こっから原作でも小休止的に音楽のイベントがしばらくありませんよね。この時期は夏休みみたいですが、夏休みに入ったタイミングが原作に描写されてないので、いつかわからない…。描写されて、ないですよね?
夏休み。まごうことない夏休みだ。未確認ライオットにsick hackしてて忘れてた。気温も高い、太陽も高い日々が続く。毎日学校もなくて暇なので、俺は少し前までお世話になっていた児童養護施設にボランティアに来ていた。
「遥。そこおわった?次はあっち掃除お願い。いつも悪いね」
「うっす、グレートマザー。やりたくてやってるんでお礼なんざいいですよ?」
「そのグレートマザーっての、長いからやめなさいと言ってるでしょ?わたしオススメの呼び方は、グレートマザー鬼束。略してGMOと。呼びなさい!」
「今さらGTOでも見たんか?…まあ分かりました」
この方は、ここ笹塚苑の寮母さん。俺の育ての母親である、鬼束令子さんだ。今のやり取りで分かると思うが、なかなかパンチが効いた人物だ。だが、善人だ。付き合いが長い俺が、そこは保証しよう。
掃除が終わったら、次はチビどもの昼飯作りだ。全く忙しいぜ!
「遥〜!おかえり〜!」
「遥〜!かまえ〜!」
「おうチビども!元気してたか!青木遥!凱旋だ!」
ワラワラとチビどもが群がってくる。笹塚苑のボランティアはこのチビどもの相手もデフォルトで組み込まれてる。やらなきゃいかんことと平行なのでなかなか大変だが、まあ最早慣れたもんである。
「うしっ!久々に1曲弾いてやろう!なにがいい!?」
言うが早いか相棒を抜き放つ。こいつらはこうしとけば問題ない。…はずなのだが…。
「え〜飽きた〜、他なんかないの〜?」
「遥そればっか」
なんだとう。くそっガキどもめ、日々アップデートしているということか。昔はキラキラ星で満足してたのに!
「んじゃ、みんなで食べる昼飯作るの手伝う?今日カレーだけど」
「わーい!やるー!」
「なにしたらいいの遥!?」
「おめーらまだ素人だから、包丁は握らせられねえな。そうね…。そこにあるジャガイモとニンジンを水洗いしなさい」
「「はーい!!」」
久々に帰ってきた古巣。GMOもお変わりなくてなにより。午前はここで過ごして、午後からはSTARRYだ。なんか今日こないだ、声掛けてくれたレーベルに、結束バンドが話し聞きに行くんだよな。全く忙しい1日だぜ。
肉を切り分け、米を研ぎ、炊飯器に入れスイッチを入れながら。そう一人ごちた。…はい。まだまだ水洗い足りてません!泥ついたままじゃんやり直し!!
「「えー!!」」
GMOの好意で昼飯までいただいて。(まあ8割自分で作ったのだが)笹塚苑を後にする。さてと。笹塚から下北。歩いても問題ない距離だから歩こう。20分程度で着くはずだ。割と最近、笹塚も都会になってきた。駅前の充実ぷりは何処に出しても恥ずかしくないレベルだ。…だが、俺としては駅前に昔からある謎の複合施設を推したい。いろんなお店が箱みたいな外観の建物に色々入っているのだが。なんと歯医者まで入っている充実ぷり。笹塚に来たら、一度は見てみて欲しい。
ちんたらと風景を見ながら歩いていれば20分などあっという間だ。まあ風景といっても面白い光景など転がってない。普通にアスファルトの道が続くだけである。この何の変哲もない道がサブカル臭を発しはじめたら下北が近い証拠だ。僅かずつ風景に下北色が混じりはじめて、横手に駅を見やればもう完全に下北沢だ。高校入ってからは完全なるホームタウンだ。笹塚よりかは進んでる?いや、認めるわけにはいかん。いくら文化的にも、今の発展的に後れを取ってそうに見えてもだ。
ロインが届く。GMOことマザーからだ。今日はありがとう。またよろしく。
…はっ。了解。うだる気温に辟易しつつ、何処か懐かしい。自分が居なくても恐らくなにも変わらないだろう場所。…でも。ひどく安心する。そんな場所を思いながら、照り返しがきついアスファルトの上を踏みしめるのだった。
最早慣れたものな下北の街並み。夜にはまるで違う顔を見せるこの街も、今ばかりは昼の顔。若い女の子や子どもが歩いていても安全。取って食われたりはしない、そんな雰囲気。これが夜になると、ライブハウスにサブカルチャー。一気に雰囲気は変わり、治安が悪くなる。まあ、夜になったら治安が悪くなるのは何処の街も一緒か。
