【完結】 ギター爪弾きのバラッド   作:はま0821

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ヒーローはいつでも人を助ける。ならば。ヒーローは一体誰に助けてもらえばいい?

下北沢にはもう一度、遊びに行ってみたい…。夜と昼では、街の顔が全然違いそう。前行った時は昼だったんだよな〜。


43 音楽とカレーの街。下北沢!

 

 

ふう…。美味い。この抹茶。若者の間で大流行だそうだ。まあ、俺も若者だが。得も知れないこの甘み。これが抹茶本来の甘みってやつか…。なるほど。下北の識者たちに人気な理由も納得だ。

 

ここは下北のとあるカフェ。なにやら抹茶が人気とのことで、実力を確かめるべく、この俺自ら味を確かめてやってる次第だ。合格。大合格。

 

斜向かいの席にはゴッチ。横には虹夏さんと喜多さん。お誕生日席にはリョウ先輩。そう。結束バンドは今日。オフである。

 

流石リョウ先輩がセレクトするカフェ。無駄にオシャンティーである。店内には今時CDや有線ではなく、レコードの生音が流れている。曲が切り替わる時に僅かに流れる特有のノイズが何処となく郷愁を誘う…。レコードなんか初めて聴くぐらいなんだけどな。

 

雑多に置かれている様々なアンティークの中に、音楽に合わせて踊る花(なんか昔激烈に流行ったらしい)なんてのもあり、このお店の層の厚さを感じる。

 

「うーん!このタピオカミルクティー美味しいわー!これが下北の味よね!」

 

喜多さん…。今更タピオカて。2周くらい流行遅れてない?

 

「わたしが好きだからいいの!流行らなくなったからって飲まなくなるのは愛が足りないいい証拠よ!」

 

ふむ。愛に対して芯はあるようだ。1度も飲んだことないけど、喜多さんがここまで惚れ込む味。今度試しに飲んでみるのも悪くないかもしれない。

 

「ぼっちちゃんはなに食べてるのそれ?」

 

虹夏先輩がゴッチに話しかける。どうもおしゃれカフェの雰囲気にまだ慣れきってないゴッチが心なしかソワソワしつつ。

 

「えと、サンドイッチです虹夏ちゃん。ハムのやつと、チーズのやつ…」

 

「お〜。美味そう。いくらハシゴするの確定とはいえわたしもなんか食べればよかったかな〜?」

 

手元のアイスコーヒーを啜り上げつつ虹夏先輩。あまりここで食べ過ぎると次の店の物が入らなくなるから、作戦としては間違ってないと思うんだがな。

 

今なんと朝の10時。休みの日なのにめちゃくちゃ早起きだ。遊ぶ時はとことん遊ぶ。メリハリきいてて実にいいが、少し眠い。そして遊びの大まかな方向性は決まってない。大丈夫かコレ。途中でやることなくなって時間あるのに解散の王道パターンを踏襲してるぞコレ。

 

「なに虹夏。次のわたしプロデュースのカレー屋で食べればいい。味は保証するよ」

 

こういうの来なさそうなリョウ先輩が珍しく前のめりだ。だが。リョウ先輩はかなりのカレーマニア。奴が美味いというカレー屋だ。大外れは恐らくないだろう。

 

「さて。各々食べたらそろそろ出よう。時間はたっぷりあるとはいえ、無限ってわけでもない」

 

「あっはい」

 

次の店に向かう方向のようだ。なかなか美味かった抹茶に後ろ髪を引かれる思いで別れを告げる。…店の名前覚えとこう。まぁまぁ良かった。

 

お店を出てまだ昼前の、下北沢を行く。雑貨屋から流れてくる例の匂い。結束バンドのみんななら知っているのかな?などと思い尋ねてみると。

 

「確かに!なんだろねこの匂い!嫌いじゃないけど、凄い特徴的だよね!」

 

とは虹夏さん。

 

「気にしたことなかったわ!雑貨屋さんの匂いだと思ってたから!言われてみれば変な匂いね!」

 

とは喜多さん。

 

「あ、わ、分からないです…。わたしは、嫌いな匂いじゃ、ないですね…」

 

とはゴッチ。

 

「お香だったりアロマだったり、店によってさまざま。教えてもらえるから、気になるなら店員さんに聞くといい」

 

とはリョウ先輩。リョウ先輩は答えを持っていた。

 

「さて…。わたしは今日はこれを楽しみに来たまである。虹夏!右!」

 

「はいよ!」ガシッ。

 

「郁代!左!」

 

「ラジャーですリョウ先輩!」ガシッ!きたーん!

