【完結】 ギター爪弾きのバラッド   作:はま0821

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本文にも書きましたが、時系列が少し前後してます。前に書いた話よりこっちの話のほうが先に起こった話です。番外編なので許して!


〜イントロダクション〜 青木遥と大槻ヨヨコ 弐

 

 

あなたの気高さに憧れた。嘘や欺瞞が混じっていれば、たとえ自分に優位になるような事があっても受け入れない。そんな心の気高さに憧れた。女の子で、小さな体なのに、自分よりも大きな相手に対してもけして退かずに立ち向かえるその強さが眩しかった。いつか自分もそうなりたい。そして、もし本当に、そうなれるその時まで、心根だけでも真似できたなら。そう思って、歩いてきた。

 

あなたは、優しかった。思った事を歯に衣をきせずに口にしてしまう性格のせいで、友達が出来なかったわたしを助けてくれた。恥ずかしくて誰にもいえなかったわたしの心を、馬鹿にしないでいてくれた。…あなたが自分をどう評するのかは分からない。でも、受けた側であるわたしがそう感じたのなら、それは優しさなのだ。と、勝手にそう思う。…自分もそんなに楽な立場ではなかっただろうに、自分以外に心を配れる、強く優しい心に憧れた。わたしもいつか、そうなれたなら。

 

 

 

 

 

 

 

♪♪

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よ、ヨヨ先輩!申し訳ない!!」

 

「えっ!?な、なな、なにが!?」

 

少し時間を遡る。この話は、青木遥がアメリカから帰ってきたその日。STARRYにて伊地知姉妹と結束バンドのメンバーが開いてくれた食事会。その中での一幕。青木遥は、その食事会に来てくれた、大槻ヨヨコに対して、斜め45°に頭を下げていた。突然の出来事なので、その会に参加していたほかの面々も、なんだなんだと、こちらを伺っている。

 

「…、何も連絡できなかった。本当にゴメン。心配、かけたよな…」

 

先のアメリカへの遠征の際。青木遥自身にまるで余裕がなかったことも原因でもあるが、見方によっては結束バンドよりも長い付き合いである大槻ヨヨコに連絡がまるで出来なかったこと。それにより心配をかけてしまったこと。青木遥は、その事を謝っているのである。

 

「あ、ああ!その事!た、確かに心配したけど…、もう良いわよ。無事に帰ってきたのだし」

 

ヨヨコは普段は冷静でなおかつ寛容だ。理由なしならば怒ったかもだが、相手も大変であった。事情があったことを理解している。もし自分が同じ立場であったなら。同じような行動を取らなかったのか?言い切れないのだ。ならば、自分に追及する謂れはない。

 

「し、しかし…それじゃ俺の気がすまない。な、何か罪滅ぼしさせてくれないか?」

 

罪滅ぼし。彼がわたしに?何をしてくれるのか、わたしは興味を持った。興味を持ったなら聞いてみる。それがわたしの性格!少しだけ指で下ろした自身の髪の毛を弄くり、聞き返してみる。

 

「な、何をしてくれるの?」

 

「ヨヨ先輩!都合の良い日を教えてくれないか?俺が奢るから、ご飯食べに行こう!」

 

…ふふ。思いの外、ストレートに来たわね。迷惑かけたことに対しての埋め合わせとしちゃあ、王道中の王道。まあ、別に迷惑だなんて思ってないけどね。あなたにも事情があったのだから。

 

「…2人きりで。ってことかしら?」

 

だ、大丈夫かな。わたし。変な顔してないかしら。少し頬に温度を感じながら問う。

 

「もちろんだ!行きたい場所があれば合わせるし、なんだったら食事じゃなくてもいいし!ヨヨ先輩が行きたいとこで構わない!だから、お願いです!罪滅ぼし、させて下さい!」

 

目の前で手のひらを合わせて頭を下げつつ、青木遥が懇願する。…。ふふふ。面白い奴。ほんとに。…聞いた話なら、青木遥自身も結構大変だったはずだ。そんなのがようやく解決したって時に、普通他の人間にまで気が回るかな?…わたしなら、彼のように出来るだろうか?…分からないわね。…でも。

 

「…い、いいわよ!行こうじゃない青木遥!場所や時間はあなたに任せるわ!見事この!百戦錬磨の強者!大槻ヨヨコをエスコートしてみなさい!!」

 

ズビシと。青木遥に指を突き立て、大槻ヨヨコが宣言する!百戦錬磨?すると同時になぜか、お、おお〜!!っと。周りから驚嘆の声が響いた。

 

「お、おお!?コラ!な、何勝手に聞いてんだ!?」

 

