【完結】 ギター爪弾きのバラッド   作:はま0821

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虹夏先輩とリョウ先輩が車校で忙しい中、ほかの結束バンドのメンバーが大人しくしているかな?と思って作った話。千葉は中々旅行先として穴場だと思う。


50 海の次は山でしょ。千葉最高峰への挑戦!

 

 

 

「ひとりちゃん。夏休みね」

 

「あ、そうですね郁代ちゃん…」

 

「遊びに行きたいわ、ひとりちゃん」

 

「ど、どこがいいでしょう…?」

 

じぃ〜。

 

なんでそこで俺を見てくる?アイディアでも欲しいのか。

 

ここはライブハウスSTARRY。今日は秀華高校3人衆がシフト担当だった。いつものように仕事を片付けライブの後始末をし、いつもの状態にステージをリセットする。ちなみに虹夏先輩とリョウ先輩は、免許を取るため、車校に出掛けている。今日も明日もいない。

 

「なんか〜。女子高生の夏休み特有の〜キラキラ感が足りないわ〜。キラキラキララみたいな」

 

「あっ、わたし女子高生歴2年ですけどそんなの感じたことない…」

 

「しまった!ひ、ひとりちゃんはこれから感じるのよ!うん、きっとそう!」

 

「そ、そうでしょうか…?」

 

「適当だねおい」

 

ギターヒーローなんてカッコいいあだ名を持つくせに割とナイーブな後藤ひとりの青春コンプレックスを喜多さんが刺激しかけたため、慌ててフォローしている。

 

「ゴッチとどっかに出掛けてみたら?明日シフト休みでしょう?」

 

「それいいわね!ひとりちゃん!遊び行きましょ!」

 

「あっはい。郁代ちゃん…遊びに行きましょう…」

 

「い〜な〜喜多。ぼっちちゃんと遊びに行けて」

 

「店長。明日は虹夏先輩もリョウ先輩も俺達もいなくてSTARRYは大丈夫なんすか?」

 

「大丈夫だよちゃんと計算してシフト組んでるから。遠慮なく遊んで来い。遥。お前はついて行くのか?」

 

「青木くん!青木くんも一緒に行きましょ!秀華高校3人衆久しぶりに集結よ!」

 

「あっ青木くんも一緒に行くんですか…?」

 

「ついて行くことになりそうです店長」

 

「なら遥。去年江の島にお前らが行ったときも言ったが、ぼっちちゃんにつく悪い虫は祓え。お前の任務だ」

 

相変わらずこの人は俺のことフリーのガードマンかなにかだと勘違いしてるな。

 

「て、店長さん…。わたしに悪い虫なんか付きませんよ…郁代ちゃんのほうが心配です…かわいいから…」

 

「いーやぼっちちゃん!前々から思ってたが君は自己評価が低い!かわいいから悪い虫も付く!本来ならわたし自らついて行って片端から祓ってやるのだが、シフトの関係上無理そうなので今回は遥に代行させる。悪いなぼっちちゃん」

 

「ひとりちゃん!わたしも祓ったげるわ!虫よけスプレーとか持って行くし!」

 

喜多さん。多分店長が言いたいのは比喩で、虫じゃなくて人間のことだと思うのだが…。まあでも。俺が明日行こうと画策してる場所は虫よけスプレーも使ったほうがいいだろう。リアルに刺されたりするかもだし。

 

「どっか行く場所のアテはある!?青木くん!」

 

「よくぞ聞いた喜多さん。去年江の島。つまり海行ったじゃん?今年は山なんかどう?」

 

「「山!!」」

 

2人の声がシンクロする。

 

「千葉の最高峰の山にしよう。登り終えたらアジのフライも楽しめるぞ?」

 

「ええ〜?山はなんか…キラキラしてなくない?」

 

「ふっ…、素人だな喜多さん。山のすぐ近くには海もあり、漁港もある。おいしいものだらけだし映えるものもきっと見つかるぞ」

 

「えっうそ!?いいわね山!」

 

ちょれぇ。

 

「それにあんまり有名な場所じゃないから夏の海特有のパリピみてえな連中もいない。ボッチにも優しい場所だ…」

 

「あっ…嬉しい…!」

 

山の魅力を語りだすとキリがないが、続きは現地で確認するとしよう。

 

