【完結】 ギター爪弾きのバラッド   作:はま0821

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いるな?奇跡は起こらないから奇跡とかいうやつ。だが、誰も信じられないような出来事が起こったからこそ、奇跡って言葉があるんじゃないか?



41 ラブレターフロムヘブンズドア!

 

 

 

 

 

やっぱり凄いぜ。投稿頻度ってのは正義なのか。あれからゴッチに言われた通り、頻度を上げ、2曲ずつ投下していたら。上がってきたぜ順位。回ってきたぜ再生数!まだ終わりじゃねえ!土俵際の粘りだ!最期の粘り腰を発揮するんだ!

 

「まあ上がったと言ってもまだまだ合格圏内には届かないけドネ〜」

 

「うぐっ。イライザさん。わざわざ言葉に出さんでも…!」

 

「遥くんたちでもダメなのか。レベル上がったな未確認ライオット」

 

岩下さんがそんな感想を漏らす。ただいまTEAMイバラギは20位ほど上がってほぼ結束バンドと同じ45位。残る時間は1週間弱。まあ…厳しい。

 

ここは新宿FOLTのレコーディングスタジオ。シクハックの皆さんと一緒に、TEAMイバラギの音源をレコーディング中だ。ストックの曲も切れてきたので、新しく曲を撮り下ろしながらやる。

 

「まあ〜お姉さんとしちゃよかったよ。遥くんのギター。その歳だと少し不健全かなとも思ったけど、やっぱり勝ちには執着しないけど負けたくもないんだね」

 

「当たり前でしょ!?やる前から負けること考えるバカがいるかよ!」

 

「おっ猪木」

 

「…、大体、俺のギターのどこらへんが不健全なんですか?アール18を意識して演ってますよちゃんと」

 

「いや〜。こればかりは勘違いだったかも!わたしも完璧に聴き分けられるわけじゃないし!執着がなさすぎるなぁ〜ってちょっと思っただけだから!今聴いてみたら遥くんのギターは全然健全かも!」

 

「…ふ〜む」

 

姉御は理由もなくこんな事を言う人ではない。確かに執着は他の人達と比べて、ないかもだが。闇。闇か。今度じっくり考えよう。…俺の心の中の、闇…。なんかカッコイイ!

 

「イライザさん!動画投稿しましょう!最早これしかない!人事を尽くして天命を待つ!ですよ!」

 

「また格好いい日本語!なんて意味なの遥!?」

 

「人事とは人間ができるすべてのこと!これを尽くしてあとは天に委ねるとこんな感じの意味です!」

 

「なんだ!当たり前の事ダネ遥!」

 

「えっ!?」

 

「出来ることを全てやるナンテ当たり前!むしろ!結果如何の1番大事な部分!天に任せちゃだめだよ!そこを天に任せちゃう人達よりも!わたしたちは前に出ヨウ!!」

 

「ははっ。流石イライザ。どう?遥くん。凄いでしょウチのは。諦めるなんて字は彼女の辞書には載ってないのよ」

 

姉御が感嘆したように呟く。

 

「初回の未確認ライオットの時も何度このポジティブシンキングに助けられたか…。ほら、わたしたち意外と2人共ダウナーじゃん?」

 

岩下さんが懐かしむように同調する。

 

「遥くん!人事尽くして、天命を捕まえに行きまショウ!ラブレターは送るばかりじゃバランス悪いよ!神様の耳元で歌ってヤレバ少しはこっちが気になってくるんじゃナイ!?」

 

…すげえなこの人。

 

「そうですね!全力で神様にラブソング歌いましょう!そしたら少しは運もついてくるかもな!」

 

「イエス!そうだよ!神様を捕まえちゃエバ奇跡もどんでん返しも楽勝ダヨ!!」

 

いいねぇ!!神様を捕まえるか!気に入った!!そうだよ神様捕まえちゃえば運命なんざ掌の上だぜ!ふはは!!未確認ライオットに参加する全てのバンドよ!TEAMイバラギの前にひれ伏せ!!

 

「乗ってきたね遥くん!!すべての基本はポジティブシンキング!!悪い方に考えても良いことなんにもない!良い方に良い方に転がれるように!ポジティブシンキング!忘れちゃ駄目ダヨ!」

 

「なんか…大丈夫かねぇ?一応イライザがアクセルで、遥くんがブレーキ役だと思ってたけど…。今見ると両方のブレーキがぶっ壊れた暴走機関車にしか見えない…」

 

「い〜んだよ若い時はあんなんで。止まる時のことなんざ一々考えなくてい〜の。エネルギーなくなったら勝手に止まるし。それまで走り続けたらいいんだよ、それでようやくじゃん?このフェス突破できるかはさ」

 

年長者である岩下女史と廣井女史。若者の暴走を何処か羨望の目で見やる。この有り余るパワーで、果たして二次審査。突破できるのか!?

