ダンジョンに強すぎる冒険者がいるのは間違っているだろうか   作:マイペースライター

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読者の皆様こんばんは〜
やっと本編の続き投稿出来ました。
お待ち頂いてた方は大変お待たせしました〜


玩具箱

 

深い眠りから徐々に覚め、エルは布団の中でゆっくりと瞼を開いた。薄暗い寝室の天井が目に入り、次第にその意識が覚醒していく。

昨日の出来事がぼんやりと脳裏に浮かぶ中、身体に残る疲労感が心地よい布団の柔らかさに溶け込んでいく。

 

「寝すぎたな…」

 

自分に言い聞かせるように呟いたが、思わず苦笑いが漏れる。ここ一昨日からの無理がようやく体に響いたのだろう。

一昨日の夜にはロキファミリアの獣人、ベートと戦いを繰り広げ、その後疲労状態の中でベルを探して街を駆け、最後にはダンジョンへと向かったた。そして無事にベルをヘスティアファミリアの元へ連れ帰り、自分も帰った。

だがその後、アフロディーテによるステイタス更新でランクアップを果たし、そのまま寝ずにダンジョンに行こうとしたところ椿との約束を思い出してどうにか約束の時間に間に合って椿と共にダンジョン探索に向かった。

思い返せば、寝ずにほとんど無休の状態で動き続けていたのだから、ここで疲れ果てて長時間の睡眠を取ってしまったのも無理はない。

 

「まあ、寝不足だったからな…」

 

軽く頭を掻きながら身体を起こし、大きく伸びをする。疲労は多少残ってはいるものの、十分な睡眠を取れたことで少しはマシになったようだ。

そして周囲を見回すと、この時間帯ならまだ隣で寝ているであろう己の主神、アフロディーテの姿が隣にないことに気づく。

 

「アフロディーテ様、今日はいつもより早起きなのかな?」

 

首をかしげながら、エルは手早く身支度を整え寝室を出る。神殿全体が静まり返り、どこか穏やかな空気が流れていた。その中で微かに感じる人の気配を頼りに、居間へと足を向ける。

 

---

 

寝室を出て、居間に着くと、そこには華やかに着飾ったアフロディーテの姿があった。普段の落ち着いた佇まいに加え、今日はどこかいつもの彼女とは違った特別な雰囲気を纏っている。

 

「おはよう、エル」

 

彼女は優雅に椅子に座りながら、柔らかな笑みでエルを迎えた。その表情にはいつもの余裕と茶目っ気が混じっている。

 

「あ、おはようございます。アフロディーテ様」

 

エルは丁寧に頭を下げるが、彼女の装いに目を留め、自然と疑問が浮かぶ。まるでどこかへ出かける準備をしているかのような雰囲気だ。

 

「随分と寝たいたわね。もう少し早く起きた方が良かったんじゃない?」

 

「すみません、寝すぎましたね。昨日の疲れが残ってたみたいで…」

 

「冗談よ、相当疲れていたのは知っていたから。それより、あなたに伝えたいことがあるの」

 

「伝えたいこと…ですか?」

 

アフロディーテは椅子の背もたれに軽く体を預けながら、少し微笑みを浮かべて言葉を続けた。

 

「知り合いの神、ガネーシャに宴に招待されたから、そこに参加してくるわ。」

 

「神ガネーシャ様の宴ですか?それはまた急ですね」

 

「そうね。久々に他の神達とも会えそうだし、たまにはいいと思ってね。それで、数日出かけることになるわ」

 

アフロディーテの急な話に、エルは少し驚いた表情を見せたが、すぐに納得したように頷いた。

 

「なるほど、わかりました。それなら気をつけて行ってきてください」

 

「ええ、ありがとう。神殿の留守は任せたわよ」

 

「はい!」

 

エルの返事に満足したように微笑みながら、アフロディーテはゆっくりと立ち上がり、彼に少し顔を近づけた。

 

「それと、私が居ない間にまた無理はしちゃダメよ?強くなるのは良いけれど、倒れてしまっては元も子もないんだから」

 

その優しい言葉に、エルは心の中に温かい感覚が広がるのを感じながら、力強く頷いた。

 

「はい、気をつけます!」

 

「ええ。それじゃあ、そろそろ準備をして出かけるわね」

 

アフロディーテは軽やかな足取りで居間を後にし、荷物を取りに行くためエルを残していく。

 

---

 

そしてその後、準備を終えたアフロディーテを見送った後、エルは自分の装備を確認し、今日の予定について考える。

 

「さて、今日はどうしようかな…」

 

彼の目には決意の光が宿っている。疲れは残ってはいるものの休息は十分取ったし、身体を動かしたい気分でもある。

それならは次にすべきことは、さらなる成長への挑戦だ。ダンジョンでの実践を通して、自身の力をもっと磨き上げたいという思いが強く湧き上がっていた。

 

「とりあえず武器も椿さんが作り終わるまでないわけだし、今日も上層を探索しようかな…新しく覚えたスキルの使い方も試してみたいし」

 

エルはそう呟きながら神殿を後にし、ダンジョンへ向かうために足を進めるのだった。

 

---

 

 

ダンジョンへと向かう途中、エルはまだ朝にもかかわらず相変わらず賑やかなオラリオの街並みを眺めながら歩いていた。そして先程のアフロディーテの言葉が頭をよぎる。

 

「無理はしちゃダメよ」

 

その優しい忠告を胸に刻みながらも、彼の心には成長への渇望が渦巻いていた。ランクアップ後、全てが変わったわけではない。それでも、自分の力を確かめたいという思いが彼をダンジョンへ駆り立てる。