汗を拭い前を向く。知ってる道をえっちらおっちら歩いていると目的地はもう目の前だ。下北沢STARRY。俺が通うライブハウス。いい機会だと思い、GMOのロインに既読を付けるついでに昨日の結束バンドアカウントのはしゃぎっぷりをリプライしとこう。
「ば!バイト!辞めます!今までお世話になりました!」
「理由を聞こうじゃねぇか?それだけじゃこっちも納得できない」
あまりに突然。ゴッチがこんなこと宣うもんだから、虹夏さんが寅さんみたいになってる。そりゃそうだろ、あいつはいつも突飛にすぎる。
「なんで!?ひとりちゃん!辛いことでもあったの!?」
「わたしも辞める。レーベル入って印税ザクザクお給料ガッポガッポ。とてもまともに働く気にならない」
アホと常識人。常識人が喜多さんて。かなり場末だな。
「そ、そうですよねリョウさん!レーベルからお金もらえるからバイトする意味ないですもんね!?」
アホが2人に増えたよ。よく知らんが、1言にレーベルなんていっても、ピンからキリまであるわけだ。はっきり言うけど君たちに声掛けてきたストレイビートなるレーベル。悪いけど聞いたことねぇんだな。
ここまでが昨日のロイン。まあ、正確に言うと、途中で興味を失ったので、実は事の顛末は最後までは知らんのだ。まあ、続きはリアルの彼女たちを見たほうが早かろう?
STARRYのドアを開け放つ。冷房の涼しい風が火照った肌を涼やかに癒す。階段を降りて、いつもの雑談場に荷物を下ろすと、虹夏先輩に正座させられてるロインのアホ2人。なにがあったのかは想像に難くない。
「だからね。わたしたちに話持ってくるようなレーベルだよ?裕福じゃなくても仕方ないよね?なんで、ローンなんか組んじゃうかな!」
「未来の自分への…投資?」
「あっ調子乗りました」
いたよアホ2人。山田はなんか無駄に高そうなベース2本背負ってる。ゴッチはなんか芸能人が着てそうなジャージ着てんな。何時ものよれよれピンクジャージじゃない。買ったの?支払えんのかそれ。
「あっ青木くんお疲れ!」
「あぁ喜多さん、お疲れ。なんだいコレは?いや、昨日のロインのはしゃぎっぷりからそこのアホたちがなにか仕出かしたんだろうとは思うけど」
「なにか仕出かしたみたいよ!取り敢えず、ひとりちゃんの服はGUCCIのジャージよ!」
思わず眉間に鋭い痛みが疾走る。アホかい!アホかーい!俺でも知ってるぞGUCCI!高級ブランドやがな幾らしたんやゴッチ!
「えっでも…、レーベルってアーティスト支援してくれたり…き、給料とかもらえたり…!」
「ぼっちちゃん!それをこれから聞きに行くわけだけど。お給料くれなかったらどうするの!?その高級ジャージの支払い!」
「ええ!?給料貰えないんですか!?そんな…そしたらわたしは…なんのためにこんな高いジャージを…!」
こっちがお前に聞きたいよそんなこと。きんらきんらと輝いているな。さすがGUCCI。
残念ながら音楽で飯食ってけるバンドなんて一握り。売れないバンドはバイトと労働から逃れられない。そのうちどっちが本業かわからなくなるくらいこなれてきて、社員に誘われたのを契機に、潮時か。なんつってメンバーが辞めはじめたら終わりの始まり。1人辞め2人辞め。ついにいい歳こいて夢追っかける酔狂な野郎は自分ひとりとなり。最早音楽の為にバイトしてんのか生きるためにバイトしてんのか分からなくなり、大都会東京の広すぎる海に自分の夢を見失うのさ…。
「でた!青木くんの透明度高すぎる中高年バンドマンあるある!怖いんだよそれ!」
「あぴゃあ…!売れなきゃわたしもこんな道にぃ…!やだ…!やだよぅ…!あ、…わあぁ…!」
「ひとりちゃんがちいかわみたく!怖がらせちゃだめでしょ青木くん!」
「なにいってんだ?僅か数年後に現れる現実の話をしてんだぜ?君たちなんか他人事。みたいにしてるけど」
「「「「…え?」」」」
結束バンド全員の声が重なる。…全く。バンドマンの道がいかに厳しいか…虹夏さんくらいは分かってるかと思ったんだがな…。仕方ない。今一度言葉にしてやる。
