【完結】 ギター爪弾きのバラッド   作:はま0821

38 / 69


自分自身の時間の価値を学生たち一人一人が知っていたら、弱点がないよね?って話。思う存分に時間を使い潰して何かを成して。振り返って気付けばいいのだ。それで、いいのだ


38 花唄いと青き春

 

 

今日はスターリーのみんなの慰安として、井の頭公園でお花見!そして、未確認ライオットの審査の結果が結束バンドに届く日でもある!意外と盛り沢山な一日だ!

 

「あ〜皆さん。今日は皆さんの日々のご尽力に感謝し、ささやかながらの会を用意させていただいた!存分に楽しんで欲しい!」

 

「堅苦しいぞ〜お姉ちゃん〜!」

 

「うっせ虹夏!大人には形式も必要なの!ほんでは…乾杯!!」

 

「乾杯!!!」

 

ここにいるのは結束バンドの面々にPAさんのみ。実質飲むのはお姉ちゃんとPAさんだけだ。少なくない?寂しくないのかな?

 

「なんだ虹夏お前。まさか廣井呼べばみたいな事思ってねえか?奴がいたらどうなると思ってんだ」

 

「…ごめんお姉ちゃん。もう言わない」

 

「分かりゃいい。見えてる核地雷は避けるが吉。お前らも今日は審査の結果来る日だろ?忘れて楽しめとは言わねえが…せめて気楽に待ちなよ。うまい飯でも食ってさ」

 

「お姉ちゃん…!!うんありがとっ!みんな!楽しんでいこーう!!」

 

こうしてお花見は幕を開けた。だが、不参加のメンツもいる。

 

「遥も来ればよかったのに。ただ飯に桜吹雪…。最高」

 

「青木くんはイライザさんと路上ライブだって」

 

「マジメだね。今頑張ったって今日の審査落ちたら意味ないのに」

 

「正論でぶん殴るのやめてあげてよリョウ…。動いてないと不安なんだってさ」

 

「可愛いとこもあるんだね。まあ分からんくもない。虹夏も今日まですごく不安そうだったしね」

 

「そこは見て見ぬふりするのが武士道ってものでは?」

 

舞い散る花とともにガヤガヤとお花見は進行していく。因みにまだ審査の結果は来ていない。…落ちたか?

 

「先輩!!ネガティブは禁止です!お花見を楽しんでいれば結果の方もついてきますよ!ねっひとりちゃん!」

 

「あっはい!」

 

「喜多ちゃん…!そうだね!ネガティブになってたってしょうがないもんね!よっし唐揚げだ!ぼっちちゃん口開けて!!食べさせてあげる!」

 

「ええ!?」

 

「はい♪先輩どうぞ!!」

 

喜多ちゃんがぼっちちゃんの口を開けてホールド。ぼっちちゃんきれいな歯並びしてんな。虫歯一切ないわ。

 

「虹夏。その役。貰い受けたい」

 

「来たかお姉ちゃん…、尋常に勝負。だよ!」

 

「なんか変な勝負が始まったわ!ひとりちゃん一瞬待ちよ!」

 

「あっはい!」

 

「は〜い♡後藤さんあ〜ん♡」

 

「あっぱくっもっもっもっ」

 

「「PAさん〜!!」」

 

「ズルいだろ抜け駆けはなしだ!」

 

「そうだよPAさん!わたしがぼっちちゃんにあげたかったのに!」

 

「ごめんなさい〜!でも口を開けたまんまで待ってる後藤さんがアホ可愛くてつい…!」

 

「は〜いひとりちゃん!あ〜ん!」

 

「あ、ありがとう郁代ちゃん…!もぐもぐ…」

 

因みに今日の唐揚げは伊地知姉妹合作だ。美味しいって言ってくれるかな?

 

「あっ…!これ!この醤油味の唐揚げ!すっごく美味しい…!外はサクサク。中はふわふわ…!」

 

自分でもびっくりする勢いで腕を引く。いわゆるガッツポーズというやつだ。やった!流石わたし!虹夏制作醤油唐揚げに死角なし!

