎるのもどうかと思い、こんなんを用意しました」

 

そして、持っていた袋を手渡す。

 

「あ、ああ…。ご丁寧にどうも…。岩下志麻。コイツのバンドでドラムスを担当してる」

 

「私は清水イライザ!イライザでイーヨ!遥くん!」

 

なるほどこの方々がSICK HACK。新宿でワンマンを成功させる、姉御が誇るバカテクバンドの皆さんか…。

 

ホント、姉御はこんなじゃなきゃ手放しで尊敬できるのにな。

 

てか。なんか岩下さんは店長に雰囲気が似ているな。自分の面倒をなんだかんだで見てくれそうな人を惹きつけるフェロモンでも出してんのかなこの人。

 

「…うお。頭痛薬まで入ってる。…至れり尽くせりだな」

 

「しじみ汁とオニギリで胃酸を落ち着けてから飲んでください。それは即効性ですんでわりとすぐ楽になると思いますよ。水もたっぷりあるんで水分補給も忘れずに」

 

「手際すごっ。何?こういう仕事やってた?」

 

岩下さんに問われる。んなわけない。ただ、酔っぱらいの扱いには一家言あるだけだ。

 

「…しかし。コイツが起きて歩かないことには…」

 

「きくり〜!マイスイートホームFOLTまで後少しデスヨ〜!お願いがんばッテ〜!」

 

ふむ。

 

「何処かに運べばいいんですか?」

 

姉御の腰に手を回し、肩に担ぎ上げる。軽っ!?なんだこの人、羽みたいだ。

 

「申し訳ない。誰かギグバッグもってくれます?担ぎにくい…」

 

「あ、ああ。申し訳ない」

 

岩下さんに俺のギグバッグを持ってもらう。どうもすいません。

 

「えっと。高1っつってたよね…。頼りがいあるね。よく見たら二の腕も太いし…なんかやってんの?」

 

岩下さんからそう問われる。

 

「鍛えております。毎朝。将来崖に捕まってる女の子を片手で引き上げられるような男になりたいので」

 

「わー!アニメの王道デスネ!」

 

イライザさんが反応してくれた。分かってくれますか!男はいつまでもカッコいいシチュエーションを夢見がち。

 

どうやらFOLTというホームのライブハウスに運びたいらしい。

 

ホントは姉御の家に放り込みたいが遠いゆえ一時緊急避難というわけだ。ちなみに姉御は昨日の夜9時からずっと飲み通しだそうだ。そらこうもなるわな。

 

「うげぇ〜遥く〜ん。お慈悲を〜。肩が、…肩が揺れるぅ〜」

 

投げ捨てようかなこの酔っぱらい。

 

「…すまん。そんなんでも一応うちのエース…なんかあると困る」

 

「イロイロ立ち行かナイネー!」

 

まったく。つくづく面倒見のいい人達に囲まれたもんだ。コレも廣井の姉御の人徳か。…肩で吐かれると面倒だ。少し急ごう。

 

 

 

 

SICK HACKの皆さんを連れ立って新宿をゆく。もうそろそろライブハウスFOLTに着くようだ。

 

ふう〜、多分、まだ大丈夫そうか。間に合ったみたいだな。

 

「遥くん…」

 

姉御。よく我慢しましたね。もうゴールみたいですよ。

 

「ごめん排水溝探してうっぷ♡」

 

「おおっとそうはいかん!」

 

先ほどわざわざ中身を抜いておいた空のコンビニ袋を姉御にあてがう。即席エチケット袋だ。危ない危ない…!

 

おぼろろろろろっ!?

 

「はぁ〜大の大人が高校生に見せていい醜態じゃないんだよなぁ〜。なんか、ごめんな青木くん。付き合わせちゃって」

 

「いえお気になさらず。一応。いちおう姉御には恩があるので」

 

岩下さんに労われたので返しておく。俺は恩以上の働きはしてるよな絶対。

 

ようやくだ。この階段を降りれば、ライブハウスFOLT。マジ大変だった…。左肩に姉御を担ぎ、右手にはたっぽたぽに中身が詰まったコンビニ袋。最悪だ。まったく最悪の気分だ。ライブハウスに入るや否やこの酔っぱらいを下ろせる場所を探す。そして、置く。

 

「ふうっ!疲れた〜…」

 

「あ!ありがとう!ホントに!本当に助かった!女2人じゃ運べないからさ!」

 

岩下さんから謝意を伝えられる。だが今はそれどころではないぞ!