 

 

 

 

 

 

 

所変わってこちらはSTARRY。結束バンドの根城だ。

 

「た、只今の結束バンドの順位…!28位〜!?」

 

「す、凄いです、…一気に上がってる!」

 

「この順位をキープできれば上に行けるよ!やった!みんな!!」

 

「虹夏。油断はなし。まだ3日残ってる。…でも。ひとまず喜ばしいこと」

 

「リョウ先輩!やりましたねっ!きっと今までやってきた地道な努力が実を結んだんですよ!」

 

「でも、どしたんだろね?いきなりMVも伸び始めて…。未確認ライオットの順位の方もうなぎ上り…。不思議なこともあったもんだ!」

 

「それに関しては虹夏。あれだよ。ばんらぼってとこに誰かが記事書いてのっけてくれたみたい。MVのコメントに書いてあった」

 

「ばんらぼ…。ちょっと待って…。ホントだ。取り上げられてるよ結束バンド!次にバズる若手バンドだって!いやぁ〜照れるなぁ〜!」

 

「誰が…。どんな人が書いてくれたんですかね?ライターさんは分からないんですか?」

 

「喜多ちゃん。う〜ん。だめだ匿名だ。見知らぬライターさんかな?」

 

(ライターさん…結束バンド…もしや…)

 

「うぃ〜す。今日も今日とて働くかぁ~!皆さん!重いもんはこの青木遥におまかせを!」

 

いつの間にやら新宿FOLTから帰還していた青木くんが元気にみんなに発破をかける。…でも確か。青木くんのバンドの順位…。

 

「あっ。青木…くん」

 

「どうしました虹夏先輩?なんからしくなく暗くないすか?」

 

「…いや。青木くんのネット審査の順位…」

 

「…そうすね。まだ40位。厳しいすねはっきり言って。…でも。今際の際まで諦めませんよ。俺は諦めが悪いんです」

 

にやりとニヒルに笑い踵を返し仕事に戻っていく。その後ろ姿になにか声を掛けなければならない。そんな気がして。

 

「あ、あおっ!」

 

「待った虹夏。どんな声を掛ける気?」

 

「ちょッリョウ?」

 

「頑張れよ?諦めんな?…多分さ。遥はどっちも分かってるんじゃないのかな?遥の目は死んでなかった。まだ諦めてないよ、多分」

 

「うっ…。そ、それはそうだけどぉ…」

 

「虹夏。遥は今敗退の際にいる。わたしたちはなんとかギリギリ合格圏内。勝者が敗者にかけられる言葉なんて哀れみしかないんだよ。どんな言葉で飾っても」

 

「ちがっ!そんな事言いたいわけじゃっ!」

 

「受け取る側の問題。それに、虹夏。まだ油断できない。あと2組に抜かれるだけでわたしたちの立場も一気に遥とおんなじになる。言い方悪いけどかまってる暇ないよ」

 

「う…。で、でもさあ…。仲間が戦ってるんだよ。…何か声かけたいじゃんよぉ…」

 

「仲間なら。信じてやることも大切。遥なら大丈夫。こんなとこで負けるようなやつじゃない。きっと逆境をはね返して突破してくるさ。だから。わたしたちがまずは突破しないと」

 

「リ、リョウ…。…うん。分かった。そうだよね。わたしたちがまずは突破しないと!それからだよね!」

 

「そう。頑張っていこう。油断大敵」

 

 

 

 

 

 

 

 

「でもホント。誰なんだろこの記事上げてくれたの。路上ライブのことまで書いてるし、こないだの池袋闇鍋ライブにも…。相当わたしたちのファンよね!?」

 

「郁代ちゃん…。そ、そうですね…。郁代ちゃんの歌声。相当レベルアップしたって書いてありますよ…。大槻さんとの練習が功を奏しましたね…」

 

「そんなとこまで見てるなんて…。このライターの人。いったい何者…」

 

「ぽやみさんじゃね?こないだの池袋ライブで和解したって言ってたじゃん?見直した結束バンドの事記事にしてくれたんだよ」

 

「青木くん!あっそうか!あの人ライターだったんだ!コスプレイヤーかと思ってたわ!」きたーん!

