結束バンドとTEAMイバラギのパフォーマンス。それぞれ何を背負い、この未確認ライオットを駆け抜けてきたのか。そんなお話。
俺は積み上げてきた。何を?練習を。この未確認ライオットを獲るために。いや…。果たして。ホントにそうか?俺は、音楽に優劣なんざないと思ってる。ならば。ここで負けちまっても、何も変わりはしないはずだ。ならば。何故勝ちたい?何故負けたくない?
この舞台に立ちたかった人達。俺以外にも居たはずだ。そんな人達を押し退けてまで、俺は此処に居る。なぜ…?
今なら分かる。この戦いは、もはや俺だけの戦いではない。この舞台に立つため、倒して来たバンドマンたち。そいつらの思いも一緒に背負っちまってる。
だから。自分の意志だけで負けられない。勝手に降りることは許されない。負けて夢破れた者たち。そいつらの思いも一緒に乗っけて、俺は戦う。そいつらの、未確認ライオットに向けた情熱に、報いることが出来るように!!
「TEAMイバラギー!!ふざけた名前しちゃって!!許さないから!!簡単に負けたら!あんたらはあたしたちの代わりにそこ立ってんだよ!!簡単に負けてみろ!ぶっ飛ばしてやる!!」
あれは…恐らくネット審査で落ちちまったバンドマンたちだろな。ふん。言われなくとも…!
「分かってら!優勝して未確認ライオット獲ってやんよ!優勝者に負けたなら諦めもつくだろう!?」
「くそっ…!口が減らない…!!ああもう!頑張れ!TEAMイバラギ!!負けんな!!」
熱いな。あの思いも俺達は背負ってんだ!もはや相手が誰だろうが、退くわけにはいかない!!
「私たちが優勝シテ、彼女らを立ててアゲヨ!!」
「うす。行きましょうイライザさん!!
「さあ!次なるバンドは!1人はなんと現シクハック!前に出てた時はギタリストだった気がするが、今回はボーカリストとして参戦!清水イライザ!!そして、清水イライザが弾かない分のギターを一身に担うのがこの男!え〜と。渡された資料そのまま読むぜ?ギターバラッドぎゅっと縮めて可愛げを足してギバちゃんと呼んでくれ!イライザとギバちゃんで、TEAMイバラギだ!」
はだけた白の着物を着こなす金髪の美女。そして、パリッとカッチリスーツを着こなしたグラサンとテンガロンハットで目元が全く見えない男がステージ上に現れる。今までと奴らが違うトコロ…。それは。
「あ、あれ…。青木くん。アコースティックギターだ」
後藤ひとりはステージ上を見てそう呟く。
「ほんで今まで歌うだけだったイライザさんがエレキギター下げてるね。ここにきて役割交代…?」
山田リョウもその呟きに反応する。すると。
「青木くん、アコギ弾けんのかな。見たことないけど…」
「虹夏先輩。多分この大舞台で、出来ないことやりはしないでしょう。…さすがに青木くんでも」
若干不安げに喜多郁代がフォローする。そう。奴ならやりかねない。
今まで温めてた。イライザさんが、この曲歌うときが1番気持ちが乗るって言ってたから。…満を持してだ!イライザさんの、感情的でいて、なおかつロジカルな音色のギターを聴くがいい!
特徴のあるリフのエレキギターの音色が、会場に響く。と同時に、この曲を知ってるであろう参加者や観客たちから反応が漏れる。
「…ズルいわこの選曲」
「あいみょん!!」
「ヤバいイントロのギターだけで泣きそう」
「マリーゴールドだ!」
青木遥のアコースティックギターの音色と、清水イライザのエレキギターの音色だけが、会場に響き渡る。…そう。それ以外はなしだ。ドラムも。ベースも。ほぼギター以外はアカペラみたいなものである。なのに。
「きれいな音色。アコギうまぁ…」
「凄いな。歌声から感情が伝わってくる。溢れんばかりの感情が」
「低音カッコいい…!」
「麦わらの帽子の君が揺れたマリーゴールドに似てる。あれはまだ空が青い夏のこと、懐かしいと笑えたあの日の恋!もう離さないでと泣きそうな目で見つめる君を雲のような優しさでそっとギュッと抱きしめて抱きしめて離さない」
素晴らしい。今まで重ねてきたリハの中でも。今日が1番調子いいんじゃね?声の伸びが半端じゃない。ここに調子のピークを持ってくるのか…。凄いな流石プロ。はい。どっかの酒飲みお姉さんは爪の垢を煎じて飲ませてもらうように!
