【完結】 ギター爪弾きのバラッド   作:はま0821

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ぼっちちゃんがスランプになる話。実はやらないだけで、喜多さんも虹夏ちゃんもリョウさんも、作詞は出来そう。でも、結束バンドのカラーである少し暗い世界観の中に、ちょっとだけの光を混ぜ込む、あの歌詞は、後藤ひとりにしか書けないのだ。


60 目から流れ落ちる、タマシイ色の水

 

 

「虹夏!お土産は!?」

 

「開口一番それかよ。まあリョウらしいけどさ」

 

ここは我がホームスタジオであるSTARRY。いきなり催促されたので、お土産がいろいろ入った紙袋を親友に手渡す。曰く、このお土産如何によって、この金欠ベーシストの今週の生存率が変わるらしい。流石に大袈裟じゃない?

 

「しかしまさか、ジャンクギターのために栃木まで行くとは。流石のわたしも計算外」

 

「うっ…。ちょっとその場のテンションというか…」

 

親友であり、金欠でもある、ベーシストと他愛のない雑談を交わす。まあ、楽器選びなんてもんはその場の勢いだ。迷えば迷うほど、手は引っ込んでいくもの。その場のテンションに任せたほうが良いときもあるでしょう!

 

「ほんで。手に入れたのがこのギターと。…ジャンクにしちゃいいギターだな」

 

お姉ちゃんが大山さんの戦利品を鳴らしながら呟く。

 

「はい!コーチ!!青木先輩も凄くいいギターだと言ってました!どうですか!?」

 

「コーチじゃねえんだけどな。…うん。壊れてるところも見当たらねえし、コレ3万はいい買い物だな。遥に感謝しとけよ」

 

「はい!!ありざす!!」

 

元気な声が響く、開店前のSTARRY。まだ話題にのぼった、青木くんを含む、秀華高生は来てないが、なぜか大山さんは来てる。曰く、先輩より遅れて入るなどあってはならない!だそうだ。大山さんの中じゃ初日はカウントされてないんだな。ひとしきり弾き終えて大山さんにギターを返すお姉ちゃんを見やっていると、扉のほうが騒がしくなった。噂の秀華高生達かな?

 

「おはようさんです〜。お、重い…!」

 

「しっかりしてひとりちゃん!傷は浅いわよ!」

 

「あう〜。わたしはもうダメです郁代ちゃん〜」

 

扉を開けて入ってきたのは…。ぼ、ぼっちちゃん?を背負った青木くんと、そのぼっちちゃんに声をかけ続ける喜多ちゃんと。なんかやたらと気落ちしている様子のぼっちちゃんだ。最後のはいつも通りか?

 

階段を降りてきた青木くんは、背負っていたぼっちちゃんをソファに寝かせ、自身とぼっちちゃんのであろうギグバックを壁に立て掛ける。

 

「ふわ〜。相変わらずすごいパワーだね青木くん。重かったんじゃないの?」

 

「いやキッツイ!流石の俺もギグバック2つに人間1人担ぐのはキツイです!自分で歩いてくれよ頼むから!」

 

「あうう…す、すみません…」

 

「あ、朝からずっとこんな調子で元気がないんです…!ひとりちゃん!どうしたの!?なにかショックなことでもあったの!?」

 

ソファの上で既に液体になりかけているぼっちちゃんに、喜多ちゃんが心配そうに声を掛ける。…いや、確かに重症だな。いくら気落ちしてても、普段なら自力で歩くくらいはするよな、ぼっちちゃんでも。…それすら出来てない。なんらかのトラブルが!?

 

「あっ。虹夏、言い忘れてた。ぼっちがスランプ」

 

「はよ言えよリョウ!スッスランプ!?どしたのぼっちちゃん!ギター弾けなくなっちゃった!?」

 

ソファの上で液体とも固体とも取れそうなフォームのぼっちちゃんに問い掛ける。改めて思う。ぼっちちゃんて何者?

 

「いっいえ!ギターは大丈夫なんですけど…!さ、作詞の方が…!ま、全く進まなく…!」

 

なにおう!由々しき事態じゃん!?リョウの曲とぼっちちゃんの作詞がなかったら結束バンド立ち行かないよ!?