 

「感謝の前にトイレの場所を教えてください…。まだ終わってない。この右手の特級呪物を処理しなくては…」

 

「ソレならアッチネー!」

 

「い、いいよ!それくらいわたしらがやるって!」

 

「いえここは乗りかかった船…お任せください。それに岩下さんやイライザさんにこれを渡す際手が滑って悲劇が起きる可能性もなくもない…」

 

「うっ…!」

 

「おー…!ジーザス!」

 

さすがに嫌そうだな2人とも。その隙にトイレへと呪物を流しに行く。ついでに手を洗お。めちゃくちゃ洗お。

 

呪物を流し、世話になったコンビニ袋を軽く洗って捨て、めちゃくちゃに手を洗い。ようやく一息。姉御達のもとへ戻る。キツかった。過去1かも知んない。精神的に考えて。

 

「す、すまない!ほんっとうにありがとう!な、なんかお礼させてくれ!」

 

「ワタシもお礼言います!サンクス遥!潰れた時のきくり重いノヨー!」

 

SICK HACKの2人に改めて礼を言われる。いえなに。途中からは俺も必死でしたよ。なぜか片手に呪物抱えて姉御抱えて歩くことになってましたからね。ダイオアデッドでしたよまさに。

 

ふう…。ようやく冷静に自分が今いる場所を見ることができる。姉御の。そしてSICKHACKの本拠地。新宿FOLTだ。

 

…広いな。そしてSTARRYよりさらに全体的にアングラなイメージ。ライブハウスらしいライブハウスといえよう。などと思っているとテーブルに飲み物が置かれる。

 

「…え?」

 

唐突な出来事に呆けていると、岩下さんから声が掛かる。

 

「今日はホントに申し訳なかった。本来わたしたち大人がすべきことを全部やらしてしまった。何もできないが、せめてゆっくりしてってくれ。時間は大丈夫か?」

 

「え、ええまあ。このあとは帰って掃除して寝るくらいしかやることないんで」

 

「よかった。わたしたちは今日出ないんだがライブのチケットも取れる。見ていってくれるか?」

 

「そんな。悪いですよ、姉御に迷惑かけられるなんて今日限りじゃないし。それに受けた恩義のほうがデカいですから」

 

大人だなぁ〜俺。確実に俺の働きのほうが上だがそれを言うとたぶん拗れる。なのでこう言っておく。

 

「うっ…うえ〜なに〜?どこここ〜?」

 

廣井の姉御がお目覚めだ。すると岩下さんの顔からどんどん感情が抜けていく。うわあ。人の笑顔が怖いと思ったのは久方ぶりかも!

 

「ちょっとごめんね青木く〜ん。できれば向こうらへんに視線逸らしといてくれると助かるな〜?」

 

仰せのままに!

 

「よく起きたな廣井ゴラ!あれもこれもそれもどれもみんなお前のせいだ!」

 

「いだだだだ!全部ワタシのせいだってのは違うんじゃないのかなだだだだ!!」

 

「志麻!ボディを!ボディを狙うノヨ!ボディがガラ空きダゼ!」

 

目を覚ました廣井の姉御に、岩下さんの強烈なアームロックが炸裂し、イライザさんがそれを囃し立てる。なんというか。ガールズバンドの皆さんは、ベーシストがドラムスにプロレス技かけられなきゃならない法律でもあるのか?

