【完結】 ギター爪弾きのバラッド   作:はま0821

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今回の話も展開変えずに意味合いを残してセリフを変えたりモノローグをいろいろ追加したりしてます。読みやすくなるといいな…。

次回喜多ちゃん登場。ついでに佐々木さんとも邂逅。



5 バンドマン

 

 

 

作戦会議!という名目で伊地知先輩からロインで呼び出される。

 

最近ロインの連絡先が一気に3人も増えた。フハハなんと喜ばしいこと。

 

もはやぼっちとは言わせない。全員女子で男同士のあれこれを話せないのが残念だがこの際贅沢言うまい。

 

 

おしゃれな下北沢の街をSTARRYに向かって歩く。雑貨屋さんから流れてくる何とも言えない香りに名前をつけたい今日このごろ。

 

音楽と芸術の街。まさか自分が縁をもてるとは、本当に伊地知先輩には感謝の念しかない。

 

STARRYに降りる階段にたどり着き視線を下げると見慣れたピンク。なんかドアの前で座ってる。またようわからんコミュ障発動しとんな。

 

「後藤さん」

 

真夏の元気一杯のノミみたいに肩が跳ねる。そんなでかい声出したかな俺。

 

「あっああああああああ青木くんっ!っおっおおおおはようっございますっ」

 

「ああおはよう、どした?入っちまおうぜ?」

 

「ははっハイ」

 

ひとりで入るのが心細かったのかな?後藤さんも伊地知先輩に呼ばれたんだろうから堂々と入りゃあいいのに。ふっ…このへんのコミュ力は俺のが勝ってんな。

 

STARRYのドアをあけ働いているスタッフさん達に挨拶。社会の基本だ。

 

「おはようございます!失礼いたします!」

 

角度は45度。これも基本だ。すると奥から長髪の金髪の女性が歩いてくる。…あれ…まさか。

 

「こらこら失礼すんな。なんだお前らは?チケットの販売は5時からだぞ?部外者は立ち入り禁止だ」

 

「あっすいません伊地知先輩から聞いてませんか?伊地知先輩にこの時間にここに来いと呼ばれたんです」

 

「あぁなるほどお前らが。聞いてる聞いてる。入っていいぞ」

 

あっぶねーまさかの話が通ってねえかと思ったぜ。背中の後藤さんが可哀相なくらい怯えてしまっている。こりゃ後藤さんがひとりで入るのはハードル高かったかな。にしてもこの人…視線も鋭く強面だが、伊地知先輩にどことなく纏う雰囲気が似ている。まさか。

 

「気付いたか?アレの姉をやってる。ほんでここSTARRYの店長でもある。伊地知星歌だ。以後お見知りおきを」

 

まただ!!また目上の方に自己紹介で遅れをとった!しっかりしろ青木遥!オジキの教えをムダにする気か!

 

「すんません自己紹介が遅れました!自分青木遥と申します!秀華高1年です!よろしくお願いします!」

 

「おっおう礼儀正しいな。まぁ虹夏たちもすぐ来るだろうからそこら辺かけて待ってな」

 

「ちょっと待ってください!ほれ後藤さん。挨拶」

 

「ふぇっ?」

 

「ふぇっ?じゃないよふぇっじゃ。目上の人に挨拶されて返さないとか社会人としてなってないよ。ビッとしなさいビッと」

 

「いやお前ら学生だろ」

 

「あっはい…後藤ひとりです大変申し訳ありません…」

 

謝罪はいらんだろと毎回なことを思いながらも見守る。

 

「よろしく。お前らあれだろ?こないだ虹夏のバンドの手助けしてくれた子達だろ?どっちも中々上手かったと思うよ。頑張れよ」

 

上手いと言われてぱっと後藤さんの顔が明るくなる。現金なやーつー。

 

「あざす!頑張ります!」

 

俺の言葉を背中で受けてひらひらと片手を振りながら店長さんは仕事に戻っていく。カッコいいな伊地知先輩のお姉さん。顔は怖いが優しそうな人だ。なんか親近感を覚えるな。などと考えていると。

 

「おっきてるきてる」

 

「オス。遥。ひとり」

 

山田パイセンと伊地知パイセンのご登場だ。

 

 

 

 

 

 

「はぃっじゃあ結束バンド第1回バンドミーティング開催しますイェーイ!拍手!」

 

「いぇーい」パチパチパチ!

