ダンジョンに強すぎる冒険者がいるのは間違っているだろうか   作:マイペースライター

15 / 40
読者の皆様こんにちは〜
珍しくこの時間に投稿です。
昼寝をしながら読みましょう〜


仲直り

 

 

アフロディーテファミリアの主神、アフロディーテは、静まり返った神殿の寝室に一人残されていた。

エルが昼を過ぎても戻らないことに、彼の身を案じる気持ちが次第に募ってくる。

 

「少し…怒りすぎたかしら…」

 

誰もいない空間に独り言が響くが、答える者は当然いない。

自分がエルに厳しいことを言ってしまったことを後悔している。

いつも健気で素直なエルだからこそ、あの一言が心に刺さり、どこかで塞ぎ込んでいるのではないかと心配になっていた。

 

(もし、このまま帰ってこなかったら…)

 

そう思うと、胸が締め付けられるように痛む。アフロディーテは小さく首を横に振り、何とか気持ちを落ち着けようとしたが、もはやじっとしていることはできなかった。

立ち上がり、思案する。

エルがどこにいるかは見当もつかないが、ふとギルドにいるのではないかと思い立った。

すぐに支度を整え、足早にホームを後にする。

 

オラリオの賑わう街を歩きながら、目的地はギルドではあるものの、もしかしたらとアフロディーテは時折周囲を見渡し、エルの姿を探していた。

石畳の道を歩く人々の顔を一人一人確認するが、どこにもエルの姿は見当たらない。

彼が街の喧騒の中に混ざっていることを願い、道行く冒険者や商人に目を凝らすものの、気配すら感じられなかった。

 

(エル、どこにいるの…)

 

心の中で彼の無事を何度も祈りながら、彼女はついにギルドの建物に到着する。

木製の扉を押し開け、中に足を踏み入れると、受付で彼のアドバイザーであると名前を聞いたことがある「エイナ」という女性を探した。

エルがいつも頼りにしているという彼女なら、何か手がかりを知っているかもしれない。

 

その時、奥の方から茶色の髪を揺らしながら、真剣な表情を浮かべた女性がアフロディーテを見つけて駆け寄ってきた。

緊張した様子で短く頭を下げた後、彼女はアフロディーテに声をかける。

 

「神アフロディーテ様ですね?私、エルくん探索アドバイザーを努めさせていただいております、エイナ・チュールと申します。こちらに」

 

自己紹介も程々に、エイナに促され、アフロディーテは不安な気持ちを胸に秘めたまま部屋の中に足を踏み入れた。

日が落ち始め、少し薄暗くなっている室内には、椅子に座る少女と、ベッドに横たわるエルの姿が見える。

 

「エル!!」

 

その瞬間、アフロディーテは一瞬息を呑み、ほとんど反射的に彼の元へと駆け寄った。

ベッドの上で目を閉じたまま動かないエルの顔を覗き込み、微かにでも呼吸をしていることがわかり、ほっと安堵の息をつく。

しかし、彼が何も語らないことに、胸の奥に不安が渦巻く。

 

隣にいた少女が、アフロディーテに気づいておずおずと頭を下げると、ぽつりぽつりと口を開き始めた。

 

「冒険者様は…私を守るために…ごめんなさい…」

 

彼女の話によると、エルはパーティを組んでダンジョンを探索していたが、一瞬の隙を突かれてモンスターの攻撃によって負傷してしまった彼女を守るためにモンスターと戦っていた最中にフレイヤ・ファミリアの団長、オッタルと相対して、何故か戦闘になってしまったという。

 

「オッタル?あのフレイヤの眷族の、都市最強の冒険者の彼と、どうして…」

 

アフロディーテは衝撃を受け、信じられない気持ちで少女の話に耳を傾けた。

オッタルとの戦いで、エルがどれほど危険な状況に晒されていたかを想像するだけで、胸が締め付けられる。

だが、彼女がさらに驚いたのは、エイナから聞かされた、オッタルが二人をダンジョンの入口まで運び、さらにエリクサーで治療までしてくれたという話だった。

 

「戦ったのに…後から助けた…?」

 

自分でも信じ難い話だったが、目の前にいるエルが無傷でここにいる事実を前にしては、その言葉を信じるしかなかった。

アフロディーテはエルの顔をじっと見つめ、震える手でその頬にそっと触れる。彼が無事に戻ってきてくれたことに感謝し、同時に安堵の涙が滲みそうになる。

 

その時、エルの眉が微かに動き、唇が震えるように開いた。

 

「うぅ…」

 

「…エル!!」

 

アフロディーテは思わず喜びに声を上げ、彼の手を強く握りしめた。エルはまどろみの中で目を薄く開け、まだぼんやりとした意識の中で彼女を見つめる。

 

「アフロディーテ…様…?どうして…」

 

ようやく彼女の姿を認識したエルは、彼女の姿に安堵の表情を浮かべた。

 

「大丈夫よ、エル。あなたの帰りが遅いから、心配で探しに来たの」

 

そう言いながらも、彼の身に何が起こったのかを思うと、彼女の心の中は恐怖と安堵が入り混じる。

 

そして、エルは何かを思い出したように突如口を開く。

 

「…アフロディーテ様!リリルカさん、僕と一緒にいたはずの少女はどこに…!」

 

「冒険者様、リリはここにいます」

 

そうして声のした方に顔を向けると、探していた彼女が隣に座っているのが分かり、彼女の無事を確認すると小さく微笑んだ。

 

「リリルカさん…良かった…無事で…」

 

隣にいたリリルカもまた、か細い声で感謝を述べ、エルに安心した様子を見せている。

エルは少しずつ意識をはっきりさせ、アフロディーテに向かって再び口を開いた。

 

「アフロディーテ様…僕は、負けてしまったんですね…」

 

その言葉には、彼の心の奥底にある悔しさと無力さがにじんでいた。

自分が弱いせいで、守りたい人を守りきれない無力さに苛まれていることが、言葉の端々に現れている。

 

「ええ。そのようね…」

 

「僕は…もっと強くなりたい。守りたい人を守るために、それを可能にする力が…欲しいです」

 

アフロディーテはエルの手をしっかりと握りしめ、彼の気持ちが痛いほどに伝わってくる。

彼がただの力を求めるのではなく、誰かのために、その力を欲していることが感じられる。

その強く、純粋な思いに、胸の奥が温かくなった。

 

「きっと、あなたは強くなるわ。誰よりも強く」

 

アフロディーテは静かに微笑み、彼の頭を優しく撫でた。

彼の夢と決意を信じ、その未来が実現することを心から願うように、力強く彼を見つめる。

 

「帰ったら、ステイタスの更新をしましょう。そして、あなたがどんな冒険をしてきたのか、私に話してちょうだい」

 

エルはそんなアフロディーテの言葉に力強く頷いた。

そしてその眼には、自身の強さに対する渇望と新たな覚悟が宿っていた。

しかし、続いてエルは何故か悲しげな顔をし、何かを言いたげに口を開く。

 

「アフロディーテ様、あの…この間はごめんなさい」

 

そのエルからの謝罪を聞いてアフロディーテは優しく微笑む。

 

「ふふっ。いいのよ、そんなの。私も少し怒りすぎてしまったと思うし…エル、私の方こそごめんなさいね」

 

アフロディーテの言葉を聞いたエルは、安堵の表情を浮かべると共に少し頬を赤らめ、恥ずかしそうにしていた。




神様と仲直り出来て良かったねエルきゅん。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。