 

「いだだだだ!志麻!勘弁して!なんかやらかしたんだろうけど堪忍して!にんにん!」

 

「まだ余裕ありそうじゃねーかゴラ!」

 

さらに岩下さんが技を展開する。ああ〜キョ〜レツな卍固めだ。あれ以上キマると身動きが取れなくなるぞ。などと心の中で実況していると、不意に後ろから声が掛かる。

 

「えっ…。うそ、まさか…!青木、くん?」

 

おん?なんだ。聞いたことある声だな。そう思い声がした方に視線を向けると。

 

黒を基調としたシックなファッションに帽子。切れ長の目に、ツインテールで纏めた茶髪…。ライブハウスに相応しい、ロックガールがいらっしゃったが、声だけでなく、俺はその顔にも、見覚えがあった。

 

「…まさか。大槻ヨヨコ、さん?」

 

「…やっぱり青木くんだ!な、懐かしいわね何年ぶり!?」

 

「ホントにヨヨ先輩か!?ええっとたしか小4の時だから…!6年ぶりくらいです!お久し振りです!」

 

「か、堅いわよ!あなたとわたしの仲じゃない!」

 

久方振りの再会を喜びあっていると岩下さんから卍固めを受けた状態のままの姉御から声がかかる。

 

「んえ〜?2人は知り合い〜?」

 

「うす。小学校の頃少し。自分が上級生に絡まれてたとき助けてくれたんですよ。ヨヨ先輩が」

 

姉御に簡単に、馴れ初めを説明していると、俺の様子をしげしげと観察していたヨヨ先輩が声を漏らす。

 

「…でも、青木くん。ずいぶん雰囲気変わったわね…背も大きくなってるし…逞しくなった感じ?」

 

ヨヨ先輩に褒められたぞ。単純に嬉しい。あなたの姿に憧れて、ギターに真面目に取り組んだり、体を鍛え始めたまでありますからね。

 

「あの頃俺は守られるだけだった。だから鍛えました。今度は誰かを守れるように。なので…ヨヨ先輩。今度は俺が貴女を守ります」

 

どっかーーーーーーーーーん!!!!!

 

またも発動!青木遥のリトルフラワー!これで本人は何も意識していないんだから恐ろしい!朴念仁爆弾!これでリトルフラワーとでも読まそうか!?

 

 

「えっえっ!?な、なにそれど、どういう意味かしら!?」

 

「一度ヨヨ先輩には助けてもらいました!なので今度は俺が助けます!何か困ったことがあったら言ってください!力になります!」

 

「あっあーあー!!なるほどそういうことね!あっぶねー先走るとこだった…」

 

チィ!!なんかイライザさんの方からとんでもない舌打ちが聞こえる。えっなに!?

 

「ああ〜幸せスパイラルぁ〜」ぢゅー!

 

「あっコラ廣井てめ!いつの間におにころを!?」

 

「ええ〜い!あんな青春の1ページ見せられて飲まずにいられるかってーの!青木くんと結束バンドの文化祭も最高だったしさ〜!そりゃ朝まで飲んじゃうよね〜って」

 

「…まっいいか。わたしにもくれ。おにころ」

 

「うぇぇ!?なに志麻珍しいじゃん!?雪が降るなこりゃ!」

 

「なんか…うん。あのワチャワチャ見てるの下手なロードムービー見てるより面白い」

 

「ワタシにもチョーダイきくり!当てが外れタヨ!」

 

ぢゅー!✕3 パック日本酒を3人で吸う!

 

「…なんだあれ」

 

「あ、あはは…。おかしいな、姐さんが変なのはいつものこととして岩下さんやイライザさんはいつもは止めに回ってくれるはずなんだけど…」

 

何やらおかしくなってしまったSICKHACKの面々を見ながら頭に疑問符を浮かべていると。

 

「あれあれ〜なんかうちの大将が男の子に告白されてるみたいな話を聞きつけてきてみれば〜、どしたんすか、どんどんいってくださいどんどん」

 

「あっあくび!?なにを頓狂なことを言ってるのよ!?」

 

「ええ〜こういうのは、少しずつ行くべきよ〜。急いては事を…なんて話もあるし」

 

「幽々はぁ〜わたしの守護霊たちが言うように〜楓子の意見に賛成〜」

 

ヨヨ先輩の後ろから個性的な女性の面々が姿を現す。

 

「え〜っと。皆さんは…」

 

「あっすいません。彼女さんと今バンドを組まさせてもらってます長谷川あくびと申します、わたしたちは気にせず、ささ、どうぞ続きを!」

 

銀髪に黒マスクで口元を隠した女子が何処か楽しげに続きを促す。…てか、彼女?誰が?

