【完結】 ギター爪弾きのバラッド   作:はま0821

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どうやら主人公は、大山さんが付ける渾名のセンスが気に入ったようです。


58 やたらセンスがあるので、この後輩の渾名に対して注意はしづらい

 

 

「ふむ、後藤さんはヒッピー先輩。喜多さんは映え先輩。んじゃあリョウ先輩は?」

 

「ベースの人ですよね!あんまり喋らないから…無口先輩で!!」

 

「ぶふぉっ。ちょ待って…ははは。おもろ」

 

ここはおなじみSTARRY。今、仕事始まる前だから、後輩と親交を深める意味で、大山さんが付ける独特な渾名のインタビューをしている。しかし。なかなかいいセンスしている。喜多さんが映え先輩で、リョウ先輩が無口先輩…!!笑える。多分本人に聞かれたらしばき回されるなこの子。いや俺もか。

 

「んじゃあ虹夏先輩は?ドラムの子」

 

「綺麗なリボンが似合うから、リボン先輩です!!」

 

「なんだよそこは普通か。もっとこう…毒があってクスリと笑える…。待てよ。俺は?俺はどうなるの?」

 

「え?えっと…。先輩は…。うん!ヒゲ先輩で!アゴヒゲ先輩!!」

 

突き刺さった。ブーメランが自分に!人を笑うと穴二つか…!人を呪わば、だったっけ?くそう!最近だれにも言われなくなってきたから、遂に許されたのかと思ったのに!!

 

「カッコいいと思いますよ!アゴヒゲ!!高校生でやってる人があんまりいないだけで!!あっそういえばヒゲ先輩!ギターのことで相談あるんすけどいいっすか!?」

 

ヒゲ先輩で確定かぁ…。この子の渾名付け、みんなのキャラを的確に反映していて面白いんだよなぁ。店長は、コーチ。うん。そんな感じだ。PAさんとか廣井の姉御とか。どうなるのか気になる。それはそうと、相談?俺にか。なかなかいいセンスだぞ後輩。

 

「ネットで良いギター探してたら!2980円のギター見付けて!!これ先輩どう思います!?」

 

「にきゅっぱ!?ねえな。あり得ねえよ。なんか致命的な欠陥があるだろうからやめとけ」

 

「むぅ〜ん。やっぱりですか…。こんなおいしい話ないですもんね…」

 

「いや。物によるんだよ結局。値段の話で言うなら5万は出さないと安心はできねえな。なんか壊れてたりを疑っちまう。基本な、楽器とかそういうもんは通販とかで買うのはやめとけ。思いも寄らない欠陥があっても、買うときには物が見れないから、その欠陥に気付かねぇ」

 

「う〜ん。しかし…。ビンボー学生のうちにはこれでも結構な出費で…」

 

「少し面倒でもちゃんと楽器屋とか。自分の目で見て手で触れられるとこで買ったほうがいいぞ。そういうとこなら突っ込まれるから、あまりにもアレな商品は置かれてない可能性が上がるしマトモなもんが手に入りやすい。…ただ」

 

「…値段が張る。っ…すよねぇ…」

 

「凄まじく言いにくいがそういう事だ。…今度の休み。楽器選び手伝ってやろうか?」

 

「…えっ!?」

 

「目立ちたい。だっけ、ギター始める理由。スーパースターマンみたいな理由だが、悪くないんじゃねえか?新たなギタリストの卵がギター求めてるんだ。先輩として、協力ぐらいはしてやるぜ?」

 

「…う、うそうそっ!ほんとにいいんすか!?ヒゲ先輩めっちゃいい人…!!」

 

「初心者が1番躓きやすいのが最初だからな。そこは手を貸してやるよ。分かんないこと。聞きたいこと。なんでも聞きなよ」

 

「やべぇ…!めっちゃ優しい…!!」

 

ヒゲ先輩は引っかかるが、赤ん坊が産声上げようとしているんだ。邪魔するのは野暮だろう。

 

「話は聞かせてもらったよ!!」

 

「偉いわね青木くん。初心者の大山さんの力になってあげようなんて」

 

「うぉわあ!!に、虹夏先輩!!喜多さん!!いっいつから!?」

 

やべぇ!!あだ名談義で盛り上がってたことがバレたらしばかれる!!大山ちゃんもそれに気づいているのか戦々恐々としてる。

 

「2980円のギターらへんから!」

 

あっぶね。聞かれてねえわギリギリ。今度からあだ名談義は虹夏先輩や喜多さんがシフト外れてる時にしよ。

 

「わたしもそろそろドラムスティック新調しようと思うんだ!!今度の休み!大山さんのギター選びわたしも付き合うよ!」

 

おお。虹夏先輩。ありがたい。百人力っすよ!