「ヤバいな。イライザ本気だ。ガチイライザ。ガチイザだ」
「ホントだな。歌に感情が凄い乗ってる。ボーカルの才能もあったんだな…凄えなうちのは。この感じでシクハックでもボーカルやってもらうか」
「おっとっと志麻さん?わたしクビ?クビですかい?」
「ダブルボーカルもいいかな〜と。お前は影でイライザは陽」
「ふふ。いいかもね。そしたらわたしの労働量も減るし〜。頑張れ〜イライザ〜!」
光を受けて七色に光る汗が舞い散る。イライザさんがその中心で舞い踊る。俺は横で支えるだけ。髪を振り乱し、マイクを握りしめ、ただ叫び上げるように感情を撒き散らすイライザさんを、影のように。
「綺麗…」
「ホントだねぼっちちゃん!イライザさん。すっごい綺麗!」
「汗まで綺麗とかズルいでしょ」
「カッコいい〜!イライザさん!」
結束バンドがそれぞれ感想を漏らす。
終盤に向けてさらにイライザさんの声に乗る感情が!色濃くなっていく!まるで喉を絞り上げるようにして歌声を捻り出していく!流石だ、イライザさん!頼もしいボーカルだぜ!!
「いつまでもいつまでも離さない〜!」
ラストのサビを歌い上げ、イライザさんは会場の天井を見上げる。俺もアコギを弾く手を止めて、イライザさんを見つめる。正確には。ラストのギターを弾くタイミングを計っているのだ。一瞬訪れる静寂。機材トラブルかと。会場がざわめき始める。その一瞬前。
曲の初めに流れた、特徴的なリフが再び響いた。ただし今度は、もっと感情的に。それでいてコードを押さえる指はロジカルに。イライザさんのエレキギターが響き渡る中、俺もあらん限りにアコースティックギターを掻き鳴らす。
やがてイライザさんのエレキギターの音が小さくなる。それに合わせて、掻き鳴らしていたギターの音を少しずつ絞り、最後にガッチリエレキとアコギを合わせる!!締めだ!
「…凄い」
「ヤバい。敵なのに普通に感動しちゃった…」
口々に会場のオーディエンスから反応が漏れ、まばらな拍手が起き…やがてそれは、万雷の喝采へと変わる。
指が震える。ちゃんと出来たかな。今まで、誰かの思いまで背負ってやったことなかった。俺は。俺の音楽を、やれたかな?
「遥!」
声がした方に顔を向ける。イライザさん…。
「サイコーだったヨ!!凄く気持ち良かった!それもコレも、歌ってるときのギター遥が担当してくれたからダヨ!おかげで気にせず、全力で歌えた!アリガトー!」
イライザさんに抱きつかれ、少し安心する。するとようやく、耳に入るようになる。万雷の歓声。
「やるわね青木遥。また会場の空気が入れ替わったわよ」
「シデロス以外にもここまでのレベルのバンドがいるとは…。どうやら簡単にはいかないみたいだね」
探す。視線を回して。そして見つける。サムズアップを送ってみる。
「…!TEAMイバラギ!あんたらに負けて、よかったわ!凄かったわよ!」
ああ。俺は。守れたんだな。あのバンドたちの思いを。
「イライザさん!!」
「遥くん!!」
「「いよっしゃああ!!」」
ガッシーン!!と、肘の内側を交差させる。出し切った。もはや悔いはない。
「アリガトー!」
「ギターバラッド!略してギバちゃん!面倒くさかったらコレだけでも覚えて帰ってくれ!ありがとう!!」
ステージを降りる。少しは会場の空気も変わったかな!?