「道中の厳しさはあるけど、山頂にたどり着いた時の達成感、景観の美しさは保証するぜ。あと確かふもとに温泉もあったはず。登山でかいた汗もさわやかに流せる!」

 

「…青木くん。山、いいわね」

 

「の、登れるかな…わたし。体力ないから…」

 

「そこは俺も喜多さんもいるからフォローするぜ。よっし。では明日は千葉県最高峰鋸山にハイキングだ!山頂で自分で作ったおにぎり食べるぞ!持ってこいよ!」

 

「お、おー!」

 

「きゃー!青木くん!わたし、山頂でカップヌードル食べたい!携帯ガスコンロとお湯!持っていくわね!」

 

「喜多さん!それ最高!」

 

「いい〜な〜。山登って飯食って温泉かよ。最高の休日じゃん。…みんな、お土産頼んだ」

 

店長にお土産を頼まれる。お土産。千葉にお土産なんかあったかな…?などと失礼なことを考えていると。

 

「今話題の道の駅みたいなのも探しましょうよ!そこでしか取れない地元のものとかきっと売ってるわ!」

 

やっぱ楽しいを考えさせたらこの子の右に出るものはいないな。どんどんアイディア出てくる。俺も、楽しみになってきたぜ。

 

「おしみんな。楽しみに行くわけだが、あまり山を舐めるなよ。当日はあまり肌が出ない、長袖の服を着てくるように!んでは今日は早めに帰って休め!」

 

「「は〜い!!」」

 

「いい〜な〜」

 

店長が羨ましがる声をBGMに結束バンド(リズム隊なし)の弾丸千葉旅行が決定した。鋸山よまっていろ!山頂であらん限りの声で叫んでやる!

 

 

 

 

 

 

明くる日だ。山登り達の朝は早い。なにせ登ってる途中に日が落ちちまうと危険度が一気にあがる。早めに仕掛けて、昼の間には降りて来たい。そして魅惑の昼メシタイムからの温泉。完ぺきだろ。

 

虹夏先輩からのロインには、羨ましい旨と泣き顔の猫のスタンプ。そして楽しんできてね!とのお言葉を頂いた。

 

リョウ先輩からはなんかジト目のよく分からんアニメキャラのスタンプ爆撃と、お土産。と1言だけ要望されていた。発想が店長と同レベル。

 

朝6時の下北。駅の前で2人を待つ。腰を伸ばし、身体の一つ一つの腱をウォーミングアップさせていると、後ろから声を掛けられる。

 

「お、おはよ、青木くん。は、早いね…」

 

ゴッチの声に振り返りつつ、ゴッチの恰好を確認する。ふむ…。

 

「合格だ」

 

「へ?な、なにが…?」

 

「いやさ。またあの芋臭ピンクジャージでくるかと思っていたから。ちゃんと登山らしいカッコじゃねーか感心感心」

 

ゴッチの服装はいつものピンクジャージではなく、緑のフリースにリュックサック。ハーフサイズの短パンの下からストレッチ性のありそうなタイツを着用している。

 

「あっ、お父さんに登山行くって言ったら肌をあんまり出さないようにと…」

 

「お父さん慧眼。江の島は比喩の方の悪い虫が飛んできてたが、山はガチの方の虫だからな。対策しとくに越したことはない」

 

「わ、わたしには虫はつかないって…」

 

こいつマジか。そんなビジュいい顔下げといて虫つかねぇはねぇだろう。こいつに自覚なさすぎるせいで恋敗れた男子。結構いそうだよな。南無…。

 

「待たせたわね!ひとりちゃん!!青木くん!」

 

きたたーんと今度は喜多さん登場だ。赤のフリースにゴッチと同じく短パンタイツスタイル。こちらもしっかり長袖スニーカーの登山スタイルだ。感心感心。まあ、今日登る山は千葉最高峰とはいえ、標高は東京タワーに毛が生えた程度。スニーカーで十分である。

 

「オシでは揃ったな。千葉に向けて、出発!!」

 

「「おお〜!!」」

 

 

千葉最高峰鋸山。浜金谷という名の駅が最寄りだ。すぐ近くには海があり、アジが名産なのだとか。登って降りてきたら腹が減る。ちょうどそん時にいただこう。

 

下北から新宿。そこで小田急から総武線に乗り換え、千葉に入ってからは内房線に乗り換えの電車旅。所要時間は2時間程だ。どうだいい小旅行だろう。

 

