池袋ブッキングライブ。イライザさんとか得意そう。まあ4月はいい季節。花粉さえ飛ばなければね。
ふにゃあ…。最&高…。窓の外を眺めながら後藤ひとりは独りごちる。…しつこいようだがダジャレにあらず。
桜が紙吹雪のように舞い、暖かな春の日差し…穏やかな空気…。クラス替えもほぼ望み通りになったし、なんか懸案事項が一気に片付いた感があるな〜。
「ゴッチ。ダレにダレてるな」
「後藤うちの犬みたい。ダラケてる笑」
このお2人はさっつーさんと青木くん。わたしの数少ない知り合いだ。クラス一緒になれたどころか席まで近いのだ。神様は見てくださってるんだなぁ、日頃の行いを…。これで、郁代ちゃんが前の席なんだよ?安心感半端ない。何か問題起きてもこの3人なら何とかしてくれるよ〜。まさに最高の席順…。これ以上は…。
ない!!ヤバい。いきなり最高引いちゃった!!この先は落ちていくしかないじゃんどうしよう、青木くんとも、さっつーさんとも郁代ちゃんとも引き離されただひとりでこの教室という名の海原に漕ぎ出さなきゃいけなくなったら!温かさを知っちゃったんだ、誰とも会話できなかったあの頃のわたしにはもはや戻れない。一方通行なんだもはやそんな寒々しい空間で過ごせないよ。あうあうどうしたら〜!!
「ひさびさだなゴッチの領域展開」
「えっ。どんな必中術式が付与されてんの?」
「ゴッチのこの呪言聞くと、聞いた人が少しだけネガティブになります」
「思った以上に大したことねぇ笑。ほかには?」
「う〜ん。形態変化が自在になって倒すのが非常に困難になるかな…。ダメージ与えても肉片に分散してダメージ散らしたり。ツチノコになったりメンダコになったり」
「後藤はホントに人間なの?えっじゃあ領域名は?」
「墓地、座、六供。とでもする?」
「かっけぇ笑」
「どうしたのひとりちゃん!呪言なんか吐いて!2人にいじめられたの!?」
喜多ママのカットイン。ご、誤解だ!!
「喜多がママしててウケる。あんま喜多はママに向いてないと思うよ性格的に」
「齢16。向いててたまるもんですか。ほらひとりちゃん!復活して!頑張って!!」
「う、ううん…えい!!」
とろけかけてた体が一つの場所に収束する。何度見ても魔人ブウ。
「すげえな。アニメでしか見たことないような再生術」
「こればっかは俺も慣れねえよ。原理が分からないもの考えるの苦手なんだ…」
「ひとりちゃん!ちょっと再生し損なって頭の上にツチノコひとりちゃんが残っちゃってるわ!」
「えっ…!?あ、ほ、ホントだ…」
「かわいいからそのまま残しといて!」
「あ〜!!わかんねぇ!!どうなってんだよこいつマジ!」
青木が分からないものに対しての畏怖を素直に口にする。ちなみにあまり深く考えないだけでわたしも同じ気持ちだ。
「そんなに深く考えなくていいんじゃね?」
「さっつーは向いてるよ…」
「いや、なにに?」
後藤の世話役とかならゴメンである。
場所はかわり今は通学路を逆走。すなわち下校中である。今日は3人ともSTARRYのシフトのため、一路下北沢へと向かう。
「ああ〜コレヤバい。眠気を誘うな」
「あ、青木くんもそう思う…?わ、わたしも…」
「暖かいもん。日差しが。ゴッチは春好きか?」
「…う、うん」
「まあ、ジャージの色見りゃ分かるわ」
「えっ…!わたしのピンクジャージは春夏秋冬いつでもだよ…」
「はっ。そうだったな」
「むー!!わたしも混ぜてよ!2人で会話してズルい!!」
ツチノコぼっち(喜多さんが命名した)を頭に乗せた喜多さんが不平を口にする。
「ほ、ほら…。郁代ちゃん迷惑してるでしょ、そろそろ降りなさい…」
「全然迷惑だなんて思ってないわよひとりちゃん!だからまだ乗っけさせて!」
「え、ええ〜」
いたく気に入ったらしい。ツチノコぼっち。
あっという間にSTARRYに付くともはや慣れたもんな階段を下りドアに手を掛ける。
「うぃ〜っす。お疲れ様で〜す」
「おはようございますっ!」
「あ、お、おはようございます…」ぼちぼち
三者それぞれの挨拶をし、STARRYへと入っていく。するといつも以上ににこやかな虹夏先輩から託宣がもたらされる。
「よくきたよ皆の衆!わたしたち結束バンドはなんとライブのお誘いをいただきました!」
「えっ凄いです虹夏先輩!!また廣井さんの新宿の箱ですか!?」
即座に喜多ちゃんから反応が返ってくる!
