【完結】 ギター爪弾きのバラッド   作:はま0821

51 / 69


心霊メインの話を書きたいと思って今回の話を考えたのですが、前置きがクソ長くなってしまい、まさかの前後編に。8人もいると大変だぜ…。


51 結束バンド慰安旅行in山田家別荘!

 

 

「はあ〜ん。ふぅ〜ん。ほぉ〜ん。わたしやリョウが車校でS字やらバック駐車やらで大変なときに。御三方は小旅行行ってきたんだ。わたしたちを差し置いて!小旅行行ってきたんだ!?」

 

「す、すいません虹夏先輩…。なんかこの2人が行きたそうな顔したから」

 

「流れるようにわたしたちのせいにしないでよ!?青木くんだってノリノリだったじゃない!?」

 

「い、一番ノリノリで山道登ってましたよね…」

 

「あ・お・きくぅ〜ん!?」

 

「はい。すいませんでした!ノリノリでした!」

 

くそう。誤魔化しきれないか!だって暇だったんだもん!夏休みだってのにバイト休みだったし!

 

「いやでも遥。お土産で買ってきてくれたピーナッツバター。美味いよ。パンに塗りたくってるわ」

 

店長。喜んでいただけて何よりですよ。いい道の駅を見つけましてね。お土産は選び放題でした。

 

「…遥。わたしに買ってきてくれたこれは…」

 

「リョウ先輩にはめちゃくちゃ美味い草買ってきました!菜の花の束と、菜の花味噌です!食べてみてください!」

 

「…!草草言うキャラが積み上がってこんなところでぇ…!普通に肉とか魚とかがよかった!」

 

「あ、青木くん!わたしに買ってきてくれたこれは…?」

 

虹夏先輩にはお世話になってますからね。特別に俺からは2品、選ばせていただきましたよ!

 

「まずはこれ!甘味処桜饅頭!ロングセラー商品だそうです!後これ!変わり種として桜蕎麦!その名の通り!桜色の世にも珍しい蕎麦です!皆さんで食べてね!」

 

「わっわっ。凄いほんとにピンクだ。か、かわいい…」

 

「虹夏ちゃん。わ、わたしたちからはこれを…」

 

「ぼ、ぼっちちゃん…こ、これは…」

 

「喜多ちゃんと2人で選びました…!2色の、抹茶味と桜味がするきんつばです。た、食べてみてください…」

 

「う〜わ。虹夏お前。ぼっちちゃんから桜色のプレゼント貰ったのかよい〜な〜」

 

「あ、ありがとうぼっちちゃん!だ、大事に食べるね!」

 

フッ、危ない危ない…。一瞬勝手に旅行行ったことでヘイトが向きかけたが、お土産で逸らすことに成功した。よかったよかった。

 

「なんて思ってないか遥!?わたしは納得しとらんぞ!なんだよお土産が菜の花って!?肉とか魚とか買ってこいよ!」

 

「リョウ先輩は毎日食べるくらい草好きでしょうが!菜の花食べてみなさいよ、今旬だからマジ甘くて美味いですから!」

 

「…家帰ったら茹でてみる!だが!それはそれ!これはこれだ!今から千葉まで出戻ってお土産買いなおしてこい!」

 

「嫌だ!その草で満足しとけ!」

 

醜い。醜すぎる争い。リョウと青木くんがドラゴンボールのフュージョンよろしく四つ手で組み合っている。ぼっちちゃんの目を塞ぎながらわたしは気付く。まだぼっちちゃんが1つ荷物を持っていることに。

 

「ぼっちちゃん。それは?」

 

「こ、これはSTARRYのみんなに買ってきました。お菓子なアイス屋さん、桜味です。皆さんで食べて頂けると…」

 

「やったぜ。ぼっちちゃんからのプレゼントキタコレ。桜色だよかわいすぎて食べれねえよ」

 

お姉ちゃんがぼっちちゃんを高速でナデナデする。あわわわわとぼっちちゃんが撫でられる方向に揺れる。気持ちは分かるが自重しろお姉ちゃん!