 

「えっえっえっ!?」

 

一瞬にして古着屋の前にてゴッチが拘束される。事情を分かってなさそうなのはゴッチだけなのであの3人は打ち合わせでもしてたのだろう。なんだ?なにが始まるんだ?

 

「ふふふ…。ぼっち。突然だがそのピンクジャージはもう見飽きた!」

 

リョウ先輩がそう宣言する!

 

「ええ!?わ、わたしのアイデンティティがあ!」

 

「今日ぼっちは生まれ変わる!わたしたちの手によって!」

 

「ぼっちちゃん!女の子たるものいつでもおんなじピンクジャージでいて良いはずがないよ!今日はいつもと違うぼっちちゃんになってもらいます!」

 

虹夏先輩も力強く説く!

 

「そうよひとりちゃん!いつまでもそんな芋クサピンクジャージばかり着てないでカワイイカッコしなさい!ひとりちゃん普通にしとけばカワイイんだから!」

 

喜多さんが同調する。分かったこいつらゴッチで遊ぶ気だ!ゴッチを古着のビスクドールにしちゃう気だ!

 

「芋クサピンクジャージ…」

 

深刻だなダメージ。いつも大体Tシャツで決めてる俺が言うのもなんだが…ゴッチはちょっとワンパターンにすぎる。…たしかに俺も見てみたいかも!

 

「あうあうあうあうあ、あの…リり、リョウさん…!?」

 

「諦めろぼっち。観念してわたしたちのビスクドールになりなさい」

 

「あ、青木くん!た、たす!助けて!」

 

助けを求めてきたゴッチになるべくこんな返しはしたくないが、大袈裟に手を上げて、お手上げのポーズだ。それを見たゴッチの表情が、深い絶望に染まっていく。

 

結局、結束バンドの他の3人に連れられて、ゴッチは行ってしまった。…俺も古着見るか。ゴッチの完成にはまだ時間かかりそうだし。

 

慣れない古着屋。だが俺も今は下北民。真似だけでも選んでいる感!を出していく。おっコレカッコいいな。レザーのアウター。いくらだ?うおっ高いな!…なし。安くカッコいいやつを仕入れるのが玄人っぽくない?などと思っていると、店の奥から姦しい女子たちの戯れ声。どうやらゴッチのコーデが完成したようだね。見せてもらおうか…。芋クサピンクジャージを脱ぎ捨てた、ゴッチの真の実力とやらを。

 

ふんぞり返って、ぼっちはわたしが育てた。などと宣っているどや顔リョウ先輩と、めっちゃ笑顔でどこか誇らしそうに、ウンウンと頷き。ぼっちちゃんはカワイイんだよ。普通にしてればアイドル級のかわいさなんだよ!と自身で納得している虹夏先輩。

 

「きゃー!!やっぱりひとりちゃんカワイイ!面食い喜多郁代のセンサーにハズレはないのよ!」

 

喜多さんのテンションがぶち上がっているな。そんなに上手くコーデできたのか。どおれちょっと拝見…。

 

「…!お、おお〜!」

 

ガチ目に恥ずかしがっているゴッチは手で自分の顔を全て覆ってしまっているため表情は伺いしれない。

 

耳まで真っ赤になっていることで大分感情的にギリギリなのは分かるが。

 

今のゴッチの格好を解説すると、黒のモコモコニット帽に、ピンクのニットのセーター。ノースリーブ。肩丸出しである。ゴッチは自分では絶対にしないコーデだろなコレ。

 

そして下の方は、かなり短いミニのスカート。女子高生風のやつが今人気らしいのでそれなのかな。

 

全体見ると…。凄いな。かわいらしいマジで。いかに普段ゴッチが素材を使い潰しているかわかるな。

 

「ぼっちちゃ〜ん、大丈夫凄いカワイイから!手どけて顔見せて〜!」

 

「うう…!!股下が凄くスースーします…!だ、大丈夫ですか!?お見苦しいもの見えてませんかコレ!?」

 

「大丈夫見えてない。いろんな角度から確認してる」

 

「やあ…!リョウさん…!見ないでぇ…」

 

「な、なんかドキッとしますねリョウ先輩!」

 

「ち、ちょっと2人共!なに親父みたいなことしてるのさ!?ぼっちちゃん嫌がってるでしょ!」

 

とかいいつつさり気なく虹夏先輩もローアングルに移行しつつある。まあ気になるよね。しょーがないね。

 

「騙したなリョウ!スカートっぽいズボンじゃんコレ!」

 