「違うなんか全然知らない箱!池袋だって!」
「いいじゃないですか!今は一つでも実戦経験が欲しいところ!行ってみましょうよう!」
「ふむ…虹夏。ちょっと文面見せて?」
「リョウ…?う、うん」
言われるがままリョウにスマホを見せる。
「…なんかコイツ。勘違いしてない?このブッカーの柳ってやつ。わたしたちってハードロックバンド?わたしはそうは思わないのだけど」
「う〜ん…。確かに。なんかどっかのバンドと文面入れ替わっちゃったのかな…」
「いいじゃないですか先輩方!!今はなによりより多くの実戦ですよ!腕を試すいい機会です!」
喜多ちゃん…!ホントに前向き!うん!今は止まってる場合じゃないよね!
「そうだね!よし!出演してみよう!リョウもいい!?」
「みんながいいなら」
「あっ緊張する…嫌…!」
「ひとりちゃん頑張って!」
「ふっ…!結束バンドにも届いていたか」
「えっ!?にもってことは…青木くんにも!?」
「そういう事。俺らはTEAMイバラギって名前でやってるけど、俺らにも誘いが来たぜ」
「あ、ホントだ…!おんなじ時間の池袋!」
「気になるのは全く結束バンドのメールと文面が同じなこと。コイツ、めんどくなって一斉でメール送ってね?俺らもハードロックになってるしジャンル。アニソンコピーバンドなのに」
「う〜ん。たぶん!忙しいんだよ!ほら、芸能人とかのマネージャーって忙しそうじゃん!このブッキングマネージャーってのも凄い忙しいんだよきっと!」
「個人的にテキトーなブッカーってのはやな予感がするのですが…まあ。俺らは箱は選ばない。出てみるつもりです」
「わたしたちも行くよ!よしみんな!未確認ライオットの前哨戦だ!」
「はいっ!!」
「応!」
「はっはい…!」
遠くからその様子を見ていた伊地知星歌が独りごちる。
「ブッカーの柳。なんか…どっかで…」
その日の夜半。
「おねーちゃん。結束バンドにライブの誘いが来たんだ!」
「やったじゃねえか。何処でやんの?」
「池袋!」
「頑張ってこいよ。あっでも。虹夏。わたしにもその誘いのメール。見せてくれ」
「うん!はいこれ」
「…このブッカーの柳って奴…どっかで聞き覚えが…なんだっけな…?」
「老化?お姉ちゃん?」
「うしっ。戦争だな!」
こんなやり取りだったせいで伝えそびれた。そのブッカーの柳。なかなかのクセ者。悪名高きブッカーだったことを…!
このところ結束バンドは路上ライブを繰り返してた。最初はなんかバカ正直に許可取ってやろうとしてたが、いつも許可は下りないため店長に相談したところ、許可なんて取るなロッカーらしくもねえ!ロッカーの基本は無許可だ!!と滅茶苦茶な論理を刷り込まれ、今では色んなところで無許可でやっている。立派な傾奇者バンドの誕生だ。ホントにこれでいいのか?
「結束バンドちゃんタチ。みんな目を見張るクライ、上手くなってるネ〜!少ししか経ってないのにすごいヨ!」
「イライザさん。改めて、力を貸してくれること。感謝します」
「イイノイイノ!わたしがやりたいんダカラ!きくりも志麻も!8月までは2人体制でシクハック支えてくれるって!」
「だ、大丈夫なんすかねそりゃあ…」
「わたしが来る前のシクハックに戻るダケ!ってきくりが言ってたし!志麻もきくりもリフレッシュしていつも以上にエネルギッシュだったから!だから、あなたに8月までは付き合ってアゲル!退屈させないデネ!!」
「そこはおまかせを。イライザさんは自身が好きなアニソンを力いっぱい歌うことだけ考えてくれればいい!」
「うん!頼りにしてるよギバちゃん!」
「了解です!」
我々はそんなにネットに強いわけではない。なのでこういう池袋のよく分からない箱だろうが、ライブの機会を逃すわけにはいかない。もちろん。この路上も!