 

「ズルい!遥たちばっかり!わたしたちも旅行行こうぜ虹夏〜!」

 

「ふむ確かに。未確認ライオットって山場も乗り越えたし、そろそろご褒美あってもいいんだよね。でもな〜お金がないんだよな〜」

 

「わたしんちの別荘でよければあるよ?県外山奥だけど。車は出せるから誰か車運転して」

 

リョウ先輩が思いがけないことを言い出す。そういえば家金持ちだったわ!草キャラのせいで忘れてた。そして。誰か車を運転してくれる大人が必要だ。

 

「遥たちは連れて行かん!車校で苦しむ先輩たちを置いていった罰だ!」

 

「気持ちは分かるけどリョウ、待ちなよ。どうせなら大人数で旅行行ったほうが楽しいって!そしたら次は、結束バンド未確認ライオット打ち上げ兼慰安旅行だ!リョウんちの別荘に遊びに行こーう!」

 

よっしゃ。密かにリョウ先輩と虹夏先輩置いて行っちゃったことに罪悪感を覚えていたのだが、これで清算できそうだ!連続旅行だが、たまにはこういうのも良いでしょ!

 

「待て虹夏。わたしはぼっちや郁代はともかく、主犯である遥を連れて行くとは言ってないぞ!」

 

「分かりましたよリョウ先輩。どっか千葉の道の駅探して、リョウ先輩にだけ追加でなんか買ってきますから」

 

「マジか遥!許るーーーーす!」

 

「ちょっと青木くん。リョウ甘やかすことないよ?菜の花でも食ってれば良いんだよ」

 

「まあ魚や肉が御所望みたいなんで…割と冗談じゃなくマジで菜の花選んだんだけどな…。草好きみたいだから」

 

「遥!そんなもんキャラに決まってんだろ!草以外に選択肢あったら迷わずそっちに行く!そこまで奇人変人ではないわ!」

 

なんだつまらん。ファッション奇人かよ。

 

「なんか言ったか遥。旅行連れてくのやめよっかな〜」

 

「へへ…ほんの冗談じゃないですか…リョウ先輩…へへ…」

 

「弱い!青木くん激弱!もっとプライドを持て!」

 

虹夏先輩に突っ込まれる。だって機嫌損ねてホントに連れてってくれなくなったら困るじゃん?などと弱気なことを思っていると突然。

 

ばたんっ!!STARRY内部に音が響く。どうやら音の主は店長だ。店長が勢いよくノートパソコンを閉めた音だ。

 

「やめだ。仕事ダリィ。なあ虹夏。わたし何日くらい休んでない?」

 

「えっ!?いや、7月はずっと働いてるよねお姉ちゃん。少しは休んだほうが…。まさか!」

 

「休んだほうがいいよなぁ〜!うし、休も。スケジュールある程度好き勝手出来るのが自営業の強み。休みとるからわたしも連れてけ!車運転してやるから!」

 

「ええっ!?STARRYはどうすんのさお姉ちゃん!?」

 

「休業だよんなもん。ちょうどライブ予定ない日がいくつかあるし。おうPA!お前も来い!慰安旅行じゃあ!」

 

「…店長は言うことがいつも突飛ですよね〜。…わたしも行っていいんで?虹夏ちゃん」

 

「えっ!?いや、PAさんがいいなら、こっちは全然大丈夫ですけど…お、お姉ちゃん、本気なの!?」

 

「本気と書いてマジ。いや〜楽しみだな〜山。旅行にウキウキで出かける背中を見送るのも飽き飽きしていたとこだ。たまにはわたし自身がウキウキで旅行に出掛けてもいいだろ!」

 

「まあ…確かに…。うん、大人数になるしそっちの方が良い…のかな?」

 

「旅行と聞いて!」

 

ガチャリとSTARRYのドアを開いて、廣井きくり女史が姿を現す。誰から聞いた!ココだけの話のはずだぞまだ!

 

「え〜!でっけえ声で話してんだもん外まで聞こえてるさ〜。先輩!まさかわたし抜きで旅行行くわけじゃないですよね!」

 

「ぐう!?しまった聞かれたくないやつに!慰安旅行から酔っぱらいの世話に内容が変わっちまうんだよ!お前は大人しく新宿で飲んでろや〜!」

 

「ヤダ!たまにはわたしも違う場所で飲みたい!山でバーベキュー飯食べながら飲みたい〜!」

 

あかん。この流れ。最早押し留めることはできまい。参加者は結束バンドプラスやさぐれ三銃士だ。今までずっと思ってたんだが何処にガンマンがいるんだ?