いや、あの声量で話しといて聞くな。は無理があるわよ青木遥…。デリカシーの無さは相変わらずよねぇ…。

 

「おお。いや、凄いね遥くん。見事成功だ。大槻ちゃんと2人でデートだあ〜♡」

 

「な、なななな何いってんですか姉御!?これはデートじゃなくて罪滅ぼしですよ!心配かけちゃったことに対する、罪滅ぼし!!」

 

姉さんが青木遥を茶化しにかかる。そりゃあそういうイジりを受けるわよ。自戒しなさい青木遥。…しかし、わたしには分かる。分かっちゃう。奴が罪滅ぼしだと言った以上。その会合はそれ以上の意味も、それ以下の意味も、持ち合わせちゃいないことに。青木遥相手に深読みするとバカを見る。わたし自身、危うくバカを見かけた事もあるしね。…まあそれはだ。それとして。…デート。デートか。なかなか良い響きね!

 

「楽しみにしてるわよ青木遥。精々ありとあらゆる手段を講じてわたしを楽しませてみなさい!!」

 

青木遥の前に仁王立ちし、余裕綽々と言うようにバシッと言い切ってみせる。まあ!裏ではそんなに余裕があるわけでもないのだが!!同性の友達とも2人で出掛けるなんて偶にしかなかったのに!?い、いきなり異性と!?だ、大丈夫かなわたし!?き、奇行とか、よく分からない自慢とか、気付けば口をついて出ちゃうのよね!き、気を付けないと…!だが、まあ、目の前の相手なら、大体の失敗は笑って流してくれると。なぜか謎の信頼もあるのだった。

 

「…分かりました…!ヨヨ先輩をエスコートするため、不肖青木遥。全力出させて頂きます。日時と場所はロインで追って連絡させて頂きます!」

 

「分かったわ。…あなたの無事も確認できたことだし、今日はもう行くわ。…無事でよかった。色々小言もあるけど、それはその時に!当日期待してるわよ青木遥!」

 

とたたたたっと。小走り気味にSTARRYの階段を登っていくその背中を見上げていた、ほぼ全員の総意が下る。(恥ずかしくなって逃げたな)と。

 

「よ、良かった〜こ、断られたらどうしようかと」

 

青木遥がそんな独り言を溢すと、隣にいた、いつもニヤニヤしている顔をさらにニヤつかせた、酒飲みベーシストが反応する。

 

「大槻ちゃんが遥くんの申し出を断るわけないじゃ〜ん。無自覚〜?」

 

「えっ?時間とか都合とか。合わなかったら普通に断られるんじゃあ…」

 

「そういう意味じゃねえんだけどな。しかしなんか。むず痒いよね君達。男女が2人きりでデート。滅茶苦茶色気があるシチュエーションのハズなのに、大槻ちゃんが偉そうすぎるのと、君に下心が見えな過ぎるのがあって!何か起きる気がしない!シチュエーションはこんなに魅力的なのに何故!?」

 

「あ、姉御…?何を言ってるんで…?」

 

頭を抱えて独り言をブツブツ呟く廣井の姉御に恐怖を覚える。なんかこういうとこはゴッチに似てるんだよな。おかしいな今日は酒抜けてないハズなんだけど。などと考えを巡らせていると、前と後ろから、殺気を感じる。

 

「マグネットパワー!!プラァス!!」ジャアアン!!

 

「マグネットパワー!!マイナアス!!!」ジャキーン!!

 

なんかの技の準備をしている!ヤバい!このままここにいたら良くない!!そんな悪い予感をビンビン感じるのに足が凍っちまったかの如く動かない!まさか!殺気に飲まれちまったというのか!?この俺が!?足掻く俺に無慈悲にも。必殺の一撃は叩き込まれる。

 

「「クロスボンバー!!!!」」ズドオン!!!

 

「うわああああああ!!!!!!」

 

黄金の両右腕の挟撃を喰らい、俺の体が宙に舞う。空中をニ〜三回回転しながら吹っ飛び、俺は顔面から床に着地した。

 

「う〜わエゲツな」

 

伊地知星歌は感想を漏らす。さも他人事のようだが、今の技を披露した片割れ。伊地知虹夏に伝授したのは、他ならぬ彼女である。

 

「すいません先輩。わたしも行きます。とりあえず遥くんは無事に帰ってきたみたいなんで。もといた飲み会抜け出してきちゃったんすよ〜!」

 

言葉なく床に倒れ伏す男を一瞥しながら。

 

「今、死んだかもしれんぞ?」

 

「た、確かに…」

 

