【完結】 ギター爪弾きのバラッド   作:はま0821

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ぽいずん姐さん登場。味のあるキャラで俺は好き。

いつの間にか喜多さんと後藤さんの互いの呼び方が変化してます。この作品では後藤さんはダイブしてませんが、順調に仲良くなった結果です。最終的には後藤さんは喜多さんのこと郁代ちゃん。と呼びたい。うおお!ぼ喜多!ぼ喜多!


23 眩き闇

 

 

柔らかき秋の陽…さざめく風の薫が心地よいわ…。どうも皆さんご機嫌麗しゅう。下北沢のグッドプレイヤー。ギターバラッド略してギバちゃんだよーん。

 

今日も今日とてバイトか。その前に学校だけどな。…うん?なんだあの子。見るに中学生ぐらいかね。そんぐらいの女の子がうちの学校を覗き込んでる…。なんか変な格好してるな。首に包帯巻いて…。ケガしてんのかな。ヤミ系ファッションってやつ?よく分からんから苦手なんだよな〜。…いやいや。よく分からないから嫌い。なんてのは老人の思考だ。俺も腐っても若者。思考は柔らかくいきたい!

 

学校見学?も〜そんな時期か。いやでも今日は別に学校の公開日じゃないな?

 

兄貴やお姉ちゃんでも待ってんのか?いやいや今は朝。登校したばかりだろ。いろいろと考えていると、その子と目が合う。あっやべ!

 

「あっあの!ちょっといいですか!?」

 

なんじゃい。年の割に礼儀はしっかりしてんね。

 

「と、突然すいません!あたし、音楽のライターやってるもので!とてもギターがうまい人がこの学校にいるって聞いて!取材に来たんです!」

 

ライター!?てことは社会人なのか。中学生くらいにしか見えないな。それはそれとして、お嬢さんお目が高い!

 

「それならあなたの目の前に。今は無名ですがいずれ下北沢ナンバーワンのプレイヤーと呼ばせてみせる…今はただのグッドプレイヤーです」

 

「えっ!?あっ…イヤでも…なんかたしか女性って…言ってたような…」

 

けっ。

 

「どーぞー。他に聞きたいことはー!?」

 

「露骨にやる気なくしてる!えっえっと…なんか留学生とかでご…?なんとかさんて、とにかく頭にご、って付くらしいんですけど」

 

頭にごがついてギターが上手くて女子。あいつか。

 

「お嬢さん。俺そいつ知ってる。たぶん」

 

「うそっ!?」

 

「んでもなんでまた?わざわざ取材に?」

 

「…わかんない。勘かな。なんかビビッときたのよ、上がってきそうな。き、君!何か知ってるなら教えて!」

 

「教えてあげたらなにくれる?」

 

「うぐっ!?」

 

「俺だって慈善で生きてるわけじゃねぇ。俺に得がなきゃ動かねぇ。当たり前だろ?」

 

「………喫茶店奢りくらいなら…」

 

「………まあいいか。案内頼むぜ。嬢ちゃん」

 

「むぐっ!?あのね!わたしコレでも貴方よりたぶん歳上よ!」

 

「でしょうね。途中からなんとなく。次からは言葉遣いに気を付けますよ。おねーさん?」

 

「…なんか舐められてるよーな…」

 

 

 

 

所変わって喫茶店。

 

 

 

 

 

「ふむ…ぽいずん♡やみ…」

 

渡された名刺に書かれたペンネームをしげしげと読む。

 

「改めて読まないでよ恥ずかしいじゃない…」

 

ならなぜそんな珍妙なペンネームで活動を…と口に出かけたがぐっと飲み込む。今関係ないからな。

 

「コーヒーだけじゃ物足らんな。チーズケーキ頼んでいい?」

 

「うう。で、できれば、今月ギリギリなもんで…」

 

「頼んでくれたら有用な情報を教えますよ?」

 

「お姉さん!チーズケーキ一丁!」

 