 

「はいっということでねー……思えば全然仲良くないから何話していいか分かんないや!」

 

身も蓋もねぇ!

 

「…そんな時のためにこんなんがある」

 

ぬっと山田パイセンが何かを取り出す。少し大きめのサイコロみたいな見た目のものに一面一面どうやら話題らしいものが書いてあるもの。一昔前のランチタイムにやってた番組で大活躍してたあいつだ。何が出るかな〜ってか?

 

「ほいっ」

 

てんてんとサイコロが床を転がりそして止まる。

 

バンジージャンプ。

 

 

 

バ ン ジ ー ジ ャ ン プ!!!!!!!

 

 

 

 

 

「「「「…………………………」」」」

 

「あっこから飛びゃいいすか?」

 

「わーーー!!!ごめん冗談でいれたやつだから!!!待って待って登ろうとしないで!!!!」

 

「おい………機材壊すなよ?」

 

ぎぬろと店長さんに睨まれる。後藤さんがピッっと小さく鳴き声をあげる。

 

「すいません調子に乗りました!」

 

はしゃぎすぎを俺は潔く謝った。

 

「……ふっなんか調子狂うなお前。仕事してるやつもいるからも少し静かにしてろよ」

 

「はいっ!!」

 

「フーいかんはしゃぎすぎた」

 

「まさかほんとに飛ぼうとするとは思わなかったよ!」

 

「何いってんすかそのサイコロででたことは必ず実行する。それがあの番組の鉄の掟だったでしょ。面白かったなーあの番組」

 

「わたしもよく見てた。さてもっかい。ほいっ」

 

てんてん。学校の話。ガコバナー!

 

「はいどうぞひとり!」

 

「うぇっ!?わわたし?あっ…そういえばお二人おんなじ学校で…?」

 

「うん、下高!」

 

「わたしも虹夏も家近いから選んだ。ひとりは?家このへんなの?」

 

「いえ…県外から…金沢八景って2時間半くらいかかるところから…」

 

金沢八景!?神奈川の!?なんでそんなところから?

 

「高校では誰も自分の過去を知らないところに行きたくて…」

 

「暗いわ!んでも後藤さん、悪いことばかりでもないっしょ。2時間かけて下北沢まで来てたから伊地知先輩に拾ってもらってギター弾けたんだから!人生何がいい方に転がるか分かんないもんよ」

 

後藤さんにサムズアップする。

 

「あっその節は虹夏ちゃん…ほんとうにありがとうございます…」

 

「こっちがお願いしたんだからそれはむしろこっちのセリフだよ!」

 

「ふむ…遥は?この辺の人?」

 

「この辺の人です。笹塚で一人暮らしですわ。たまには笹塚にも遊びに来てください。駅前にあるよくわからんちゅーとハンパな大きさの複合施設がお気に入りです」

 

「へーっ笹塚かぁ!しかも一人暮らしって!偉いねぇ!」

 

「なにも食うもんがなくなったらたかりに行く」

 

「行くな行くな」

 

「はっは。歓迎ですよ?男飯でよければですけど」

 

「やめときなー?こいつはまじで行くよ?」

 

「大丈夫。今しばらくは虹夏がわたしのお腹を満たしてくれるから」

 

「調子に乗るなよ…?それはともかくていっ」

 

てんっコロコロ…ピタッ。好きな音楽の話。おとばな〜!

 

「わたしはメロコアとか、いわゆるジャパニーズパンクとか!」

 

「テクノ歌謡とか、最近はサウジアラビアのヒットチャートを…」

 

「そこ嘘つかないー」

 

何度目かの先輩同士のやりとりに思わず笑みがこぼれる。ホント仲いいな。

 

「後藤さんは?好きな音楽」

 

「せっせせ青春コンプレックスを刺激しないうたならなんでも…」

 

またなんか変なこと言い出したぞ。青春コンプレックス?なんだそれ。略して青コン!

 

「青い春…夏の海…友人たちとの花火…淡い恋…これまでの私の人生に無縁だったものたち…」

 

あぐふぅ!?知ってた俺!その気持ち知ってたわ!