 

「お〜し。お前がそう来るならこっちにも考えがある。ふん!」

 

ずむ。店長が何処から出したやらな、水の2リットルペットボトルを廣井さんの口に突き刺す。

 

「むぐぅ!?ぼがっ!?ぼがががっ!?」

 

「旅行行く前にシラフにしてやる…!行きはお前が車運転しやがれ!帰りはわたしとPAが運転してやるから!」

 

「えっ!?お姉ちゃん!廣井さんが運転って…!?わたしまだ死にたくないよ!」

 

「ナチュラルに失礼だな虹夏!安心しろ!アルコール抜けたフォームの廣井は普通に運転上手いから!遥右!PA左抑えろ!」

 

「はい店長!追加の水とバケツです!吐かせるときはそこに!」

 

「なんかだんだん手慣れてきてる自分が嫌ですねぇ」

 

指示通りに両端を抑えつつ、廣井さんに水を飲ませる。ある程度水を一気させて、腹の中のものを吐かせれば廣井さんは1発でシラフに戻る。不思議な体質だないつ見ても。

 

「おぶっ…!おええええ…!」

 

はいはい吐くときはこちらに…。バケツに頭を突っ込む姉御の背中を擦りながら、なんか介護みたいだなとひとりごちる。

 

「はあっはあっ…。あ、あれ?わたしは…?」

 

いつものグルグル目に赤ら顔ではなく、少し色白過ぎる顔に不安げな表情…。ここまでくると二重人格者じゃないだろうか。

 

「来たかシラフ廣井。お前には別荘向かう時の運転を担当してもらう。安全運転で頼むぞ」

 

「ヒッ嫌…。わたしの運転に全員分の命が乗っかるなんて耐えられない…怖い…!」

 

「エッ誰!?」

 

リョウ先輩がもっともなことを言い出す。全くだ。普段の廣井の姉御をよく知ってる人ほど、この変化には愕然とする。いつ見ても性格変わりすぎである。

 

「姉御。疑ってるわけじゃねえが俺もまだ若くして死にたくはない。…当日、頼みますぜ」

 

「!…遥くん、君も乗るんだね。う、うん。頑張るよ…。こ、怖いけど」

 

やはりシラフの姉御にはまだ少し慣れない。テンションが違いすぎる。なんか大人のゴッチみたいだ。すると店長が横から宣う。

 

「そうそう廣井。お前はやっぱシラフのほうがいいぞ〜。酔ってるときのお前も好きだが、やっぱ少しうるさいし、ゲロ吐くからなぁ〜」

 

俺は酔ってる廣井さんのが好きかな…。あけすけだし。なんだかんだで元気だし…。本人には言わんけど。いじられそうだから。

 

「よ、よし!ちょっと。いやかなり運転手に不安が残るけど、結束バンド慰安旅行inリョウの家の別荘、決定〜!みんな!旅行行くよ!」

 

「言い出しといてアレだけど、やっぱやめない?まだ死にたくない!」

 

「だ、大丈夫ですよリョウ先輩!PAさんと店長さんが上手くフォローしてくれますって!」

 

「わ、わたしも、まだ死にたくはありません…!お、お姉さん…よ、よろしくお願いします…!」

 

「ひっひえ〜、プレッシャー…!こ、こちらこそ、よろしくお願いします…」

 

「き、気分とか悪くなったらいつでも言って下さい廣井さん。運転代わりますから」

 

「いや!PA甘やかすな!たまには日常のこいつのケツ持たせたほうがいい!行きはこいつに運転させよう!なにわたしが補助するから問題ない!」

 

店長…。それから廣井の姉御。ホントマジでお願いしますよ…?

 

結束バンド慰安旅行が決まったのはめでたい!めでたいことだが、運転手だけが不安だ…。この旅行の可否は、行きの廣井姉さんの運転如何で決まっちまいそうだなと…予感めいた確信が、俺の胸に去来した。

 

そして、STARRYの面々(プラス酒カス)は知る由もなかった。この旅行の計画者。そいつによって参加者全員に更なる危機が迫っているということも…。

 

日にち変わって旅行当日だ。ちなみに車は山田家が用意してくれた。8人乗りのでっかいやつ!

