【完結】 ギター爪弾きのバラッド   作:はま0821

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ぱん!ぱぱんぱん!!

「えっえっなに!?」

「はっ、ハッピーバースデーです郁代ちゃん!お、おめでとうございます!!」

「喜多〜。おめでとう!プレゼントもあるぞ!」

「意外とゴッチと誕生日近いんだな。2カ月違いか」

「はっ忘れてた!わたし誕生日だ!」

「ゴッチに誕生日知らせてくれなかったの怒ってたのに自分のは忘れるあたり実に喜多さんらしい」

「あ、ありがとね。さっつー。青木くん。ひとりちゃん」

「はい!」

「うん!」

「おう!」

喜多郁代。ハッピーバースデー!




39 ネットライオット!!

 

 

 

 

皆さんごきげんようだ。この小説の主人公こと青木遥だ。

 

目下の俺の悩みを聞いてくれ。確かに俺達TEAMイバラギは、結束バンドとともにデモ審査をパスした。コレは喜ばしいことだ。

 

だが。すでに次に。ネット審査に動き出している結束バンドに比べて、我々TEAMイバラギには策がない!

 

彼女らは曲がりなりにも(つーか美大生の力借りてんだからかなり本格的)自分達の曲のミュージックビデオまでネットに落としているのだ!

 

あかん…!俺達なんにもネットに残してない!一次通る事ばっか気にして後のこと考えてなかった…!!ど、どうしよう。どうすれば!

 

「ぐむむむむ……!!」

 

「あ、青木くん…む、難しい顔してどうしたの?」

 

「…ゴッチか。いやさ。流石虹夏先輩は頼りになるよな」

 

「…うん。凄く」

 

「俺なんかすっかり忘れてたよ。デモ審査通ることばっかで。二次はネット投票なんだよな。すっかり忘れてた…!どうしよう!何も策がない!」

 

「…虹夏ちゃん。想定してたんだろうな。もし通ったらって。凄い…」

 

「なー。今もSTARRY内に宣伝ポスター貼りまくってるしな。発想じゃかなわねえよ、ホント」

 

「…ネットでならわたしも力になれるかなって思ったけど…、やっぱり、ズルはダメだよね」

 

「あん?どゆこと?ゴッチ」

 

「いや、…わたしのギターヒーロー垢で結束バンドの宣伝してみようかなって。一瞬思ったんだけど…よ、よく考えたらわたし結束バンドのギターとは身バレしてないし…。そ、そもそも、ギターヒーローの力で再生回数稼ぐのはやっぱりなんかズルい気が…」

 

「なにがズルいのさ?まぎれもなくギターヒーローはゴッチなんだから。使えるもん使ってなにが悪い?まあ。相談なしに使うのは確かに違う気がするが…。ん?待てよ…。有名アカウント…宣伝…!はあっ!!」

 

「えっ!?ど、どうしたの…!?青木くん!?」

 

「雷鳴のようだ…。思い付いたかも!?ゴッチすまん。今日は帰る!また明日な!」

 

「えっあっうん…。また、明日…」

 

「店長すんません帰ります!また明日来ますわ!」

 

「お、おう遥。お疲れ。明日頼むぞ」

 

「オス!失礼します!」

 

ガタガタガタ!バタン!!

 

「ふあ〜。どしたのあれ?」

 

「あっ虹夏ちゃん…」

 

「ぼっちちゃんお疲れ。青木くんどしたの?なんか忘れ物でもしたのかな?」

 

「わ、わかんないですけど、何か思いついたみたいに行ってしまいました…な、なにかに悩んでたみたいですけど…」

 

「ふ〜ん…?まあ、いいや明日聞こ。青木くんが突飛なのは今に始まったことじゃないしね」

 

「あっはい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

うおおおお!!コレだ!コレしかないかも!!シデロス!!大槻ヨヨコ!!シクハックの皆さん!オラに力を!分けてくれい!!ずだだだだだだだ!!

 

満身の力を込めて下北沢から新宿にワープをかける。て言うか、そもそもイライザさんに会わないことには話が始まらないのだ。どっちにしろ新宿FOLTに用がある!