都内某所の駅前に降り立つ。片方は白を基調の浴衣姿を思い思いに着崩した金髪の美女。それだけでみんなの目を引く。なんというカリスマ性。そしてもうひとり。対照的に、スーツをこれ以上ないほどキッチリカッチリ着こなし。サングラスとテンガロンハットでまるで目元が見えない黒を基調とした男。な、なんだなんだと。駅前が少々ざわつく。そして。そのなんだなんだを。コイツラは見逃さない。
「「なんだかんだと聞かれれば、答えてあげよう御座候。
乱れに乱れしこの業界。正し給うは天使か悪魔か。
真原とひろがるこの次元に、愛も正義も関係なし。
黒のスーツに白の着物。
着こなし現るSexy&Beautyな我々は!
イライザだよ!そしてこの俺!ギバちゃんだ!2人あわせてTEAMイバラギ!!
6天魔界を駆ける我々には!!グランドクロスの福音が待ってるぜ!ナーンテネ!!」」
ずごごごごごご…!!JOJOの空気音が流れる。だが…!やった本人たちに委細の動揺なし。
「いくぜイライザ!!」
「応!ギバちゃん!」
「1曲目!僕たちは天使だった!」
路上ライブには路上ライブで対抗だ!見てろよ結束バンド!もちろん池袋でもかましてやるぜ!どんな箱でも関係ねえ!大暴れしてやらあ!!
日付はめぐり池袋ブッキングライブの当日。さて。下北沢の田舎もんが池袋に凱旋だ。派手にかましてやるぜ!
「あー。あまり派手に暴れ回って恥を晒さないように。とくに青木!」
「なんで俺限定なんすか!」
「いや。虹夏たちは曲がりなりにもTEAMだし。なんかひとり暴走してもほかの奴らが抑えてくれそうだけどお前はな…先方に迷惑は掛けんなよ〜」
「なんだと思われてんだチクショウ!」
「ま、まあまあ青木くん。どうどう」
「虹夏。ちょっと」
「ん?なに?お姉ちゃん」
「あのあと思い出したんだよ。あのブッカーの柳ってやつ。気を付けろ。今はどうか知らんが昔は演者のこと考えないクソブッカーで名を馳せたやつだった」
「うええ!?な、なんでこんなギリギリで言うのさ!?」
「しょうがねえだろ今さっき思い出したんだから!だからわたしも行く。今回ばかりは相手が悪い。なんかまずそうなことがあったら聞きに来い!」
「あ、ありがとうお姉ちゃん!」
少しの間下北沢から電車に揺られる。池袋ならそんなに遠くはない。さて。どんな箱だろうか。楽しみな気持ちを抑えられんな!!
「ホントだね遥くん!どんな箱ダロ?」
「…青木くんとイライザさん…。す、すごい格好だね」
虹夏さんにそう言われる。まずは衣装から派手にいかないと!個人的にはハットとグラサンで目元が見えないのがポイント高いと思うのよ!
「なんか仮装バンドみたい。ぷふっ」
「たかだか仮装バンドと侮るなかれ。イライザさんの実力は折り紙付き。そして俺も、路上ライブで経験を積んできた。そうそう後れは取らないぜ?」
「…ふっ。確かに。格好だけで実力を測ろうとするのは三下のやることか。オーケー。こっちもただぼさっとしてたわけじゃない。郁代も信じられないくらい上達したし、ぼっちも少しずつ路上ライブで経験値積んできてる…。前のままの結束バンドだと思うと後悔するよ?」
いつもながら自信満々だなリョウ先輩。だが、今回は裏打ちがありそうだ。こちらは挑戦者のつもりで挑む!したから全員捲ってやるぜ!見てろよ!
そして池袋に下り、今日の箱に着く。さてと!やってやろうぜイライザさん!