「珍しいな?お前が目の前の酒より優先することがあるとは。…さっきのシデロスの子か?」

 

伊地知星歌は廣井きくりに問い掛ける。

 

「う〜ん。はい。なんか様子、おかしかった気がしたんで。なんかわたしに出来るかな〜、と」

 

「ふっ、先輩らしいじゃん?お前が先輩ねえ〜、似合わねえけど。まあ頑張れよ」

 

「はいっ。じゃあね先輩!遥くん!当日頑張んなよ!大槻ちゃ〜ん!待って〜!」

 

カラコロと下駄の小気味良い音を鳴らして廣井が去っていく。まあ、そんなに時間は経ってない。駅までには目当ての人に追いつけるだろうさ。…それより、だ。…実はコッチの展開のほうが楽しみまであるんだよね〜。わたしは底意地が悪く見えるであろう笑みを顔に貼り付けながら、今しがた必殺技を青木遥に放った伊地知虹夏と山田リョウを順番に眺めつつ、ひとりごちた。

 

「さ、さささささっきからだまって聞いてれば!!な、なに!?なんなの青木くん!?不純!!不正!!不潔だよ!!君はなに!?お、大槻さんとねんごろになりたいのかな!?」

 

ぽひーっと。頭から謎の音をたてながら伊地知虹夏が叫ぶ。顔は真っ赤だ。

 

「ゴメン遥。わたしはココまでやるつもりはなかった。…でも相方がやるって言うから仕方がないんだ…これタッグ技だし」

 

反省しているような口振りと反比例する含み笑いをしているロクデナシ。いや山田リョウが、口先だけの謝辞を述べた。すると、力なく倒れ伏していた屍が、驚異的なスピードで復活を果たす!

 

「その割には随分楽しそうじゃねえかリョウ先輩!人の首にラリアットかましといて責任逃れしてんじゃねえぞ!!」

 

「おお遥。お早い復活」

 

「寝てる場合じゃなくなりましたからねぇ!虹夏先輩!なんか誤解してない!?なんだよねんごろって!」

 

「ね、ねんごろはねんごろじゃん!!2人っきりでお出掛けだよ!?片方は男!片方は女の子だよ!?2人共年頃だよ!?デートじゃん!紛うことなきデートじゃん!なんか間違ってる!?」

 

「うぐう!?いや確かに言葉を羅列してみたらそうなんですが…!」

 

俺が答えに窮していると、今この場で、この時に、一番聞きたくなかった擬音が聞こえてくる。

 

きたーん!!!!!!!うおっ、陽キャ光線が飛んでくる!!ちなみにエクスクラメーションマークの数が、テンションを表している。彼女の。

 

「きゃー!!惚れた腫れたよー!!やっぱりなにか怪しいと思っていたのよ!幼馴染みとの恋…!っきゃー!!恥ずかしいぐらいに王道ね!!青木くん!!式には呼んでね!!」

 

「違うってんでしょうが!!これは何も言わないでアメリカ行って心配掛けちまったから罪滅ぼしなの!!さっきからそう言ってんだろ!?」

 

「遥。その言い訳でこの場を乗り切るには無理があるぜ…?」

 

うぜえええ!!この2人(陽キャとクソベーシスト)が組んでるとマジで手が付けらんねえ!!だ、誰か!?誰か味方はいないのか!俺はSTARRY内を見回す!

 

すんっと。PAさんには目を逸らされ。店長は明後日の方向向いて口笛吹いてやがる。ゴッチは隣の喜多さんの陽キャ光線にやられて溶けていた。こんちくしょうがどいつもこいつも!!誰もいない友軍に嘆いていると、少しテンションを落とした虹夏先輩に意外なことを問われる。

 

「あ、青木くん!罪滅ぼしとか、デートとか。すっごい気になるけど、今はいいよ」

 

いいんだ。

 

「あ、青木遥自身はどうなのさ?お、大槻さんと、2人で出掛けられて。う、嬉しいの?」

 

虹夏先輩のこの質問に、今まで騒いでいた結束バンドの面々も、何故かピタリと静かになりコチラを伺ってくる。…俺自身が、大槻さんと。…ヨヨ先輩と。出掛けることについてか…。

 

「…ど、どうなのさ…?お、男らしく答えてみなよ!?」

 

ビシリと指を突きつけ、虹夏先輩が追及してくる。質問の内容こそふざけちゃいるが、虹夏先輩の表情は真剣そのものだった。

 

「…嬉しいですよ。嬉しいに決まってます。そりゃあ、俺だって男。ヨヨ先輩が世間からどんな女性に見られているか。気付かないほど鈍くもない」

 