「例えば5年後だよ。虹夏先輩やリョウ先輩は22歳。アルコールも嗜め、成人した一人のいい女性だ。ほんで大学卒業だ。ここがまず青春の第一の行き止まり。自由に使える時間は圧倒的に少なくなるな。選択を迫られる。夢追い人か就職か…。言われるぞ〜周りに。いい歳こいて夢なんざ追っかけてねぇで働け!って」
「あぐふぅ!!」
「リョウ先輩!おのれ青木遥!!キラキラガールズバンドに現実語ってなにが楽しい!?」
「まだ分からねえのか結束バンド…!俺はおめえらの覚悟を試してぇのよ…!」
「なにぃ!?」
「今の話で少しでも怖気づくなら夢追い人なんて辞めときな。今じゃなくても潰れるだけだ。音楽だけを寄る辺にして日がな売れないバンドのために働き続けるなんてのはまともな人間の所業じゃねぇ…。俺のギターの師匠のように、ある種の人間を辞めたような覚悟がなきゃな…」
「青木くんの…師匠…!?」
「…かわいそうなもんだぜ?昔。それこそ10年くらい前は渋谷で一世を風靡し、時のバンドなんて言われても、10年経っちまえば当時を知ってるファンなんか一握り。日々バイトに追われ当時のメンバーは全員辞め。それでも。何故かやつの目は死なねぇ。メンバーが戻って来るのにバンドがなくなっちまってたら悲しいだろう?ってんで、1人で活動し曲を作り、昔の十分の一程度のギャラで演奏して。それでもやつは待ってるのさ…。昔確かに。おんなじ色の夢を追っかけた馬鹿やろう達の帰りをよ…。あんのかよ結束バンド。お前達にその覚悟」
「…知れたこと。知れたことです。青木くん!」
「ぼっちちゃん!?」
「ひとりちゃん!?」
「…ぼっち」
ほう?意外だなゴッチ。もう少しスタンしてるかと思ったが。
「わたしが音楽を辞める時は、結束バンドの誰かが1人でも辞めた時です。この4人じゃなきゃ、だめ。そんな所まで来てしまったから。わたしはこのバンドで売れたい…!わたしはきっと。誰か1人でもいなくなったら潔く音楽から身を引きます。この4人じゃなきゃ嫌だから」
「ひとりちゃん。わたしだって嫌よ。貴女以外がリードギターでリョウ先輩以外がベースで。ドラムスが虹夏先輩じゃないなんて。わたしは結束バンドがなくなったら音楽辞めます。そのぐらいの覚悟がなきゃ駄目だよね…」
「大丈夫だよ!ぼっちちゃん!喜多ちゃん!わたしがいる限り結束バンドは死なない!何度でも声を掛けて!再結成してあげる!誰かひとり、転げ落ちたら一緒に底まで落ちる覚悟!そんぐらいがなきゃ、最初から誘わないよ!任しといて!」
「…ふふ。なんだろ。単純に嬉しいや…。語彙なくなった。みんなに会えて、よかった」
「リョウさん!」
「リョウ先輩!」
「リョウ!」
がっしぃぃ!熱い抱擁を結束バンドが交わす。うん、テンション上がって語りまくったけど俺完全に悪役だな。そして、何気に虹夏先輩の覚悟が1番重いわ。流石結束バンドのリーダー。
「雨を意図的に降らして地ならしか?生憎あいつらはそこまでヤワじゃねーよ」
店長に話し掛けられる。
「みたいですね。…まあ。俺のワガママを言わせてもらうなら。結束バンドのみんなは1人になっても音楽は続けてもらいたいです。俺が聴くので」
「とんだワガママ野郎だな。…ところで遥。お前のギターの師匠って…」
「クローバーってバンドのリードギター、蛭間拳児さんです。もしかして知ってます?」
「…えっ!?マッケンジー!?お前の師匠、マッケンジーなの!?」
「あの人ほんとはヒュージって呼んでほしいらしいですよ?おんなじ孤児院の出身で、オジキに基礎教えてもらったあとは、全部拳児さんに見てもらいました。まごうことなき俺のギターの師匠です」
「ヤバい。お前の過去話で1番ビビったかも。えっマッケンジー?クローバーの。ヤバい渋谷で伝説打ち立てたロックバンドじゃん。マッケンジーバイトしてんの?知りたくなかった…。でも音楽まだ続けてたんだな…。それは嬉しい…ヤバい感情がないまぜだ」
「な、なになに!?青木くんの師匠の話!?もっかいしてよ!」
「虹夏先輩。続きは店長から聞くといいです。どうやらよく知ってそうだ」