「うん!遥くん!イコウ!」
「こっからは別行動だぜ結束バンド!せいぜい無様な姿を晒すんじゃねーぞ!STARRYの宣伝は俺らに任しとけい!」
「余計なお世話だよ青木くん!あっでも!青木くん!今日のブッカーには気を付けて!なんか一癖ある人みたいだから!」
「なぬ!?…分かった気を付けるぜ!そちらも頑張れよ結束バンド!」
一旦ここで青木くんとイライザさんと別れる…。いつもは仲間だけど、今日は未確認ライオットの敵同士…。青木くんのハードロックなギターと、未知数だけど、ギターとして未確認ライオット優勝したことがある経験豊富な清水イライザさん。敵に回したら厄介なことこの上ない。
「どうもぉ〜、ありがとうございますお越し頂いて〜!ブッキングマネージャーの柳と申します〜。え〜っと。輪ゴム…。送りバント…あっ。結束バンドのみなさ〜ん。では早速リハして本番で〜!ナルハヤでシクヨロで〜す!」
軽っ。かっる。なんか…軽んじられてる!?お姉ちゃんの言ってたことホントっぽい!
「…なんか。闇鍋っすね」
「ネ!なんかコンセプトが見えないヨ!デスメタルバンドに地下アイドル。シンガーソングライターさんにわたしたち…。なんか余り物ぶち込んだみたい…!」
イライザさんとそう雑談する。まあ、ブッカーさんからすれば出演者が埋まればどうでもよかったんだろう。人にはそれぞれ事情がある。
「ムカつきましたか?イライザさん」
「イヤ?全然。このライブハウスで1番目立って爪痕残す。やることは変わんないヨ!」
「流石だぜ。よし!やったりましょうや!楽しみましょう!!」
あ〜やっぱあいつか。柳…。伊地知星歌は対象を確認する。まったく変わってないっぽいな…。ったく。前に悪名極まりすぎて出演者全員にそっぽ向かれてライブ自体駄目になったの忘れたのかね?あれの相手は虹夏にはキツイか。まあ…出る以上。全力尽くすしかないんだけどな。
そしてもうひとり。結束バンドにとってゆかりのある人物がここ池袋のライブハウスに降り立ちつつあった。
「ありがとうございます、今日はどちらのバンドに興味がお有りで?」
「えっと…!け、結束バンド!」
見た目10代にしか見えない、今現在結束バンドからもっともヘイト買っている音楽ライターぽいずん♡やみである。
「うう…みんなゴメン。わたしがちゃんと確認してればこんな闇鍋ライブハウスこなくてすんだのに…」
「何処だって変わんないよ虹夏。わたしたちはミュージシャン。何処だろうが観客がどんなだろうが、ステージに立ったら掻き鳴らすだけ。遥に笑われるよ?まだそんなレベルなの!?って」
ムカッ✖3
「うんそうだね!わたしたちはミュージシャンだもんね!闇鍋ブッキングがなんだよ吹っ飛ばしてやる!」
「何処だろうが関係無し!進化したわたしの歌唱法!見せてあげるわ!いい練習台よ!」
「む〜!青木くんに言われないでも分かってます!ビビってなんかないです!」
「ならいいじゃん。かましてやろうぜ?結束バンド。この箱。わたしたち色に染めたろう」
「「「おおー!!」」」
あれえ!?わたしのアドバイスまるで必要ないじゃん!凄いな、結束バンド。成長したなあ…。伊地知星歌は独りごちた。…ん。なんか見知った顔。あれは…。
わたしはぽいずん♡やみ。音楽ライターをしている。今日は包み隠さず言う。結束バンドを見に来たのだ。
このバンド。最初にコンタクトしたときは、わたしはギターヒーローさんしか見てなかった。
今にして思えば多重にフィルターがかかった状態でギターヒーローさん以外を評価してしまったかもしれない。まずはそれも謝らねばならないが…。
このバンド。すごい勢いで進化している。他のメンバーの3人がどんどん伸びてギターヒーローさんの域まで届きつつあるのだ。今日は、伝えたいことがあってライブに足を運んだ。…お話し、出来るかな?