目的地に近づくにつれ、何故か昭和感が色濃くなっていく。風景もそうだが、分かりやすいのが電車だ。東京から遠ざかるたび、分かりやすく錆びつき、古く、レトロになってくる。

 

「えっ?大丈夫青木くんこれ。時代逆行しちゃってない?」

 

「ば、バックトゥザフィーチャー…へへ…」

 

失礼なことを。確かになんかレトロだけども。ほら海も見えてきた。目的地は近いぞ。

 

浜金谷駅に降り立つ。目の前に広がるのは千葉の雄大な大海原。見渡す限りには海と山しか見えない。都会から2時間程度でこれか。電車恐るべし。終電とか絶対寝過ごせねえな。何処連れてかれるか分かったもんじゃねぇ。

 

「きゃー!!海!すごい綺麗よひとりちゃん!こんな綺麗な海が千葉にもあるのね!!」

 

「ほ、ホントだ…!す、凄い…」

 

取り敢えずこの雄大な景色は撮って結束バンドのグループラインに入れておこう。

 

「ほいで、今日我々が登るのがあの山だ。鋸山。山頂付近がギザギザしてるからってその名がつけられた。ちなみに頂上にはちょっとしたサプライズもあるぜ」

 

「ま、まさか…富士山が見えたりとか…!?」

 

「じ、実は活火山で火口があったりとか…へ、へへ…」

 

危険すぎるだろ。まあそんなプロでも危険な山に初心者2人連れてくるほど俺も鬼畜ではない。安心したまえ。

 

「ふふん。富士山は見えんが、結構驚くかもだぞ。それでは早速登って行こーう!」

 

「「おおー!!」」

 

連れ立って鋸山の登山道に向けて歩き出す。車道の脇に歩道がありそこを歩くのだが、車通りが中々あるのに、非常に歩道が小さい。危険なので、女子2人は内側を歩いてもらう。途中リアルにお魚咥えたどら猫を発見したり、登山道へと続く道が分かりづらく、一瞬迷ったりもしたが、なんとか今日登ろうとしてる山、鋸山の麓へとたどり着く。

 

マップの指示通りに角を曲がり、いよいよ山道だ。といっても目の前には整備された階段が設置されている。まだまだ風情はないな。

 

「い、いきなり急階段ね。青木くん…」

 

「す、凄い急勾配…は、初めて見るかも」

 

「おいおい。まだまだ言葉通り序ノ口だぜ?こんなんで満足してもらっちゃ困る。山頂を見るんだろ!?気合入れてくぜ!」

 

ぱしぱしと喜多さんが自身の頬を叩いて気合を入れる。そしてゴッチの手を引き。

 

「ひとりちゃん!行こう!疲れた後の絶景と山頂のおにぎりの味は何事にも代えがたいはずよ!」

 

「郁代ちゃん、は、はい!郁代ちゃんも辛くなったらいつでもわたしを頼ってください!最悪わたしが担いででも…!」

 

「う、うん!ありがとうひとりちゃん!わたしもひとりちゃんがダメそうだったら担いでいくわね!」

 

仲良いよね君らね。まだ登山始まってばかりなのにそんなん言ってちゃ先が思いやられるなぁ…。まあ、今回かなり初心者向け。余程のことがない限り大丈夫だろうが。

 

「い、郁代ちゃん!ヤバい!怖いです!目が届く範囲に岩と鉄しかありません!」

 

「あ、青木くん!この難易度でもまだ序の口なの!?」

 

「この鋸山…。標高こそ低いけど、時たまこういう難度の高いところもある。頑張れ!ここ突破すれば後はそんな難しくないはずだから!」

 

手すりのように岩の階段の横に据え付けてある鉄を握りしめ、ゴッチにハッパをかける。確かにこりゃ怖いな!でも、標高が高くなるたびさらに怖いところも出てくるぜ!楽しみにしてな!

 

一歩間違えれば獣道だ。まるで人の手など入っていなそうな剥き出しの山道を行く。少しずつ標高も上がり、開けた場所に出ると景色を楽しめるようになってきた。

 

「ゴッチ。喜多さん。目の前の海の先に見える半島が三浦半島だ。マグロが有名だな。今度行ってみるか?」

 

「はーっ。はーっ。はーっ、んくっ。はあはあはあ…」

 

聞いてないな。まあ、体力ないって言ってたしな。安心しろゴッチ。もしものときは喜多さんか、もしくは俺が背負ってやるさ!