 

「安心して虹夏。今回は曲が先に出来た。まあ見ての通りぼっちが調子悪いから完成はまだだけど」

 

むふー。と、得意げに胸を張るベーシストに一言。

 

「なにも安心できないよ!?」

 

「あうう…!す、すみません。何故か急に書けなく…!い、今まで、暗い歌詞ならスルスル出て来て、それに引っ張られて他のアイディアも出てたんですけど…、その肝心の暗い歌詞のほうが…」

 

「出なくなっちゃったんだ!コレは大変だよリョウ!で、でも、なんでだろう!?」

 

取り敢えずぼっちちゃんが差し出してきた、書いては消しての跡がありありと残る、歌詞のノートをみんなで囲んでみる。…今回も、いい歌詞だと思うんだけどな。暗いけど、カッコよくて、好きなフレーズも多い。…何が悪いんだろう?

 

「で、でもでも、今回は自分で納得できない歌詞が多くて…!な、なんか取って付けたみたいな。頭で考えて出してきたみたいな。胸の中から出た、自分のホントの言葉じゃないような気がして!アレも違う、コレも違うってやってたら、じ、自分のスタイル?みたいな物もわかんなくなってきちゃって…ね、ねぇ虹夏ちゃん…。さ、作詞ってどうやるんでしたっけぇ!?」

 

なるほど。不味いな。自分を見失ってる。やたらコクコクと。ぼっちちゃんの独白を聞きながら、理解があるように頷くリョウに、取り敢えず意見を聞いてみるか。

 

「ぼっち。分かる。年明け、新しい曲つくってた時のわたしと全く一緒。大体そういうときは、自信を失ってて、何を出しても駄目そうに見えるってそんな時期。今は我慢の時だよ」

 

ぼっちちゃんの背中をさすりながら諭すようにリョウが語りかける。む〜ん。スランプ…。やっぱ一筋縄ではいかないか…。それでも。友達が悩んでいる。ぼっちちゃんは、結束バンドの作詞家である前にわたしの友達。なんとか早く解決してあげたい…。

 

「リョウ、曲聴かせてよ!どんな曲に作詞するのか、把握するのも大事でしょ」

 

「うん。もちろん。みんなも聴いて。なかなかの自信作」

 

そういうとリョウは、自分のスマホを取り出し、アプリを起動して机の真ん中に置き、音源を再生する。

 

最初はゆっくりと、暗闇の中で、つぶやくようなボーカルで始まり。そして少しづつ、わたしが叩くであろう、マーチのようなドラムのリズムで中盤へと向かい、アップテンポになっていく。そして、サビに入ると、トンネルを抜けた後の青空のような爽やかな曲調へと変化する。そして、またわたしのドラムパートに戻って締めだ。…えっ。ちょっと待って。リョウ凄え。

 

「ちょ、ちょっとリョウ、す、凄いんじゃないの、この曲…!」

 

「ふふーん!虹夏。いいぞ。もっと褒めろ」

 

ヤバい。ここにきて最高傑作ではなかろうか。前半の沈み込むような曲調から、Tシャツの中を吹き抜ける風、みたいな爽やかなサビへの曲調の変化が限りなく自然だし、なにより、カッコいい。バラードとパンクロック。1つの曲に2つのおいしいところを盛り込んで、違和感なく纏めている。ホントに自信作だ。凄えなリョウ。

 

「さ、流石ですリョウ先輩…!きゃー!ヤッパリ先輩はカッコいいのよ!普段カラカラでもやるときはやるのよ!」

 

「む、無口先輩凄いっす!凄くいい曲っすよ!」

 

「うむうむ!途中ちょっと悪口混じった気がしたけど、わたしの承認欲求は助かってる。郁代。こっちおいで、撫で撫でしてあげよう」

 

「や、やった!先輩!優しくして下さい!」

 

とてもいい曲が出来そうなので、取り敢えずは胸を撫で下ろすのだが。ガバアっと。視界の端のぼっちちゃんが頭を抱える。

 

「ぷ、プレッシャー…!わ、わたしこんないい曲に歌詞付けられるの…!?ああっ…!ムリ!とてもじゃないけど、釣り合った歌詞が出て来ない…!」

 

なるほどな。なまじリョウの曲が良すぎるから作詞するぼっちちゃんにとってはプレッシャーなわけだ。…でもだ。もしこのリョウの曲に負けないクオリティの歌詞を付けられたら…結束バンド、最高傑作の曲になり得るかも…!ならば、ここが踏ん張りどころ!

