ダンジョンに強すぎる冒険者がいるのは間違っているだろうか   作:マイペースライター

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読者の皆さんこんばんは〜
サイドストーリー続きで申し訳なく。
1個にまとめるのは流石に長すぎたので分けました。


SideStory ヘスティアナイフ

 

ヘファイストス・ファミリア本拠地 執務室

 

迷宮都市オラリオの中心、バベルの塔内にあるヘファイストス・ファミリア。その奥にあるヘファイストスの執務室には、騒々しく駆け込んできた女神の声が響いていた。

 

「お願いだヘファイストス! ベル君のために、武器を作って欲しい!」

 

執務机の奥で書類に目を通していた赤髪の女神、ヘファイストスは顔を上げ、片目に走る眼帯の奥でじっとその女神を見据えた。

 

「・・・それで、なんでうちの武器なの?」

 

椅子にもたれかかりながらの問い。だがその声音には、真剣な眼差しが込められていた。

 

「ベル君はまだ駆け出しだ。それはわかってる。でも、ベル君は僕の想像を超えて成長しようとしているんだ。真っ直ぐに、一生懸命に。だから僕は、あの子の道を切り開ける力が、それを可能にできる武器が欲しい!」

 

小さな女神、ヘスティアは拳を胸元でぎゅっと握りしめ、涙が浮かぶほどに真剣な表情で言葉を紡いだ。

 

「僕のファミリアは、まだあの子一人しかいない。それなのに、1人で頑張ってくれている。・・・そんなあの子に、何もしてやれない自分が嫌なんだよ」

 

しんと静まり返る執務室。ヘファイストスはしばし沈黙の後、ふうっと肩を落とすようにため息を吐いた。

 

「はあ、ほんとにあんたって、昔から変わらないわね。誰かのためってなると、自分のことなんて気にせず後先考えなくなる」

 

机の上のハンコを片付けながら、彼女は目を伏せる。そして、小さく笑った。

 

「・・・わかったわよ。作ってあげる。あんたの子の武器。あんたの覚悟、少しは伝わったしね」

 

「ほんとにっ!?」

 

勢いよく身を乗り出すヘスティアに、ヘファイストスは片手を上げて制するように言った。

 

「ただし、条件がひとつ。――ちゃんと作るの手伝ってもらうからね。その子のために、あんたも汗をかきなさい」

 

「何でもするから任せといてくれよ!」

 

その時、部屋の隅で壁にもたれていた第三の女神が、にっこりと微笑んだ。

 

「ふふ、良かったわね、ヘスティア」

 

「ありがとう、アフロディーテ!」

 

「アフロディーテ、あなたにも手伝って貰うからね!」

 

ヘファイストスはアフロディーテに指をさしながら言う。

 

「ええ、構わないわ」

 

金の髪を揺らし、艶やかに笑うアフロディーテだった。

 

「それじゃあ、早速取り掛かりましょうか」

 

 

 

執務室の奥、限られた者しか入ることを許されない個人用の鍛冶場。

その中心には炉があり、今まさに女神ヘファイストスの手によって赫炎が再び灯された。

 

「ふう……久々に、神の仕事ってやつをしてやろうじゃないの」

 

工房全体が赤く照らされ、鉄と火の匂いが満ちていく。

彼女は炉に火をくべながら、傍に控えるヘスティアとアフロディーテに振り返る。

 

「さて。素材は……ミスリルがいいわね。軽くて、魔力の伝導率も高い。駆け出しの子にはうってつけ」

 

金属棚から選ばれたミスリルの塊を炉で熱した後、赤熱したその塊が音を立てて鉄床の上に置かれる。

 

そしえヘファイストスが槌を振り下ろす。ゴウン――ッ!と響く音に、ヘスティアは目を丸くした。

 

「じゃあ、ヘスティア、アフロディーテ。さっそく手伝って貰うから準備をしておいて」

 

「あ、ああ!」

 

「了解よ」

 

神でありながら、鉄工房の助手として汗を流すという異様な光景。だが誰一人文句を言う者はいない。それほどまでに、ヘスティアの願いには熱があった。

 

火花が飛び、音が鳴り響き、炉の温度が上がっていく。

 