 

「きゃー!すごーい!もうこんな登ってきたのー!?」

 

「一歩ずつ歩くことも馬鹿にはできないだろ?千里の道も一歩からさ」

 

眼下に広がる海原と金谷の港を見ながら喜多さんが感嘆の声を上げる。

 

「多分もう三分の一は来たかな。まだまだあるから先を急ごうぜ!」

 

「待って、青木くん…!も少し休憩を…!」

 

「ゴッチ。もう少し歩けばもっと開けた場所に出る。そこで休憩しよう。それまでは…頑張れ!」

 

「キツかったら肩貸すわ!ひとりちゃん頑張って!」

 

「ひえ〜!す、スパルタ…!」

 

滴る汗が山の独特の涼しい風に冷やされて心地よい。真夏なのに、何故かこの鋸山の登山道は涼しかった。途中あったマムシ注意の看板にゴッチが驚いたりもしてたが、少しずつ進んでいく。やがて、登山道が土の足場から、岩肌の足場へと変わっていった。

 

「なんか、不自然な景色よね。大昔からありそうな岩なのに、まるで人の手が加わったみたいに綺麗なシルエット…」

 

「そう。ここ鋸山は昔は採石場だったのさ。人間が岩を切り出して、山の麓に下ろしたり、この場で加工したり…そのうち加工したものが登山道でも見られるよ」

 

「えっ岩を人間が!?凄いわね〜だからこんなに綺麗に切り取ったみたいなシルエットなのね!」

 

「当時削岩機やらなにやらもなかったはずだからどうやってこんなに綺麗に削ったんだろね?あ、でも最後らへんは昭和だから削岩機、あるか」

 

喜多さんと2人で感想を漏らしつつ、その間も前に進む。やがて簡単な岩でできた机や椅子みたいな物がある休憩所みたいなところに行き着いたので、ここで休憩としよう。

 

「やっと休めます…!」

 

「よく頑張ったゴッチ。腹減ったしここで食っちまうか。おにぎり」

 

「ひとりちゃん大丈夫?手を拭くものとか持ってる?」

 

さあ。昼メシもぐもぐタイムとしゃれ込もう。取り出した明太子入り自作おにぎりを頬張り、水筒の麦茶をすする。うんま!疲れは最高のスパイスとはよく言ったものだな!

 

「あっホントだ…!絶対いつもよりおいしいです…!」

 

「デッカ!ゴッチのおにぎりデッカ!」

 

凄まじいデカさであったため、思わず突っ込む。あまりにデカくない!?ゴッチの顔が小さいので半分くらいはおにぎりに埋まっちまってる。それをゴッチが小さい口ではむはむ食べる。

 

「青木くん。わたしこの光景一生見てられるわ」

 

「やめてくれ。まだ先があるんだから!」

 

「…それもそうね。頂上ではカップヌードル食べましょう!3人分持ってきたから!」

 

「流石だぜ喜多さん。山頂の景色を眺めながらすするカップヌードルは想像しただけで最高だ。さあ!もうひとふんばりだぜ!」

 

「え、ええ〜。も、もう少し休みません?」

 

「ゴッチ。もうすぐ頂上だ!頂上でなら少し長めに休んでいいから!取り敢えず行こうぜ!」

 

「ほ、ほんとですか…!よ、よし!が、頑張ります!」

 

「わたしも頑張るわ!後少しで山頂!きゃードキドキするわね!」

 

もう少しで山頂。トップオブトップだ。途中あまりにも綺麗に切り出された岩肌を見て、まるで建造物のようだと思ってみたり。昼でもあまり光が差し込まない森の中を歩いているかのような鬱蒼とした場所から、頂上に近づくにつれて少しずつ景色が開けていく。真上には今まで広がっていた木々の枝ではなく、まっさらな空が広がる。山頂が近い証しだ。ふと目の前に、空中に特徴的に張り出した岩場の足場を見つける。もちろん周りを鉄の柵で覆われているため、落下の可能性はほとんどなかろうが、あれがなかったら眼下に広がる雄大な景色の中へ真っ逆さまである。鋸山名物、地獄覗きだ。

 

「ひぃえっ。な、なんなんですか青木くん…あれは…?」

 