 

「で、では皆さん…本日運転手を務めさせていただきます、廣井です…で、では皆さん。車にどうぞ…」

 

それぞれ明後日の方向を見ながら、廣井さんの挨拶を聞き流す、結束バンドの面々。最期に見る空になるかもだからな。目に焼き付けたいよな。俺も人のこと言えんか。

 

「大丈夫だお前ら!アルコール抜けてる廣井の運転は信用していい!オラ早く乗りやがれ!」

 

店長がハッパをかけ、結束バンドの面々はそれぞれ意を決したかのように車に乗り込みだす。

 

願わくば、デスドライブとならんことを。

 

 

 

 

 

 

結論から言おう。杞憂でした。廣井さん普通に運転めっちゃ上手い。もたつくこともなにもなくバック駐車も一発で華麗にキメた。ただ、1つ。廣井さんの滞りない運転に慣れ始め、みんなが思い思いにリラックスしだしたタイミング。山田が不吉なことを言い出した。

 

「いやぁ、死人が出るかと思ってたけど、無難なドライブになりそうだなぁ」

 

「クックック…遥。我が別荘はこんな退屈な展開にはならないことを約束しよう」

 

「なんすか怖いんすけど。なんかあるんすか?」

 

「まあね…。うちの親が言うには、この別荘だけ買うとき、他の別荘より安かったんだよ。なんでか分からなかったから不動産屋に問い合わせたらさ…。出るんだってよ?この別荘」

 

「…出る?なにがですか?」

 

「クックック…出るは出るだよ遥…楽しみにしているといい。ゴーストハウスにようこそ…」

 

「ご、ごーすとぉ!?えっ虹夏さんや他の人は知ってるんですかその事?」

 

「言ってないよ?サプライズなんだからバラしたら楽しくないでしょ?」

 

よけーなサプライズ用意しやがって山田がぁ〜!これはマズイ!メンバーのゴースト耐性によってはパニックになるかも!確かに退屈する展開にはならなそうだなおい!

 

 

 

車を走らせ2時間弱。東京を飛び出し、山の中の、掃除もされてないような道を1台孤独に進む。ちゃんとインフラ通ってんのかこれ?

 

「通ってるよ失礼な。食材とかはないけどね」

 

「だからさっきスーパーによっていろいろ買い込んだんだろ?酒と飯は心配すんな」

 

アンダー18組は酒の心配なんかしてないんすよ店長…。

 

「しかし、凄いですね、いつの間にかこんな鬱蒼した森の中…。なんか出そうな場所ですね」

 

PAさんはエスパーなのか?山田がギクウって顔してるよ。

 

「そしたら夜は肝試しですね!きゃー!楽しそう!」

 

「喜多ちゃんはほんとよく思い付くよねぇ…わたしは霊とかは勘弁だなぁ〜。リョウ、まさかそんな話ないよね?」

 

「クック、虹夏。さあね…?」

 

「おいこっち見ろ山田。…まさかこいつ!」

 

虹夏さん鋭いな。山田が仕掛けたサプライズ。着く前にバレそう。

 

「あっあっ…。ゆ、幽霊、出るんですか…?」

 

「ハッキリ言葉にしないでよぼっちちゃん!エッ出ないよね!?そんなんいないよね!?リョウ!」

 

「…まあ、着いてからのお楽しみ」

 

「出るやつじゃん!いるやつのリアクションじゃんこれ!う、嘘!これから行く場所ゴーストハウスなの!?」

 

「…ち。バレちゃしょうがない。普通の別荘に遊びに行っても楽しくないでしょ?こちらで気を利かせて心霊別荘用意したよ。今日の肝試しは一味違うことになる…!」

 

「おいおいマジかよリョウ〜。ちっしょうがねぇ。幽霊に出くわす前に酒かっくらって寝てやる」

 

斬新な回避法ですね店長。まあ…幽霊が出るとしたら丑三つ刻。つまり真夜中。そんな時間まで起きてなきゃいい…。のか?