チョロいもんだぜ。だがなぜゴッチに取材?確かにこないだの文化祭のライブは高校生にしちゃ上手かったろうがプロのライターの目に留まるようなもんじゃなかったはず…。

 

「これでいいのよね!?そろそろ教えてちょうだい?」

 

「…まあいいか。俺から条件が1つ。情報の提供者。つまり俺の存在を明かさない事。これを守れば情報を渡してもいいよ?」

 

「…わかったわ」

 

「ならば。校門の見つかりにくいところに隠れて、ピンクジャージの少女を探してみな」

 

「ピンク…ジャージ…?」

 

「ああ。たぶんソイツがあんたが探してる奴」

 

「ほんと!?あ、ありがと!!」

 

言うが早いか女は席を立ち喫茶店を後にする。…あの女ちゃんと勘定していっただろうな…。

 

後から出ようとしたとき確認したらちゃんと払われてた。よかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひとりちゃーん!一緒に帰りましょ!」

 

「あ、お疲れ様です喜多ちゃん…いっ一緒に行きましょうか…」

 

喜多郁代と後藤ひとり。この一見まるで共通点なく友達に見えない2人は、実はおんなじバンドの仲間。今日も今日とて、バンドの活動費を稼ぐために、アルバイト先である、ライブハウスSTARRYに向かうのだった。

 

「今日もバイト!楽しみね!!」

 

「あっそうですね…」(全く楽しみじゃない…)

 

いつも通りの他愛ない会話。後藤ひとりは喜多郁代に対しては心を開いているため、安心して会話に応じる。だが。そんな後藤ひとりの心の平穏は、ある乱入者に破られる!!

 

 

「こんにちは!ちょっとお時間いいですか!?」

 

「!?!?!?!?!!!!???」

 

「えっ!?」

 

「はじめまして!わたし、音楽雑誌とかでライターをしている、ぽいずん♡やみ!という物です!」

 

「は、はうう…」ぷしゅるるる…。

 

「ひとりちゃんが死んじゃった…」

 

「いやそんなすぐ死なないでしょ」

 

「確かに。でもウチのコ少し繊細で。大きな音とか環境の変化とかに反応して殻を閉じる性質があるんです…」

 

「ホタテ貝かなにかで?」

 

「…わかりました。この子が閉じこもってる間はわたしが答えられる範囲でお答えします!」

 

ふむ。たしかこの子もこのピンクジャージの子とバンド組んでる子のはず。有用な情報が得られるやも…!ぽいずんやみは密かにほくそ笑んだ。

 

「今ですね。下北系のバンドの特集をやろうと雑誌で企画がでてるんですよ。それで若くて元気がいい下北系バンドのみなさんにお話聞いて回ってるんです!」

 

「…わたしたち、いつの間にそんなに有名に!?」

 

「高校の文化祭ってね。大体誰かがネットにあげちゃうもんなんですよ。わたしはサラーっと見てたんですけど、なんか目にとまりましてね。そこの方のギターに!」

 

「ひとりちゃんのギターに!お目が高い!」

 

うっ。その言い回し、怖い!なんかトラウマ…ええい!怯むなわたし!

 

「なので取材したいと思い立ち、やってきました!この方は普段はどんな方なのですか!?」

 

「…う〜ん。ひとりちゃん…。変人」

 

「ぐふっ!」

 

「へ、変人」

 

なんかスリップダメージが入ってるわね…。刺激を与えれば目覚めも早くなるかも!

 

「ほ、ほかにはなにかありますか!?」

 

「え?う〜ん…。奇妙奇天烈、摩訶不思議…」

 

「かふぁっ!」

 

ドラえもん?

 

「えっと…どのようなところがでしょう…?」

 

「まず、過度なストレスを与えると胞子になります。このとき出る胞子を吸い込むと思考がネガティブになりますのでご注意を。あと…昼休みになると消えます。どんなに注視していても忽然と。あとは…大勢の人の視線を不意に集めたりするとゲル化しますね」

 

「それはたしかに変人、奇妙奇天烈、摩訶不思議ですね…。じゃなくて!わたしが聞きたいのはギターの腕前ですよ!」

 

「そっちですか!それはもう!とっても上手ですよ!わたしのギターの先生なんです!」

 

…彼が言ってた通り、彼女でやはり間違いなさそうね…!