 

「ぼっちちゃん諦めないで!わたしたちも頑張るから一緒に考えよう!みんなで、素晴らしい曲を仕上げようよ!」

 

「に、虹夏ちゃん…!」

 

「わたしも考えてみるわ歌詞!もしいいのがあったらそのまま使っていいわよ!ひとりちゃん!」

 

「うう〜。郁代ちゃん…!ありがとう、ございます…!」

 

パラパラと、歌詞が纏めてあるノートに目を落とし、言葉の一句一句を読み上げ、ぼっちちゃんが残そうとした。フレーズのひとつひとつに思いを巡らせる。…初めてだな。歌詞なんか考えるの。サビとイントロで、まったく印象が違うから、そこを生かしたいよね…。などと考えていると。それまで静かだった青木くんから声が掛かる。

 

「リョウ先輩。ゴッチ。この曲には主人公が、2人いるみたいだよね」

 

どういうことだろう?いつも奴は言うことが唐突なんだよなぁ。青木くんの言葉の真意をはかっていると、彼は続けて。

 

「あくまで俺が聞いた感想だけど、イントロの暗い部分とかが、考えすぎてなかなか先に進めない暗い方の主人公でさ。それを明るくて優しい、もう一人の主人公が手を引いて連れ出す!みたいな、そんな感じの曲に聞こえるんだよね」

 

なるほどな〜。青木くんなりの曲の解釈か。この曲の2面性は、主人公が2人いたから。そう考えれば良いのか。そう納得していると、リョウが口を開く。

 

「遥。面白いかも。実はこの曲、中途半端に途中まで作って投げ出してた曲を2曲、纏めて作ったんだ。だから、この曲に2人、主人公がいるって解釈はあながち間違いじゃないかも。やるじゃん遥」

 

フフンと鼻を鳴らして、得意げにする、青木くんを、呆気にとられたような顔をして、ぼっちちゃんが見ている。?。どうしたんだろう。そう思っていれば。

 

「あ、青木くん…!凄い!そうか、2人いたんだ!この曲には2人いたんだよ!どうしても暗い最初の部分から明るいサビの部分への変化が自然に書けなくて…!そっか、明るい子に憧れてる暗い子を描写すれば…!あ、ありがとう青木くん!」

 

「おお。一助になったならなにより。…やっぱゴッチは凄えな。こんな簡単なアドバイスで立ち直すもんな」

 

「う、ううん…!わたしが1人でやってたらなかなか出てこなかったと思う、主人公2人説!コレならなんとかイケそうだよ!」

 

「バラバラな個性が集まってバンドになる。考えすぎるってのは裏を返せば、思いやりがあって優しいってことだ。明るい主人公だって完全無欠じゃない。何時ぞや手を差し伸べてくれた時のように、今度は暗い子の発想が、明るい主人公の一助になればいいよな。頑張れ!ゴッチ!」

 

隣で青木くんがぼっちちゃんにアドバイスするのを聞いて、思わず感心する。明るい子ばかりに焦点を当てるんじゃなく、2人を掛け合わせてみたら?というアドバイスだ。…やっぱ青木くんは真面目モードの時だと頼りになるな。裏でリョウがかなり音楽のこととなると頼りにするのも納得だ。

 

「凄いぞ…!一気に2人のキャラが鮮明に見えてきた!…強く、なりたいんだ…!いつか、自分を助けてくれた人を助けるために、強くなりたいんだ!変わりたいんだ…!きっと!」

 

凄いな、ぼっちちゃん。スイッチが切り替わる瞬間っていうのを初めてみたかも。もはや周りの音など聞こえちゃいないだろう。ノートとにらめっこしつつ、膨らませたイメージの中から、使えそうな表現をひとつひとつ書き出していく。まっさらに近かったぼっちちゃんの歌詞ノートはみるみるうちに、ぼっちちゃんが使いたい、表現の種で埋まっていった。

