ダンジョンに強すぎる冒険者がいるのは間違っているだろうか 作:マイペースライター
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エルが
夜の静寂の中、彼女の指先が微かに動く様子が見える。
目の前には小さな紙袋が置かれているが、エルはそれが何なのかはわからない。
「…遅かったじゃない」
アフロディーテは少し顔をそむけたまま、かすかな声で言う。
「ただいま戻りましたアフロディーテ様!」
エルは元気よく答えたが、彼女のいつもと比べて暗い雰囲気に気づき、少しだけ神妙な顔つきになった。
「その…どうかしましたか?」
アフロディーテは返答せず、紙袋をちらりと見つめる。
その視線に気づいたエルが袋へ目をやると、中身は既に空のようである。
アフロディーテは、ふと恨めしげな視線をエルに向けた。
「……あなたのせいよ、エル」
「えっ、ええ!? ぼ、僕、何かしましたか?」
エルは状況が飲み込めず、アフロディーテの言葉に慌てて声を上げる。
「ふん、知らないでしょうけど、ジャガ丸くん…昨日あなたの稼ぎが良かったから昼と夜の分として沢山買って、一緒に食べようと思ったのに…。あなたの帰りが遅いから、つい、ぜんぶ……」
アフロディーテは呟き、優雅に息をつく。
「少しでも太っていたら、あなたのせいよ!」
そんな恨めしそうな顔をして拗ねるアフロディーテに対してエルは驚愕する。
しかし、
「そ、そんな…!というか、神様って不変じゃないんですか?太るとか、あるんですか?」
エルが純粋な疑問を口にした瞬間、アフロディーテの目が微かに細まり、彼女はまたそっぽを向いた。
「くっ…!もう知らない!あなたとは口を聞きたくないわ」
その一言で、エルは固まってしまった。
やがて彼女は優雅に席を立ち、エルに背を向けたまま寝室へと向かっていく。エルはその背中を見送りながら、小さな声で反省の言葉を口にする。
「……さっきのは、失言だったかも」
彼は戸口で一枚の薄い羽織を肩に掛けると、外に腰を下ろし、壁に背を預けて座る。明かりもない暗い夜空を見上げ、しばらく考え込み、そして瞼が重くなるのを感じ、久々に、1人きりでの眠りへつくのだった。
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翌朝、エルが目を覚ますと、アフロディーテは依然として不機嫌だった。
軽く挨拶をしようとしたが、彼女の冷たい視線を受け、気まずさが募る。
居づらくなったエルは、逃げるように神殿を後にし、ダンジョンへと向かった。
ダンジョンの入口に到着すると、そこには先日顔を合わせたカヌゥたち三人組が待っていた。
「おお!アンタ!一昨日ぶりじゃねえか!どうだい、今日は俺らと一緒にパーティ組むかい?」
カヌゥが陽気な声でエルを誘う。
エルは少し戸惑いながらも、昨日の椿との探索を思い出しし、パーティを組むのも悪くないかと頷いた。
「あ、その…もし皆さんさえ良ければ。今日も1階層だけの探索予定ですけど、よろしくお願いします」
カヌゥとその仲間たちは、エルを囲むように笑みを浮かべ、ダンジョンの入口へと足を踏み入れた。
最初は予定通りの一層のみの探索だったが、仲間たちの口車に乗せられる形で、気づけば昨日と同じ五階層まで降りていた。
エルの手際良い戦いぶりに感嘆の声を上げる彼らは、ついついエルに頼り切りとなり、自らは見守るばかりとなってしまった。
「エル、すげぇな!この調子なら俺達3人で探索してた時より多く稼げるぜ!」
冗談交じりに話すカヌゥの言葉に、エルは苦笑しながらも戦闘に集中した。
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5階層のモンスターたちは以前にも増して攻撃的だった。
次々と現れるゴブリンやコボルトに対し、エルは素早く対応し、手にした短剣を華麗に振り抜いては敵を灰に変えていく。