 

なんてひどい…。本人が聞いたら泣くなこれ。

 

「わ、わたしはみんなが、バンドの他のみんなが認められて嬉しかったです…へ、へへ」

 

「でも…確かに。あの人なら辻褄が合う。なんだかんだで助けられちゃったかぁ。あの人もツンデレだねっ!」

 

「喜多さん舐められたから借りを返すみたいな、ヤンキーみたいなこと言ってたもんね」

 

「ち、ちがうわよ青木くん!多分わたしの取り組む姿勢がチャラついて見られたと思って…!そこを正しにいった!というかぁ…!」

 

「あ、郁代ちゃん…!有言実行。カッコいいです…!」

 

「ふふーんですわ!まあわたしも!チャラついてるだけじゃないバンドマンなんだって!これでぽいずんさんも分かってくれたんじゃないかしら!?」

 

「ね〜。俺はバンドのイソスタで化粧品勧めてる人みたの喜多さんが初めてだからねぇ〜。チャラついてる思われてもしょうがないんじゃね?」

 

「うう〜!青木くん!意地悪言わないで!」

 

「…。あ、青木くん。二次審査の順位…」

 

「…ああ。かなり厳しい。万策尽きたしまずいかなこりゃ」

 

「…あのね。わたしが知ってる青木くんは、この程度じゃ弱音なんか吐かないの」

 

「う〜んでもな〜!今強がったって嘘になっちまうし、厳しいぜ…。やっぱりさ…」

 

「わたしの知ってる青木くんは、こんな困難なんか物ともしないで不敵に笑ってギター1本でいつでもどうにかしてきた。…今回も見せてよ。楽勝でしょ?ギターバラッド」

 

「ゴッチよ。ズルいぜ」

 

「ゴメンね。今のは…ズルい自覚。あった」

 

「…ちくしょう。いつもカッコつけてきた代償がこんなところでぇ!だがな!ゴッチに言われるまでもねえ!諦めるつもりなんざはなからねえんだよ!おう俺はギターバラッド!諦めの悪い男だぜ!こんぐらいの苦境どうにかしてやるぜ!舐めんなよギターヒーロー!!結束バンド!!」

 

「…た、啖呵切っちゃったね…。わたし、覚えておく、から。これで簡単には負けられなくなった、よ?」

 

「なんか今日ゴッチが厳しいな!?だが!!最早背水の陣!心頭を滅却し挑むのみ!!」

 

「頑張れ青木くん!よしんば駄目だったとして!あなたには役割りがあります!客席でわたしたちを応援するという役割りが!」

 

「今考えうる最高の煽りをどうもありがとう!喜多さんはナチュラルボーン煽りストだな!!クソが絶対に受かってやる!なんで結束バンドの応援なんざしなきゃいけねえんだふざけんな!」

 

「だから言ったろ遥。わたしたちの軍門にくだっとけと」

 

「まあ!2人より3人!そして4人より5人だよねぇ!バンドは数だよ青木くん!」

 

「うるせっ!まだ負けたわけじゃないわ!…くっそ、ぽやみさんめ!池袋ライブ見てたんなら俺らのライブも見てたはず!なぜ結束バンドばかりで俺たちは取り上げてくれねえんだ!」

 

「あーそのことだけどな?」

 

「おお店長!なにかグッドなニュースですか!?この青木遥に対する!?」

 

「ほら。お前らがさっき見てたサイト。ばんらぼ。今さっき更新が来て、新しいバンドの記事が載ってたぞ?なんか。かたっぽ白装束を着崩した女ボーカル。かたっぽスーツをパリッと着こなした謎の男のバンド。これお前らじゃね?」

 

「えっ!?」

 

言うが早いか結束バンドの面々が店長のパソコンの前に集まりだす。

 

「ホントだ更新来てる…!ぜ、絶対そうだよこれ青木くんだって!ぽいずんさん忘れたわけじゃなかったんだよ!書いてたんだ!時間差になっただけだ!」

 

虹夏先輩が声を上げる。と同時に俺のスマホが鳴り出した!