虹夏先輩の目をしっかりと見据えて返す。

 

「えっ…!?」

 

「わ、わあ〜…!」

 

「ほ〜う…」

 

「あっあっあっ…!」

 

結束バンドの反応だ。四者四様。1人カオナシがいるがね。…そしてだ。虹夏先輩の疑問に、俺の解釈で答えておこう。

 

「そりゃあヨヨ先輩は美人ですよ。少し癖あるけど優しいし。彼氏になりたい。なんて思う男は星の数ほどいるでしょう」

 

「え…え?じ、じゃあ…!?」

 

「だからといって、俺とヨヨ先輩が彼氏彼女になったりは、ないですけどね」

 

…一瞬の沈黙。まるで電源が落ちちゃったかのように静かになる。まあ勿論長くは続かないわけだが。

 

「「「えっ!?なんで!?」」」

 

ゴッチ以外の3人がハモる。そんなに意外かね?俺の中には、簡単に説明できるだけのロジックがある。…これは俺というより、ヨヨ先輩側の問題なのだが。

 

「なんで?ですか…。じゃあ逆に質問です。ヨヨ先輩と付き合えるような男とは。どんな人でしょ〜う?」

 

「金持ち」

 

黙れ守銭奴。

 

「やっぱり幼馴染みよ!昔からのツーカーな付き合いが愛を育むのよ!ゴールデンウィーク近くに毎年公開される映画の主人公も幼馴染み一筋だわ!」

 

つうかあの雑誌は幼馴染みの女の子が特別強いからね。LAーーN!!

 

「えっとぉ…!お、大槻さんだから…!やっぱり音楽かな!?音楽やってる人!」

 

虹夏先輩。半分は正解かと。でも、もう半分が果てしなく遠い。

 

「ヨヨ先輩は1番になりたいんすよ。音楽だけでなく。あらゆる分野で。これは俺、本人に聞いたことがあるんで間違いないです。そんな人が付き合う男は、少なくとも自分と同等か、それ以上のスペックを持っていなければ難しい…」

 

「…うん」

 

「正確に言いましょう。たぶん、ヨヨ先輩の目に俺は写っていないと思います。…自虐じゃなく、俺以外の男も誰も。ヨヨ先輩は今自分の音楽の腕を磨くので手一杯です。…男にうつつを抜かしている暇がないのではないかと。愚考する次第です」

 

「た、確かに…!そうかも…!」

 

「納得するんだ?虹夏」

 

俺はそんなふうに考えている。これは昔からそうなのだが、ヨヨ先輩は上昇志向が強いのだ。…なので、音楽というジャンルで1番を獲っていないのに、他のものに脇目をふる。そんなヨヨ先輩が想像できないのである。

 

「だからたぶん、俺ではヨヨ先輩の彼氏彼女にはなれないと思います。はい!QED!」

 

「うう〜ん…」

 

虹夏先輩が残念なような。腕を組んで唸り、なにか色々な感情がまぜこぜになった不思議な表情をする。何とか納得してくれたかな?そう思い胸を撫で下ろしていると、思わぬトコロから思わぬ質問が飛んできた。

 

「そ、それって…。もし大槻さんが、お、音楽以外を考える余裕があったら、あ、青木くんは大槻さんとお付き合いしたい。…ってことですか…?」

 

やはり苦手なジャンルなのだろう。(俺も得意じゃないけど)今まで1言も喋っていなかったゴッチが、こんな事を言い出す。結束バンドのみんなも、PAさんや店長まで目を見開く。…コイツはほんとに。普段のほほんとしている癖にこういう時最短で核心を突くよな。ゴッチの目を見返してみる。…少し怯えながらも、信念のこもった真っ直ぐな瞳。真面目に答えないと、失礼か。

 

「なんだ〜?ゴッチ。君はアレか。俺とヨヨ先輩に付き合ってほしいのか?」

 

「えっえっ!?」

 

「付き合ってデートして!他にも恋人がするようなあれやこれやを漏れなく!やってほしいってことだな!?いや!ムッツリスケベ!!」

 

「あっいやっえっえっえっと…!?!?」千手観音ぼっち

 

まあそれはそれとして、からかいはするけどね。リアクション面白いんだもん。

 

「…冗談だよ。…誓って本当だが、俺はヨヨ先輩に友達以上の感情を抱いたことはない。…前に俺は小学校と中学校では友達いなくて1人だった。ってな話はしたよな?」

 

「…う、うん」

 

