鳩野さんは青木くんに気は有りません。だがもし青木に告ったら成功します。奴は来るものを拒みません。そして同じように青木は結束バンドの誰にも気は有りません。
ここいらは秀華高校。キューに年上のオネイサンにプレゼント渡すなんて無理難題を押し付けられた俺こと青木遥は、こないだ同級生で初めて出来た友達に、悩ましい心の内を相談していた。
「鳩野ちゃん。年上のオネイサンにプレゼント渡すことになったんだよ。どうしたらいいと思う?」
「結束バンドちゃん達の次は年上のオネイサン?モテるのは結構だけど、節操がないね。青木ちゃんは」
「なんだと思ってるの!?違うから!その結束バンドのお姉ちゃんで大変お世話になってる由緒正しい人物だから!!」
「まあまあまあ!青木もそこは所詮一介の高校生。大人のお姉さんの色香に狂っちまうのも致し方なしか!!」
雑なフォローを入れてくれたコイツは、千田満男。名前をいじるとキレる、こっちも初めてできた男の友達だ。大事にしていきたいのだが…如何せん名前が…。
「千田!!」
「満男!!」
「「ナハナハ!!」」
「処す」
鳩野ちゃんと息ぴったりで名前をいじってみると、案の定キレられる。ムリだろ。いじんなって。いじりやすいボディしてるそっちが悪いだろ。ていうかさ。もう慣れたもんだろなんでキレるんだよ乗れよ!
「小学校から幾星霜。何度そのイジリを受けてきたと思ってる!?雑なんだよてめえら!!もっと愛を持って接せ!!」
面倒くさい!
「んで!?何だっけ大人のお姉さん?年の頃は幾つくらい?」
鳩野ちゃんが90度くらい曲がっちまった話の軸を戻す。
「今年30だな」
「う〜わエッロ。手取り足取り教えてもらいたいわ」
そしてそれを千田が取っ散らかしていく。
「意見がないなら黙っててくれませんかね!?」
「意見はあるぞ。お姉さんにめちゃくちゃにされたい意見が!!」
「知り合いの酒カス紹介するからしてもらえよめちゃくちゃに」
「さもありなん!!」
無敵かよ。性欲とはげに恐ろしき…。
「なるほど30となると、普通の男からのプレゼントは貰い飽きてるかもね…。最近何かに凝ってる物とかある?」
今の流れガンスルー。鳩野ちゃん。頼りになるね。
「なんか最近妹の見様見真似で料理始めたらしいぞ。ちなみに色はピンク色が好きだと」
「妹さんはいくつ?」
またお前かよ千田。色ボケとしゃべくってる暇なんざないんだがな?
「俺等の1つ上」
「妹さんでいいや」
「何が!?」
「ピンクのエプロンとかど〜お?あと千田は死ね」
「すまないな鳩野さん。男2人がバカみたいな話ししてる中普通に進行してもらって」
「ホントだよ。全く全くだよ」
「ピンクのエプロンか!いいな。実は喜多さんとゴッチと買いに行く約束してるんだ!鳩野さんにもなんか買ってくるよ!」
「なんか青木くんってロックしてる時以外はフッツーだねえ。いいよそんな気ぃ使わなくて〜」
鳩野さんがこちらを見てニヤリと笑う。貸し1つ作っちまったかな。後でちゃんと埋め合わせよう。
「鳩野!俺と行くか!クリスマスに買い物!」
「…千田って意外にモテる?」
「意外ってなんだよ意外って。どうだ?独りモン同士」
「せっかくだけど遠慮するわ。明石家サンタ見るし」
隣でお出かけの計画を立てる2人を尻目に、(なんか頓挫した気もしたが)ふむ…ピンクのエプロンか。さすが鳩野さん。いいアイディアだぜ。
「お邪魔様!!」すぱあん!!
一瞬訪れた静寂を引き裂くように現れたるは喜多さん。教室の扉を力一杯しばき回して登場する。
「ご歓談中失礼するわ!青木くんをもらっていくわよ!放課後買い物に行く約束してるの!!」
突然の喜多さんの来訪にも鳩野さんと千田は動じることもなく。
「青木くん!またね!楽しんできて!」
「青木!プレゼントしたときのお姉さんのリアクション教えてくれ!参考にする!」
おう!またな!なんだかんだでいい奴らだよなホント。友達になれてよかったよホント。
「喜多さん!ゴッチは!?」
喜多さんに問い掛ける。
「今から攫いに行くところよ!」
了解!おしっ!待ってろよ一等卒!
「渋谷のマルキューでナウなヤングの買い物よー!!」
「二世代くらい前の方ですか!?」
すぱあん!!扉を開け放つ!!と同時に教室の中に目を廻すと、隅っこにぼちっと縮こまる、いつものピンクジャージを発見する!