 

「んん…!あとは、明るい子のイメージ…!よく喋って、華のような笑顔で!自分も周りも明るく照らすようなそんな…!あっ!圧倒的イメージ不足!!わたしにそんな要素はない!」

 

かと思えば、さっそく暗礁に乗り上げている。んもう折角カッコいいって思ったのに。ま、まあ、親しみやすいのもぼっちちゃんの魅力かな?などと思っていると、隣から爆弾が投下される。

 

「いやいや、ゴッチさん。いらっしゃるでしょ?明るい子。完璧なモチーフが。華のような笑顔で、見る人みんな明るくさせて、かつかわいい。ほら、ここに」

 

青木君がわたしと喜多ちゃんを両手で同時に指し示す。い、いやいや。喜多ちゃんならともかく、わたしなんか…。い、言うほど明るくないし、か、かわいいだなんて。

 

「…か、神はここにいた…!そ、そうか!そうだ簡単な話だった!そうだよいるじゃん完璧なモチーフ!なんで気付かなかったんだ今まで!青木くん!ほんとーにありがとう!!助演の俳優賞取れるんじゃない!?マジで!」

 

ぼっちちゃーん!?止まって!?恥ずかしいよ公開処刑だよ!?そんな憧れの対象みたいなのに、モデルにされるのは普通に恥ずかしい!しかしぼっちちゃん改め、止まってた作業がようやく進み始めた事に歓喜している浮かれおバカには、ストップの文字はないようで。仕掛け人の青木くんはぼっちちゃんの後ろでニヤニヤと笑うばかり。やっろう、後でたっぷりお礼してやる!

 

「そうだ…!郁代ちゃんや、虹夏ちゃんに憧れてる、暗い子すなわちわたしを描写すればいいんだ!なんだ簡単だ!いくらでもある!それこそいくらでも!虹夏ちゃんや郁代ちゃんから勇気をもらったことなんか!いくらでもぉ〜!」ガリガリガリガリ!!

 

怖いほど作業が捗っているぼっちちゃんを諦めの境地で眺めていると、リョウがニヤニヤしながら近付いてくる。

 

「…お疲れさん。もうなんか心配なさそうじゃん、憧れの先輩?」

 

面白がってんなこの野郎。後で真綿で首を絞めてやるとして。

 

「いいんだけど、なんか少し、気恥ずかしいな〜。ねぇ喜多ちゃん?」

 

なんか顔があっついので、片手でパタパタと扇ぎながら、なんとなく、この話題になってから静かな喜多ちゃんに話題を振ってみた。すると。

 

「〜〜〜っ…!!う〜!」

 

喜多ちゃんは、真っ赤になった、ほっぺに両手を当てて、うりんうりんと、首を扇風機のように左右に回していた。

 

「郁代の顔が真っ赤だ!髪の色とおんなじになってるから常人の2倍赤い!」

 

「うう〜!ひとりちゃんと…!リョウ先輩の…バカ…!」

 

どうやら喜多ちゃんには少し刺激が強かったようで。…だが、この状況を生み出した、浮かれおバカはまるでそのことには気付いてない。…ぼっちちゃん。罪な女め…。

 

こちらの様子など気にするべくもなく、どんどん書き進めるぼっちちゃん。わたしと喜多ちゃんは少し落ち着いてきて、青木くんとリョウは変わらずニヤニヤこちらを眺めながら、作詞の進捗を見守っていた。…何分。いや、何十分経ったか。そして。

 

「で、出来た…!み、みんな!出来た、かもです!!」

 

「「「「お、おおーーーーー!!!!!」」」」

 

「えっ凄いぼっちちゃん!始めたら一気にじゃん!」

 

「完成するときって意外とそんなもん。この中の誰かの言葉が、ぼっちの心の楔を引き抜いたんだよ」

 

素直にぼっちちゃんの作業スピードに驚愕していると、リョウがこんな事を言う。やはり、産む苦しみを知る2人。何処か気持ちが通じ合っているんだろうなと。少しだけ、嫉妬めいた気持ちが芽生えた。だがしかし。そんな事を思ってる場合ではない。