 

---

 

エルがダンジョンの入口をくぐり抜けた頃には、街のざわつきが消え、周囲は冒険者たちの気配とモンスターのうなり声だけが響いていた。エルは静かに息を整え、12階層を目指して降りていく。

 

「よし、目指すは12階層!でもダンジョンでは何が起こるか分からないし気を抜かずにいこう…」

 

階層が深くなるごとに出現するモンスターの気配が濃くなり、エルの神経は研ぎ澄まされていく。

12階層に到着すると、すぐに彼の視界に複数のハードアーマードが現れた。

 

「ハードアーマード…よし、とりあえず普通に戦ってみよう」

 

エルは拳を構える。

今日はレベルアップした後の身体を使いこなすため、スキルは発動せず本来の力で戦っていこうという考えだ。そして躊躇なくモンスターたちへ突進した。

 

「・・・ふっ!」

 

素早い身のこなしでモンスターの攻撃をかわし、そして一体ずつ確実に拳で粉砕させていく。スキルを発動していない状態だが、その動きにはまだまだ余裕があった。やはりランクアップの効果が大きいことが見て取れる。

 

「うん。いい調子!さて、それじゃあ魔石を…」

 

戦闘が一段落した後、エルはモンスターから落ちた魔石を拾い集めようとした。だが、その時、彼の頭にふとある考えが浮かぶ。

 

「そうだ、あのスキル…もしかして使えるかもしれない」

 

エルは右手を伸ばし伸ばし、スキル名を口にし、そのスキルを発動させる。

 

「『玩具箱』!」

 

瞬間、エルの手元に小さな虹色の円が出現する。それは、異空間への入り口がだった。そしてその円に向かって、地面に転がるモンスター達の魔石が吸い寄せられていき次々と消え去っていく。

何故か頭の中に先程異空間へと入った魔石の正確な量が浮かび上がる。

 

「…なるほど、これがこのスキル『玩具箱』の効果。手で触れているものじゃなくても、自分から少し離れた、地面に転がったものまで吸い込めるなんて…それに、入ってる物の情報もわかる。すごいスキルだ」

 

エルは自分のスキルの便利さに感嘆しながら、戦闘を続けていった。

モンスターを倒し、魔石を回収するという一連の作業が驚くほど効率的に進んでいく。

 

「手で拾う手間が省けるなんて。これなら時間も節約できる…!」

 

エルは笑みを浮かべ、さらに探索を続けた。

新たなスキルの利便性を実感するたび、自分の可能性が広がるような気がしていた。

 

---

 

「ふぅ…。流石に今日はこのくらいで帰ろうかな」

 

時間も忘れ数時間に渡る探索を終えたエルは、ダンジョンの入口へ向けて階層を登り始めていた。獲得した魔石はすべて玩具箱に収納されているため、体の負担は軽い。それでも、適度な疲労感が身体に溜まっていた。

 

そしてダンジョン登りきり外に辿り着くと、入る前は朝日が登っていたのにいつの間にか日が落ちている風景が目に飛び込む。

エルはその光景に一瞬驚いたが、すぐに周囲のざわめきに気づいた。

 

「そろそろ怪物祭の時期か…」

 

近くを通り過ぎる冒険者たちの会話が耳に入る。

彼らの言葉には、どこか楽しげな期待が込められている。

 

「怪物祭…?オラリオのお祭りかな」

 

エルはその言葉に興味を引かれつつも、詳しいことはわからない。ただ、オラリオならではの特別な行事であることは想像できた。気にはなりつつも、彼はそのまま街の賑わいを後にする。

 

---

 

そしてそのまま帰ろうと歩いていると、エルの視線の先に象の仮面をかぶった一団が目に入る。

彼らは規律正しく隊列を組み、何やら大きな荷物をそれぞれ運んでいる。

その身に付けた装備と堂々とした立ち居振る舞い、ダンジョンから出てきたことから彼らが冒険者であることは一目でわかった。

 

「あれって…ガネーシャファミリア…かな?」

 

象の仮面と統一された装備から、その正体を直感的に悟ったエル。

しかし彼は特に気に留めることもなく、その場を後にする。

 

---

 

ガネーシャファミリアの集団が少し気になりつつも、今日のところは帰ろうとさらに歩き続ける中、エルの目に白髪の少年が映り込んだ。

それは見覚えのある背中。

 

「…ベル?」

 

声をかけようとしたが、彼はその足を止めた。

 

ベルの様子を静かに見守りながら、エルの胸にはひとつの思いが浮かぶ。

 

「そっか、頑張ってるんだな…」

 

内心でそう思いながらも、彼は声をかけるのをやめた。

自分もまた成長しなければならないという気持ちが彼を前へと駆り立てる。

 

---

 

そうしてエルはバベルを後にし、ファミリアのホームに帰り着くと、楽しかったせいで忘れていた身体の疲れに気づく。

そして、普段はアフロディーテの明るい声が響いているこの場所も、彼女がいないと静かだった。

 

「こんなに静かなのも久しぶりだな」

 

彼は軽く笑いながら寝室へと向かい、素早く着替えを済ませてベッドに倒れ込んだ。

隣の空のベッドを見ると、少しだけ違和感を覚える。

 

「アフロディーテ様、神様の宴には無事参加出来たのかな。数日留守にするって言ってたけど、いつ帰るんだろう」

 

呟きながら瞼を閉じたエルは、心地よい疲労感とともに眠りにつくのだった。

 




新スキルなかなか便利ですね〜
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