ダンジョンに強すぎる冒険者がいるのは間違っているだろうか 作:マイペースライター
更新に時間かかっちゃいましたね。すみません。
無事にベルを帰還させ、その後ヘスティアに見送られながら外へ出るエルは、安堵の気持ちと共に胸に湧き上がる感情に戸惑っていた。
ベルの成長を目の当たりにしたことで、ベルの戦う姿を見た事でエルの更なる強さへの渇望が芽生えたのだ。
「もっと強くなりたい…。そのためには…」
そしてエルはヘスティアファミリアのホームを後にし、歩き出す。
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しばらく歩き続け、エルがたどり着いたのは、
エルが所属するアフロディーテファミリアのホームである神殿。
昨日ベルと迷宮探索に出かけてから帰っていないのでアフロディーテが心配をしているかもしれない。
先日のオッタルとの戦闘の件で心配をかけたし、申し訳ないと思いながらそっとドアを開け、神殿に足を踏み入れる。
そして、普段の穏やかな空気とは違い、今日は何か緊張感が漂っている。
心の中で、今までにないほど強い決意を感じていた。
そんな中、ドアの開く音で勘づいたのかアフロディーテが寝室から飛び出てエルの元へやってくる。
「…エル!良かった!一日中帰ってこなくて心配したのよ」
その声が聞こえた瞬間、エルは思わず足を止める。
振り向けば、アフロディーテが心配そうに彼を見つめていた。
その表情は普段の優しさを湛えたものだったが、強い安堵のようなものも感じられる。
「ただいま戻りました、アフロディーテ様。すみません、色々ありまして」
エルは頭を下げて謝るが、その心の中で不安と焦りが交錯していた。
アフロディーテに心配をかけたことに対して謝罪をするのは当然だが、それとは別にアフロディーテに今すぐ伝えたいことがあり、彼女にどんな順序で話していけばいいのか、あなたの中で思考がめぐり、悩んでいた。
「何かあったの?」
アフロディーテがエルのそんな様子を見て、心配そうに尋ねると、エルは少し躊躇しながらも、まずはベルとダンジョンニューラルリンク向かった後の出来事について説明し始める。
ベルとの探索の後、ベルに誘われて豊穣の女主という店に行ったこと。
そこでベルが、偶然店の客として来ていたロキ・ファミリアの一団の中のベートと呼ばれる獣人の男から侮辱されたこと。
ベートの言葉にベルは店を飛び出し、自分はベートに怒りの感情を抱き、彼と戦ったこと。
そして彼はエルよりも強く、全力で戦ったが最後に力の差を見せつけられとどめを刺されそうになった時、ロキ・ファミリアの団長であるフィンという小人族の男に助けられたこと。
その後ベルを探して、ダンジョンにいるのではと勘が働きダンジョンに潜ったが、ベルはなかなか見つからず、6階層まで潜ってようやく見つけたということを話した。
「なんてこと…ベルはLv1、それもヘスティアからは普通の冒険者だと聞いたわ。それで6階層に行ったら…」
アフロディーテは先日ヘスティアファミリアのホームに言った時にヘスティアとお互いの眷族、つまりベルとエルについて話していたそうだ。
その中で、ヘスティアからはベルは成長は早いが普通の冒険者であり、危ないことも多いという情報を得ていた。
だからこそ、Lv1で、冒険者としてはまだ駆け出しのベルがまだ成長しきれていない状態で、しかも1人でダンジョン第6層まで降った事実を聞いて驚いていた。
「はい。ですがベルは、苦戦しながらも勇敢にモンスターと戦っていたんです。必死に強くなろうって、目標に向かって全力で駆け上がろうつて。その姿を見て、僕は…」
そう話しながら、エルは第6層でのベルの戦闘について思い出し、言葉を詰まらせる。
「どうしたの?」
「助けることも忘れて…ただ彼の戦いぶりに釘付けになっていました」
アフロディーテは、エルの言葉を優しく受け止めるように言った。
「そう。それほどの戦いを目にしたのね」
そしてエルは一度深呼吸をして、アフロディーテを真っ直ぐに見つめ意を決して口を開く。
「アフロディーテ様。僕はベルのように、自分の強さを限界まで高めていきたい。自分の全てを出し切って、冒険をしたいです。」
アフロディーテは無言でその言葉を聞き、じっとエルを見つめている。
エルはその視線を受け止めながらも、さらに言葉を続けた。
「アフロディーテ様。僕をランクアップさせてください」
その言葉に、アフロディーテは少し驚きの表情を浮かべる。
しかし、すぐにその瞳には深い理解が見え隠れし、彼女は静かにエルに歩み寄った。
「エル、ランクアップをすれば、あなたは史上最速のランクアップ記録保持者、つまり、レコードホルダーとしてオラリオ、いいえ、世界中にだって注目されるわ。そして貴方に興味を持つ人間や神が数多く出てくるでしょうね。いい意味でも、悪い意味でも…ね。」
エルはアフロディーテのその言葉の意図を理解し、頷く。
エルはオラリオに来て、冒険者になってからまだ1週間と少ししか経っていない。
通常、ランクアップとは血のにじむような努力による経験と偉業の果てに起こり得ることであり、その必要期間は長いものだ。
あの現在のレコードホルダーである『剣姫』アイズ・ヴァレンシュタインでさえ、Lv2になるのに1年という歳月を掛けているのだ。
それを1週間という短い期間で記録を塗り替えるということは、とんでもないことだろう。
数々のうわさが飛び交い、私利私欲のためにエルに付け入ろうとする輩も出てくるだろう。
確かに、強さを手に入れることには、リスクがある。
だが、それを恐れていては何も始まらない。