 

「不安よね大山さん。自分で楽器を選んでみるけど、このギターで良いのか。やりたい音楽の方向に合っているのか。わかるわ…。わたしもそうだったから。安心して大山さん!青木くんは、ひとりちゃんと同じくわたしのギターの師匠!不安に感じたことは聞いてみたら、全部答えてくれると思うわよ!!」

 

ふっ。Fコードの押さえ方教えたりちょっと練習に付き合っただけなのにまだ師匠扱いしてくれるのか。喜多さんの義理堅いことよ。

 

「リボン先輩…!映え先輩…!!あ、ありがとうございます!!よ、よろしくお願いします!!」

 

大山てゃが直角90度のお辞儀で謝意を表す。かくして、次の休みの予定は決まったな…。

 

「り、リボン先輩!?あたしのことなのそれ!?」

 

「お、落ち着いて下さい虹夏先輩!わたしなんか映え先輩ですよ!?」

 

「喜多ちゃんが映え先輩だったんだ!?」

 

うん。やっぱ最初に聞くと面食らうよな。呼ばれてるうちに慣れてきて癖になるから困る。…俺もうヒゲ先輩でいいや。…ゴッチはなんか大山ちゃんに尊敬されているんだよな。羨ましい。

 

「よしっ!じゃあ今度の休み!みんなで楽器屋に繰り出そーう!久しぶりだねなんか!」

 

「いや!虹夏先輩!まえひとりちゃんのギター選びに行ったときは青木くん来てないんですよ!」

 

ぐっ!喜多さんめいらん情報を!気が向かなかったんだよしょうがないだろ!…まあ、それでブラブラしてたら廣井の姉御に会っちまって、とんでもない目に遭ったんだけど…。それはこっちの話か。…それが縁となって、最終的にはイライザさんに協力してもらって未確認ライオットに出れることにもなったのだから、運命とはどう転がるかわからない。

 

「…青木くんってそういう所あるよね〜。でも今回は逃さないよ!…まあ、青木くんが言い出したんだし、逃げないだろうけど」

 

「も、もちろんですよ虹夏先輩!逃げませんて!大山ちゃん。当日はありったけの貯金と、後はまあ、ぼやっとでいいから欲しいギターの方向性を決めといてくれ!後は任せろ。俺と。喜多さんと虹夏先輩。頼れる音楽の先輩達にな!」

 

「うう〜。わたしみたいなクソ素人の駆け出しに…!みなさんホントにありがとうございます!」

 

「お〜しお前ら、そろそろ開店だ〜。今日も気合い入れてけよ〜」

 

そろそろ開店時間だ。店長の号令に従い、各々準備に入る。だがしかし。大山さんの悪気ゼロの決意表明が、ここにいる全員のペースを狂わせる。

 

「はいっ!!リョーカイしましたコーチ!!今日も粉骨砕身!!頑張らせて頂きます!!」

 

「だからそのコーチってのやめてって!!わたしがいつお前にコーチングしたんだよ!」

 

「ぷはっははは…、あっーははははは!!ごめんやめてマジ無理!あははははは!!」

 

「てんめえ遥!!なに笑ってやがんだ減俸にすんぞ!!」

 

「すみまっ…!あは、あはははは!!」

 

やべえ〜。くるって分かってても笑っちまうわコレ。店長って全然コーチって柄じゃないじゃん。なのにハマってんの。もう店長はコーチだよ俺ん中で。マジ面白え大山さん。

 

「…。ふっ。遥。お前、たまには年相応に笑うんだな。似合うじゃねえか。…それはそれとして。20分分減俸な!」

 

「げえっ!マジですか!もう笑ってないです勘弁して下さい!!」

 

「五月蝿え、もう遅え!」

 

「ぷふっ…!!お、お姉ちゃんが…!コーチ…!!ふっふふ…!!」

 