「行くぞ!一等卒!!」
「ひゃ、ひゃい!!」
「きゃー!!ひとりちゃんを拐かすわー!!もうひとりじゃないわよー!!」
「あっ。ありがとうございます!」
ふはは!教室のみなさん!後藤ひとりはもらっていくぞ!渋谷に買い物と洒落込むとしよう!
ああどうぞどうぞ。
上島竜兵かよ!?
「なに買うか決めたか?ゴッチ」
「あ、いろいろ見て決めようと思います…」
「決まらないやつよひとりちゃんそれ!イメージでもいいから方向性決めとくと進めやすいわ!」
「き、喜多ちゃん!はい!わかりました!!」
2人してニマーっ。仲いいね。尊いね。下北から渋谷へ、電車で向かう道すがら。ゴッチは、自分ひとりでは絶対に近寄れない街だと渋谷を形容していた。確かに、俺やゴッチみたいなキャラの奴が、好んで近付く街ではないな。…だが、ゴッチは、俺から見たら少々自意識過剰気味ではないかとも思う。割と自分が思っているほど、周囲は自分の事など気にしていないものだよ?
などと物思いにふけっていると、もうマルキュー。目的地だ。展開速い!
「わたしはアロマとネイルのセットにするわ!ネイルの色が5種類入ってて、その色をイメージしたアロマが入ってるのよ!これで店長さんの5色の魅力を存分に引き出せるわ〜!」
「あっ喜多ちゃん凄い…!オシャレ…!」
「俺はピンクのエプロンだ!コレをゴッチだと思って使え!と言って渡すつもりだぜ!どうだ!バッチリだろ!!」
「わっ!凄い…!カワイイ…!」
「ひとりちゃんは!?なにかイメージある?店長さんへのプレゼント!」
「うう…店長さん…。優しいけどやっぱりときどき怖いイメージが…!」
そうかね。店長優しいと思うけどな。むしろ優し過ぎてバイト辞める人とか辞めにくいんじゃねえかな。泣くだろ絶対。PAさんとか永久就職だろ。旦那店長で。
「ひとりちゃん。多分バイトの上司だと思うから怖いのよ。伊地知先輩のお姉さんだと思うのよ!」
「えっ?むむむ…」
なにがむむむだ。太古の昔からある流れ。そう。想像。いいイメージ。これが割とバカにならない。
イマジナリー虹夏ちゃん(…!…っちちゃーん!!ぼっちちゃーん!!えっ!?ぼっちちゃん誕生日プレゼントくれるの!?どんなものでも嬉しいよありがとっ!!)
「なんか…!なんかイケる気がする!!」
あると思います!なんで唐突にエロ詩吟化?
「信じられないけど伊地知先輩と店長さんっておんなじDNAで構成されてるのね。だからまかり間違ってたら店長さんが伊地知先輩みたくなってた可能性もなきにしもあらずかな…!って!」
本音って混じるよね。言葉に。
イマジナリー店長(…どした?ぼっちちゃん。ほら、おいで?今日はどうしたの?さりげなく飲み物スッ。えっ誕生日プレゼント?わたしに?…知ってたんだ。アリガトウ…。開けていい?うん。…わあ…欲しかったやつだ。大切に使うね…?ちゅっ。)
「うおおお!!何でも良い!何でもイケる気がする!凄いですよ青木くん!!喜多ちゃん!!」
想像の店長イイ女過ぎるだろ、飲み物出すタイミングエグいな。
「さあ!いいイメージ浮かべたまんま思うが様選んでみて!!」
「うむむむむ…!虹夏ちゃんのお姉さん…!意外と顔怖い割に優しくて繊細で面倒見が良くていい匂い…!こ、これだあああ!!」ばっ!!
「…」
「…!」
さり気なく匂いをかいでんな。
ゴッチが選んだもの。ソレは…!
続きは次の話で!クリスマスパーティーまで秘密だ!
「よし!!これでみんなバッチリプレゼント選べたわね!1週間後が楽しみだわ!!」
意気揚々の喜多さん!
「あ、ありがとうございます皆さん…!わたしひとりじゃ絶対出てこない発想でした…!」
逆転ホームラン打ったテンションだなゴッチ。
さあ。プレゼントは出揃った。店長を涙の海に沈めに行くぞ!
「まだ1週間後よ!」きたーん!!
ちっ。ちゃんちゃん。
…予感がする。過去最大のサプライズが来るという予感が…!
予感してる時点でそれはサプライズたりえないのでは?
お前は夢がねぇなぁ?そんな奴はカマボコだぞ。
板ワサでお願いします。
なら日本酒もつけよう。
もうこれでいいや。