 

「ちょっとあくび!?あなたさっきから何か勘違いしてない!?」

 

「えっなにがっすか!?公衆の面前で男の子に、君を守る。って言われたんすよね!もうそんなん告白じゃん!」

 

「うぅ〜!そ、それは!そうなんだけど違うっていうか…!」

 

なにか俺から少し離れた場所で2人が喋っているが、内容がよく聞こえない。だが、ここで俺はここがライブハウスであること。ヨヨ先輩がギグバッグを背負っていることに気付く。

 

「…まさか。ヨヨ先輩も音楽を…?」

 

「…わたしも?えっ!?てことは青木くんも…!?」

 

正確に言えばヨヨ先輩と会った頃には俺はギターを始めていた。だが、学校にはギターを持っていってなかった。ヨヨ先輩はあの頃は音楽を始めてたわけではないと思う。あの後始めたのか。

 

「す、すまんSIDEROS!その青木遥くんは恩人なんだ!わたしたちは今日ライブの予定がない!かわりに新宿FOLT流のもてなしをしてあげられないかな!?」

 

「え〜大丈夫だよ志麻が謝ることじゃないって〜」

 

「誰のせいでわたしがここまでへりくだってると思ってんだコラ!」

 

「ま、マアマア〜志麻もそろそろ許しタゲて〜!」

 

どうやら俺はこれからもてなしを受けられるらしいな。まあ、それはそれとして…!

 

「ヨヨ先輩。音楽始めたんすね」

 

「えっ!?う、うん…」

 

「大槻ちゃんね〜凄いんだよ〜若いのに並み居るバンドを押し退けて今やこの新宿FOLTの筆頭さ〜!運がいいよ少年!ただで見れるなんてさ!」

 

「まあお前のせいなんだけどな全部」

 

「うう〜!今日は志麻がずっとチクチクだよぅ!イライザ〜助けて〜!」

 

「きくりは1回胸に手をアテテ考えて見るとイーヨー」

 

「そんな!イライザまで!?」

 

ダメだなあの女は。しかし…凄いなヨヨ先輩。新宿FOLTなんていったらライブハウスの中じゃ知らない人いないぐらいの有名なハコ。そこの筆頭とは。努力したんだな…俄然今日のライブが楽しみになってきた!

 

「ヨヨ先輩!なんか俺今日のライブ見せてもらえるみたいなんで!客席で応援してます!頑張ってください!」

 

「えっ!?青木くん、ライブ見てくれるの…!?う、うん!頑張る!ほら行くよみんな!」

 

ヨヨ先輩がバンドメンバーの人達に声を掛けて楽屋の方に引っ込んでいく。

 

「んじゃ〜彼氏さん。失礼するッス。今度ゆっくり馴れ初めとか聞かせてほしいっす!」

 

確実に何かを勘違いしているであろう。…いや、勘違いだと薄々気付いているが、それはそれとして全力で楽しみそうな…。野次馬根性全開のマスク女子さんが実に楽しそうに去っていく。それと同時に岩下さんが、椅子に座るように促してくれて。

 

「ささ。青木遥様。今日はここでは貴方様は王様です。なんなりとご用命を」

 

「なになに〜なんかの遊び〜?」

 

「マジでそろそろ取って食っちまうぞコラ」

 

「きくり〜ホントになんにも覚えてなイノ〜?ダイブ遥くんにお世話になったんダヨ〜?」

 

志麻とイライザ説明中…。

 

 

 

 

 

「ほんっっっっっっとに申し訳ありませんでした」

 

きくり姉御の土下座。そんな大袈裟ですて。

 

「なんか土下座の角度が気に入らねぇんだよな…なんか…浅いって〜か。どうですか青木様」

 

「きくり!もっと反省を態度で示シテ!」

 

「うわああん!今日は2人が厳しい!遥くん助けて!」

 

「まあまあお二人とも。それくらいにしてあげてください。それよりここでのヨヨ先輩の活躍とかを教えてくださいよ!」

 

「あ〜。なんか、こだわりはすごく強い子だね。1番じゃなきゃ意味ない!ってぐらい。あと暴君が過ぎるからメンバーが入れ替わり立ち替わりしてるとか」

 