 

すったもんだの車内を尻目に廣井さんは1言も発さず車を進め、ついに目的地だ。鬱蒼とした木々に囲まれた、昼でも暗い山奥の一角に、山田家の別荘はあった。よどみないハンドル捌きで駐車まで決め、シフトレバーをパーキングに。見ていた虹夏先輩とリョウ先輩から歓声が上がった。

 

「あっ着きました…お疲れ様でした…」

 

「凄い!運転上手いんですね廣井さん!」

 

「あ、ありがとうございます妹さん…なにも起こらなくてなによりです…」

 

「すごく丁寧な運転だった…。車校に行ってるから参考になる」

 

「言ったろリョウ?こいつ酒さえ入ってなきゃ大分マトモなんだよ。よくやったな廣井。今日は酒飲んでもいいぞ」

 

「あ、ありがとう先輩…」

 

「えっ!?あの廣井さんがお酒の話でたのに飛び付かない!?」

 

「虹夏、こいつシラフのときは誰かが勧めない限り飲まないんだよ。そのかわし、飲んで酔いが回ったら、元通りだ」

 

「儚い…。夢みたいな人ですね、酔ってない廣井さん」

 

中々詩的な表現ですなPAさん。さて。いろいろ持ってきたもん運び込んじまおう。

 

「あっ手伝うよ青木くん!」

 

「虹夏先輩!楽しみですねバーベキュー!」

 

「あっバーベキュー…。が、頑張ってバーベキューポイント貯めないと…」

 

「バーベキューポイントってなにぼっちちゃん!?」

 

「バーベキューポイントとは陰キャに伝わる独自のポイント…。準備したり、率先して材料焼いたりすると溜まっていき、消費することで肉などの高級料理を食べることが出来る…。そんな感じの仕組み」

 

「解説ありがとう青木くん!心配しないで好きに食べてよぼっちちゃん!どんどん焼くからさ!」

 

「あうう…虹夏ちゃん優しい…」

 

バーベキューの道具やら何やらを持ち、山田家別荘の玄関前に立つ。…リョウ先輩?ドア開けて?

 

「ククク。このわたしが持ってる鍵だけが唯一、この玄関のドアを開け放てる…」

 

チャリっと鍵を見せびらかす山田。なんかこの展開あずまんが大王で見たな。だが、ここにはトモはいない。鍵を遠くにぶん投げるなんて暴挙に出るやつはいないから早く開けなさい。

 

「…ちっ。ハイどうぞ。出るけど」

 

ガチャリと玄関があき、中に入れば、洋風なシックな雰囲気の部屋がのぞく。あと山田。出るとか言うな!

 

「荷物置いたら川にでも行く?すぐ近くに沢があるから、魚とか釣れればバーベキューがさらに華やかになる」

 

「協力しますよリョウ先輩…鮎とか岩魚とか釣れれば最高だな!皆さん期待して待ってて下さい!」

 

「おしっ、頼むよリョウ!青木くん!わたしは食材切ったり機材の準備とかしとくから!」

 

「虹夏ちゃん。手伝いますよ。ぱぱっと終わらせて、わたしたちも沢に行きましょう」

 

「あっ、妹さん…わたしも手伝います」

 

「ありがとうございますPAさん!廣井さん!」

 

「…わたしは沢組の監督でもするか。ほら行こう、ぼっちちゃん。喜多。頭数多いほうが釣れるだろ?」

 

「お姉ちゃん頼むよ!エグいの釣ってきて!」

 

「任せろ虹夏」

 

「あっ、魚釣れればバーベキューポイントプラス…」

 

「ひとりちゃん!頑張って釣りましょうね!」

 

別荘を出て、鬱蒼とした山道を少し歩くと、木々がなくなり空が現れ、穏やかそうな流れの川が横たわっていた。

 

「わー!綺麗!凄いですね先輩!」

 

「この別荘周りでここらへんだけは格段に綺麗でオススメ」

 

「さあお前ら。キリキリ釣れ。作業開始!」

 

「店長は釣らないんすか?」

 

「わたしは監督。迷子出さないように見張ってるんだよ。ほれ釣り竿と餌だ」

 