「残念だったな虹夏〜!そう簡単には見せてやらんぞぼっちのシークレットゾーンは!」

 

「わたしも見たいです!ひとりちゃんのお御足!あわよくばそれ以上も…!!」

 

「ふええ…!あ、青木くん…!た、助けてぇ…!」

 

はいはい、やめなさい変態3人衆。ゴッチが割とガチ目に怖がってるから。

 

「全く…!なにさすましちゃって!こんなにカワイイ子が爆誕したんだよ!?もっと慌てふためくとかさ、そういうカワイイリアクションできないの青木くん?」

 

虹夏先輩からよく分からんパスを貰う。なにか勘違いしてるな。なにも感想がないってわけじゃないぜ?

 

「す、すみません、青木くん…。お、お見苦しいものを…」

 

「何いってんだよゴッチ。めちゃくちゃ似合ってるしカワイイぞ。自信持て!」

 

「えっ!?…はふあ…」

 

「おお〜見事なカウンターパンチ。青木くんでも一応気は使えるんだ」

 

「虹夏先輩、別に気なんか使ってないですよ。カワイイって思ったからカワイイと言ってます」

 

「…!やるね〜!青木くん中々の男っぷりじゃん!」

 

「あうう〜!」

 

茹でダコのように真っ赤になったゴッチを尻目にリョウ先輩が音頭を取る。

 

「さあぼっち!今日はそのイケイケ若者コーデで下北練り歩きだ!手始めに昼メシカレー屋に行くぞ!」

 

「ま、マジで勘弁してくださいリョウさん…!本気で恥ずかしいですぅ…!」

 

「ひとりちゃん。たまにでいいからその服着て。ホントに似合ってるから」

 

リョウ先輩がオススメするカレー屋に向かう。リョウ先輩曰く、かなり下北の中でも歴史が深く、味は間違いないとのこと。期待できるなこりゃ。楽しみにしつつ、喜多さんとリョウ先輩とゴッチを追った。

 

 

 

 

リョウ先輩オススメのカレーも食べ終わり店を後にする。確かに凄え美味かった。なんか…俺が今まで食べてきたカレーよりも1段上だな。今度から昼食うとき毎回このカレーが頭掠めることになるんだろうなと。1人思う。

 

「んあ〜!美味しかった〜!さ〜て!これからどうする?」

 

そうだ。この先の行動を決めてない。ここでなにも決まらんと結局グダグダになるパターンだ。

 

「虹夏先輩!今日は特になにも決めてないのがコンセプトですから、なにも決めずにこのまんま下北沢をぶらりしましょう!」

 

「ふむ…!オッケー喜多ちゃん!取り敢えずテキトーにぶらついてみようか!」

 

「あの虹夏ちゃん郁代ちゃん!わんちゃん帰ったりとかは…!?」

 

「わんちゃんないね!よしっ行こーうぼっちちゃん!」

 

「ああああ!御慈悲を〜!」

 

そんな嫌か。せっかく褒めたのに。奴はなんであんなに自己肯定感低いのかね。喜多さんと虹夏先輩に引きづられてくゴッチを見ながらそう思う。

 

「生まれ持っての性分。そんな1日2日で変わったら苦労しない」

 

「分かってるのにあんなカッコさせたのは中々ですなリョウ先輩」

 

「ああいうカッコに慣れてかないといつまでもぼっちは引っ込み思案のまま。子どもを谷底に突き落とすような気持ちでやってるよ」

 

ヨヨヨと、わざとらしいウソ泣きを披露するリョウ先輩。口が半笑いじゃなきゃその言葉にも真実味が帯びてくるのになぁ〜。まあ。たまにはいいだろゴッチも。いつもピンクジャージて。独特すぎるからな。などと考えながら前を行く集団を追った。

 

「でもさ喜多ちゃん。なにもアテなしに回るのもケッコーキツくない?」

 

「そうでもないですよ先輩!下北の街ってなんか眺めてるだけで楽しいじゃないですか!」

 

「あ、凄くおしゃれな街ですよね…。ほ、ほんと。わたしみたいな激ダサピンクジャージがいていい街じゃないような…!1年経っても全く慣れません!」

 

「ぼっちちゃん大丈夫もうぼっちちゃんは下北の仲間だよ!だからわたしの背中に隠れてないで出てきて!」

 

まだ慣れないのかゴッチは。最早下北の街に慣れることなんざ、一生ないんじゃないか?