「な、なんか。やっぱ凄い男だね青木くんは。会場の空気また変えちゃったよ!」
「虹夏。そんぐらいじゃなきゃ倒しがいがない。そでしょ?」
「…そだね。よし!TEAMイバラギが変えた空気をまたわたしたちが変えられれば!流れは来るよ!」
「そうです!演奏順は遅い方が見てる方覚えやすいですよ!流れを一気に攫いに行きましょう!」
「郁代ちゃん!虹夏ちゃん!辛くなったら頼って下さい!今日の人を食べまくったわたしは一味違いますよ!」
「よし!ぼっちちゃん!最後に概念の人!も一つ分けて!そしたら…未確認ライオットのセミファイナル!獲りに行くよ!!」
「「「おーーーー!!!!」」」
「ふふふ…。出てきたねぼっちちゃん。さて…!どう転ぶか、見ものだねぇ!」
「やたらと結束バンドのギターを推すよなお前。そんなに琴線に触れるのか?」
「志麻、あの子は普通の子と逆で、土壇場になればなるほど、潜在能力を発揮するんだよ。今のこのシチュレーションなんか恰好だよ」
「へえ…。楽しみだなそれは。お前が惚れ込むほどの才能か。見せてもらおうか」
「頑張れーぼっちちゃ〜ん!」
廣井きくりの声援に送られて、後藤ひとりと結束バンドは未確認ライオットのセミファイナルのステージに立つ。
「始めまして!下北沢からやってきました!エゴサが全く機能しません!結束バンドと申します!よろしくお願いします!」
おっ。ちょっとだけ受けてる。喜多さん流石。箱が変わればお客さんの反応も変わる。諦めずにやってきて良かったな。
「始める前にリードギターの後藤ひとりから1言あります!聞いて下さい!」
…おう?後藤ひとり。聞き間違いじゃなきゃ、ゴッチから1言?こういう場所で喋るタイプじゃねえだろあいつ。
「あっ。…始めまして。結束バンドの後藤ひとりと申します…」
「声ちっさ」
「震えてんじゃん、頑張れー」
「…」
何を喋るのだろう。こんな場所でわざわざ喋るのだ。よほどの思いだろう。
「えっと。わたしたちがこのフェスに出たのは、ある人にこの4人で活動する意味を問われたからです…」
…。うん。
「わたしは。認めたくなかった。その人はわたしを認めてくれても、わたし以外の他の仲間を認めてくれなかった。おんなじ苦労をしてしんざんを舐め、苦労も、喜びも。ともに分かち合ってきた仲間を。…凄く、悔しかった」
…。そうだな。悔しがってたもんな。泣くほど悔しがってたもんな。
「その人の言葉を認めたくなくて。その言葉を跳ね付けたくて、ここまで、バンドとして、力をつけてきました、わたしたち、結束バンド。その結束力!!見て下さい!!」
ぎゃうぎゃうぎゃうぎゃうぎゃう!!
言うが早いか。ゴッチの顔に似合わないメタル調の凶悪なギターが会場を支配する!
「…なるほど。ぼっちちゃんが泣いてたのはそういう…。凄いね。ぼっちちゃん。わたしが力貸すまでもない。自分で借り返しちゃいそうだ」
「流石廣井が見初めた子だな。いい音を出す…」
「んでしょ!?志麻!ぼっちちゃんはね!凄いのさ!」
「ひとり…成長したな。流石我が娘」
「お姉ちゃんカッコいい〜!」
「あらあら、今晩は赤飯でも炊こうかしら!」
「母さんやめたげて。ひとり恥ずかしがるから」
ひっそり会場に来ていた後藤家は、こんな反応を残した。
違う…!ギターヒーローさんだけじゃない!バンドとして、凄い勢いで進化してるんだ!