 

「すんませんお邪魔します!!」

 

「あら青木くん。しばらくぶりね元気してた?」

 

「お疲れさまです銀さん!いつもぶつしけでホント申し訳ないんですが今日はシクハックの皆さんって…!?」

 

「ここ先行った雑談所みたいなとこでダベってたわよ。そういえば、未確認ライオット。受かったみたいね。よかったじゃない〜♪」

 

「はい!ありがとうございます!実はそのことでイライザさんに急ぎ伝えたいことが…!」

 

「頑張ってね青木ちゃん。若者が頑張ってる姿ってのは応援しがいがあるわ〜♪」

 

「あざっす!すんませんまた今度ゆっくり!」

 

「ええ。また!」

 

言われた通りに雑談所を目指す。たどり着いてみるとそこにはシクハックの面々とシデロスの面々がいた。…一石二鳥だぜ!!

 

「ワオ。遥!いつも唐突だねどうしタノ!?」

 

「そういや言ってなかった。遥くん。イライザ。突破おめでとう」

 

「んえ〜?2人ともいつの間に突破したのお〜?全然記憶にな〜い」

 

「ありがとうございます志麻さん!…ですが喜んでばかりもいられない、次の審査はネット審査なんすよ!イライザさんてネット強いですか!?」

 

「エ!?いや…それなりカナ〜?なんて…」

 

「我々TEAMイバラギ!路上ライブは結構な頻度でやってますがネットの露出はほぼゼロ!!このままではここまでです!なんか策を練らんと!」

 

「た、たしカニ!!ヤバい!!」

 

「…ふふふ。そうですね。ヤバいですよね!?」

 

「エ!?遥くん…!?」

 

「実は!あなた達をアテに来ました!新宿FOLTのオーチューブチャンネル!登録者10万人!この影響力なら!!」

 

「そ、そうか!?なんか始めたって言ってたヨネ!?志麻!?」

 

「た、確かに聞いたな…なんか有志でオーチューブチャンネル作ったって…」

 

「え〜なに〜?遥くん?興味あるのぉ〜わたしのアル中チャンネル!」

 

「成人してから観ますすんません!…ったく!シラフの姉御のほうが全然性格マシだぜ!」

 

「えっなに…!?し、シラフのわたしって…!?遥くんに見せたっけ…!?」

 

(こないだのこと忘れてやがんな)

 

(知らぬは本人ばかり…ダネ!)

 

「お願いです皆さん!どっか1コーナーだけでもいいんで譲ってくれんでしょうか!?登録者10万人のチャンネルにのれれば一気に知名度問題解決なんすよ!!」

 

「た、確かに…!!ワ、ワタシからもお願い!みんなのチカラ!カシテ!!」

 

「いや〜でもわたし、アル中チャンネルしかもってないし〜」

 

「わたしはもともとチャンネルもってないんだ。力になれずすまん」

 

くそ!?駄目か!そう思った時!どこかしらから声がする!

 

「お困りのようね青木遥!!」

 

「なにい!?その声…ヨヨ先輩!!」

 

「フッ。その通り!わたしこそ大槻ヨヨコ!!そして!」

 

「シデロスっす!!はいみんなポーズ!!」

 

背景が爆発しそうなポーズを決めつつシデロスの登場だ。なんかギニュー特戦隊みたい。

 

「そちらも突破おめでとうございます」

 

「あれ!?言ったっけ!?」

 

「いえ聞いてません。シデロスが1次審査ごときで落ちるわけないと思ったんで聞くの省きました」

 

「ふっ…!中々味なことするわね青木遥!1本取られたわ!」

 

「青木氏。実は新宿FOLTチャンネルは大体シデロスメンバーと店長のチャンネルなんですよ」

 

「なにっ!?あくびさん!それはまことか!?」

 

「っす。それでわたしたちはひとりひとり違う曜日を受け持って回してるんです。例えばわたし火曜日。ふーちゃん、水曜、幽々さん木曜。みたいに。んで。月曜なら譲ってもいいです」

 

「ちょちょちょちょあくび!?月曜はわたしのコーナーじゃない!?わたしの爆伸びメントスコーラのコーナーじゃない!?誰の許しを得て言ってんのよ!?」

 

「はっきり言いますヨヨコ先輩…!!オーチューバーのセンスないっす!!」

 

「ガーーーーーン!!!!!」

 

「今メントスコーラなんてヒカキンがやっても許されないんすよ!!もっといいネタ引っ張ってくるまで使いたい人に使わせてあげれば…!!200周遅れのネタでバズりなんて絶対無理っす!」

 

「に、200周遅れ…!!」ガーーーーーン!

 

…フォローしたほうがいいか?いやしかし…。ヨヨ先輩。俺ですら知ってるぞ。メントスコーラ。あれのなにが面白いんだよ!?