 

「すみません!そろそろ行かなきゃ!ほらひとりちゃん!いつまでも寝てないの!」

 

不味い。こちらの狙いを察知されたか!?

 

「あっ待って…!」

 

まだ肝心なところを聞けてない!行く手を遮るように前に出る。

 

「すみません!」

 

なかなか運動神経がいい子ね。遮った方向とは逆に足先だけでターン。逃げられちゃった。まあでも。問題ない。

 

「…ふむ。つけていけばバイト先も分かると。チョロいわね〜」

 

 

 

 

 

所変わってSTARRY。

 

 

 

 

 

「おはようございます!」ばたーん!

 

「喜多ちゃんおはよう!…あれ?ぼっちちゃんは?」

 

「あっすいません。わたしが右手に持ってるのがそれです」

 

「そのペラペラが!?コリャまいった。初めて見る形態だねぇ」

 

とりあえずあまり風が来ないところに広げて置いてみる。こう見てみると確かに、ちゃんとぼっちちゃん。

 

「お姉ちゃん!空気入れあったっけ!?」

 

「あ〜?たしかあの棚にあったぞ」

 

「ありがとっ!」

 

ぼっちちゃんの口にチューブを咥えさせ空気を送る。シュポシュポシュポ。少しずつ膨らんでくる。そして何とか元の形に戻った。

 

「あっすいません…ありがとうございます…」

 

「前から思ってたんだけどぼっちちゃんの体ってどーなってんの?」

 

お姉ちゃんも今更だなぁ。

 

「考えるな…感じろ!だよ!」

 

「ああ…?おお。おう」

 

とりあえずぼっちちゃんももとに戻り一息ついていると、またもSTARRYの扉が開かれる。

 

「おっすみんな」

 

「きゃー!リョウ先輩!」

 

「おす、郁代。あ、郁代知ってる?わたしたち実は結構注目されてるかも。なんか今そこで取材みたいなの受けた」

 

「あ!知ってます!わたしもひとりちゃんと一緒のときにそんな感じのやつ受けました!」

 

「えっ!?凄い!ホントなの!?ぼっちちゃん!」

 

「あっへへ…はい」

 

わたしが取材を受けたことを伝えると先輩は顎に手を当てて考え出す。

 

「いや…もちろん取材が来るのは喜ばしいけど、うちみたいな弱小バンドにそこまでの価値あるかな…?…虹夏。どう思う?」

 

「リョウにしちゃ殊勝じゃない?…でも確かに。理由がない気がするんだよね。なんなんだろ」

 

「あっでもその人は、ひとりちゃんを取材に来たって。言ってましたよ」

 

「「ぼっち」」を?ちゃんを?」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

わたしは音楽フリーライターぽいずん♡やみ。跳ねる記事書きまくっていずれは大手の雑誌で記事を持ちたい格好とペンネーム以外は普通のライター。

 

まあ強いてもうひとつ変わってるところを挙げるとするなら、ネットを中心に今活躍中の謎のギタリスト、ギターヒーローさんの大ファンってことくらいかな。

 

それで、これは全く偶然だったのだけど、将来出てきそうなギタリストを探して高校の文化祭の動画を流し見してたとき。ほんとに偶然見つけた。

 

このギター弾く時のクセ。変な桃色ジャージ。使ってるギターの種類も一緒!間違いない…!この子がギターヒーロー!!