「俺にとってヨヨ先輩って、辛い時期が重なってて、それを一緒に立ち向かった仲間。みたいな、そんな感情が強いんだ。…だからかな。そういうふうに見たことはないな。多分さ、向こうも一緒だと思う」

 

「そ、…そう、なんだ。な、なんか安心した、かも」

 

「おん?なんでゴッチが安心するんだ?」

 

「えっあ、いっいや…!え、えっとぉ…あ、青木くんの感情に、ちゃんと理由があって良かったなって…。自分で分からないまま、その感情に蓋をしちゃうと…後で後悔するんだよ…、わ、わたしにも、覚え、ある…」

 

「…確かにな。ありがとうゴッチ。心配してくれて。俺は普段からヨヨ先輩にはお世話になってる。罪滅ぼし兼御恩返しとして、今度のお出掛けは真面目にヨヨ先輩を饗してくるぜ」

 

握りこぶしを作って結束バンドのメンバーに向ける。俺なりの決意表明だ。虹夏先輩は、腑に落ちたような、得心したような。そんな表情。悪ノリコンビは、俺とゴッチのやり取りを聞いている時も、終始ニヤニヤしていた。や〜ろぉ〜!楽しみやがってぇ〜!!罪滅ぼしだっつってんだろうがぁ〜!!全く全く。あの2人には、ゴッチの真面目さを少しは見習ってほしいもんだぜ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♪♪

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ま、待ってよ〜!大槻ちゃ〜ん!!」

 

「あ、姉さん!?どうしたんですか!?」

 

下北沢の駅に向かう道すがら。なんとか先に行っていた後輩に追いついて話し掛ける。少しだけ、去り際の様子が気になったのだ。まあ、ただ気恥ずかしくなっただけな気もするけど。

 

「どしたもこうしたもないよ〜!やったじゃん!遥くんとデートだよ!?楽しみだねっ!」

 

「ふふっ、ありがとうございます姉さん。…でも多分、姉さんの思ってるような色気のある展開にはならないと思いますよ?」

 

少し諦めが混じった表情で自虐的に呟く大槻ちゃん。似合わない表情を浮かべるものなので、思わず尋ねてしまう。

 

「ええー!?なんで!?デートだよデート!男女2人きりだよ!?」

 

「姉さんよく思い出して下さい。ヤツは罪滅ぼしだと。そう言ったんですよ。ヤツがそう言った以上、その会合はそれ以上の意味も、それ以下の意味も、持ち合わせないんです。ヤツの言葉の裏を読もうとすると馬鹿を見ます。わたしも1回踏みかけました」

 

「お、おおう…!経験者かく語りき…!なんだよ〜つまんね〜な〜!大槻ちゃん自身はどうなのよ〜!?遥くんと出掛けるの、楽しみじゃないの〜!?」

 

後輩の遥くん評を聞いて、納得しかけてしまった自分に蓋をするように、気になっていた部分を聞いてみると、前を行っていた後輩が振り返り、少しだけ表情を崩した笑みを作る。

 

「楽しみですよ?ヤツはこうも言いました。全力出させて頂きます。と。あいつは、口に出したことは必ず実行するヤツなんですよ。あいつがそう言った以上、当日はホントにわたしを楽しませるため、あの手この手で全力で来ます。楽しみに決まってるじゃないですか…!」

 

貢ぎ物を待つかぐや姫みたいな笑みを浮かべる後輩を見てわたしは思う。なんか期待していた反応と違う!もう少し可愛いらしい反応期待してたのに!いや大槻ちゃんだから表情は可愛いんだけどさ!?って…。思ったけど。…大槻ちゃんの顔を見る限り、遥くんに期待してない。ってわけでもないよなぁ…。まあ、ならいいか。あとは若い2人に任せて、わたしは遥くんか大槻ちゃんのどっちかから後日談でも聞こうっと。わたしはそれ以上はなにも聞かずに、大槻ちゃんと普段通りの世間話をしながら、下北沢駅への道を歩くのだった。

 

というわけで、次回は青木遥の大槻ヨヨコに対する罪滅ぼしの一幕をお伝えする。色気のあるような展開にはなるのか。それは廣井さん曰くの若い2人のみぞ知るとことである。頑張れ青木遥。負けるな大槻ヨヨコ。甘酸っぱいようで少しほろ苦いかも知れない、青春の1ページとやらを謳歌してみせるのだ!!(まちかど風)






青木遥と大槻ヨヨコの深堀り回です。設定はあったのですが、本編中々出番が無かった大槻ヨヨコの救済回でもあります。次回は、罪滅ぼし本番。果たして青木遥は大槻ヨヨコを満足させることが出来るのか?
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