「おいこらエセぶりっ子ライター!」
「あ、あなたは!えっと下北のライブハウスの…!」
「STARRYオーナーの伊地知星歌だ。以後お見知り置きを。っと。こないだはよくも余計なことをうちの従業員に言ってくれたな!あいつらあのあと意識しちゃって大変だったんだぞ!」
「…ごめんなさい」
「えっ!?素直!」
「あの時はそう思ってた。でも…あの子たちの路上ライブを偶然見て…考えは変わったわ。みんな必死に。何者かになろうとしてた。わたしが見間違えたわ。今日はそれを謝りに来たの…」
「えっいやまあ…、わたしは当事者じゃねえし…、あいつらに直接言ってやってくれ。多分喜ぶから」
「そうかな…。顔も見たくないんじゃないかしら」
「んな落ち込むなよ。ミスることなんざ仕事してりゃ誰しもあるだろ。謝って許してもらえばまたチャンスはあるだろ」
「あなた…意外に優しいとかよく言われない?」
「言われるよ!性分だよ!まったく!わたしの語気が強いのは生まれつきだ!悪かったな!」
「…ふふふ。そう。ありがとう」
軽めにリハを終えもう本番だ。トップバッターは臼井さん。アコースティックギターを弾き語る、ある種昭和の匂いを色濃く残すソロアーティストだ。なんかあれだな。歌もうまくないし、ギターの腕もそんなにだけど…。歌詞が染み入るな。
「う〜ん…!わたしの趣味じゃないネ〜!遥は?」
「良い…。侘び寂び…?そうだよな…、ひとりであの年齢まで生きた人の人生がロックじゃないわけないんだよな〜。結婚、離婚、ローン、子供、人情、仕事、酒、そして老後…。なんか。端的に人生表してるよな…」
「遥には評判イイ!え〜わたしは渋すぎて分かんないよ〜!」
次は地下アイドル。名前は天使なキューティクルだ。…地下アイドルか。当たり前だが専門外だぜ。
「ありがとー!今日もみんな来てくれて!よしじゃあ1曲目行くよ!黒髪以外クソビッチ!」
わあああああああ!!ラファエルちゃーん!!ガブリエルちゃん!!ミカエルちゃーん!!
ちーん!
「おいコラリョウ!ぼっちちゃん!適応しろ地蔵になるな!なんだここまで来て地下アイドルくらいで!喜多ちゃんを見なさい!ヲタ芸の1つ盗んでくるぐらいの気概を見せろ!」
「シャンプー!りんすー!?」
「「「ヘアオイルー!!」」」
せ、先輩たちも中々の適応力ですね…!見事な対応を見せる結束バンドの面々に喜多郁代は独りごつ。
そして。デスメタバンド、屍人のカーニバルだ。さっき裏で挨拶を交わしたが、皆さん常識的な人だった。公の場で喋ると営業妨害だろうので沈黙するが…。
このあと結束バンド。そして運よくトリを任された我々TEAMイバラギだ。
しかし…ここに来てまともなバンドサウンドだ。メイクだけだな常軌を逸してるの。あとはまともな人たちだ。うん。特にリズム隊が上手い。
この流れなら結束バンドもヤりやすいんじゃないかと。そして俺たちにも追い風だ。この屍人のカーニバルさんも結束バンドも演奏力が高いロックバンド。バンドサウンドの流れのまま俺たちの順番まで来てくれる。コレはラッキーだな!
さて。次は結束バンド。いよいよ登場だ。その次は我々。そろそろ袖に行きましょうイライザさん!
「オッケー遥!腕が鳴るゼエ!」
はあー。怖かった〜。あれがデスメタルかあ。畑違いだからあんまり知らないんだよね〜。
演奏は上手かったよね。デスメタボイスとメイクが怖いだけで。MC聞いてたけど常識的な人達だったよ!
営業妨害ってんだろうなこういうの…。
さあ今度は下北沢からの刺客!このバンド名はネタか本気か!?ガールズロックバンド結束バンド!
おお〜。今度はロックバンドかあ。前の人達ほど威圧感がなくていいな…。
可愛い子ばっかり!きゃー!推せるー!
少し前。
「今回は少し掴みを変えてみよう!」
「ほう?如何様に?」
「前はつまらないMCするだけだったじゃん?今回は簡単に演奏して印象付けよう。ほら、ロックバンドがライブでよくやってるやつ!」
「な、何すればいいですかね虹夏先輩?」
「喜多ちゃん、そう難しく考えることないよ!簡単なフレーズ弾いたあと自己紹介!楽しそうな印象をつけるんだ!」
「なるほど!頑張ります!」
「ぼっちちゃんも!カッコいいの頼むよ!」
「アッはい!」
そして現在。
「こんにちわ!わたしたちは下北沢から来ました!エゴサが全く機能しません結束バンドと申します!今日はわたしたちの名前と担当楽器を是非覚えて帰って下さい!…まず!ベースは山田リョウ!」
ばばばぎばぎぼぼばきぼんばきぺきぼん!!