 

楽しそーに今を謳歌するリア充達への妬み嫉みをあらわした言葉か!

 

いかんぞ後藤さん。気持ちはわかるがその気持ちは捨てろ。あんま健全じゃないんだ。

 

でも悔しさや怒りをバネにとんでもないチカラ出すタイプかも知れないし一概に捨てろともいいがたいなうーーーん難しい。

 

隣では後藤さんがブツブツ呟いている中俺は考え込んでしまう。それを見かねた伊地知先輩が。

 

「んもーみんな結束してよーーーーーー!!!」

 

「結束バンドだけに?ていっ」

 

今度は山田パイセンがサイコロを振る。たまには俺にも振らせてほしい。コロコロ…ピタッ ライブの話。らぶばなー!

 

「次のライブはボーカル入れたいから…やっぱ喜多ちゃんの力がいる。ふたりとも!頼んだよ!」

 

「まーかしてください。相手はどうやら極上の陽キャらしいですがこちらも2人で連携して撹乱してやりますよ」

 

「遥。もし断られたらわたしに言え。あの子わたしのファンだから直接交渉してやる」

 

「こらこらものものしいからやめなさい。青木くん。もし断られたりしたらムリしないで。やっぱり無理強いはできないからね」

 

「リョーカイしました!」

 

「悪い方に考えててもしょうがないしもし喜多ちゃんが戻ってきてくれたら曲も作りたいんだ〜リョウが作曲できるし!」

 

えっ山田パイセン作曲できんのかすげぇ。

 

「フッ…どうだ遥すごいだろ。尊敬しろ」

 

心読まないでくださいよ。でもすげーなーやっぱギタリストたるもの作曲のひとつやふたつこなさねぇと…あとで作曲の極意みたいなもん教えてもらお。

 

「曲ができたら歌詞も必要なんだけど…ひとりちゃんやってよ!歌詞に色々禁句があるなら自分で書いちゃえばいいんだ!」

 

「うぇぇっわっわたし!?」

 

「うん!ひとりちゃん!かっこいいのを期待してるよ!」

 

「しょっ小学と中学9年間学校の図書館に通い続けたのはこのための布石…!」

 

おぉー後藤さんもすげぇな。作詞とか大役じゃん。やっぱ歌詞は重要だよねバンドにとって。それはさておきさっきから気になってることが俺にはある。

 

「あのーちょっといいすか」

 

「はい青木くん!」

 

「後藤さんのあだ名を決めませんか?」

 

「うぇっ!?わっわたしのあだ名、ですか?」

 

「うん。先輩方お2人は後藤さんのこと下の名前で呼んでますけど人数をさすひとり〜なのか後藤さんのひとり〜なのか一瞬ゴチャッとなるんすよね」

 

「なるほど。たしかにちょっと紛らわしいかも。ひとりちゃんどう?なんか中学とかで呼ばれてたあだ名とかある?」

 

「ちゅっ中学の時はそこのーとかおいっとかお前とか呼ばれてました」

 

「なんか涙出てきた。ひとりちゃん!それはあだ名じゃないよ!」

 

「くっくっく…ひとりもやっぱおもしろい。ふむ…ひとり…ひとり…ぼっち…ぼっちちゃんは?」

 

繊細そうなとこつくなぁ。

 

「ぼ、ぼぼぼぼぼっちですぅ!」

 

いやええんかい、嬉しそうだなしかし。俺はなんかかわいそうだからそのあだ名呼びたないな〜。

 

「よし!俺は後藤さんのことこれからゴッチと呼ぶ!」

 

「えと…ごっゴッチですか?」

 

「後藤さんとぼっちちゃん足して割った。アジアン・カンフー・ジェ◯レーションのボーカルの人も学生時代そう呼ばれてた由緒正しいあだ名だぜ?どう?」

 

「えっかっこいいです…!すっすごい…あだ名が一気に2つもぉ…これはもうぼっち卒業では…!」

 

せっかくプレゼントされたあだ名を秒で卒業するなよ。でもなんかぼっちちゃんって響きもいいな。かわいい。

 

「いいねいいね〜バンド内の親睦が深まったんじゃな〜い?」

 

「ねぇ虹夏。わたしは作曲。ぼっちは作詞。虹夏はなにやるの?」

 

「……………」

 

「えい」

 

伊地知先輩は基本的に気遣いさんだがたまに強引な手段に出るときもある。今なんかもサイコロと一緒に話題もぶん投げた。コロコロっピタ!ノルマの話。のるばなー!