 

「み、見せれる…?ぼ、ぼっちちゃん…?」

 

「は、はい。ど、どうぞ…」

 

許可を頂いたので、そこにいる全員で、ぼっちちゃんが書いた歌詞に目を落とす。ちなみに、大山ちゃんとお姉ちゃんは、買い出しに行ったみたい。

 

「…凄いよ。1つのアドバイスで、ここまで良くなるんだね」

 

とはリョウ。どうやら高評価らしいや。そしてわたしも、それは、おんなじ感想。

 

「…ホントに凄いよ!ぼっちちゃん!で、できちゃったじゃん曲!」

 

「や、やった…!う、うおぉ…!や、やったんだ…!」

 

ぼっちちゃんが両の腕を突き上げてから固まる。まるで映画のポーズみたいだ。

 

「す、すっごく恥ずかしいけど…。さ、作詞完成、おめでとう。ひとりちゃん」

 

「あ、ありがとう、郁代ちゃん…。ど、どしたの。か、顔。赤いよ?」

 

あ〜あ。それはあかんよ、ぼっちちゃん。今さらだよ喜多ちゃんの顔が赤いなんて。ぼっちちゃんが、だいぶ恥ずかしいモデルになんかするから!

 

「…。あのねひとりちゃん。い、いろいろ!いろいろ言いたいけど、取り敢えず1つだけ!…もうあなたは。誰もが知らない、その他大勢には戻れないわ…。…それだけ!」

 

「えっ、い、郁代ちゃん。そ、それってどういう…」

 

「み、皆さん喉渇きませんか!わたし!水買ってきます!」

 

言うが早いか。喜多ちゃんは、STARRYの階段を駆け上がり、扉を開けて外に出て行ってしまった。…このSTARRYでも水なんかいくらでも出る。…逃げたな。他の奴らにも、それは伝わったらしく、リョウは唖然と見送った後、やれやれと両の手を開いて、呆れのポーズ。そして、青木くんは、今までのやりとりを見て、ずっーとケタケタと笑っていた。

 

「むー。な、なに笑ってるんですか青木くん」

 

結構珍しい、ジトッとした目で青木くんを睨むぼっちちゃん。しかし、青木くんは笑いを止めずそのままぼっちちゃんのそばまで歩み寄り。

 

「しょうがねえよ。喜多さんのアレは照れてんの。そこは気付かないと。ノンデリゴッチ」

 

それはそう。

 

「うぐっ。そ、それにしたって、そんなにケタケタ笑わなくてもいいと思います…」

 

「ゴメンゴメン。喜多さんの気持ちを慮ったら笑けてきてね。…でも、俺も喜多さんじゃないけど1つ。ゴッチ。ゴッチはもうその他大勢の少女Aには戻れないよ。…少なくとも、喜多さんが、店長が、結束バンドのみんなが。そして俺が。アーティスト後藤ひとりを知っているから」

 

「…!!」

 

「アイディアに詰まったり、道に迷ったりしたらまた言いなよ?いくらでもケツを引っ叩いてやる。でも。道は前にしか開かれてない。頑張れよ、アーティスト後藤ひとり」

 

「…。今度はアーティスト、かあ…。あ、ありがとう青木くん。…わたしを始めてギタリストと認めてくれたのも、あなただった…。うん。わたし…進んでみるよ。道が前に見える限り」

 

「頑張れ!」

 

もはや定番になった、青木くんとぼっちちゃんが、突き出した拳を合わせる仕草。気付けばわたしも、そしてリョウも、右拳を突き出し、2人に合わせていた。

 

「さすがだよ、ぼっちちゃん。うちの作詞担当は凄い!」

 

「ぼっちのお陰で今回もわたしの曲にいい歌詞がのりそう。いつもながら、ナイス。この曲もこれにて完成だ」

 

そして4人でそのまま、人差し指だけ空に掲げる謎ポーズを完成させていると。

 

「あー!!ズルいです!わたしを除け者にしてなにやってるんですか!?」

 