 

「…。ふっ。薄々気づいていたわよ…。わたしにはオーチューブの才能がないくらい…。で、でも。ただで青木遥に渡しちゃったらまずくない?敵に塩を送る形に…!」

 

「あれ?わたしが知ってるヨヨコ先輩はこの程度のハンデ問題ない!って言うと思いましたけど…?あれ?わたしの見込み違いでしたか?」

 

「あうっ!?と、当然よ!?このくらいいいハンデだわ!青木遥!!自由に使っていいわよ!!」

 

「チョロいっす」

 

「マジすかやったー!!イライザさん!貸してもらったこの枠で昭和歌謡やらアニソンの歌ってみたをやるんすよ!これから2週間!そしたら二次のネット投票もパスできるかもです!」

 

「希望が見えてきたね遥!!ワタシたちネットじゃほぼ無名!頑張ってイコウ!!」

 

「おっしゃ!早速なんか1つ撮ってみましょう!すまんあくびさん!!力貸してくれ!」

 

「いいすよヒマですし。んじゃそこのスタジオでやりましょう!」

 

「遥!ワタシあれ歌いタイ!港のヨーコ!!」

 

「任してくださいイライザさん!!なら一発目はそれでイキましょう!!」

 

…あうう!やっぱ少し不味いかも!?青木遥はともかくとして、イライザさんは侮れるような人じゃない…!い、いや!!1度言ったことよ大槻ヨヨコ!わたしならこの程度の苦境!問題ないわ!自分に自信を持ちなさい!!

 

「そいや大槻ちゃんさあ〜。最近結束バンドのみんなに会った?」

 

「あっ姐さん…!いえ。もともとそんなに仲良い訳でもないですし…」

 

「う〜ん。一応結束バンドも勝ち抜いてるから気になってんだよね〜。日替わりでシデロスと一緒に投票してあげようかと…」

 

「何ですか?わたしたちおんなじ箱の仲間のシデロスより結束バンドとるんですか?」

 

「ひ、日替わりだっていってんじゃ〜ん!あ、相変わらずこえ〜な〜!」

 

「…でも。まるきり骨がないバンド。ってわけでもなかったです。楽しみな子が1人…」

 

「ぼっちちゃん?ピンクジャージの子でしょ?」

 

「いえ。奴も気になるのですが…赤毛のセンスがアリアリのボーカルが。名前が喜多郁代」

 

「…へぇ~。大槻ちゃんに認められるんだ。その子もじゃあかなりのもんだね」

 

「ええ。あれは伸びますね。凄く教えてて楽しかったです。今のところは結束バンドで一番気になったのは彼女ですかね…」

 

「…未確認ライオットで敵になる?」

 

「まさか。…ですが。将来的にはおそらく」

 

「…の割には楽しそうだよね大槻ちゃん。流石。余裕を感じるよ」

 

「まさかまさか。毎日必死です。でも…それと同時に、わたしはわたしのしたい事もしたい。目にかけた才能が開くのも見たいんですよ。わたしの目が節穴じゃない証明として」

 

「…なんかわかるかも。わたしもぼっちちゃんが開花する様。見てみたいし」

 

「…どちらが早く実をつけますかね?」

 

「もちろん。ぼっちちゃんだよ。わたしの勘は当たるのだ」

 

「ふっ…。なんか。そんな気してきますよ。流石廣井きくりさん」

 

「イヤイヤそれほどでもないよ!大槻ちゃん!」

 

「…あれがこないだ水飲んでシラフになってアワアワ言ってた廣井と同一人物だとは。わたしすら疑っちゃいたくなるよ。…大槻ちゃんは廣井のシラフ時に立ち会ったらどうなるのかな?」

 

誰に聞こえるともなく岩下志麻は独りごちる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おっしゃイライザさん!!流石ですわ!!」

 

「遥コソ!!相変わらずゴキゲンなギターサウンドダネ!」

 

ガシッと腕を組みこないだ決めたルーティンを2人で決める!最後に口上もきっちり取っといた。これキッカケでバズんね〜かな〜。俺も何かしらでバズってみて〜よ〜!