釣り餌は…ゴカイか。苦手な人は針付けに苦戦しそうだな。などと思っていると早速。

 

「きゃー!!クネクネ気持ち悪い!」

 

喜多さん虫苦手だもんな。そらそうなる。するとゴッチが喜多さんの手からゴカイをとって針につけてやる。

 

「あ、どうぞ…。郁代ちゃん…」

 

「えっ凄い…ひとりちゃん、虫、平気なの?」

 

「は、はい…。ゴカイ、いなくなっちゃったら言って下さい。また、付けますので…」

 

「ひとりちゃん…!」

 

意外だ。ゴッチ虫平気なのか。自分の針にゴカイを通しつつ見やる。よし!釣るぞ!鮎が普通に食べてえ!

 

 

 

 

 

 

 

釣果…

 

リョウ先輩〜2匹。いずれも鮎

 

ゴッチ〜1匹。鮎

 

喜多さん〜0匹。

 

俺〜2匹。いずれも鮎

 

計5匹だ。かなりナイスな釣果じゃねえのか!?

 

「ううっ…!1匹も釣れないなんて…!不覚…!」

 

「郁代ちゃん…わたしの分けてあげるから…元気出して…」

 

「ひとりちゃん…!優しい好き…!」

 

「うええっ!?い、郁代ちゃん…!?」

 

「おし。ほんだら戻るぞ。バーベキューと酒がわたしを呼んでる」

 

別に呼んでないと思うんですがね店長。しかし、1匹では物足りないからな。2匹というのが丁度いいよな。

 

「あっ凄い!ほんとに釣ったんだ皆!」

 

「虹夏。一足遅かったな。5匹も釣り上げて、今戻るところだ」

 

「店長。バーベキューの準備できてますよ!」

 

「すまんなPA。さあ戻ろう」

 

「ヤダ!わたしも釣りしたい!1匹釣るまで粘らせて!」

 

「なら暗くなる前に帰ってこいよ。一応お前らが戻るまで火入れは待ってやるからよ」

 

「やった!青木くん!リョウ!釣り方教えて!」

 

「いいでしょう。ホイ餌」

 

「ひいいっ!?虫!苦手!付けてリョウ!」

 

「まったくしょうがないな虹夏は…」

 

「む〜!わたしもやるわひとりちゃん!わたしだけ1匹も釣れないなんて悔しいもの!」

 

「あっ郁代ちゃん…頑張って…!」

 

「じゃあわたしが皆を見てます…先に先輩たちは戻っててください…」

 

「おう頼むよ廣井。…ほんと、お前は酒入ってないとマトモだな…後でご褒美に酒飲ましてやるから」

 

シクハック、すったもんだの川との格闘のあと、執念で喜多さんも虹夏先輩も1匹ずつ釣り上げた。全員でバックアップした甲斐があった…。これで釣果は2匹追加され、7匹となった。最早魚だけでパーティイケるなこれ。

 

「あっやったね、妹さん…」

 

「廣井さん!ありがとう!」

 

なんとか全員魚を釣り上げ、沢から引き上げる。その帰り道。

 

「しかしいまだに信じられない。ほんとにこの人が、あのロックの申し子みたいな、廣井きくりさんと同一人物なの?」

 

「リョウ先輩。言いたくなる気持ちもわかるが、そうらしいよ。俺もいまだに慣れないけど…」

 

「や、やっぱり変、かな…。ごめんね。いつも酔っ払ってイキリ倒して…」

 

「しおらしい!いつもの姉御の豪快な感じはどうしたんすか!?」

 

「え〜青木くん!わたしこっちの廣井さんも好きだけどな〜。なんか〜思慮深い感じとかさ〜」

 

「ははっ…。く、暗いだけですよ…」

 

「なんかぼっちちゃんに似てる…。かわいそうだから早くお酒飲ましてあげたい…!」

 

「虹夏先輩。でも飲んだらいつもの姉御に逆戻りですよ?」

 

「ううっ…!」

 

「わ、わたしもお酒飲んだらお姉さんみたいになるのかな…へへ…」

 

「ひとりちゃん。ひとりちゃんは成人してもお酒禁止ね」

 

「な、なんでぇ!?」

 

こんな会話を展開しながら別荘への帰り道を行く。するとPAさんと店長が別荘の前にいた。すでに炭火をおこされたバーベキューの焼き場も用意されている。

 

「おし。帰ってきたかお前ら。肉あり野菜あり。酒あり。なバーベキューの開始だぜ」

 

「ほしたら俺は、こいつら締めて串打ちしてきちゃいますね。みんな先に楽しんでて」

 

「あっ、青木くんありがとう!奥に台所あるから!」

 

「あっ凄い…100バーベキューポイントプラス…」

 

やったぜ。いや、やったのか?何ポイントあったらなにになるんだそれ?