 

まさかこんな所で会えるとは!ていうかホントに高校生だったのか!?これは是非とも取材せねば…!だが!先の取材でわかった。

 

彼女はどうやらウサギより臆病らしく、すぐ心を閉ざしてしまう。だが、人間は反省できる。前の取材が失敗したなら次はうまくやればいいのだ。すでに彼女たちのバイト先は押さえた。下北沢STARRY。…ふふふ。さてどうしてくれよう。腕が鳴るわ〜。

 

「はろおう」肩に手ぽんっ。

 

「!…。?!!、?。、。?、!!!!」

 

「そんな驚かんでも。どうです?取材の首尾は?」

 

はぁっはぁっはぁっ!び、びっくりした!!まるで気配が読めなかった!コイツか!あたしの情報提供者!あたしコイツはなんか苦手!歳下なのに腹の底が読めない!

 

「しかしよく見つけましたね。確かにあそこにあなたのお目当ての彼女はいますよ〜」

 

「…付けてきたからね。それはそうでしょ」

 

「店長さんが怖いですけどねぇ」

 

「うぐっ!?ど、どのくらい…?」

 

「どのくらい?チンピラ以上ヤ◯ザ以下ぐらいかなぁ…」

 

おっしそれならイケる。小沢◯志さんみたいな人が出てきたら流石のわたしも泣いちゃうかもだが、ヤクザ以下なんだよね!?その言葉!信じるからね!

 

「なかなか愉快な人ですな。取材頑張って。そろそろバイトなんで行きますね」

 

その男は背を向けたまま歩き出し、ライブハウスへと続く階段を降りていった。つーかあいつも居るのかよあいつ苦手!

 

 

「うぃ〜っす」

 

「あっ!おはよう青木くん!」

 

「おす、遥」

 

「皆さんお揃いで。…ところでもしかしたらもうすぐここに愉快な人物が現れるかもですよ」

 

「それってもしかして取材とかしてくる人?」

 

おっ?喜多さん鋭い。

 

「どうにもギター…。こほん。ゴッチの取材をしたいようで」

 

「…らしいね」

 

「なんでぼっちちゃんだけなんだろうね。ついでにわたしたちも取材してくれれば…。まさか」

 

虹夏先輩はそう言って黙り込む。顎に手をあて考え込んでいるようだ。

 

…俺の勘だが、あのライターはゴッチのネットでの顔。すなわちギターヒーローに用があるのではないだろうか。

 

ぶっちゃけギターヒーローの動画からゴッチであると見抜くのは知り合い程度にゴッチのことを知ってればそう難しくはない。てゆーかまんまだもの。

 

どこかしらで出回ったゴッチが演奏してる姿…それを頼りにギターヒーローの正体を見抜きここまでやってきたのだろう。なかなか鼻が利くいいライターさんだ。

 

…現在結束バンド内でゴッチがギターヒーローであると知っているのは俺の認識では俺とリョウ先輩だけだ。…まあ俺としちゃどっちでもいいか。知られたって別に問題ないだろう?なにかまずそうな事態になったら手を貸そう。そう思っていると、みたびSTARRYのドアが開かれる!

 

「…来たか。小娘。貴様に、なにが出来る」宿儺感。

 

「突然すいません!わたし、フリーの音楽ライターのぽいずん♡やみと申します!」

 

突然現れた小さな妙齢の女性に、まずはPAさんが対応する。

 

「アポはとってます〜?」

 

「すいませんアポ無しです!」

 

「話になんねえ帰れ。社会人の基本だろ?」

 

アポ無しでの訪問では対応しかねます〜。

 

「PA逆逆。本音と建前が逆になっちまってるから」

 

店長がツッコミをいれる。

 

「ですが。うちの従業員が言う通り、まずはアポを取ってください。いきなり来られても対応できません」

 

「すぐ!ほんのすぐです!すぐ終わりますから!」

 

大人3人がわちゃわちゃする間、ゴッチに話しかける。

 

「多分、あの人お前を取材しにきたぞ?」

 

「うえっ!?わ、わたし!?」

 

「そう。正しくは…ギターヒーローに」

 

「…………!」

 

「まだ知られたくないってんなら適当に誤魔化しとこうか」

 

こくこくこくと涙目でゴッチが頷く。…が。どうやったのか店長とPAさんの包囲を突破し、彼の女はゴッチの前に立っていた。

 

「ようやく。ようやく聞けます…!あなた!ギターヒーローさんですよね!!」

 

やべっ通しちまった!