おっ〜!カッケェ。ちゃんとしたベースだ。不安だったから良かった。
この闇鍋ライブ何出てくるかわからんからな。
「みなさま今日はわたしのベースで幸せなひとときをお過ごしください…!」
「なにいってだこいつ。次ぃ!リードギター後藤ひとり!」
ぎゃううううん!!ギャリギャリギャリキュィ〜ンピロピロピロピロピロピロピロキュインキュイ〜ン!ギャリィ!!
すげぇ!普通に上手え!
ほ〜う。生粋のメタラーである俺を痺れさすとは…中々やるなピンクの少女よ。
「良いよ!ぼっちちゃん!次!ギターボーカル喜多郁代!」
「はい!皆さんご声援ありがとうございます!不思議なライブですが!これも何かの縁!皆さんと一緒にこのライブ!盛り上げていきたいです!東武ー西武ー!!池袋ー!!」
ほう…。われらが天キューの決め台詞を一回でトレースするとは…。いったい何者…。
てかあの子がアイドル並みに可愛くね?推せるわ。
「そしてわたしが!結束バンドリーダー!ドラムス伊地知虹夏です!」
ドタタタタタタンシャーンドスドスドタタタタタタン!!
ではよろしくお願いします!
「やっぱり…。ギターヒーローさんだけじゃない。他の人達も格段に上手くなってる…!」
「あいつらだってハッパかかりゃ頑張るもんだぜ。あんたのハッパが効いたんじゃねーのか?」
ぽいずんが呟くので返す。まあ。若者はいつまでも同じ場所に留まらないということだ。
「そうね…。それにしても」
「ああそうだな。それにしてもだ」
2人しておんなじ方向に首を向ける。パイプ椅子で豪快に船を漕いでるブッカー野郎を。
「「いいライブしてんだからちゃんと見ろ!!」」
「うはあっ!?」
「てめえ柳。次わたしの前で適当ブッキングこいてみろまじ引き倒すぞっつたの忘れたみたいだなぁ!?」
「あんたのブッキング評判最悪よ!?演者集めるだけで終わりじゃなく、キッチリ自分のライブには最後まで付き合いなさいよね!だからあなたにスタッフが着いていかないのよ!!」
「すっすいません…」しおしお…。
「…にしても。なんかお前STARRYに前来たときとキャラちがくない?そんなに真剣にバンドのことに対して怒れるんだな」
「わたしは!名前と格好以外はまともなライターを目指しているのよ!結束バンドにだってあの時思ったことを包み隠さず言っただけだし!」
「ああ〜そうね。それが悪い方に転がったのね。分かった分かった」
そんなことをしてる間にも結束バンドのステージは進んでいく。ラストは。
「最後は新曲!わたしたちはこの曲で未確認ライオットっていうフェスに挑んでます!もし、気に止まることがあったら!投票していただけると嬉しいです!それではラスト!!グルーミーグッドバイ!!」
にしてもいいバンドだな。なんか全員のレベル高いし。
この新曲もいい曲〜!
なんかコミックバンドなんて思っててゴメンナサイ…。
「…いいライブをすればみんな認めてくれるのね…。地道な活動がやっぱ大事よね」
「ああ。あいつらは我慢強いぜ。あんたも地道な活動を認めてくれたタチだろう?」
「…ええ!きっと今の!彼女たちならどんな場所だって!受け入れてもらえる!」
「ああ。きっとな!」
「素晴らしいライブだったね遥?」
「まあまあだなイライザ?」
「だがわたしたちはいつも通り…」
「そう。普段通り」
「ではイクヨ!遥!」
「合点イライザさん」
「あ〜最後か。こえ〜な〜」
「えっ。あなたこれが何者か知ってるの?TEAMイバラギ」
「ああ。これもうちのバンド。てか。お前に対してギターバラッドって息巻いてたやついただろ。あいつ」
「あいつか!?やだわたしあいつ苦手!年下のかわいげがゼロなんだもん!なんかこっちの腹を読まれてそうなそんな底知れなさを感じるのよ!」
散々な評価だぞ遥。まあ。演奏でこの生意気なメスガキは黙らせてやれ。伊地知星歌はそう思った。
さてラストだ!!ダサい名前に騙されるなかれ!メンバーのひとりは現シクハック!実力は折り紙付きだ!そしてもうひとりは謎の男!何者なんだ一体!?TEAMイバラギ〜!!