「皆さんお疲れ様っす!!水買ってきましたんでみんなで飲んで下さい!!」

 

「うい〜。お、なに。曲完成したの?」

 

コンビニ袋を下げたお姉ちゃんと、人数分の水を持った、喜多ちゃんと大山さんが帰ってきた。…ていうか。どこで喜多ちゃんと一緒になったんだ、お姉ちゃん。

 

「おー。なんか店の前で、水ガブ飲みしてたから一緒に帰ってきたんだ。…ぼっちちゃん、歌詞できたんだ。…やるじゃん。…ぼっちちゃんは、作詞も出来るけど、ギターも出来る。ずっと見てきたからわたし、それは知ってるから。自信をなくすことがあっても、ぼっちちゃんはひとりじゃない。…コレからも、ちゃんと見とくからな」

 

ポンポンと。ぼっちちゃんの頭を2回撫でて、お姉ちゃんは仕事に戻る。…お姉ちゃんめかっこうをつけやがって。

 

「は、はい!ありがとうございます店長さん!が、頑張りマシュ!」

 

ぼっちちゃんがお姉ちゃんにリアクションを返す。惜しいとこで噛んだな。などと思う間もなく、今度は喜多ちゃんが、ぼっちちゃんに言葉を掛ける。

 

「ひ、ひとりちゃん!な、なんか言いたいことがグルグル廻っちゃって。ちょっと冷静になって纏めていたの!いろいろ言っても仕方ないから、1つだけ!ひとりちゃん!あなたはもうその他大勢ちゃんには戻れない!…少なくともわたしが!あなたはわたしの前を、少しだけ頼りない背中を見せながら歩いてくれる、ヒーローだって知ってるから!それだけ!」

 

「い、郁代ちゃん…!は、はい!!」

 

2人で手をつなぎ合う尊い光景。だがわたしは見逃していない。ぼっちちゃんの後ろで見事なドヤ顔を披露する青木くんの姿を!喜多ちゃんが言いたかったことを正確に読んでいたな。相変わらず、小憎たらしい、侮れないやつ。

 

「よし!これにて、レコーディング用のミニアルバムの曲が5曲!揃ったよ!あとはみんなで練習して!クオリティアップあるのみだよ!久々にやっとくか!アレ!」

 

「おっ虹夏。やる?」

 

流石リョウ。わたしの意図を真っ先に理解したらしい。そのまま、そこにいた全員に呼びかけ、円陣を組む。

 

「おっアレだな?」

 

「運動部だった頃を思い出すッス!」

 

「よ、よしっ。頑張るぞ…!アーティスト後藤ひとりの、船出だ!」

 

「頑張ってひとりちゃん!わたしのヒーロー!」

 

「い、郁代ちゃん…!え、えへへ…!」

 

「なんでわたしまで…」

 

その場にいる人たちのリアクションはこんな感じ。…てか。ぼっちちゃんと喜多ちゃんの距離が近すぎない!?一応わたしのギターヒーローでもあるのに…!むむむ…!

 

「虹夏。ブレてるブレてる。音頭取って」

 

「そうだった!えっと!これにてついにレーベルから発売される、ミニアルバム用の曲、全5曲完成しました!レーベルさんも頑張ってくれるみたいだけど!レコーディングにはすごくお金がかかります!失敗しないように!みんなで協力して、クオリティを上げていきましょう!!結束バンドーーーーー!!!!ファイヤーーーーーー!!!!!!!!」

 

 

「「「「「「ファイヤーーーーーー!!!!」」」」」」

 

かくして、今度はミニアルバムのレコーディングだ。レーベル入って、遂に初めての、スタジオでのレコーディング!確実にプロの道を一歩一歩歩けてる。音楽の道に近道はない。ひとつひとつ、目の前にある課題をこなし、先に進んでいくしかない!よっし頑張るぞ!みんなも頑張っていこーう!!

 

 






今回のストーリーは、結束バンドのある曲がモデルとなってます。良かったら予想してみて。

しかし、なんか気が付いたら1万字近く…。もう少し短く簡潔に纏めたい…。始めて、前の投稿から1週間以上も空いちまったし…。むむぅ。
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