 

「ぼ、ぼっちちゃんこっちは!?塩味の奴!」

 

「お、美味しい…!柔らかくてジューシーです!噛めば噛むほど味が染み出てきて…!醤油とはまた違う味わいです!」

 

二死満塁で三振でも取ったんかってぐらいのガッツポーズをお姉ちゃんがする。よかったねお姉ちゃん。練習してたもんねわたしやリョウで。唐揚げばかり食わされて体重が深刻なことになった恨み忘れてないからね!

 

「いやでも実際うまいよ。伊地知姉妹たいしたもの。もぐもぐ…チビリ」

 

「はっはっは〜!苦しゅうない!苦しゅうないぞリョウ!もっと食え!わたし特製のサラダもいくか!?」

 

「ありがたき幸せ…!」

 

「も〜お姉ちゃん!リョウをあんまり甘やかしちゃ不味いよ!食い尽くし系なんだから!」

 

「失敬な。わたしだって自重ぐらいする。今日は真面目にいかないといけないとこもある訳だし」

 

「…。まあ。あんまり張り詰め過ぎんなよ結束バンド。お前たちはまだ若い。今回ダメでも次がある。結果ばかり追っていくといつかパンクする。のんびり夢を叶えるためのプロセスを信頼できる仲間と共有しな。それがなにより…贅沢な時間なんだから」

 

「お、お姉ちゃん…!」

 

「噛み砕いて言うとだ。もっとみんなと夢を追っかける日々を楽しみなよ。結果なんざそれについて来る添え物みたいなもんだ。そう考えりゃ…。どうだ。少しは気が軽くなってきたりしないか?」

 

て、店長さん…!なんだかんだでわたしたちのこと…。気にかけてくださってるんだなぁ…。

 

「うう〜!お姉ちゃんのくせにぃ〜!分かってるよ〜!そんな事!今のこの日々がすごく貴重だってことぐらいさ〜!」

 

「い〜や。お前らは分かってないね。学生の時分の貴重さは、学生が分かっちゃいけないの!それだけは鉄の掟」

 

「そ〜で〜すね〜」

 

思わぬところからカットイン。PAか…。少しお前の学生論にも興味がある。聞かせてみなよ。

 

「思うに。過ぎ去って初めて気付くんですよ。学生時代ってやつの貴重さに。でも。当の学生本人たちはそれに気付けない。気付いちゃいけないと。そういうことですかね?」

 

「PAさん。なんで気付いちゃいけないんですか?」

 

虹夏ちゃんから無垢な質問。

 

「学生さんが自分たちでそれに気付いちゃうと、魅力がなくなるからだと思いますよ。自分たちの前に展開するすべての日常が当たり前で。気兼ねなく楽しむんです。スポーツなり。音楽なり。その姿こそが魅力であり、今のその時間が貴重だと知っていたら。ひょっとしたら気兼ねなく楽しめなくなるんじゃ、なんていらない心配をしてみたり。だからわたしはそう思うのです。なにも気にせず、心配せず、ただ目の前に必死たれ。と」

 

「…。ぴ、PAさん。わたしたちはど、どうすべきですか?」

 

「どう、とは?」

 

虹夏さんに聞き返す。

 

「わたしたちは学生です…でも。その話を聞いてしまったら。わたしたちはひょっとして自分たちの時間を貴重だとおもっちゃうかも…。縮こまって。なにもできなくなっちゃうかも…」

 

「大丈夫ですよ虹夏さん。それも含めてあなたは目の前に必死になれますから」

 

「…え…」

 

「気にすることなどないのです。ただ、目の前のことを必死にこなすこと。あなた達ならできます。今までやってきたのだから。なにも気にせずなににも左右されず。ただひたすら真っすぐにその道を行けばいい。信頼できる仲間とともに。呼んでないトラブルを解決しようとしてるうちに勝手に日々は過ぎていきますよ。そして大人になったときにあなたは思うのです。あああれが。青い春ってやつか。とね」