 

喜多さんはきょとん。虹夏先輩は、ヤバいって顔してる。あのリアクションだと、知ってたんだな。リョウ先輩は片眉をあげるだけ。となると結束バンド内でガチで知らなかったのは喜多さんだけってことに…。思いの外、可哀想なことになってた!

 

「あ、あう…な、なんで…?」

 

「わかりますよ…。ファンですもん。初期からのファンですもんわたし」

 

「…ふ、ファン…!!!」ぱあああっ!

 

心配して損した。ちょろ過ぎるだろこの女。そりゃファンは嬉しいだろうけどやな。

 

「すいません…その、ひとりちゃんがギターヒーローって…?」

 

ナイス喜多さん。こういうときは含みなく聞ける素直な人の方が動きやすい。

 

「あなたホントに知らないの!?このギターヒーローさんはねぇ…!彼氏はバスケ部エースで!ロイン登録者数1000人超え!学校中の人気者でありながら!同時に凄腕高校生ギタリストでもある凄い人なんだから!!」

 

「人違いでは?」

 

「即答!!」

 

「うごはぁっっっっ!!!!!」びちゃびちゃびちゃ!

 

血吐きよった!謝れぽいずん♡やみ!ゴッチさんに謝れ!…まあそれはさておきだ。

 

「…ゴッチ。お前彼氏いたのか」

 

「べむぅ!!」

 

「ロイン友達1000人。ぷぷ」

 

「べらぁっ!?」

 

「ホントなの凄腕高校生ギタリストだけね!」きた~ん!

 

「べろぉっ!!」

 

真っ赤な嘘、陳列罪のデンプシーロール。おらおらぁっ!

 

「こんな時だけ結束力発揮すんな!ぼっちちゃんのライフはもう0よ!」

 

虹夏先輩の悲痛な叫びに、バーサーカーソウル発動からのトドメは勘弁してやろう。と思った。

 

「単刀直入にいかせて頂きます!ギターヒーローさん!わたしのツテならあなたをもっと上のステージまで引き上げられます!あなたの腕がもったいないですよ!」

 

あっ…。この言葉…。2回目だ…。なんだろう。ぶつしけな人だけど、その言葉を言われると悪くない。後藤ひとりはそう思った。そしてすぐ後に後悔する。

 

「ひとりちゃんが上に行くってことは〜。わたしたちも必然的に上に!?」

 

「ついに来たか…!結束バンドメジャーへの道…。いや…ロー◯オブメジャー!」

 

「それはバンド名!」

 

結束バンドがわちゃわちゃしているとやみは一刀のもとにその考えを切り捨てる!

 

「違います!結束バンド!?何の話!?わたしが言ってるのはギターヒーローさんだけ!!」

 

「あなたたち結束バンドは…まあ高校生にしてみりゃ上手いかなってそんなレベル。ハッキリ言うけどギターヒーローさんと釣り合ってないんですよ!」

 

「…てゆーか、ガチじゃないですよね」

 

余りにハッキリした物言いにSTARRY内が静まり返る。

 

…あんまりな言い分だな。結束バンドがガチじゃないだと?そこは正式に訂正してもらうか。…今ではなくとも。…取り敢えず今は。未だ詰め寄る姿勢を見せるやみと怯えているゴッチの間に割って入る。

 

「まあまあ。ギターヒーローだかギター侍だか知りませんが、取材の対象を怯えさせるのは取材者として如何なものかと」

 

「うわ出た!胡散臭男!わたしあんた苦手!」

 

なにをう。貴様に胡散臭い言われる筋合いないわ!なんだぽいずん♡やみって!などと言い返しかけるが、すんでの所で胸中にしまい込み。

 

「今日はここいらで手打ちにしませんか?…それとも、ギターヒーローの代わりにギターバラッドの取材でもしていきます?」

 

「…え?ぎ、ギターバラッド?」

 

「まあ、俺のことですが」

 

「あんたのことかい!お断りじゃ!と、とりあえず今日は逃げ帰るぜ!さよならギターヒーローさん!今度またゆっくりと取材させてください!!」

 

「…こんなぬるま湯にいつまでも浸かってると、あなたの才能腐っちゃいますよ?」

 

「おいPA。塩撒いとけ」

 

「ラジャー!」ぱっぱっ!