 

「ざっくりまとめよう。バンドマンはめっちゃ金かかる。機材代ライブハウスに払う場所代チケットのノルマ代」

 

「そーなんだよねーバンドマン万年金欠みたいなイメージあるじゃん?あれイメージじゃなくってマジだからね。…なのでぼっちちゃん!諸々のバンドの経費を稼ぐためにここでバイトしよーう!」

 

「ぇっ……うぇぇ!?バイトぉ!?!!?」

 

今日一の声出たな。しかし渡りに船だなゴッチ。羨ましいわ。俺も仕事しないとな〜ビッグマザーからの仕送りにいつまでも頼るのもよくないし。自分の生活費くらいは自分で稼ぎたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

えっ嫌だ働きたくない!社会が怖い!たぶんここのバイトは接客業!わたくし後藤ひとりがいちばん苦手なタイプのやつだ!(なんなら得意なんだよ)どうしようでもバンドの中で私だけ働かないと社内ニートならぬバンドニートみたいな感じになってあんなに優しかった虹夏ちゃんの態度も翻って針の筵みたいな冷たく寒いバンド人生に!!嗚呼嗚呼どうしよお〜!

 

もう嫌だ帰りたい…海の中物言わぬヤドカリになりたい…などと頭を抱えながら震えていると不意に声がかかった。

 

「ゴッチ…」

 

青木くんだった。肩に軽く手を置かれる。

 

「あ…青木くん…?」

 

「諦めろ」

 

「うぇぇっ!?」

 

「バンドマンが金かかるってのはガチだ。俺の知り合いに40代にもなるバンドマンの人がいるけどいっつも金の話してたぞ。昼間は色んな職渡り歩いて金稼いで、夜にバンド活動。いつ俺は売れるんだ…いや一生日の目を見ないんじゃねぇか…そんな恐怖と闇を振り払うようにギターをかき鳴らす。バンドマンてのは金と夢と現実の狭間を擦り切れそうになりながら走る茨の道なのさ」

 

「あたしたち花の女子高生だよ!?バンドマンの現実語るのやめてーーーーー!!」

 

「ううっ…なんていい話…バンドマンの理想と現実がいい感じにブレンドされてる…」

 

「いやどこが!?」

 

「あっあの!!」

 

「んっ…?どした、ゴッチ」

 

「そっその方は、音楽に出会って、幸せだったんでしょうか…?お金頑張って稼いでギターを弾いてっそれで誰にも評価してもらえなかったらわたしだったら耐えられません…」

 

さっきの話がホントなら辛すぎる。私なら耐えられない。誰にも評価されずに自分ひとりでギターを弾いて。バンドはお金かかるからお金稼いで。そうまでして。ギターを弾く理由とは?私は無性に聞きたかった。

 

「確かに世間にゃ認められてないかも。んでもあの人は後悔とか。絶望とか。そーゆーのをしてるようには見えなかったな。やってる音楽も少しの人にしか認められねぇでぶーたれたりしてるけど。それでもやっぱ俺にはこれしかねぇんだ。こいつがなかったら人生多分クソつまんなかった。っていって大笑い泣きしながら浜田◯吾弾き語ってんの見てるとこの人はどこまでも。骨の髄までロックンロールアーティストなんだなと。そう思うのよ」

 

「…………」

 

「多分さ、あの人はそういう生き方を選んだんだよ。周りが自分のことどう思うか?じゃなく自分がどう思うか?って生き方を。だから俺は尊敬してる。40代無職のおじさんじゃなくて、ロックンロールアーティストだと思ってる。めちゃくちゃカッコいい人だよ」

 

「ああごめん話がそれた。まああれだ。バンドマンは茨の道だから金稼げる手段があったら迷わず飛びついたほうがいいって話さ。渡りに船だぜゴッチ。マジで伊地知先輩がいてよかったな」