 

「ぴ、ぴぴぴPA大明神…!!」

 

「お酒お供えしとけ。中々の託宣をもらったぞ」

 

「お、お酒です…!」

 

「ありゃかたじけない。…ふふふ。日本酒に桜の花びら。風流ですねぇ。もう春ですねぇ」

 

クスクスと妖艶に笑う黒ずくめの女性。…でも。大事な。何かすごく大事なアドバイスをもらった気がした。

 

「…美味しい。後藤さんについでもらったお酒。グレードが二段階くらい上がってません?」

 

「ああわたしもそう思う。ぼっちちゃんからは不思議なエナジーが出てるんだよきっと。わたしにもついで〜」

 

「はいっ!店長さん!」

 

PAさんとお姉ちゃんに挟まれて労働に従事するぼっちちゃんを尻目にわたしは考える…。PAさんに言われた言葉の意味を。

 

「難しい顔。考え事?虹夏」

 

「あ、リョウ。…凄く、為になりそうなアドバイスをもらえたのに、飲み下せないのが悔しい…。わたしは…」

 

「めちゃくちゃ意訳するよ。PAさんは。虹夏にはそのままでいいよ。って言ったんだよ」

 

リョウが言葉を続ける。

 

「今まで走ってきたじゃん。バンドのため夢のため。脇見なんざ一切しないで。きっとそれでいいんだ。目の前に広がる道をただ進む。今迄の虹夏そのままでいいんだよ。結果なんざ後付けさ。ただ、後悔だけはしないように。だから必死たれ。なんだよきっと」

 

リョウの言葉とPAさんの言葉。飲み下してわたしは考える。そして。

 

「なーんだ。つまり。いつも通りのわたしでいいんだ!」

 

「そゆこと。迷うな虹夏。虹夏の夢にはわたしもついてく。…ついて、行かせて」

 

「もっちろんだよリョウ!!おっし!今日一日休んだらまた走るぞ!ちゃんとついてきてよねリョウ!!」

 

「合点承知の助」

 

その様子を流し見ていたPAが一言。

 

「ま、眩しい…。でも。それでいいのです。今は振り返る必要はありません」

 

「…PA。ハンカチいる?」

 

「むぅ。大丈夫です。どっかの店長さんみたいにホイホイ泣きませんから」

 

「うし。戦争だな!思ってても口をついて出ちまったら戦争なんだよ!」

 

仲いい大人たちだなあ。PAさん。ありがとう。わたしは行きたい道を行ってみるよ。ただ、ひたすらに。

 

「でも結果が出たらそれはそれで嬉しいですよね〜。今までやってきたことが実を結ぶんですから!」

 

「もちろんそうだよねぇ喜多ちゃん、未確認ライオット受かってるといいなぁ〜」

 

「そりゃ結果がついてくりゃ嬉しいだろ。添え物って言ったじゃん。カレーに福神漬ついてたら嬉しいだろ?」

 

「なんか雑になってませんか店長さん!酔ってます!?」

 

「失礼な。誰が酔ってるって証拠だよ?」

 

「その機嫌良さそうな赤ら顔が何よりの証拠ですよ!もうっ!さっきまでカッコよかったのに!」

 

喜多ちゃんに怒られるお姉ちゃんを見ながら、未確認ライオットのことを考える。カレーに添えられた福神漬かあ…。確かに。そう考えると気が楽かも。そうだ。最悪、落ちてしまっても、みんなとともに本気で頂を獲りに行った。その日々は消えない。…うん。次!次頑張ればいいんだ!よし!どんな結果でも受け止める!!かかって…!!

 

ぶーっ!ぶーっ!ぶーっ!

 

いつもと違う通知音。ロインじゃない。まさか…。来たか!