 

包丁でワタとエラを掻き出し、水洗いして水気を拭いたら、目から尻尾まで串を打つ。こうすれば焼いてる間、身が縮んで崩れることもない。全体に薄く塩を降ったら完成だ。手際よく7匹分、串を打ちおわり、みんなの元へ戻る。すると。

 

「いえ〜い!みんな飲んでる〜!?バーベキューさいこ〜!!」

 

「ああ…戻ってる…。さようならシラフ姉御…」

 

「ああ遥。飲んだらすぐに元通りだ。人の夢のように儚いよな…」

 

なんかしんみり語る店長の頬に何か光るものがつたう…。そんな気がした。

 

「はいよ青木くん!テキトーに取り分けといたから食べて食べて!」

 

「ありがとう虹夏先輩!うし!食うか!」

 

「遥。お前とリョウ用にノンアルもいくつか用意しといたからイケ。今日は遠慮するな」

 

「あざっーす!んぐっぷはー!!美味い!この時のために生きてるわ〜!」

 

「遥。このノンアルワインも中々イケる。牛との相性がマーベラス」

 

「いいっすね〜!リョウ先輩〜!!」

 

「おっしょうね〜ん!何処行ってたのさ〜!わたしを1人にして〜も〜!」

 

「酒臭え!早いっすよ姉御!出来上がるの!」

 

「フフ〜。青木く〜ん」ナデナデ。

 

「うわあ!どうしたんすかPAさん!いきなり人の頭撫でて!」

 

「ほ〜う。中々隅に置けねえな遥。美女2人も侍らせて。…多分、まだお前に対する母性が上がったままだぞ2人共」

 

「そういうことかしまった!」

 

がっちり脇をPAさんと姉御に固められてしまう。あかん身動きが取れん。コレではバーベキューに参戦出来んではないか!と思っていると。

 

「は〜い。青木くん。ど〜ぞ〜」

 

PAさんがノンアルビールを注いでくれ。

 

「ほい、ホイ、ホイ!食べて!遥くん!」

 

姉御が肉や野菜を取ってくれる。…アレ?コレ俺動かなくていい?

 

「青木くん…」ジトーッ。

 

ゴッチの珍しいジト目。いかん。なんか誤解してる気がする。

 

「青木くん…、やっぱり」

 

虹夏先輩。なにがやっぱりなのですか?ちょっやめて。ジト目のレーザービーム止めて!

 

「仲良いことは美しきかな…今のうちに肉と魚食っとこ」

 

「お〜いお前ら。よそ見してていいのか?リョウに全部食われるぞ?」

 

「やべっ。青木くんには後で事情聴取するにして…今はバーベキューだ!こらリョウ!食い過ぎだぞわたしにも少し分けろ!」

 

「はいっ!ひとりちゃん!お肉とっといたわよ!食べて食べて!」

 

「あ、ありがとう郁代ちゃん…!」

 

ほっ。危うく俺に向きかけたヘイトが霧散していった…。前を向くと、店長が貸し1つだと言わんばかりのウインクをかましてきた。ありがてえ…!

 

かくして別荘の夜は更けていく。だが、みんな忘れていた。思い出したくなかったのかも知れない。本番はこれからだと。この別荘。逃げ場など何処にもない。幽霊とのタイマン場所なのだと…。

 

日が沈み、唯一の光源が失われると、山には暗闇が訪れる。本能的に人間が恐れ、何かがいるとされる、暗闇が。

 

忘れてはならない。これからが本番だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






ということで此処で一区切り。

草木も眠る丑三つ時。山田家別荘が本領を発揮します。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。