左右の袖から2人の男女が現れる。片方は白の女子。そして片方は黒の男。
「「なんだかんだと聞かれれば、答えてあげよう御座候。
乱れに乱れしこの業界。正し給うは天使か悪魔か。
真原とひろがるこの次元に、愛も正義も関係なし。
黒のスーツに白の着物。
着こなし現るSexy&Beautyな我々は!!
イライザだよ!そしてこの俺!ギバちゃんだ!2人あわせてTEAMイバラギ!!
6天魔界を駆ける我々には!!グランドクロスの福音が待ってるぜ!ナーンテネ!!」」
前口上を読み上げ、1曲目!この曲はイライザさんたっての希望だ!
「いきますよ皆さん!1曲目悲しみよこんにちわ!!」
うわ…、るーみっくわーるどじゃん懐かし。
斉藤由貴さんだあ…!ほんとに闇鍋だな!何が出てくるか読めねえ!
ベース音を全てギターに置き換えたアレンジをした哀しみよこんにちわで勝負!イライザさんは男ボーカルでも女ボーカルでもどちらでもイケる強みがある!
泣けるなあ…!五代さん好きだったわ。
アニメの最後の台詞な。管理人さんなんだよ結局。
「お姉ちゃんお疲れ!あれ!?その隣の人って!」
「後でお前らと話したいんだと。話だけでも聞いてやってくれ。そんなに悪いやつじゃなかった」
出番を終えて戻ってきた結束バンドのメンツに声を掛ける。にしても…。遥。わたしよりもさらに一世代上だろこの曲。よく知ってんな…。
「ふっ。遥は流石の演奏力」
「イライザさんもうまいわー!参考になるー!」
「き、ギター。あんな音も出るんだ…凄い…!」
1曲目!つかみはよしか!さて!ここから!俺が大好きな曲だぜ!イライザさんにこの曲推したらイライザさんも大好きだった奇跡の一致を見せた曲だぜ!いくぜ!
「2曲目いきます!!みんな何とかモン!って言われたら何浮かべる!?やっぱさ。ポケモンになっちまうよな!?俺は抗い続けた!!今も昔も!ハズレもんにも意地はあんだよ。選ばれた子供たちだったみんな。一緒に歌ってくれ!!行くぜオイ!!2曲目!!Butterfly!!」
選ばれし子供たち。ポケモンではない何々モン。このあたりで会場の観客がざわめく。主に二十代、三十代の男性の観客が!そして!特徴的なギターリフが会場に流れると観客の歓声は爆発した!!
あっ…!!デジモンだ懐かしいうわあああ!!
なんで俺はくだらねえ大人になんざなってんだよ!!
「えっ知らない…!何この曲!?お姉ちゃん!デジモンってなに!?」
「虹夏たちは知らないよ。ちょうど生まれる前くらいだもん…。人気あったんだぞ、ポケモンに持ってかれちまったけど」
「ふわあ、凄い一体感…!」
「いいね〜遥!この曲か!!やっぱ無印だよな!!」
「すごい熱気!!さながらライブジムね!!」
イライザさんがマイクスタンドを振り回し声を張り上げる!非常に映える!サビになるにつれてお客さんのボルテージが上がる!!そしてついにサビだ!!
「うわわわわ凄い!!轟音!?なんでみんな知ってるの!?お姉ちゃん!?ってお姉ちゃんまで歌ってる!!」
「す、凄い…!ホントにステージと演者が一つになってるみたい…!」
「きゃー!!リョウ先輩まで歌ってるわ!!歌詞が知りたい!」
「やっぱ流石イライザさんと青木くんだ。マジすごい盛り上がり」
「まあこの曲はズルいよ。世代だった奴全員に刺さるだろ。おっラストだ」
じじゃじゃじゃん!!全員で息ぴったりに腕を振り上げる!!ホントに今日会っただけの人!?息合い過ぎじゃない!?
「…なんて素晴らしい箱だ。こんな素晴らしい人たちに囲まれてライブできるなんて最高だ。だが。楽しい時間も必ず終わる。ラスト!!最後はポケモンだよ!節操がないって!?うるせえガキの頃の曲はみんな好きなんだよ!!お前らだってそうだろうが!ラスト!!タイプワイルド!!」
最初に展開される草笛のようなギターサウンド。凄いなああんな音まで出るんだ。そこから疾走るようなギターサウンドが展開されイライザさんのボーカルが乗っかる!