「大変だわ!虹夏先輩が床に丸まってだんご虫みたいになりながら笑いをこらえているわ!」

 

あ〜もう滅茶苦茶だよ。大丈夫なのか今日の営業。こんな緩んだ状態で。まあ、一番最初に大笑いしちまった俺が言うことではないな。

 

「なんか仲間はずれ感だね。ぼっち」

 

「なにがあったんでしょうね…?リョウさん」

 

おっ無口先輩にヒッピー先輩。おっすおっす。シフト通りに、なんなら少し遅れてきていたので、結束バンドの陰気担当の2人が場の空気から浮いていた。今さらこの2人が来たところで場の流れが変わるはずもなく、残念ながら今日のSTARRYは、緩みきった空気のまんま営業をスタートさせることとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日の俺の担当は、大山さんと虹夏先輩と一緒にドリンクだ。このバイトに当たり外れがあるとすれば、このドリンクが当たりで、受付は外れだ。俺に言わせればな。何故なら色んなバンドがライブしている様を、バイトする傍ら見れるからだ。これがゴッチになったら、繁忙期を過ぎればあまりお客さんが来なくなる、受け付けが当たりだ。と答えるかもしれん。

 

「ありがとーございます!!ジンジャーエールにアップルジュースです!半券をいただきます!」

 

「ありがとうございますっ!カシスコーラとカシスウーロンです!暗いので足元お気を付け下さい!」

 

御二人とも少しタイプは違うが、それぞれ100万ボルトのスマイルだ。撃ち抜かれる男性客多数だろうな。罪な娘たち。…だが、俺は見ていた。一瞬。大山てゃの瞳が輝いていたのを。あるバンドが演奏していたときだった。

 

「…わあっ…!!」

 

「あのギターか?」

 

お客さんが捌けたタイミングで聞いてみる。あるバンドのギターに大山てゃの目が釘付けになったこと。俺は見逃してないぜ。

 

「うわわっ!?ひ、ヒゲ先輩…!?」

 

ぷふぅっ!?と。隣から吹き出しまくった声が聞こえてくるが、俺自身は何処吹く風。もう、慣れたぜ…。(遠い目)

 

それよりだ。

 

「なかなかいいセンスしてるぜ。あの人が弾いてるギターは、ギブソンレスポール。ゴッチの初代のギターでもあり、俺が今愛用しているギターでもある。多分、あの人が使ってるモデルだと5万くらいかな…?」

 

「す、凄いっすね…!こんな遠目なのに、値段まで分かるんですか…!」

 

「青木くんのギター見る目は信頼してもいいよ!探偵みたいな観察眼してるから!」

 

笑い終わったかねリボン先輩。うまく繕っちゃいるが、少し笑った影響で涙目なのを見逃してやるほど、今日の俺は甘くない。まあ今はいいか。

 

「一つに絞る必要なんかない。欲しいと思ったギター、なんでも記憶しときな。今度買わなくても、次買い換えるときとかに参考になるぜ?」

 

「…はいっ!」

 

なおもステージの上のバンド、特にギタリストに目を奪われている大山さんを、何処か懐かしいものを見る目で見やる。PAさんが演出しているライブの中で、輝かしく光を跳ね返しながら主張を続けるギターは、美しく、映えて見えたに違いない。

 

「…へ〜」

 

隣の虹夏先輩が、俺の顔を覗き込みながら感心したような、声を上げる。

 

「いや、なんかちゃんと先輩してるよね、青木くん。柄じゃないとか言って、面倒くさいことやりたがらないかと思った」

 

「俺をなんだと思ってるんですか?ギターを始める時、分かんないことだらけなんですよ当たり前すけど。その不安を、少しでも払拭してやれるならしてやりたい。ただそれだけですよ」

 

「うん。なんかめっちゃ先輩としてまともに見えてきたよ!よしっ。わたしも僅かだけど力貸すよ!ギタリストの卵の不安を払拭してあげよう!」

 

「ありがとうございます。虹夏先輩のスティック選びも、微力ながら協力しますよ」

 

ショーウインドウの中の商品を眺めるように、ステージの上のギタリストを見つめる小さな背中を見やりながら、虹夏先輩にそう返す。

 

「…ちゃんと選んであげようね!青木くん!」

 