 

携帯を取り出す。血相が変わったわたしにその場にいた全員が振り返る。

 

「き、きたのか…?虹夏!?」

 

「ちょっと待ってお姉ちゃん!今確認する!」

 

「あわあわあわあわあわ…!!」

 

「ひとりちゃん。大丈夫!わたしがついてる!」

 

「い、郁代ちゃん…!う、うん!」

 

「ど、どどどうよ?虹夏?」

 

「リョウ。よ、読むよ…?」

 

「えっと。結束バンド様。厳正なる審査の結果、デモ審査を…!!つ、通過となりましたって!!」

 

「「「「やっ!!やったぁぁぁーー!!!」」」」

 

全員で手を繋いで輪になって喜びを共有しあう!!添え物じゃ味わえないよこの喜びは!!次のステージに進めるんだ!まだみんなと一緒に戦えるんだ!!こんなに嬉しいことないよ!!

 

「…おめでとな。結束バンド」

 

「眩しいですねぇ〜。でも。けして嫌いな光じゃないです」

 

かんぱ〜いと。PAと伊地知星歌は盃を合わせる。

 

「お姉ちゃん!!今日は帰りにスーパーで添え物大明神の福神漬を爆買いだ!凄いよ福神漬!!名前からして凄いもん!いっぱい食べよう!!しばらくカレー祭りだよ!!」

 

「まじかよ虹夏勘弁してくれ…。カレーはお前らぐらいの年齢なら大丈夫かもだが我々くらいの年齢になってくると小麦粉と油の塊だからもたれるんだよ…」

 

「わたしはまだ大丈夫ですよ?カレー」

 

「まじかよPA。仲間だと思ってたのに…」

 

「ふふふ。胃腸の強さなら店長に勝ちましたかね?」

 

「ぐぬぬ…。まあ、お前のほうが若いしな。…ヨガにでも通おうかな」

 

「おっ。もし通うなら、わたしも連れてってください。ちょっと興味あります」

 

「無料券もらったのよ。3人行けるからあと1人…。廣井でも誘うか…」

 

「なんだかんだで廣井さんを気にかけてますよね」

 

「気色悪いこと言うなよ。ただの腐れ縁だっての」

 

「せんぱ〜い!探しましたよわたしに黙って花見なんてひどいじゃないですかぁ〜!!」

 

わたしはさっと身をかわしたが店長が避けられず廣井さんの突進をモロに受ける。ど、何処から現れた!?

 

「げふう!?なんだ!?誰だ!?いや、この匂い…!?廣井か!?な、なぜここに!?」

 

「路上ライブしてたイライザと遥くんに聞いたんだ〜なんかお花見してるって!水臭いじゃ〜んなんでわたしに連絡くれないのさ〜!」

 

「こうなるのがわかってたからに決まってんだろが〜遥めぇ~売りやがったなわたしたちを〜!」

 

お労しや青木くん…。年上の酔っ払いに詰められたら喋らざるをえないでしょう…。

 

「店長!!今助けます!!シクハック!ゴー!!!」

 

「志麻!!タックルする時は腰から下ヨ!!」

 

「腰から上はペナルティ!!分かってるよイライザ!!ふんっ!!」

 

「ヘブっ!?」

 

店長に纏わりついた廣井さんにそれはもう見事なタックルが決まる。そのまま廣井さんを店長から引き剥がし、仰向けにし、右をシクハックのイライザさんが。左を岩下さんががっちりホールド。

 

「遥くん!トドメお願い!!」

 

見ると青木くんが立っている。手にはバケツと2リットルのペットボトルの水を携えて!

 

「姉御…。ホントはやりたくねぇ。だが…。御免!!」

 

ぐぽっ!!逃げ場がなかった廣井さんの口に2リットルペットボトルが装着される。ゴキュッゴキュッゴキュッ!!半ば強制的に水を飲まされる廣井さん。

 

「ちょちょちょちょちょちょ!!なにしてんのさ青木くん!!そんな事したら廣井さん…!!シラフになっちゃうじゃん!!」

 

あれ?