「あれは名物地獄覗きさ。先っぽまで行って崖下覗き込むんだよ。なんか映えるらしいよ?喜多さん?」

 

「ひとりちゃんちょっと待ってて。バズりが…映えがわたしを呼んでる!」

 

「あ、危ないですよ!郁代ちゃん!わ、わたしも行く!」

 

怖いだろうになゴッチ。地獄覗きの先端に向かう喜多さんに着いて行く。友達の為に一瞬で決断できること。それがギターヒーローたる由縁か…。七色のギターテクで下北を盛り上げ続ける結束バンドの急先鋒。後藤ひとりは今、千葉の地獄覗きで…!

 

「ぴぃぃぃぃ!!怖い!い、郁代ちゃん!だ、大丈夫ですか!?」

 

「ひ、ひとりちゃん!?腰のあたりに手を回されてると逆に歩きにくいわ…!あばばばば!ば、バイブレーションみたいに震えないで!」

 

絶賛醜態を晒していた。

 

「うは〜流石にこえ〜な〜。こっから落ちたら間違いなく地獄送りだな」

 

「青木くん意識させるようなこと言わないでよ見ないようにしてたのにぃ!?」

 

「ここここ怖くて下見れません…!も、戻りましょう郁代ちゃん…!」

 

喜多さんとゴッチが下見ないようにゆーっくり進路変更する。確かに高いから怖いかもだけど綺麗な景色でもあるし、全く見ないってのは悲しいな。

 

「ほら2人共。俺が支えといてやるから景色見てみ。怖いのもあるかもだけど、綺麗だろ?」

 

そう言ってゴッチと喜多さんの肩を支える。

 

「あ、ありがとう青木くん…!ふ、ふわあ…!す、凄い…!」

 

「ば、バッチリ動画と写真に撮ったわよ!これで虹夏先輩とリョウ先輩への手土産としては十分ね!」

 

「へっくしょい!」グラリ。

 

「っきゃああああああ!!」

 

「きゃー!!なにしてくれてんのよ青木くん!?揺らさないでよいきなり!」

 

「…いやマジごめん。キューに鼻がムズムズと…。え?今の悲鳴ゴッチ?マジ?」

 

主にゴッチの方面から聞こえてきた声が信じられなくて思わず俺は聞き返す。

 

「お、お願いだから青木くん…!ちゃ、ちゃんと支えていてぇ…!」

 

「お、おう。すまん…」

 

「な、なんかすごく乙女な反応。ひとりちゃんの意外な一面…!?」

 

「むぅー!!」ぽかぽか。

 

ゴッチが(⁠ᗒ⁠ᗩ⁠ᗕ⁠)こんな顔しながら喜多さんを叩く。相当怖かったらしいな。ごめんゴッチ許してくれ!わざとじゃないんだ!

 

「痛くない!むしろかわいい!喜多郁代名誉の負傷よー!!」

 

やっぱなんか独特だよな喜多さんは。むしろゴッチからの攻撃を喜んでいるように思える。危機も喜多さんにかかればチャンスか。流石過ぎる。

 

通常の道に戻り歩いていると、ついにその時は訪れた。千葉県山の中での最高峰。鋸山、その頂上だ。

 

「着いた!皆さん前を見なさい!」

 

「えっ!?料金所。料金所だよね、青木くん」

 

復活したゴッチがそうリアクションする。

 

「何かの施設…?」

 

「喜多さん察しが良い。頂上にはサプライズがあると言ったでしょ。鋸山のテッペンはなんと、寺なんですよ。日本寺って名前の。先人たちがこの鋸山の岩で作った信仰の数々を見れるよ!凄いでしょ!?」

 

…。あれ。なんかリアクション薄いな。何故?

 

「なんか映えそうじゃない…」

 

「あっ…。ここまで来てさらに料金取られるんですね…。あんな大変な思いして登ってきたのに…」

 

「悪かったよゴッチ!喜多さん!さっきのお詫びだ!ここの金は任せろ!さあ行こうぜ!か、帰りは課金アイテムであるロープウェイ使っていいから!」

 

「えっ!?ロープウェイ!な、何分ぐらいで地上に戻れるんですか!?」

 

「えっ!?20分くらい…?」

 

「文明…文明の利器は素晴らしすぎます…!なんか今すごく下界が恋しい気分です…!」

 

やっぱさっきの局所的地震(くしゃみ)でかなりビビらせちまったらしいな。すまんゴッチ!埋め合わせはどっかでするから!