 

「ほっほっほっ…。じいさんや。若いのは元気があっていいですのう…」

 

「やめてくださいよリョウ先輩。俺まで老け込んでくるじゃないですか。…前、アー写撮影してた時はどこ行ってたんすか?」

 

「え?確か途中で勝手にエスケープしたから全部は知らないけど…映えそうな壁の前とか公園とか。前のジャケット、郁代が卒業式欠席した生徒みたいになってたからさ」

 

エスケープしたんかい。

 

「そういやそうだった!青木くん!リョウときたら酷いんだよ!?興味を失ったらすぐエスケープだよ!」

 

「ふむ…。虹夏先輩。前アー写撮るために巡った所回ってみてくださいよ。興味あります」

 

「お?そう?じゃあその感じで!途中買い食いアリで!」

 

楽しんでるなあ。前行けなかったし興味あるのよ。なにがあったのか。

 

まずはと、虹夏先輩が現在のアー写を撮影した場所に連れて行ってくれるようだ。なんか…みんなでジャンプしてるやつ。なにがとは言わないが。きららっぽいな。ウン。

 

「おっ。あったあったここだ。この塀だ」

 

「リクエストしておいてなんなんですが、何の変哲もありませんね…」

 

「でもここで大事件起こったんだよ?ほらこの写真。ジャンプした瞬間を撮ってるじゃん。このときなんとぼっちちゃんの…!」

 

「2ににににに虹夏ちゃん!!その話はどうかご内密に…!!」

 

「おお!?そうそうそれ!そういう反応が前欲しかったのよ!」

 

「うう〜!わ、忘れて…!忘れてください…!」

 

「?」

 

なにがあったというのか。ゴッチに関連する話らしいが。まあ…本人嫌がってるんだ。無理に聞くまい。

 

「みんなにわたしの真似して撮らせたらなんかお通夜みたいな雰囲気になった」

 

「そらリョウ先輩のマネしたらそうなる。バンドのアー写って確かにお通夜みたいな奴が多いけど」

 

「でもわたし、あのアー写も好きでした!なんか全員影がある感じで…!全員リョウ先輩みたいで!きゃー!!って感じでした!」

 

「いやーまあ。見てみたい気もするけど。やっぱ結束バンドって明るい雰囲気のアー写のが似合ってる気がするよ喜多さん」

 

いつの間にやらどこで買ったかなクレープを頬張りつつ喜多さんが感想を漏らすので返答しておく。

 

どうやらその他にも色々回ったそうな。思い出を回顧するように、下北沢の街を巡る。

 

「…あ」

 

「?どうしました?虹夏ちゃん」

 

「ここ。この公園。…懐かしいな…」

 

「ええと…。…あ」

 

「…ふ」

 

前を行く2人が何を言いたいか分かってしまったので、思わず笑みがこぼれる。

 

「ちょうど1年くらい前のあの日。喜多ちゃんがライブから逃げちゃったから、ギタリスト探しに来たあの公園だ」

 

「うぐぅ!?そ、その節はほんとご迷惑を…」

 

「もういいんだ気にしてないから。…逆、かも。喜多ちゃんが逃げなかったら。わたしはここにいる変なギタリスト2人に会えなかったのかも。後々喜多ちゃんも戻って来てくれるし。結果論だけどね」

 

虹夏先輩がその日のことを回顧する。それに俺も同調する。

 

「そこのブランコにゴッチが座ってて。ほんで俺は当時マジで友達が1人も居なかったから誰か友達が欲しかったんだ。ゴッチギグバッグ背負ってたから。音楽の関係者だろうと思ったら、居てもたってもいられなくなって。気付いたら話しかけてた」

 

「そういや、なんか話の途中で話しかけちゃったけど、あんときなんの話をしてたの?」

 

「ド直球に、ゴッチに俺の友達になってくださいって。依頼してました」

 

「だから、音合わせ終わったときぼっちに友達になってくれ!って言ってたんだ?」

 

「リョウ先輩。そうです。しまった忘れてた!って」

 

「あはは。ご、ゴメンね?途中で話しかけちゃって。…でも。感慨深いなぁ…、この公園から。すべて始まったんだよね。オーディ゙ション受けてライブやって未確認ライオット出て…。わたしさ。みんなと会えてホントによかった」

 

虹夏さんがらしくなく、アンニュイな眼差しを遠くに投げながら呟く。すると。

 

「虹夏先輩。わたしがです。それ」

 

「おう?喜多ちゃん?」

 

「みなさんに、結束バンドとしてもう一度拾い上げてもらってなかったら。わたしはずっと、逃げたギターのままでした。ありがとう、ございます。こんな、こんなわたしを受け入れてくれて」