と姉御。マジか。なんか俺の知ってるヨヨ先輩のイメージとだいぶ違うぞ!?そんな恐ろしげなイメージじゃなかったんだけどな。

 

「てかてかぁ〜2人の馴れ初めとかを聞かせてよぉ〜。どんな感じで出会ったのぉ〜?」

 

「小学校の時です。今みたいに俺は体も大きくはなく、あんま友達もいなかったんで教室の隅でぼちっとしてました」

 

「表現新しくて草。ほんでほんで〜?」

 

「何かが気にくわなかったんでしょうね。上級生のグループに俺が絡まれちゃいまして。その時助けてくれたのが大槻さんです。当時の俺と比べても、背は小さいしとても男のグループに立ち向かえるような人には見えなかったんですが…その時に思ったんです。人間は体の大きさや顔の良し悪しじゃない。心の在りようだと。その時の彼女の姿に憧れて、今度は頼るだけではなく頼られるような男になろうと。ギターに本気で取り組み始めたのも、鍛え始めたのも。思えば彼女がきっかけです。恥ずかしいんで本人には言わんでくださいよ…?」

 

「…偉いっ!」

 

「うおう!?岩下さん!!?」

 

「麗しきかな青春の1ページ!んでも隠すことはなくない〜?大槻ちゃんも喜ぶよきっと!」

 

「ノンノン!きくりまだまだわかってナイネー!こういうのは言わずに宙ぶらりんにしといたほうが物語が上手く展開したりスルンですヨー!」

 

「イライザは誰目線なのさ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

場面移って新宿FOLTの楽屋。個室に入るや否や、わたしこと大槻ヨヨコは、先ほどから何か勘違いして面白がっているメンバー達からあらぬ詮索を受けていた!

 

「ほんで!さっきの渋イケメンとはどんな関係なんすか!?慈悲なく遠慮なく満遍なく喋ってください!」

 

「…あくび。あなた半分分かっててからかっているでしょ…」

 

「ギクゥ!?いやまあ、もう半分は真面目に気になってますよ!ずいぶん親しげじゃないですか!どんな馴れ初めなんですか!?」

 

面白がってること認めやがったな。全く…。食えない後輩である。すると、シデロスの他のメンバーも色めき立つ。

 

「わたしも気になります!ヨヨコ先輩に彼氏さんがいたなんて初耳ですぅ~!」

 

「楓子!?たっただの幼馴染みよ!?誰が彼氏よ誰が!?」

 

「え〜違うんですか〜?なんか仲良さそうでしたよ〜?」

 

この子の名前は本城楓子。アングラな雰囲気のこの新宿FOLTにいそうにない、お嬢様系ファッションのゆるふわ女子。ちなみに、我がシデロスではギターを担当している。

 

「ふふふ。わたしの守護霊達は勘違いだよ〜。って言ってるんですけどぉ〜、面白いから放置〜」

 

「わ、分かってるなら助けなさいよ!幽々!」

 

「わたしもあの人とヨヨコ先輩の関係気になるしぃ〜」

 

こっちは内田幽々。我がシデロスではベースを担当している。事あるごとに嘘か誠か。霊感があることを見せつけてくる、黒を基調としたゴスロリ系ファッションに身を包んだ、恐ろしい後輩。ゆ、幽霊…。嫌だ!怖すぎる!だ、だが、それはそれとして、四面楚歌…!逃げ場なしか!?…仕方ない。

 

「えと…。小学校の時だったかしら。私の不注意で掲示されてた同級生の作品に傷をつけちゃった事があってね。その時に庇ってくれたのが青木くん。自分がやりました!申し訳ございません!って先生に。そしたらそれが悪い形で伝わっちゃったみたいで。青木くんが上級生に絡まれることになっちゃって。それはなんとかわたし助けなくちゃって思って必死だったんだけど…。恩があるのよ。ずっと昔から」

 

「…えっそれだけ!?」

 

「それだけ!?それだけってなによそれだけって!」

 

「…はあ〜。しょせんヨヨコ先輩…。浮いた話の1つも期待したわたしがバカだったかぁ〜」

 

おのれあくび。最早楽しんでいるのを隠す気ゼロのようね!