やめろお!!この選曲は俺に効く!!
俺の性癖にぶっ刺さって抜けないんだよなあ!どうしてくれんだよ!!
泣いちゃうよ!?いい年こいたおじさん泣いちゃうよ!?
サビで熱いコール&レスポンス!!特に男の観客が熱く叫び返している!!それに返してイライザさんが叫び返す!さすがの声量!でももはやこうなると。実力なんか関係ない。最後の展開で、静かに歩き出すようなペースダウン…、そして。最後に呟くように歌詞を歌い上げて締めだ…。きれいに締めるなあ…。
サンキュー!!!!!
「イライザと!!」
「俺、ギバちゃん!!」
「2人合わせてTEAMイバラギ!!是非覚えて帰ってくれ!!俺達も結束バンドとおんなじで未確認ライオットってフェスに出てる!俺達にも投票してくれ!!なんなら結束バンドじゃなくてTEAMイバラギに投票してくれ!!頼むぜ!!それではまた何処かで会おう!!またな皆!!サイコーだったぜ!!」
TEAMイバラギが去ったステージ上に。万雷の歓声は鳴り止むことはなかった。
「えっ凄い。こんなに凄かったのあの変なギタリスト!」
「あいつは変な奴だが実力は確かよ。それより…言いたいことがあったじゃねえか?」
「あっ…!け、結束バンドさん」
気付けばわたしの前には結束バンドが立っていた。そうだ。今日はこれを目的にきたのだ。
「…ごめんなさい。この間。ギターヒーローさんの仲間である、あなた達に言った言葉。全てを訂正させて。わたしが間違っていた。あなた達は。どんどん進化してる。今日間違いなく一番いい音を出していたのはあなた達だと思ったから…それだけ言いたかった」
「…えっと」
「わたしはあなた達を追っていく。頑張って。ギターヒーローさんだけじゃない。結束バンドのみんな!」
「分かればいいのよ!郁代にもいいなさいほら。こないだからかなりレベルアップしたでしょ」
「結束バンドさんみんなの力が上がってた。ボーカルの人もみんな含めて。みんなガチなんだと思ったわ…。今日はそれだけ!またね結束バンド!」
それだけ言い残してぽいずんさんは去っていく。
「…どうだ?少しは晴れたか?」
「うん。何とか濯げたかな?ねッ。ぼっちちゃん!」
「あっはい!良かった、みんな、認めてもらえて…!!」
「やったわひとりちゃん!借りは返したわよ!」
「ふむ…。わたしはまだぼっちを手放すつもりはない。ならばわたしがぼっちについていけるようレベルアップしないとね」
「りょ、リョウ先輩…!」
結束バンドがお互いに絆を確かめ合っているとステージから降りてくる影。
「なかなか熱い観客さんでしたな。やりやすい」
「ね〜毎回こうだといいのにネ〜!」
「今日も最高でしたよイライザさん!」
「いやいや遥くんコソ〜!」
仲いいなお前らは。
「よっしゃみんな。今日は難しい箱だったろうによく頑張った。わたしが今日は池袋を案内してやるから飲み行くぞ!」
「やったぜ。ご飯。ご飯!」
「ありがとーお姉ちゃん!」
「わぁ…怖い!知らない街怖い!」
「大丈夫ひとりちゃん!わたしがついてるわ!!」
「よっしゃイライザさん!打ち上げですぜ打ち上げ!!」
「やっぱライブ終わりは打ち明けだヨネ!!喉乾いちゃっタヨ!」
「ねぇ〜打ち上げはやっぱり酒だよねぇ〜店もう決めたぁ〜?いい店知ってんだぁ〜!」
「…」
「どっから出てきた廣井てめえー!!」
「いだだだだ!!なんでプロレス技!?」
ハイエナのような人だ。ただ酒の匂いに釣られたな。不味いぞ。今日果たして朝までに帰れるかな!?新たな難題が発生した結束バンド。まあ。大丈夫だろう。未成年だからダル絡みされることもないはずだ。早く下北沢まで帰りたいとこだよな!
あかんスーパー長くなった!次はも少し短く纏めます。いつもの2倍や。こういう時は前後編に分けるべきなのか。