いくら悪魔といえども、一人暮らしする上で生活必需品を買い揃える必要はあるものよ。
洗濯用洗剤とシャンプー、トリートメントを切らしてしまったわ。まさか替えまで使い切っていたことに気がつかないなんて……最近やる事が多いからかしら。
食材などは仕送り分がまだ残っているから、わざわざショッピングモールまで行く必要はなさそうね。近くのコンビニで買って来ましょう。
コンビニって、洗濯用洗剤が売ってない所もあるのね。普段は売ってる所も、今日に限って売り切れ。結局ショッピングモールまで来て、目当てのものを買い揃えることができたわ。
このショッピングモール、スーパーやドラッグストアよりも足を運びやすい所にあるから、とりあえずここに行こうって事が多いのよね。
それに、ここは繰り返す度に足を運んだ場所でもあるもの。
薔薇園の魔女。キュゥべえとの接触を妨害しても、まどかが最初に遭遇することになる魔女。
どれだけ先回りしても、結局手下の襲撃にあってしまう。まどかがここに来ないように手を回しても、まどかは必ずここに来る。その理由が──
「あれ、ほむらじゃん。何してんの?」
「見れば分かるでしょう。買い物よ」
この美樹さやかよ。
美樹さやかは上条くんのお見舞いのCDを選びにくる。
まどかが魔法少女になっていなければまどかと一緒に。まどかが魔法少女になっていれば一人でこのショッピングモールのCD屋に来る。そして魔女の結界に引き込まれて……私が薔薇園の魔女を倒さなかった最初の方の周では、美樹さやかは魔女に食べられていた。その時のまどかの泣いた顔は……。
「その点であなたは私に感謝するべきよ」
「はぁ? なんの事?」
「私は気にしていないからあなたも気にしなくていいわ」
「そう言われると気になるなぁ……あ、それ洗剤?」
「そうよ。切らしてしまったから買いに来たの」
「わざわざここに? コンビニとかで買えば良かったじゃん」
「買おうとしたけど売り切れだったのよ」
人の買い物袋の中身をジロジロと見ないでちょうだい。
美樹さやか、あなたはどこまで愚かなの。
「へぇ、珍しいこともあるもんですな。お、このシャンプーとトリートメント、ウチで使ってるのと同じやつ」
「返品してくるわ」
「ちょいちょいちょい! 傷つくようなこと言うな!」
「あなたと同じ匂いなんて、勘違いされるかもしれないでしょう」
「何が!? そんな事言ったら杏子もマミさんも同じ匂いだし!」
「あら、あなた達三人ってそういう関係だったのね」
「だぁー! 元々はマミさんに教えて貰って同じの使ってるんだし、あたしと杏子が一緒に住んでるのあんた知ってんでしょうが!」
美樹さやかで遊ぶのはこれくらいにして、どうしましょうか。
セールだったから換えの分も一緒に買ってしまったし、返品は流石に……かと言って美樹さやかと巴マミと同じ匂いっていうのも……。
「一回嗅いでみ? 結構いい匂いだと思いますぜ?」
「……」
「ほれほれ」
「……」
はぁ。なかなか諦めなさそうだし、さっさと確かめて帰りましょうか。
美樹さやかの髪に顔を近付け、匂いを嗅いでみる。微かに花のような香りがする。これがフローラルという匂いなのかしら。
「どうよ」
「あなたの言う通り、いい匂いね」
「でしょ? それに、コラーゲンとかなんとかがたっぷりで髪にもいいんだって。あんた長いし、結構いいと思うんだ。それにね、まどかも今度このシャンプーにしてみるって言ってたよ」
「なっ──」
「結構好きなんだって、この匂い。今使ってるの使い切ったら買ってみるって。お揃いになったらまどかも喜ぶんじゃない?」
「そう、かしら」
「初対面の第一印象はともかく、何かと気になる存在みたいよ? まどかにとっての暁美ほむらさんは」
「……気になる言い方ね。第一印象って何よ」
「教えなーい」
思い出し笑いしているの、癇に障るわ。チョップよチョップ。
「あ
「じゃあ、私は帰るわ」
「えー、ここまで付き合ってあげたのにあたしの買い物には付き合ってくんないの?」
「あなたが勝手に絡んできただけでしょう。私の買い物はもう終わってるのよ」
「ちぇー。じゃあね、ほむらー」
手を振る美樹さやかに背を向け、モールの出口へ向かう。
今日、美樹さやかは一言も私を悪魔と呼ばなかった。
記憶改変が進んでその事も忘れてしまったのかしら。それとも、悪魔と呼ぶか呼ばないかの基準があるとか……。
何故こんなことを考えなきゃいけないのかしら。
「まったく。美樹さやか……あなたはどこまで愚かなの」
「ねえねえ聞いた?あの噂」
「聞いた聞いた。さやかと暁美さんのことでしょ?」
「そうそう、ショッピングモールでね──」
「ねー!ビックリ、そんなに仲良かったっけ?」
「いつからなんだろうね……聞いた話だと、通学路でもしてたって……!」
「キャー!」
「マジかよ、さやかのやつ……」
「さやかちゃんとほむらちゃん、本当は仲良しだったんだね」
「それにそれに、二人から同じ香りがしたんだって!」
「これからどんな顔してさやかン家いればいいんだよ……」
「大変だね……」
この後二人して言い訳して回ったため、よりウワサが広まった。