 

「うぅぅ~〜〜なんて道に歩みを進めてしまったんだ。血を吐き続けながら走り続ける地獄のマラソン、一切光がない暗闇の中を手探りで進み続ける、ゴールなんかあるかどうかも分からないのに。音楽とは、バンドマンとはあるかも分からない希望をちらつかせながら絶望と踊らせ続けるパンドラの箱なのかぁ〜」

 

詩人だね。まいったな怖がらすつもりはなかったんだが。

 

「ぷぷぷ…ところで遥。1つ聞きたい。その人、ギターは上手い?」

 

「それはもうめっちゃくちゃに。俺のギターの師匠です。なんで売れないんだろっていっつも思ってますよ。音楽でもお笑いとかでもそうでしょうけど売れるってホント運任せっすよね。実力はあるのが当たり前で」

 

「いいね。ロックだよその人の生き様」

 

「まぁあれだよゴッチ。バイトごときにビビってるようじゃ立派なバンドマンにゃなれんって話さ。ライブもやってみたら結構なんとかなったろ?案外なんとかなるかもよ?」

 

「うぅぅ~でっでもライブハウスって接客業ですよね…わたしのような対人能力ゴミができるわけ…」

 

お客さんににっこり営業スマイルしている自分が想像できない。オラオラ系の人が来たら召されちゃう。マジでじま。

 

「ところで伊地知先輩。STARRYの働く枠ってゴッチひとりで埋まっちゃいます?」

 

無視かぁ。

 

「えっ?いやSTARRY万年人手不足だから…えっまさか青木くんやってくれるの!?」

 

「そろそろバイト探そうと思ってたんすよ、しかもライブハウスなら音楽するのにうってつけですし。」

 

「ホント!?いやったぁ!青木くん!みんなで楽しくバイトしよーう!」

 

「歓迎する遥。わたしの睡眠時間確保のためにその腕を振るってくれ」

 

あ、青木くんまで!?バイトを!?あうう〜頭ではわかってる。知り合いがいっぱいいるここの方が他のとこでバイトするより絶対ハードル低いこと。で、でもまだ心の準備がぁ〜。

 

「あうあぅぅぅあうぅ~」

 

心の中でメトロノームのように揺れ動いていると青木くんが声をかけてくれる。

 

「全く…ゴッチ。ちょっと想像してみ?この誘いを蹴ったとしてもバンドしていく以上金のしがらみからは逃れられないわけだ。するとやはりどっかでバイトしないといけない。どうする?そこでの直属の先輩がやたら神経質で嫌味で怒りっぽい怖い上司だったら」

 

「あっ爆発四散します」

 

「はい?」

 

やっぱそうだよな。そんな怖い人に当たったらたまったもんじゃない。

 

「ま、まああれだ。それにくらべりゃここSTARRYで働いときゃ上司伊地知先輩だぞ?上司にガチャがあったらSSSSSSSRぐらいの大当たりだぞ。」

 

「いやぁ~照れるなぁ〜そんなぁ〜」

 

虹夏ちゃんが両手をほっぺに当てて右に左にと回転する。かわいい。

 

「あうう…た、たしかに。ふ、不束者ですが、ど、どうかよろしくお願いしますぅ」

 

私の言葉に虹夏ちゃんは満足そうにウンウンと頷く。

 

「よっし!紆余曲折あったけど、なんとかスタートラインだね!とりあえず喜多ちゃんを連れ戻して、それからライブのための金策、バイトをがんばろーう!結束バンド!ファイヤー!!」

 

「ふ、ファイヤー!」

 

なんか気に入ってねぇ?そのバンド名。

 

にしてもギターボーカルを連れ戻すとかなかなか難しそうなこと引き受けちまったな。

 

まあ最悪土下座でもして…あとは喜多郁代さんのお慈悲に期待しますかぁ。と。モノローグの最後を青木遥が締めくくった。

 

 

 

 

 

 

 

 




多分音楽界には自身の腕と矜持と夢をガソリンにして茨なんてもんじゃ生ぬるいぐらい困難な道を歩み続ける男の中の男や女の中の女がいっぱいいるんだろう。すべてのロックンロールスーパーヒーローに、乾杯。
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