 

「チクショー嫌われたもんだぜ!アバヨ☆!」

 

ふん。まさに捨て台詞。訂正させなきゃいけない言葉が2つに増えたな。…。ぽいずん♡やみよ。結束バンドは覚えてなくとも、俺は覚えておくぞ?いつか俺に取材しなかったことを後悔させてやるわ!

 

 

「…手酷く言われたね」

 

と虹夏先輩。

 

「お前らあんま気にすんなよ。輩の言うことなんざ適当ばかりよ」

 

「店長さん…!」きらきら…!

 

ホント。割と店長って、意外に優しいよな。ほら見ろ。喜多さんが感動した顔してる。

 

「あ、あうあうあうあ…」

 

ゴッチ改めギターヒーロー。言わなきゃいけない言葉を必死に探っているんだろう。

 

「…いつかわたしたちがぼっちの足枷になるか…頭ではわかってた。いざ言葉にして投げつけられると、響くね…」

 

珍しくしょげてる?ように見えるリョウさん。

 

「!っそんな!そ、そんなこと!絶対に有り得ません!あのライターの方はお馬鹿です!」

 

「…ぼっちはやさしいね」

 

「あう…!そんな…。そんなことっ…!」

 

ゴッチが何とかリョウさんに対するフォローの言葉を探してるとき。店長が音頭を取る。

 

「全員そこまで。結束バンド。お前たちはもう上がっていい。…よく寝て、頭冷やせ。あいつの言葉なんかは忘れちまえ。分かったな?」

 

「「「「…」」」」

 

「分かったな?」

 

「「「「…はい」」」」

 

「遥。お前は元気だろう。ちょっと残って片付け手伝ってくれ」

 

「…うっす」

 

…う〜ん。てか今回のは…ひょっとして戦犯俺?まさかギターヒーローの事を掴んでいるとは…。ふざけた見た目とふざけたキャラに騙されたぜ…。まあ。ギターヒーローバレなんざいつしてもおかしくないし。ちと早くなった。それだけのことよぉ!ぐはははは!と。心に冷や汗をかきながら開き直っていると。

 

「遥。お前は頼りになりそうだからお前に渡しとく。あいつを退ける呪文だ」

 

そんな口裂け女のポマードみたいな。

 

「わたしと店長。2人で頑張って調べたんですよ〜」

 

とPAさん。なんだ何が書いてあるんだ。…本名。佐藤愛子。実家の電話番号に、年齢。そして住所…!!こわっ!こっっっっっわ!!!!!

 

「今後まとわりついてきたらそれで祓え」

 

「いや調べすぎでしょ!?やっぱ店長は結束バンドのことになると甘いですね!」

 

「店長、身内に激甘ですもんね〜♡」

 

「それ以上言ったら給料なし」

 

「…は〜い」

 

なんか店長PAさんに対して厳しくない?まあでも、原因になったかも?な俺が言うのもなんですが、この程度でどうにかなるタマじゃないでしょ、結束バンドは。彼女らの帰還を待ちましょう、大人しく。そう言うと店長は。

 

「…まあ、そうだな」

 

と、同意してくれた。掃除しながら言葉を交わし、その日は俺も、いつもより少し早く帰った。そして明くる日。

 

ガチャリ「うぃ〜っす」

 

STARRYのドアを開け、俺参上。するとだ。いつもより確実に仄暗い雰囲気を纏った、ゴッチ以外の結束バンドのメンバーが勢揃いしていた。

 