…良かった評価変えといて。こんなに進化するバンドの事、ガチじゃない。なんて評価してたらわたしのライターとしての資質まで問われちゃうわよ。
…いいバンド。きっと今の貴方達なら。どんな場所だって光り輝ける!シデロス!ケモノリア!TEAMイバラギ!みんないいバンドだと思う!けどわたしは!結束バンドが、一番いい音出してると思うわ!頑張れ!
ぽいずん♡やみ。ふざけた名前の割に、評価は真面目なアンバランスなライターは、結束バンドをこう評価した。
「…!!ふふふ…。こ、このくらいじゃないと倒しがいないわよ」
「ヨヨコ先輩。ちょっとヤベーって思ってません?」
「あくび。実は少し。ここまでやるとは、結束バンド…。でも大丈夫。わたしたちだって負けてないわ。勝てるわよ自信持ちなさい」
「なんか。わたしにじゃなくて自分に言い聞かせてそうですねぇ?」
「ぎくぎくぅ!」
(まだだ!まだ終わりたくない!この仲間と一緒に!上に行くんだ!まだ頑張れるだろ!?全部絞り出せ!後藤ひとり!!)
(わたしはもう逃げたくない!自分の役目からもギターからも、ひとりちゃんの思いからも!ひとりちゃんと一緒に上に行くんだ!まだ使ってない部分全部!捻り出せ!)
(ぼっち!わたしたちは答えられてるか!?お前の仲間として!もし!答えられているのなら!これからも一緒にバンドとしてやっていこう!ぼっちの夢見た場所に!一緒に行こう!)
(ギターヒーローぼっちちゃん!貴方に並び立ってみせる!あなたの隣で弾ける仲間なんて!わたしたちしか居ない!それを証明してみせる!そして!一緒に行こう!ファイナルステージ!わたしたちなら行けるよ!絶対に!)
「…凄え気迫」
「ネ!これはすごいライバルが出てきたネ!」
「イライザさん。勝つのはうちらですけどね」
「容赦ないネ遥!」
流石だギターヒーロー。だが!上に行くのは俺たちだ!その道を譲りやがれ!!
「3000組がしのぎを削った未確認ライオット!!どいつもこいつもいい音出すバンドたちだったぜ!この中からファイナルに進めるのはたったの2組!!運命を決めるのは、ここにいるみんなの投票だぜ!!さあ!投票してくれ!!」
「…悔いはない?ぼっちちゃん」
「…はい。出し切れた。と思います」
「そうだね。負けたら悔しいけど…。これで負けたらしょうがない。くらいに思えるくらいには、出し切れたかな…」
「わたしは楽しかったですリョウ先輩!」
「喜多ちゃんハートめっちゃ強いね…」
「ありがとうございます虹夏先輩!」
互いを労い合う結束バンドをよそに、投票は進んでいく。
「どこ入れた?」
「結束バンドに入れちゃった!」
「わたしは手堅くシデロス」
「ケモノリア!新しかった!」
バンドの運命を決める。その投票が粛々と終わりに向かう。
果たして。結束バンドの運命は。TEAMイバラギの運命は。
「んじゃ発表するぜ!栄えある未確認ライオット!そのファイナルに進むバンドは!」
「はわわわわ…!」ブルブルブルブル。
「バイブレーションぼっち」
「もー!さっきまでカッコよかったのに!最後までカッコつけてよギターヒーロー!!」
「きゃー!!虹夏先輩ひとりちゃんの肩に触れると一緒に震えられますよー!!」
「喜多ちゃん遊ばないの!」
「…ゴクリ…!」
「オネガーイ…!」
「はわわわわ…!わっあっわぁ…ぁぁゎぁあ…」
「バイブレーション2からのちいかわ…」
これで全てが決まる、未確認ライオット。制した2組は!?
ここで切るのが美しいかな?と思い今回はここまでです。ファイナルに進む2組は次回だぜ!まあ…知ってる人は知ってるよね…。