 

「青木氏。流石のギターですね。侮れない…」

 

「あくびさん!褒めるな褒めるな!!今日はありがとう!なにかで後で返します!!」

 

「いえこちらこそ。いいもん聴かせて貰いました。んじゃ編集してアップしときます。お疲れ様です」

 

「あざっす!イライザさん!来週も行きましょう!目指すは二次突破ですよ!!」

 

「合点だよギバちゃん!!TEAMイバラギ!まだまだ粘ってイコウ!」

 

青木氏がイキイキと帰っていく。それを見送ったあと、ヨヨコ先輩に声を掛ける。

 

「ヤバいですよ、ヨヨコ先輩。わたしが思ってた10倍くらい青木氏ギター上手いです。あんな上手い人に塩送って大丈夫なんすか?」

 

「嘘!?そんなに!?ギター弾いてるとことったのあくび!?」

 

「それはバッチリ」

 

「見るわよ!ライバルの研究は余念があってはいけないわ!!」

 

研究熱心な後輩たちの後ろ姿を笑顔で見送りながら廣井きくりが笑いを漏らす。

 

「いまいちカッコつかないな〜大槻ちゃんも。…でも…あんぐらい臆病で自分に厳しくないとあの歳でトップは難しいのか」

 

「は〜楽しかっタ!きくり〜お疲れ〜!」

 

「イライザ。そうだ。イライザから見てどう?遥くんのギター」

 

「メッチャクチャ上手いね。ワタシが未確認ライオット優勝した時より多分上手い。凄いよアノ歳で」

 

「…そうだよねぇ。凄い。凄すぎるよ」

 

「…?きくり?」

 

「…なんか。怖いんだよね。あの子の裏にある。おそらくあるだろうギターに対する並々ならない執着。そういう激しい感情が、彼からは全く読み取れない、なんか。虚みたい」

 

「…」

 

「興味が出てきたよ遥くん。君がなぜそんなに上手いのか」

 

「練習したカラじゃナイノ?」

 

「もちろんそれもあるだろうけどねぇ〜」

 

廣井きくりは戸惑う。ただ上手いだけの高校生。それだけにはどうしても思えないのだ。青木遥。奴が上手い理由…。上手くならなきゃならない理由。そいつが、どこか穴が空いたような場所から流れ出してしまって。得体のしれない暗闇に覆い隠されてしまって。だから読み取れないのかと。らしくない邪推までしてしまう。

 

「…ヤバくなったら。相談しなよ。青木遥。抱え込むなよ」

 

誰に聞かれるでもなくその呟きは闇に消える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

所変わって今度はSTARRY。戻ってくると同時に俺はゴール決めたサッカー選手みたいなパフォーマンスをしていた。

 

「あ、青木くん。…その様子だと何かがうまくいったみたいだね!」

 

「虹夏先輩!なんとか首の皮一枚繋がりそうすよ!いや!繋がるだけじゃないな!余裕こいてんなよ結束バンド!逆転の一手になるかもだぜ!?」

 

「ほほう!楽しみにしてるよ!少し前に万策尽きた!みたいな顔してたのにねぇ!?」

 

うぐっ!?

 

「あ、青木くん…。よ、よかった。う、うまくいった、の?」

 

「おうゴッチ!ものの見事にハマったぜ!まだまだ負けないぜ!?」

 

「しぶとい奴め遥。おとなしく負けて我が結束バンドの軍門に下るのだ」

 

「青木くんが結束バンドに!?きゃー!!戦力大幅アップよー!!わたしギター弾かなくてもよくなっちゃう!?」

 

「いや軍門には下らないから!たとえ負けたって!」

 

「…ちっ!」

 

「まだ諦めてなかったんすか…」

 

「当たり前だ遥。お前とぼっちがいればマジでハードロックバンドとしての活動も夢ではない!表現の幅が広がるのだ!」

 

「まあ。将来的には考えなくもないすけど…」

 

「はい。いま重要なこと言った!言質取った!郁代!聞いてたよね!?」

 

「あっすいませんリョウ先輩!余所見してて聞いてなかったです!」

 

「んだよもおう!!」

 

あっぶね…。危うく言質取られるところだ。でも…。俺が結束バンドに入らないのは思春期だからであって。いつぞやか俺が成長し。思春期を卒業できたなら。考えてもいいのかな…。などと思い、再び結束バンドのメンツを見直す。

 

虹夏先輩。リョウ先輩。ゴッチに喜多さん。はい無理。ムーリー!!顔良すぎるわ照れる。絶対無理だ指動かんくなる!高校中は少なくとも無理だな。やはり俺にはガールズバンドの黒一点なぞ無理。頑張ってこっち方面も鍛えていこう…と。青木遥は決意を新たにするのであった。

 






ギターバラッドが抱える心の闇。少しずつ触れていけたらと思います。

有り難いことに気になると言ってくれた方もいたので…。

当たり前ですが奴の超合金メンタルには理由があります。奴の幼少期が全ての原因です。かなり辛い幼少期です。

少しずつ明かしていきます。
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