「…ゴックン。うん、飲み込んだ。…遥。お前の腕。納得だぜ…。まさか、マッケンジーに秘蔵っ子がいたとはな…。遥、まだマッケンジーとは会ってんのか?」
「最近はとんと。でも連絡すればすぐ来ますよ多分。結局寂しがりなんで」
「…サイン!頼んでいいか!?」
「おお〜。なんか、そういうことを言われると、あいつ有名人なんだな〜って、実感わいてきますよ。今もうライブでても結束バンドぐらいしか入ってないですよ?」
「えっ嘘!?何処でやってんだ!?」
「渋谷のナイトプールってライブハウスです。そこのマスターと仲良いみたいで、週一ぐらいで。よければ見に行ってやってください。当時と人相変わっちゃったんで、ファンでも分かりにくいらしいすけどね」
「…生きる希望ができた。絶対見に行くわ」
「お、お姉ちゃん!そんなすごい人なの青木くんの師匠って!」
「ああ虹夏。わたしがバンド目指したきっかけになったバンドの1つだよ間違いなく。あの人の6弦が生み出すサウンドにハートが持ってかれて帰ってこねぇんだ。今度渋谷にそれを返してもらいに行く」
「凄い…あのお姉ちゃんが銭形警部みたいなこと言ってる…!ほんとに凄い人なんだ…!」
「虹夏。改めていつか話をしてやる。本当に凄い人だから」
「…でも。当時のわたしからお姉ちゃんをバンドに奪い去っちゃった張本人でもあるよね?あの頃のお姉ちゃんが憧れてたってなると」
「うぐぅ!?そ、それは…」
「う・そ。もうお姉ちゃん!今さらそんな昔のこと言わないよ!いつか話してね!お姉ちゃんの憧れた人!青木くんの師匠のこと!」
「むぅ…生意気になりやがって」
「なはははは!1本取られましたね店長!」
「うるせぇぞ遥!…あれ。お前ら今日レーベルに話し聞きに行くんじゃなかったっけ?時間大丈夫?」
「だいじょばない!遅刻しちゃうやばい!青木くんが長いネガティブ話するから!」
「まあ、ネガティブすぎるとは思いますが。直面する現実のワンパターンとして、頭の片隅に留めておいて頂けると」
「…青木くん!わたしは1つ、最近バンド活動していて思ったことがあります!現実は、悪い方でも良い方でも、想像の斜め上を行くよ!だから!その都度対応するしかないんだ!でもありがと!悪い方の想像として、青木くんの話憶えとく!わたしが絶対!そうさせないけどね!」
「その心意気があれば大丈夫ですよ、いらん心配でした」
虹夏先輩…。頼りになるリーダーだ。あの人が中心にいる限り、結束バンドは死なない。そう思えた。
「ほら遥、お前も行ってこい」
「え?店長。話が来てるのは結束バンドで俺は無関係ですよ?」
「将来音楽で有名になりたいんだろが?レーベルの話聞いとくのも経験だろ。こないだわたしに話した言葉。ありゃ嘘か?」
「…!」
「一緒に行く?青木くん!青木くんにはなんかどんな場面でも動じない謎メンタルがあるから、いてくれると心強いな〜!な、なんて!」
かもめんたるみたいに言うなよ。だが。正直気になる。ストレイビートなるレーベル。何処にあって、どんなアーティストが所属してるのか?CMは打ってくれんのかアルバムは作れるのか?興味は尽きない。
「…ご一緒してもよろしいですか、結束バンドの皆様…!」
「…!うん、もちろんだよ!青木くんがいたら心強い!契約とかで気になるトコロあったらわたしに耳打ちで教えて!」
相手のこと信用してねぇ!まあ、契約ごとは慎重になりすぎることはないけど…。
「遥も来るのかよ〜?クソダサ後乗り男じゃ〜ん!」
「あっなんかズルいですね…」
「青木くん!レーベル契約はわたし達結束バンドの功績よ!努々忘れないことね!」
結束バンドの3人にある程度は予測していた悪態をつかれる…。何気にこういうときはゴッチのリアクションが1番胸に刺さるんだよな…!なぜだ!?
「くっ…!まあ俺の胸の痛みは置いといて…!そろそろ出ましょう虹夏さん。遅刻しちまう。何線ですか?小田急線?」
「徒歩3分」
「成る程徒歩3分…ん?」
徒歩3分?
実際結束バンドは運が良い。STARRYから3分でストレイビートに行けるとは。事務所近いといろいろ有利でしょう。長くなりそうになったので(半分くらいは青木のネガティブ話が原因だが)ここいらで区切ります。次回、ストレイビート篇。