 

「喧嘩の大安売り市はここね!一つ買うわよ!!」

 

「わわわ…!ちょっと皆さん落ち着いて!」

 

「ルシちゃんベルちゃんも今宵は血が騒ぐ…!って言ってます〜」

 

「厨二病なだけじゃないのそれ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

再び場面移って観客席。青木遥とSICKHACKの面々。

 

「いやーしかし。今日はごめんね遥くん。いろいろご迷惑をおかけして〜」

 

「もういいですって。でもなんでそんな前後不覚になるほど飲んでたんです?」

 

「…」

 

「姉御?」

 

「とても…眩しかったから」

 

「とても綺麗な!美しい風景がわたしの前に広がってたから!結束バンドも、キミも!仲間と息を合わせておんなじ方向向いて練習して!それを文化祭なんて華やかな場面で披露して!!ああわたしにもこんな時期あったのかな!?わたしも普通に生きられさえすればこの時期を思い返すたんびに忸怩たる思いせずにいられたのかなって思ったら!気が付いたら朝まで…えへへー」

 

「青木くーん。アホの言葉はまともに取り合わなくていいよ〜」

 

シクシクと擬音がつきそうな様子でオニコロを吸う姉御。業が深いな全く。現在ライブも佳境を迎え、次はいよいよSIDEROS。トリ任されてるってすごくね?

 

「おっついにでてくるなー!大槻ちゃん!遥くん!見てあげてね!わたしの自慢の後輩だからね!」

 

「それ本人に言ってあげなよ…なんだかんだであんたのこと1番尊敬してるの大槻ちゃんだろ」

 

「えー!?志麻は心配性だなぁ!ちゃんと言ってるよぉ!…言ってなかったっけ?」

 

これはひどい。お。SIDEROSの見参だ。俺はヨヨ先輩を見ていた。臆病そうに見えた彼女。引っ込み思案に見えた彼女。そんな昔のイメージはもはやなく、ステージの上の彼女は、バンドマンだった。ヨヨ先輩と目が合ったとき、彼女はギターのネックをこちらに向けてくれた。

 

「おっファンサじゃ〜ん。ケッコ〜気に入られてるよね遥く〜ん」

 

「だといいのですが。3〜4ヶ月くらいしか一緒にいなかったんで忘れられててもおかしくないかと…そろそろ始まりそうですね」

 

ドラムスの長谷川さんのスティックカウントから曲が始まる。さてさてお手並み拝見…。…!!うお。うおおお!?すげえ!?ハードロックよりもさらに尖りに尖ったヘビィメタルな演奏の音圧に圧倒される!!

 

ギターはロックよりもさらに歪んで太い低音を唸るように鳴らし!ドラムスは、女の子が鳴らしてるなんてとても信じられねえような、音の洪水の中でもハッキリと聴こえるようにリズムを刻み!!ベーシストの演奏とともにシデロスの音楽のベースを創り出す!!

 

メタルはボーカルをあまり重視せず演奏のテクで勝負することが多いから(諸説あるぜ!)バカテク演奏者を輩出することも多いみたいだが、ヨヨ先輩の声は楽器に負けてないな!すごく力強い歌声だ!

 

そして、…ここまで上手い人が同年代にまだいたとは!ゴッチと同じ…!?いや!それ以上かも知れねぇ!ギターが半端じゃなく上手い!バカテクって奴だな。何もかもがレベル高くて正確だ。そして…!速い!!ドラムももう1人のギターの人もベースも。レベルが低いわけじゃないが、ヨヨ先輩が1人レベルとしちゃ抜けてるな!いや凄いわ!