 

「2人共!早く行きましょ!ご飯食べられそうなとこ探さなきゃ!」

 

喜多さんの切り替えの早さよ。見習って俺も続くとしますか。鋸山観光ツアー。いよいよファイナルだぜ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふわあ…。お、おっきい…」

 

「ほんと…。こ、これは凄いわねぇ…」

 

2人共ようやく素直に驚いてくれるか。今2人の目の前には大仏が鎮座している。ただの大仏ではないぞ。昔にこの鋸山の岩から人間が切り出し彫り上げた、奈良の大仏よりも鎌倉の大仏よりもデカい最大級の石彫大仏よ。デカさなんと30メートル。どうだ凄かろう。ちゅるるるるっと。喜多さんに入れてもらったカップヌードルを啜りながらなぜか誇らしげな気分になる。

 

「ほら喜多さん。あの大仏は流石に映えるでしょ?」

 

「これはさすがに驚いたわ…。うん!間違えなく映えるわね!ありがとう青木くん!」

 

「す、凄い…!鎌倉の大仏さんより多分おっきい…」

 

「ほら、あそこに賽銭いれるとこある。結束バンドのヒット祈願しといたら?」

 

「そうね!この場にいない虹夏先輩やリョウ先輩のためにもわたしたちが2倍祈らないと!」

 

「あ、あっはい!郁代ちゃん、待って〜!」

 

よし、俺も祈っといてやろう。結束バンドの武運長久。ライバルバンドが張り合いがないと、こちらもつまらない。…いやまあ、普通に祈りたいんだがな。ここに苦楽を共にしてたどり着いた仲間の幸運を。

 

3人で大仏様に祈りを捧げ、喜多さんが用意してくれたカップヌードルを喰らい、大仏広場を後にする。見忘れたもんはないかお前ら!

 

「さあ!降りちまったらもうしばらくは見れないものばかりだぞ!よく見ておけよ!」

 

「だ、大丈夫です青木くん!早く降りましょう!」

 

「早く飯を食いたいのかそれとも高いところが怖くて早く降りたいのか…?まさか後者はないよなぁ?ヒーローだもんな仮にも!」

 

「うぐう!?そ、そんなことはないですよう…!高すぎるとこにいつまでもいるのが怖いからなんてそんなわけ…!」

 

言っちゃってるんだよな自分で答えをよう…!まあ、ゴッチを最後に怖がらせちまったのは俺だしこの評価は甘んじて受けよう…。今度山の旅に関してはリベンジのチャンスを頂きたい…!

 

「青木くん!めちゃくちゃ楽しかったわ!ありがと!企画してくれて!また来ましょ!」

 

…天使だな喜多さん。間違いない。気を使ってくれた2人のためにも次は最高の山旅を企画せねば…!

 

「ロープウェイ…。課金アイテムね。折角上りは歩いてきたから下りも全部歩いていくべきだと思うけど…」

 

「郁代ちゃん!もう十分だよ!早く!早く下界の土を踏もう!じゃないとわたし安心できない!」

 

渋り気味な喜多さんをゴッチが抑える。余程高い場所が怖いらしい。まあ、今日の企画は山登りだけではないし、ロープウェイ使ってさっさと降りるぜ!

 

課金アイテムロープウェイを使って下山の途につく。20分で下界につく代わりに、風に対しては無力。景色は綺麗だが、風で機体が揺れるたびにゴッチは、ひあっ!だの、きゃあっ!だの悲鳴をあげていた。そのたびに喜多さんが、庇護欲、母性を発動させて、どうにかゴッチの気を逸らそうと必死だった。そして、あれよという間にロープウェイは麓に着く。鋸山、登山完了だ。やったぜ!

 

「はーっ!はーっ!つ、疲れた…!ようやく帰ってきた…!」

 

「これで最高峰の山を登ったから千葉県は制したも同然ね!次はどこ行こうかしらひとりちゃん!」

 

テンションの違いが顕著だな。ゴッチと喜多さん。かたや余裕綽々。かたや疲れを見せているね!