 

「何か問題でも?虹夏先輩。酒が急に冷めた影響で放心状態になるであろう姉御を中野の自宅に強制送還してきます。ちゃんと枕元に頭痛薬とおにぎりを添えてね!俺だってやりたくないよこんな事!!仕方ない!仕方ないんだ!!」

 

「その割に顔が嬉しそうだーーー!?」

 

すぽん。姉御の口からペットボトルを外す。と同時にバケツをセットし姉御を誘導して背中を擦る。すると程なく。

 

「おっぼろろろろろろろろろろろ!!!」

 

「な、なんだこいつは…!なんなんだこいつは…!!」

 

「すんません店長遅れて。一瞬巻かれましたが。姉御はもう駄目です。強制送還です。もう一日半は家に帰らず酒を飲みまくり…。体を心配した銀ちゃんさんから用命が下りました。シクハックの皆さんと俺が、責任持って送り届けます」

 

「あ、ああ。おつかれ遥。あれ?でも…まさか。廣井?生きてる?」

 

「んっはぁ…。あ、あれ。せ、先輩…。す、すいません…」

 

「あ。これあれだ遥。お前らの荒療治効いたぞ。アルコール抜けてる。シラフの廣井だ」

 

「ええ!?シラフの姉御!?見たことねえ!?ちょっ志麻さん!イライザさん!!見てみたいからちょっと待って!」

 

「ひうっ…!?ご、ごめんなさいこんな全然ダメな先輩で…!わ、わたし、いつも皆さんに迷惑かけてばかりでぇ…!」

 

な、なんだとぉ…!!あまりの出来事に俺の思考は一瞬止まる。キャラが違いすぎるだろなんだよコレ!?誰かににてるな…?誰だ…!?

 

「シラフの廣井はさ〜。何処となくぼっちちゃんに似てるんだよね〜。なんか心配性なとことか、おっかなびっくりなとことか」

 

「マジすか。確かに言われてみればゴッチに似てる…」

 

「い、いつも迷惑かけてごめんなさい遥くん…。わ、わたしのことなんてき、嫌いだよね…?」

 

ズルいだろコレ。ホントに嫌いでもこんな時嫌いって言えるかよクソが。いや嫌いじゃないんだけど!

 

「イヤイヤ!嫌いじゃないすよ何いってんすか姉御!!」

 

「ほ、ほんと…!?気を使って言ってない…!?」

 

「嘘ついてないっす!!だから安心してください!!」

 

「…よかったぁ」ふにゃあ〜

 

「ひさぶりに見るとキモいな。酒抜けた廣井」

 

「なににセヨチャンス。今のうちに強制送還すべきデハ?」

 

なんてことを仰るんだこのシクハックの2人は!?人の心を何処かに置き忘れてきたのか!?

 

「いや。結局飲んだらあれになるわけだし」

 

「遥くんは初めてだから情が移ってるダケ。2回目からはそんな感情なくなルヨ」

 

「すん…。まあそれもそうか。んじゃ強制送還で」

 

「待て」

 

「…なんでしょう店長?」

 

「1日。1日でいいんだ。この状態の廣井。わたしに預けてくれないか?わたしの目が黒いうちは酒を飲ませないと約束する」

 

「…なぜ?しなくていい苦労を背負い込むのですか?このまま強制送還したほうが楽なのに」

 

志麻さんがそう問う。確かにそうだ。店長の目を盗んで酒を飲みかねない。リスクしかない。と俺は思う。俺も大抵毒されてきてんな。

 

「この状態の廣井。久し振りなんだよ。いろいろ話してえんだ。頼む。1日でいいからさ」

 

「…。店長さんたっての希望なら。ならば。我々は引き揚げます。なにかありましたらそこの遥に」

 

「バイバイ遥!未確認ライオット、通過やったね!!次は二次ダヨ!!頑張ってこ!!」

 

「うっす!!引き続きご助力願います!!」

 

「えっ青木くん!!青木くんも受かったの未確認ライオット!!」

 

「ふっ!まだまだ足掻かせてもらうぜ!結束バンド!!勝負はこれからだ!」

 

「やったね!!今日は家でパーティーだあ!!」

 

「流石だね遥。でもわたしたちも負けない」

 