 

「…!き、喜多ちゃん…!」

 

「わ、わたし。皆さんでよかった。皆さんに会えて、ホントによかった」

 

消え入りそうな声で、喜多さんが感謝を述べる。さあっと、1陣。風が吹き抜けたような。そんな感じがした。

 

「…虹夏ちゃん。リョウさん。郁代ちゃん。青木くん」

 

ともすれば、今吹き抜けた風に掻き消されてしまいそうな小さな声で、今度はゴッチが口を開く。

 

「わ、わたしもみなさんにお礼を言いたい…。ありがとう。わたしを。見つけてくれて」

 

「青木くんがあの日話しかけてくれなかったら。あの日虹夏ちゃんと出会ってなかったら。今でもそんなことを思うと、震えが止まりません。わたし、つまらないから学校辞めちゃおうかな。とまで思ってたんです。暗く冷たい、押し入れの中から外に出る、キッカケをくれてありがとう」

 

「!…いや〜なんか照れるなぁあはは〜!」

 

「…虹夏ちゃんは。台風ライブの日にわたしのことを、ヒーローみたいと言ってくれました。でも…。わたしからしたらみなさんが。ヒーローなんです」

 

「虹夏ちゃん。いつも元気で明るくて、暗闇を明るく照らす光みたいで、暖かな。寄る辺のような虹夏ちゃんにいつも救われています。…ホントにありがとう」

 

照れくさそうに虹夏先輩は頭を掻きながらそっぽを向く。しかし、ゴッチがいる方向に、指がサムズアップを作っていた。

 

「リョウ先輩。わたしが迷ったとき、立ち止まったとき、現状を瓦解させるような、そんな助言をくれます。音楽の先輩で、頼りになるけど、ちょっとお金にだらしない…。私の音楽を、馬鹿にせずに聴いてくれてありがとう。これからも頼りにしてます」

 

フフンと照れくさそうにリョウ先輩が鼻をすする。

 

「郁代ちゃん…。あなたには。何度学校で救われたか分かりません。友達1人もいないわたしに、何度もあきらめず話しかけてくれてありがとう。あなたがいなかったらわたし。とっくに学校辞めてたかもしれません。あなたの、向かうところ敵なしな明るさに、何度も何度も救われました。…ホントにありがとう」

 

「ひ、ひとりちゃん…!」

 

「そ、そして…。あ、青木くん」

 

「青木くん。わたしはいつか。あなたのようになりたい。あなたのような、どんなものにも恐れず退かず、どこか余裕すら感じるような笑顔さえ浮かべて立ち向かっていくような。そんな本物のヒーローみたいに。わたしが思う、ギターヒーローの完成形。それがあなたなのかもしれません。…いつもわたしの前を、頼もしい背中を見せながら歩いてくれてありがとう。わたしもいつか。あなたに追いつけるようなギタリストに」

 

「面と向かって言われるとめちゃくちゃ照れるな!あ、アリガトなゴッチ!なんかめちゃくちゃ買ってくれて!」

 

「…ふふふ」

 

たまにゴッチって包容力ある笑い方するよな。姉属性だからかな?

 

「…!みんな!円陣組もう!」

 

唐突に虹夏先輩が言い出す。なんだどうしたんだ!

 

「なんか最終回みたいな雰囲気だけど、未確認ライオットまだステージ残ってる!結束バンドの結束力!さらに上げて突破していこう!それがきっと!みんながバンドに託した夢の実現につながっていくよ!」

 

「〜!はいっ!虹夏先輩!」

 

「合点。また頑張ってこう!」

 

「虹夏ちゃん!わたしも頑張ります!辛くなったら言って下さい!支えになります!」

 

正確に言えば俺は、未確認ライオットでは敵同士だ。だが、今ばかりは。細かいこと言うねい。

 

「いくよみんな!!結束バンドー!ファイヤー!!」

 

「「「「ファイヤー!!!!」」」」

 

1年前。俺はこの公園で妙なピンク色のギタリストと、明るい金髪のドラマーに出会った。それ以来奇妙な縁は今日今日まで続いている。この縁の終わりはいつになるのか。分かりはしないが、今はこの縁を楽しもう。いつか来るであろう、道を違えるその日まで。

 

 




虹夏ちゃんや喜多さんは後藤ひとりに感謝していますが、後藤ひとりも皆に対して感謝してるんですよ、って話です。ギタリストとしてはまだ道半ば。頑張れ後藤ひとり!お前が腕を上げることで、結果結束バンドの力になるぞ!
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