 

ライブも終わり、興奮冷めやらぬ頃、岩下さんがこうおっしゃった。

 

「会ってきたら?大槻さんに。積もる話もあるんでしょ?」

 

「い、いいんですか!?」

 

「ああ。裏で話し通しとくからさ。おら廣井。お前も言ってこい。大槻ちゃんに尊敬してもらってんだから曲がりなりにも。何かしら返してこい」

 

そういうわけで姉御と2人でSIDEROSの楽屋に赴く。

 

「ねっ姐さん!そ、それと…!青木くん…!」

 

「うちらお邪魔すか〜?」ニヤニヤ

 

「なんでよいなさいよ!全然邪魔じゃないわよ!」

 

しばらくシデロスの皆さんのワチャワチャを見守っておく。すると唐突に隣の姉御が動いた!ヨヨ先輩の頭に手をやりナデナデ。

 

「…えっ!?わっわあ…!」

 

「大槻ちゃんはいつも頑張ってて偉いよ〜。凄い凄い。絶対大槻ちゃんは売れるからねぇ〜このあたしが保証するよ!」

 

「ねっ、姐さん…!!」

 

「そうそう。きっと結束バンドとおんなじくらいにねぇ〜」

 

ピシリ。うん?なんだ?一気に空気が冷えたような…?

 

「姐さん。そういえば最近下北かどっかに気になるギタリストがいるって言ってましたよね。名前なんでしたっけ?」

 

「うえっ!?えーと。後藤ちゃんとそこにいる青木くん…」

 

いきなり雰囲気が変わったヨヨ先輩にビビりながらも正直に答える姉御。つーか。ナチュラルに巻き込まれなかった今!?

 

「なるほど…青木くん…!あなたが!わたしと姐さんの蜜月を邪魔する下北沢のギタリストの1人だったとは!ならば…!今日からあなたとわたしはライバルよ!敵に見せるものなんざないわキェーイ!失せなさい!」

 

ドッタンバッタンと。瞬く間に楽屋を追い出されちまった。

 

「なんなんだまったく!?いきなり態度が変わったな!?」

 

「ごめんね〜大槻ちゃんいつも変な子だけど今日はいつにもまして変だったな〜なんかあったのかな〜」

 

十中八九アンタが原因だろうがな。姉御との蜜月がどうたら言ってたし。くそっ!なぜ俺のまわりのバンドやってる女はすべからく思考がロックなんだよ!

 

「ち、ちょっと〜なにしてんすかヨヨコ先輩?彼氏さんビックリしてましたよ〜」

 

「誰が彼氏よ誰が。…ふんっ!わたしと姐さんの蜜月を邪魔するハエを一匹払った…ただそれだけよ」

 

あっあああああああ〜!!なにしてんだこのアホつきボケコ!!でっでも!わたしのここでのキャラを突き通すためにはああするしかなかったの!青木くんごめん!またいつか会いに行ってフォローするから今日は勘弁して!ごめんなさい〜!!

 

「あっおかえりどうだった?」

 

「なんかあんまり歓迎されてないみたいなんで帰ります」

 

「なにぃ…!?どーせ廣井。お前がまた何かやったんだろ」

 

「ひぃっ!?こここ今回はなにもしてないよほんと!」

 

日頃の行いが悪いと大変だな。真っ先に疑われてる姉御をフォローしておく。

 

「岩下さん。今回ばかりは姉御はなにもしてません。…まあ。日が悪かったんでしょ。今日は楽しかったです。どうかこれで水に流して、以降は両者気にせずと行きましょう」

 

「ほ、ほんとか?気とか使ってないか?」

 

「滅相もない。…では失礼します」

 

踵を返して出口へ向かう。

 

「イヤ〜中々の男ぶりネ!」

 

「ホントだよ…。あれで16か…自信なくなってくるわ。後で別に菓子折り送らなきゃ」

 

「ほんとに志麻はマメだよねぇ〜」

 

「誰のせいでマメになったと思ってんだコラ!」

 

後ろで誰かの断末魔が聞こえたような気がしたが気にしないでいよう。しかし…ヨヨ先輩。元気そうでよかった。

 

…でもな。俺はやはり、新宿よりも、下北沢のほうが落ちつく。結束バンドがいてくれる、下北沢のほうが。

 

などと考えつつ、いつの間にかすっかり日が落ち本来の姿を見せつつある新宿の街並みを駅の方角へ足を進めるのだった。

 

 

 




オオツキンと青木遥には共通点があります。渡した恩より受けた恩の方をよく覚えてるという点です。だから2人の認識に微妙にズレがあるんですね。

今回新たに高い評価を頂きました!

裏口様 完全無欠のボトル野郎様

この小説を高く評価して頂きありがとうございます!
引き続き頑張ります!

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