今日、短剣を使用して戦闘を行っているのは、椿から数日後に貰う予定の武器を、また力加減を誤って壊してしまうことがないように力を上手く制御しようという考えからだった。
そして、視界に捉えたモンスターが群れを成して近づいてくるのを見て、エルは戦いの構えを取り直した。
「エル、モンスターが来たぞ!今度はフロッグ・シューターだ!やっちまえ!」
カヌゥが声を上げると同時に、ぬめりとした音を立てながら現れたフロッグ・シューターが酸を吐き出してきた。
エルは即座に地面を蹴って側転し、間一髪で回避する。酸が地面を溶かして煙を上げる様子に、エルは緊張感を高め、距離を詰めるべく走り出した。
フロッグ・シューターが再度酸を吐こうとする隙を狙い、エルは短剣を一気に突き出した。
刃がモンスターの頭部に突き刺さり、フロッグ・シューターは断末魔の叫びを上げながら消滅した。
カヌゥたちは拍手をしながらエルを称賛する。
「エル、やっぱり頼りになるな!次も頼むぞ!」
その言葉に促され、エルは次々とモンスターを倒し続けたが、次第に自分だけが戦っていることに気づき、少しばかり疑問を抱く。
だが、力加減の練習にもなるし、彼らからの称賛に気を良くしてしまっていたので、戦いを続けてしまう。
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その後、ある程度のモンスターを倒し、稼ぎは十分だろうということで、エル達はダンジョンから帰還し、共にギルドの換金所で魔石を換金した。
4等分に分けられた金の入った袋を受け取り、エルは彼らと別れる前に、
「今日は沢山稼がせて貰ったありがとよ!また明日も探索しようぜ」
とカヌゥ達から明日の探索の誘いを受けた。
エルは快く応じ、彼らと別れた後、ギルドのカウンターに向かう。そこには、エイナが心配そうな顔をして待っていた。
「エルくん、今日はパーティを組んでたんだね。この間話してくれた人達かな?パーティを組んだからってもしかして4階層より下に行ってないよね?」
エイナの問いかけに、エルは少し目を泳がすが、
「い、いえ!そこまで深くは潜ってませんよ!大丈夫です!」
と答える。
エイナは一瞬怪訝な表情を浮かべたが、深く追及はせずに口を開く。
「それならいいんだけど…。5階層からはモンスターが多くなるから、冒険者になって数日のエルくんだと、パーティを組んでも危険なことがあるから気をつけるんだよ?」
「わかりました!ありがとうございます、エイナさん!」
エルはエイナに嘘をついてしまった罪悪感と、これ以上心配をかけまいとしっかりと頷き、エイナに感謝を伝えた。
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その夜、バベルの最上階に二つの影があった。
月明かりに照らされた2人のうちの1人の女性は、美しい顔立ちに憂いを湛え、遠くの街並みを見下ろしていた。
隣には、巨体を持つ屈強な猪人が静かに控えている。
「あの子たち、少し邪魔ね。そうは思わないかしら、オッタル?このままだと彼の輝きが霞んでしまうわ」
その女性は淡々とした口調で、かすかな不満を滲ませる。
彼女の視線の先には、エルとカヌゥ達がいた。
彼女が目をつけたのは、エルの内に秘めた未知なる可能性。
だが、周囲の人間達が、彼の成長を妨げるように感じられるのだ。
そしてオッタルと呼ばれた猪人の男性は重々しい声で応じる。
「私が対処しましょう、フレイヤ様」
フレイヤと呼ばれたその女性は、冷ややかな微笑を浮かべ、オッタルに命じる。
「ええ、彼がもっと輝けるように…お願いするわね。オッタル」
オッタルは静かに頭を垂れ、フレイヤの命を受けて姿を消した。
その場に残ったフレイヤは、月を仰ぎ見ながら、エルの将来に思いを馳せていた。
「あなたは何処までの輝きを見せてくれるのかしら。楽しみで仕方がないわ。エル」
ベルきゅんより先に他の原作キャラがどんどん登場するこの状況…
でも、妄想が膨らんでついつい登場させたくなっちゃうんです()
仕方ない。そう、仕方ないのです。