そうですな、せめて本人に後悔のないよう。

 

気が付けば、全バンドのパフォーマンスが終わり、お客様は全て捌け、これから片付けの時間だ。…最近気付いたんだが、俺は騒がしい時間が終わると、さあ片付けだ!って思ってしまうのだ。カラオケでもそうなのだ。職業病ってやつか?客の立場でも発動するから困る。

 

床にモップをかけ、落ちているごみは拾いごみ袋に纏めていく。機材を全て撤収し裏に下げ、出ているテーブル全てを拭き上げれば。

 

「あい〜。今日もお疲れさん。上がっていいよみんな。気を付けて帰れよ〜」

 

店長の号令で、今日の業務は終了だ。ふぅ、今日も今日とて、疲れた…。店長はそのままカウンターに置いてあったノートパソコンの前に腰を下ろし、作業を再開する。まだ業務が残っているみたいだ。大変だな。PAさんが自分の分と店長の分のお茶を汲んで、店長の傍らに置く。そして、自分自身も腰を下ろし、一息つく。

 

我々結束バンド、プラスアルファは何時ものダベリテーブルにまとまって、今度の休みの計画を立てる。先ほどの会議に不参加だった陰キャ組も加えて。

 

「えっ!?リョウこの日行けないの!?」

 

「あ〜うん。ごめん…多分行けないっぽい…家族旅行があって…」

 

なんてこった。無口先輩は用事があるのか。頼りにしていたのに。

 

「あ、あの…。わたしもその日は家族との用事が…」

 

「ひとりちゃんも!?」

 

なんてこった。ギターのことに関して頼りになりそうな2人が欠席濃厚だと?

 

「あちゃ〜!ふたりのこと結構アテにしていたんだけどな〜」

 

虹夏先輩が残念そうにごちる。正直俺も同じ気持ちだが、この際それは言いっこなしだ。俺がなんとかしてみせよう。

 

「なんかごめん。ロイン送ってくれたらわたしが出来ることなら協力する」

 

「わ、わたしもです!大山さん!!わたしに出来る協力ならするんで!ぜひ分からないことあったら、わたしにもロイン下さい!」

 

結束バンド陰キャ組の二人が申し訳なさそうに協力を進言してくる。ありがたい。とうの大山さんは何処吹く風と言った感じで。

 

「ありがとうございます先輩方!3人も着いてきてくれるなんて、頼もしさの極みです!当日よろしくです!!」

 

あまり気にしてないようだ。うむ、コレは期待に応えられるよう頑張らねば。

 

「…猫々。安いギターを探すならハードオフがお勧め。ジャンク品だけど、たまにいいやつも見つかる。もし壊れかけのやつで気に入ったのあったらロインで見せてみて。直せそうなら直してあげる」

 

「…!無口先輩…!!」

 

「…。無口先輩…。ま、まあ。下北のハードオフならわたし店長知り合い。まずは其処に行ってみるといい。ギター探し、頑張って」

 

「はい!!」

 

うし!だいたいの方針もまとまった!結束バンド陰気なギター詳しい組が居ないのは心許ないが、その穴は俺が埋めるとしよう!まずは下北のハードオフへ!!レッツゴー!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…巻き込まれないですんだね。ぼっち」

 

「…はい、リョウ先輩。ですが、得も知れない罪悪感みたいなものが…」

 

「言うなぼっち。体育会系タイフーンに巻き込まれるのはごめんだろ?一度決断したのなら、ブレるべきじゃない」

 

「そ、そうですね…!心休まる休日が、1日手に入ったと!そう思うべきですよね…!」

 

…。後ろで聞いていたが、ぼっちちゃんはリョウと居ると大胆な行動をとるよな。リョウの悪い影響が…。まあ。合わないやつとはとことん合わないもの。無理をする必要もないか。今回はリョウの裏を見破れなかった虹夏の負けだな、と。STARRY店長である伊地知星歌は独りごちた。

 

 

 

次回、弾丸都内ハードオフ巡りの旅!

 

デュエルスタンバイ!!

 

 






果たして都内だけですむのかな?

関東などと纏められているが、いざ電車で巡ってみると、その広さに愕然とする。取りあえずさ、千葉と埼玉でかすぎるだろ。東京の西の方も侮れない。
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