「短剣の形状はシンプルに扱いやすく、そして重要なのは“伸びしろ”。この武器が、あんたの子と一緒に成長できるように」

 

「一緒に……?」

 

「ええ。普通の武器は劣化するけど、この武器は違う。――あの子の成長を“糧”にして強くなる。神の恩恵を刻むための構造よ」

 

金属を打ち、冷やし、再び打つ。

その繰り返しが、次第に一本の短剣の姿を現していく。

 

数時間、いや、もはや夜を越えていたかもしれない。

 

汗をぬぐうヘスティアとアフロディーテの目の前で、最後の槌音が炉の中に響いた。

 

カン……と静かに鳴って、炎が落ち着きを取り戻す。

 

「――完成よ」

 

ヘファイストスが手にしたのは、漆黒の鞘に収められた、美しくも神々しい一本の短剣。

鋭く、しかしどこか暖かさを感じさせる刃だった。

 

「わぁ……これが、ベル君の……!」

 

「でもまだ、仕上げが残ってるわ」

 

ヘファイストスが短剣をヘスティアに手渡す。

 

「――神の血と神聖文字。これは、主神のあなたにしかできないことよ」

 

「う、うん……!」

 

ヘスティアは静かに頷くと、自らの指に小さな針を突き立て、流れる血で短剣の腹を指でなぞるように神聖文字を刻んでいく。

 

ジュゥ……ッ

 

刃に触れた血が紅く染まり、淡く、けれど確かな光を放ち始めた。

 

「このナイフは、持ち主の成長に応じて強くなる。あの子が強くなればなるほど、この刃もまた鋭くなるわ」

 

「……ありがとう、ヘファイストス……本当にありがとう……!」

 

ヘスティアは泣き笑いでその短剣を抱きしめる。

 

「まったく、成長する武器なんて、鍛冶師からしたら邪道なんだから。二度と作らせないでよね」

 

「うん!」

 

「この武器、名前はどうするの?」

 

「そうだなぁ・・・どうしよう」

 

ヘスティアはしばらく悩んでいた。

そんな中アフロディーテが口を開く。

 

「«ヘスティアナイフ»なんてどう?」

 

「それだっ!それにするよ!」

 

「私もそれいいと思う」

 

そうして名前も無事に決まり、ヘファイストスは短剣改めヘスティアナイフを布で包み、ヘスティアの背中に縛りつけた。

 

「じゃあ早速、ベル君に渡してくる!」

 

「ちょ、ヘスティア!? 少しは休みなさいよ!」

 

「うふふ、あの子らしいわね……」

 

「ローンの話は忘れてないでしょうね?」

 

「うっ……も、もちろんだよっ!」

 

元気いっぱいに走り去るヘスティアを見送って、工房に残された二柱の女神は苦笑いする。

 

「愛って、本当に人を突き動かすわね」

 

「……それでも、あれだけ真っ直ぐな願いなら、悪くないわ」

 

赫炎の残り火が、なおも暖かく工房を照らしていた――。

 

「それにしても綺麗な仕上がりだったわね、ヘスティアナイフ。まるでベルへの想いが形になったみたい。ねえ、ヘファイストス。いつか私の眷属、エルにも、武器をお願いできるかしら?」

 

 その言葉に、ヘファイストスはくすりと笑う。

 

「ああ、あなた知らなかったの?その子の武器ならもう作ってるわ」

 

「え?」

 

「うちの椿が制作中。素材選びから張り切ってたわよ。もうそろそろ完成する頃じゃないかしら」

 

「あら、そうなの? 最近色んな人とダンジョンに潜ってる話を聞くけど、その子のことだったのね。完成したらエルが喜ぶでしょうね」

 

「椿も『今度こそ彼奴にも砕けぬ最高の武器が出来そうだ』って嬉しそうにしてたから、出来上がったらそのエルって子に見せてもらいなさい」

 

「ええ、楽しみにしてるわ。その椿って子にありがとうと言っておいて」

 

 アフロディーテは目を細め、嬉しそうに微笑む。




ついにヘスティアナイフ完成ですね!
エルの武器もいつお披露目になるやら
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