今のままでは、目指しているものに到達できないということが、エルの胸に重くのしかかっていた。
「それでも僕は、僕の目指す場所にたどり着きたい」
アフロディーテは少し黙って考え込み、そして微笑みながら静かに言った。
「いいわ。あなたが覚悟を決めたと言うのなら、私も力を貸すわ。」
エルはアフロディーテのその言葉に歓喜し、感謝の言葉を告げる。
「ありがとうございます!アフロディーテ様」
「でも」
とアフロディーテは今度は真剣な表情で言葉を続ける。
「これだけは覚えておきなさい、エル。強すぎる力は、扱い方を間違えればあなた自身を破滅させる。あなたの力としてちゃんと使いこなすのよ。」
「はい!」
「それじゃあ、早速やるわよ。ついてきなさい」
エルはアフロディーテに導かれるがまま彼女と共に寝室へと向かう。
そして部屋の端にあるベッドにうつ伏せになるよう指示され、それに従う。
アフロディーテはそんなエルの横に腰を下ろし、片手にナイフを持ち、そのナイフでもう片方の手の人差し指を傷つけ、それにより血が滲み出る。
その血を一滴、エルの背中へ落とすと、エルの背中から、アフロディーテの眷族の証である紋様、そしてそこに刻まれたエルのステイタスが神聖文字として現れる。
「いくわよ」
「…はい!」
そしてアフロディーテは輝き出すエルの背中の神聖文字を操作し始める。
そして、アフロディーテはしばらく静まり、何やら悩んだ様子を見せる。
「はぁ…またあなたは厄介なものを手に入れたわね…。」
「アフロディーテ様…?」
そんなアフロディーテの言葉を不思議に思い、彼女の方に顔を向ける。
だが、アフロディーテは口を閉ざしたまま、羊皮紙にエルのステイタスを書き移していく。
そしてそれが終わると、やっと口を開く。
「まあいいわ。とりあえず、ランクアップおめでとう、エル。これであなたはLv2よ」
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エル・フィリウス
Lv.1→2
«基本アビリティ»
力:M3000 → M2000
耐久:M3000 → M2000
器用:M3000 → M2000
敏捷:M3000 → M2000
魔力:M3000 → M2000
«発展アビリティ»
剣術:M
格闘:M
魔導:M
魔防:M
精癒:M
治癒:M
耐異常:M
【魔法】
«
・無詠唱魔法。
・集中攻撃魔法。
・広範囲攻撃魔法。
【スキル】
«
・早熟する。
・昇華緩和。
・限界突破。
・神の恩恵獲得、昇華時、初期能力値に超高補正。
«
・発展アビリティ『剣術』、『格闘』、『魔導』、『魔防』、『精癒』、『治癒』、『耐異常』獲得。各補正値は本人の能力に依存する。
«
・発動時、全能力値を倍にする。
・発動中は常に少量の精神力を消費し続け、精神力が尽きるまで効果は持続する。
・瀕死時、発動、未発動に関わらず強制的に効果を発動し、体力と精神力を僅かに回復させる。
精神力の消費力が増える代わりに能力値の増幅効果を通常発動時のさらに倍にする。
«
・生物以外のあらゆる物を収納可能な異空間を出現させる。収納可能量は本人の魔力量に依存する。
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「アフロディーテ様!行ってきます!」
少しその顔に疲れを見せながらも、興奮を抑えきれない表情で主神であるアフロディーテに声をかける。
「はぁ…あなた睡眠不足なんだから、早く帰って後でしっかり休むのよ!」
「はい!」
アフロディーテによりついにLv2へのランクアップアップを果たしたエルは、早速ダンジョンで力を試してみたいと言って、帰ってきてからまだ十分休んでもいないというのに、早々に準備を済ませ神殿を飛び出す。
「ベル…!僕も全力で目標を追いかけるよ!」
その思いを胸に抱きながら、エルは走り出した。
新たな力を得て、これからの未来に向かって。
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ダンジョンに向かって走るエルだったが、その中でふと、何か重要なことを忘れているような気がしてきた。
最初は気のせいだろうと思い走り続けながらも、その感覚は徐々に強くなり、ついにあることを思い出した。
「あっ…!椿さんとの約束…!」
その瞬間、エルの顔が青ざめる。
椿・コルブランドとの約束をすっかり忘れていたのだ。
昨日あの時、確かに言ったはずだ。
『明日の朝、バベルの前に集合』と。
椿はあの有名なヘファイストスファミリアの団長で第一級冒険、そして凄腕の鍛冶師。どれだけ忙しいかは想像に難くなく、自分の武器を打ってもらっておいて、それも昨日はベルとの探索があるからと今日に予定を変更してもらったにも関わらず約束を守れないというなら大変なことになることも理解していた。
「どうしよう…自分から頼んでおいて、すっかり忘れていたなんて…!」
しばらく混乱でその場所で立ち止まっていたが、まだ昼前だということに気づいたエルはまだ間に合うかもという希望の元、少し気持ちの整理をしようと深呼吸をする。
「…急がなきゃ!」
そして落ち着きを取り戻したエルは、気を取り直すと自分に出せる最大の速度でバベルを目指して駆け出した。
その心の中で、椿に迷惑をかけたくないという強い思いが湧き上がっていた。
「絶対に間に合わせる…!」
エルは自分を奮い立たせ、自身のスキルを発動させその身に虹の輝きを纏い、高速で街を走り抜ける。
この時、エルは心の中で、自分の身に対して何か違和感を感じていた。
エルきゅん、ランクアップ出来て良かったね〜おめでとう〜