「リョウ先輩。そちらも受かったみたいですね。負けませんよ!」

 

「すごいわ青木くん!!流石!!」

 

「喜多さんは一気にレベルアップしたよな。きっとヨヨ先輩はまだまだ力になってくれる。何か迷ったり躓いたりしたらまた言いな。いつでも召喚するから」

 

「あ、ありがとう…」

 

「頑張れよボーカリスト」

 

「うん!!頑張る!!」

 

「あ、青木くん…!へ、へへ…!」

 

「…ゴッチ」

 

ゴッチは笑いながら拳を作ってこっちに差し出してくる。…ふっ。生意気になりおって。

 

「センキュウ!!イエイ!!」

 

1年前と同じ。何処か遠慮がちな拳に今度は俺が合わせる。

 

「あ、青木くん…。わたし。変われたかな。ちゃんと。押し入れから出てギタリストをやれてる?」

 

「…。ああ。別人みたいだよ。光り輝いて疾走る。立派なギタリストだ。だがなゴッチ!俺も全力で行く!そうそう負けるつもりはないぜ!」

 

「…ありがとう。ギタリスト。うん!!わ、わたしも!絶対負けない!!」

 

ありがとうな神様。こんないいライバルを用意してくれてよ!このゴッチにはマジで行っても大丈夫そうだ!!

 

「ギタリスト同士で通じ合うな!!2人には罰ゲーム!今日のパーティーの買い出しをしなさい!!」

 

虹夏さんからこんな理不尽を賜る。まあ仕方ないか。よしゴッチいくぞ!

 

「うん!」

 

「虹夏。わたしと廣井は先にタクシーでSTARRYに戻る。みんなは車に気をつけて帰って来い」

 

「わたしたちをなんだと思ってるのお姉ちゃん!」

 

「じゃあわたしが先導しましょう。帰りますよ〜結束バンドの皆さん〜」

 

PAさんが音頭を取る。リョウとわたしは返事をしながらあとに続く。

 

「喜多ちゃん?どうしたのさ帰るよ?」

 

「虹夏先輩…。わたしひとりちゃんと青木くんと一緒に行きます。なんか…不安ですあの2人に任せるの!」

 

「た、確かに。よ、よし喜多ちゃん。あの2人の!特に青木くんの暴走を阻止して!」

 

「誰が暴走するんじゃ!?」

 

青木くんが不平を漏らすが。なんか暴走しそうなのだ。かといってハンドル役をぼっちちゃんにやらせるのは危険過ぎる。ならば。やはり秀華高生の中で1番バランスよくまともなのは喜多ちゃん!たまに喜多ちゃんも暴走するけど!なんか他の人が暴走するより諦めがつくよ!頼んだよ喜多ちゃん!二次会の可否は君にかかってるよ!

 

「虹夏〜美味しいの。頼むぜぇ〜?」

 

「ちょっとリョウ。わたしの料理がマズかったことなんかあった?腕によりをかけて作るよ!PAさんも食べてってください!今日はありがとうございます!」

 

「ふふっ。次の審査も応援してますよ〜。もちろんご相伴に預からせてもらいます〜」

 

さて。なんとかかんとか。七転び八起きあって、わたしたちは。そして青木くんは未確認ライオットの初っ端を突破した。自分たちだけの力じゃない。周りの人たちにもおんぶ抱っこで進んできたからのこの結果だ。これからも慢心することなく、一つずつ先に進んでいこう。…でも今は。今だけは。この小さな前進を喜ばせて。下北沢に向かう電車の車窓。問うても叫べども答えない窓辺の風景にそんな心を投げるのだった。

 

 




廣井さんお酒切れたらどんな感じなんだろう…。個人的にはぼっちちゃんによく似てるけど、ちょっとだけぼっちちゃんよりしっかりしてそう。年齢的な話ではなく。根本の部分で。クリムトの夜のAMEちゃん。ぼっちちゃん。そして酔い覚めきくりさん。誰が1番暗いんだろう?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。