「…」

 

「…」

 

「…」

 

「暗い!暗すぎるわお前ら!何!?葬式でもやんのか!?」

 

「…青木くんか…」

 

心底残念そうに虹夏先輩が溢す。

 

「待ち人じゃなかったみたいですいませんね!てことはゴッチだな!?全くどいつもこいつもゴッチゴッチ!」

 

「…元気ねぇ青木くん」

 

元気印の喜多さんに言われるとダメージでかいな!…けっ。ならしょうがない。大人しくしてよう。1番奥のパイプ椅子にどっかり腰掛け、足を組む。…さて。みんなの待ち人はいつ来るのか。ほどなくして!

 

STARRYのドアが開け放たれ、入って来たのはゴッチだった。その手にはクシャクシャのフライヤーを握りしめて。

 

ツカツカと歩くと結束バンドのみんなが囲んでいる丸テーブルの中央にフライヤーを置く。…なになに…未確認ライオット?

 

同時に結束バンド残り3人のメンバーがはっとして顔を上げる。…ゴッチの頬に、一筋の涙が伝っていたから。

 

「…悔しかった」

 

ぽつりと溢す。ゴッチの独白。

 

「あの人はわたしのことは褒めてくれた。…でも。結束バンドの事は!褒めてくれなかった…!わたしが!どうしようもなく悔しいのは!!…ここに至るために足掻いてきたわたし『たち』を…!一緒に足掻いてきたわたしの最高の『仲間たち』の事を!!認めてくれなかった!!それが!!…堪らなく、悔しい…!!」

 

唇を真一文字に結いながら。ポロポロと涙をこぼす。

 

「ぼっちちゃん…!」

 

涙目の虹夏先輩。

 

「ひとりちゃん…!」

 

同じく涙目の喜多さん。…だが。次の人だけ一味違った。山田リョウだけは口元に薄い笑みを浮かべて立ち上がる。同時にポケットからフライヤーを。ゴッチと同じフライヤーを机の上に投げ出して。ゴッチの頭を抱き寄せて、優しく撫でながら。

 

「ぼっち。ありがとう。泣いてくれて。わたし達のために泣いてくれて。わたしもおんなじ気持ちだ。悔しい。ガチじゃないだと?お前がわたしの。わたし達の何を知っている?あのいけ好かない女を黙らせるには…!どうする。虹夏」

 

ばあん!!丸テーブルの中央に手が叩きつけられる!その手にはフライヤー!2人と同じ、フライヤー!!

 

「とーぜん。結果残して!実績作っちゃえばいい!例えばこのフェスで優勝するとかさ!!そしたら!あの女どころか誰も!文句は言えないでしょ!!」

 

最後の1人。赤髪映える美少女も、薄い不敵な笑みを浮かべて立ち上がる!ひらりと。テーブルの上に3人と同じフライヤーを投げ出して!

 

「やるからにはトップです!結束バンドでグランプリ獲りましょう!そして賞金100万円はわたしたちのものですよ!!」すーぱーきたーん!!!

 

先程まで桃色の少女が流していた涙はもうない。かわりにここにいる少女達の顔には、決意が。色濃い決意の色が浮かんでいた!

 

「この、結束バンドで!未確認ライオットを獲りましょう!!」

 

「応!」

 

「うん!!」

 

「はい!」

 

 

 

…雨降って地固まる。って奴かね?…コイツラならホントにグランプリ取るかも。…見物だな。そう思っていると店長から声が掛かる。

 

「お前もでろよ遥」

 

 

…………………えっ!?

 

 

 






ぽいずん♡やみさん。彼女ほど、必要悪。という言葉が似合う人もいませんよね。彼女のようにキツイ言葉で結束バンドの現状を指摘するキャラがいないと、結束バンドは次のステージに進めない。オーディションの時に敢えて厳しい言葉選びをして、悪役を演じた、店長のように。
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