 

「し、しばらく山のことは考えたくないです…!な、なんか…!アジのフライの名店があるとか…!?」

 

「そうだランチ!山頂でご飯食べてから少したってるしご飯にしましょ青木くん!アジの美味しい店!連れてって!」

 

「いいだろう、ゴッチ、喜多さん。ついでに山登りでかいた汗を流せる温泉。そして道の駅であり、定食屋も併設してる都合よすぎる施設を発見したのだが行くかい!?」

 

「さ、最高ね青木くん!そこ!そこに行きましょう!結束バンドみんなにお土産買えるわ!!」

 

「温泉…!嬉しいかも…!しかも道の駅…!ちょっと興味がある…!」

 

俺としてもこんな都合がいい施設が見つかるとは思ってなかったんだよ。なんでも古い小学校施設をリノベーションして、いろいろ便利な機能をくっつけた施設らしい。いわく、宿泊施設とか。いわく、道の駅とか。いわく、日帰り温泉だとか。もちろん、千葉名産の定食も食える。何と至れり尽くせり。

 

少しだけ鋸山の麓から歩く。地元の港である金谷港とは反対方向なのが未練を残すが、温泉があり、定食屋があり、道の駅も併設した施設だと!?それは行くしかなかろう。選択の余地もない。少しばかり、20分ほど歩くが、最早大したことでもあるまい。てくてく浜金谷から歩みを進めているとあっという間に鋸南町の旧保田小学校なる道の駅に到着だ。ここで今日の旅行の総決算はすべて行える。な、なんて都合がいい施設なんだ!!

 

「ちなみにここ、泊まろうと思ったら泊まれるぞ。宿泊施設も兼ねているからな」

 

「ヤバいでしょ。至れり尽くせりすぎ。まあ、さすがに泊まる気はないでしょ?青木くん?」

 

喜多さんから問いかけられる。まあ、切羽詰まったら泊まるのもありだろうが。

 

「もちろん。帰れるなら帰ったほうがいいだろうからな。取り敢えず道の駅でみんなへのお土産選んだ後、温泉入って定食食って帰ろうぜ。もちろん俺が今言ったのは、順番は不同だ」

 

「ご飯!ご飯食べましょう郁代ちゃん!青木くん!お、お腹空きました!」

 

さっき食べただろ、という突っ込みを飲み込むが、まあ、下山してくりゃ腹も減るか。子供みたいなことを言い出すゴッチに苦笑いしつつ。

 

「よし!取り敢えず定食屋寄って、その後道の駅で結束バンドのみんなのお土産選ぼうぜ!」

 

「わたしアジフライ!アジフライがいい!確かそれがこの辺のトレンドなんでしょ青木くん!」

 

「そうだぜ!ゴッチ!喜多さん!浜金谷近辺に来たらアジは絶対食べたほうがいいらしい!」

 

「わ、わたしもアジフライにします…!り、旅行!ようやく旅行らしくなってきました…!」

 

楽しんでもらえてそうで何よりだ。…そして、割と真面目に悩んでいるのが、結束バンドとSTARRYの関係者に持ち帰るお土産だ。特にリョウ先輩だが。適当なお土産買っていったら噛みつきそうな迫力を感じる。喜多さんに任せるとゴテゴテの、お金掛かりまくりの仰々しいものになりそうだし、逆にゴッチに頼むと、何買うか分からねえ。やはり俺がバランサーになるしかない!

 

「何してるの青木くん!早く行きましょう!」

 

「青木くん!早く行かないと売り切れちゃいますよ!」

 

…ふっ。ゴッチめ。登山時とはまるでテンションが違うではないか。まあいいや。夏休みのとある日。友人と旅行に出かけるのも悪くないものだと。青木遥は頭の中でごちる。取り敢えず今から行くであろう定食屋で何を頼むか、頭の中で巡らせながら、元から元気な赤髪娘と、お腹が空いてるなか、定食屋に向かっているからいつもより元気なのかな、桃色髪の陰キャ娘の後ろ姿を追うのだった。

 

 






少し遅れ申した。

ぼっちざろっく。アニメ2期決定!おめでとうございます!公開されたイラスト笑いました!後藤さんすっかりスターですな!

あとそう!後藤ひとりちゃん誕生日おめでとう!めでたい事とはまとめて来るね!

1週間毎にいい知らせが続けざまに届いて、嬉しい限りです!みなさまにもお祝い申し上げます!おめでとうございます!だぜ!
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