 

「い、イライザさん!どうしました!?」

 

「遥くん!今シデロスの皆に言われて気付いたんだけど!凄い勢いで歌ってみた動画が伸びてるの!な、なんだろうコレ!?」

 

「マジすか…!?ヤベェ、ぽやみ効果ならぬばんらぼ効果ヤベエ!!」

 

「ほら遥くん!諦めなければ何か起きるノヨ!いつだってわたしたちが求めてるものは諦めの少し先にあルノ!」

 

「…!!はっ!ははっ!!ちげえねえやイライザさん!柄にもなく諦めちまうとこだった!まだ俺たちは死んでないですよね!!」

 

「ふっ…。遥め。しぶっとい奴」

 

「あ、青木くん!す、凄い…!!」

 

「ホント。らしくないわよ青木遥。わたしのギターの師匠の片割れでしょ?この程度の審査で落ちてもらっちゃ困るわ」

 

「郁代ちゃん?誰かのモノマネ?」

 

「シデロスの大槻ヨヨコさん!こんな感じで言いそうじゃない!?」

 

「ふふ…。た、確かに」

 

…。凄いなあ。青木くん。今度もひっくり返しちゃった。流石に本人は諦めていたみたいだけど。諦めの少し先にある希望か…。教えられたな。今回は。青木くんに。誰に聞かれるでもなく伊地知虹夏はそうごちた。

 

「まだまだだ!あと3日!40位からの巻き返しだ!結束バンド!まだ俺たちは死んでないぜ!!」

 

「凄いね青木くん!まさかあの状況から光を見出してみせるとは!でもまだわたしたちのが上だよ!まずは合格圏内まで這い上がってくることだね!」

 

「虹夏先輩!言われるまでもねえよ!」

 

「まあ。お前がいないと本戦つまらない。遠慮なく叩き潰せるヤツが減っちゃうから。せいぜいわたしたちの跳ねのいい踏み台になってよ遥?」

 

「踏み台にされてたまるか!いつも踏みしめられてるものの意地を見せてくれるわ!主にクリボーを筆頭に!」

 

「…青木くん。あなたには恩がある。でも。勝負となれば話は別。…わたしにギターやボーカルの手ほどきをした事。後悔した?」

 

「全然。全く。喜多さんは最初から上手くなる素質はあったさ。俺や大槻さんは少しだけ手を貸しただけ。大体、後悔するなら最初から教えてないよ」

 

「…ありがとう青木くん」

 

「ほ、ほんとにどうにかしちゃうんだね…青木くんは」

 

「へっ…!吐いたツバは飲まんかったぜ。どうだゴッチ!」

 

「す、凄い。…諦めなければ何かが起こる…か。わたしも、覚えておこう。あなたは今回もまたギター1本で逆風を跳ね除けてみせた。ホントに凄い…!」

 

「いやー!でも今回はイライザさんの力も多分にあるぜ〜?ぽやみさんの記事の力も借りちまったしな。俺1人じゃどうにも出来なかった」

 

「多分。青木くんだから力を貸してくれたんだよ?シクハックの皆さんもイライザさんも。…あのライターさんも…。だからそれも含めて青木くんの力じゃないのかな?」

 

「俺の力…?」

 

「うん…。困った時、迷った時助けてくれる仲間…。コレは間違いなく、青木くんの人徳。だから、青木くんは自分の力でこの苦境を突破したんだよ!」

 

「ふっ…今日は随分と持ち上げるじゃねえか?でも…ありがとう。今回ばかりはもう駄目かと思ったぜ」

 

「あ、青木くんでもそういうふうに思うこと…あるんだね」

 

「当たり前だろ〜精一杯に虚勢張ってるんだよ〜あ〜今回ばかりは心臓縮んだぜ」

 

「」

 

「ん?なに?なんか言った?ゴッチ?」

 

「う、ううん?なんでも…」

 

とても小さく。なにかゴッチが言った気がしたが…。気の所為だったみたいだ。

 

ようやくの少しの希望。あとはなんとか、3日以内にこじ開けて前に進むのみ。イライザさんが。姉御が。あくびさんにヨヨ先輩。新宿FOLTのみんなにここSTARRYの仲間たち。僅かな突破口を開いてくれた。

 

どんな小さな灯りだって灯っていればあとは辿っていける。

 

そしてなにより。俺の背中を信じてついてきてくれる酔狂な野郎。

 

人一倍に臆病なくせに、自分が信じたものに関してはビタ一文譲らない中々の阿呆。

 

奴の信じる灯を消さないためにも。俺はまだ止まるわけにはいかない。

 

次勝ち抜けばようやくライブの実力を見てもらえる!ややこしいネット審査とやらはおさらばだ!なんとかここだけ!喰らいつくんだ!TEAMイバラギ!!

 

「楽しくなってきやがったぜ!まだ終わってねえ!」

 

 

 

 






奇跡はあるけど、魔法はないよ?でも今回で少しだけ主人公に希望が見えました。

残り10組!なんとかゴボウで抜いちまいたい!

頑張れ青木遥!負けるな青木遥!!土俵をわるまで勝負は終わらねえ!
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