ダンジョンに強すぎる冒険者がいるのは間違っているだろうか   作:マイペースライター

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読者の皆さんこんにちは〜
本編の続き、お待たせしました。
それではどうぞ〜


怪物祭

 

 オラリオの街は、今日も相変わらず人の波で溢れていた。

 大通りを埋め尽くすように人々が行き交い、その顔は皆どこか浮き立って見える。

 

 いや、今日はいつにも増して、というべきだろう。祭りの最中ということもあり、大通りはまるで絵巻物のように華やかに彩られ、動く万華鏡のようだった。建物には色とりどりの布が垂れ下がり、無数の花が飾られ、風に揺れて香りを放っている。屋台からは肉が焼ける香ばしい匂いや甘く煮詰めた果物の匂いが漂い、通りを歩くだけで空腹を誘われる。普段は険しい顔をしているような冒険者たちすら、その表情を和らげ、仲間と笑い合っていた。

 

 「・・・これが、怪物祭(モンスターフィリア)

 

 エルはオラリオに来て初めての大きな祭りを経験する者として、目に映るすべての光景を一つ残らず心に焼き付けるように、ゆっくりと、しかし確かな足取りで街を歩いていた。

 

 露店が立ち並ぶ道には、炭火で香ばしく焼かれた串料理、蜜で艶やかに固められた果実菓子、見たこともない色や形の食材を使った異国風の料理まで、オラリオならではの珍味が所狭しと並んでいる。

 

 通りすがる子どもたちは大きな綿菓子を抱えて笑いながら走り回り、屋台の商人たちは声を張り上げて「今だけ!今日だけ!」と呼び込みに余念がない。通りの隅では楽団が陽気な旋律を奏で、笛と太鼓の音が賑やかに響いていた。

 

 エルは、思わず少し笑った。にぎやかで温かい空気が、肌に心地よく染み込んでくるのを感じたのだ。そして同時に、今はそばにいない自らの主神のことが自然と頭に浮かんできた。

 

 (アフロディーテ様もいたら、一緒に回れたのにな)

 

 そんなふうに、ふと寂しさと願いの混じった想いを抱きながら、道の角を曲がろうとしたその瞬間――

 

 「あら?エル」

 

 澄んだ声が、人混みのざわめきをすり抜けるように耳に届いた。

 

 振り返ると、そこには見慣れた姿があった。

 腰まで届く金の巻き髪が陽光を反射してきらめき、艶やかで流れるようなラインの神衣が、まるでドレスのようにその姿を包んでいる。ゆったりと手を振るその姿は、まさに神々しさと優美さを兼ね備えていた。

 

 「アフロディーテ様・・・?」

 

 「ふふ、まさか街に着いてすぐ会えるなんて。偶然って素敵ね」

 

 そう言って微笑む彼女の瞳は、どこか妖しさを秘めながらも、いつも通り優しい光をたたえていた。

 

 「アフロディーテ様!帰ってきてたんですね!おかえりなさい!」

 

 「ええ。それよりもエル?今日は祭りのようね!一緒に回らない?」

 

 彼女は自然な仕草で、そっとエルの手を取った。温かなその手に、エルの心がほんの少し跳ねる。

 

 「はい!ぜひ!」

 

 そして彼女と並んで歩き、屋台を回っていた時、ふと鼻をくすぐる香ばしい匂いが漂ってきた。

 

 二人は同時に顔を見合わせる。

 

 「この匂いって!」

 

 「ええ、じゃが丸くんだわ!」

 

 二人の目が輝き、匂いの元を辿って一斉に動き出す。

 

 「いらっしゃい、いらっしゃーい!今日もじゃが丸くんは美味いよー!怪物祭限定の味も新登場だ!」

 

 屋台から響いてきたのは、威勢のいい男性の声。どうやらこの屋台の店主らしい。二人はその言葉に思わず目を見開いた。

 

 「怪物祭限定!!」

 

 「エル、これは絶対手に入れるわよ!」

 

 「はい!アフロディーテ様っ!」

 

 エルは無意識のうちにスキルを発動し、体から虹色のオーラがふわりと立ち上る。そのまま人々の間を音もなく、まるで風のような速度で駆け抜け、一直線にじゃが丸くんの屋台へと向かう。

 

 「おじさん!怪物祭限定のじゃが丸くん!2つおください!」

 

 「おっ!いらっしゃい!ちょっと待ってな!」

 

 店主は元気よく返事をしながら、せっせと準備を始めた。

 

 「はいよ!怪物祭限定じゃが丸くん2つ!お待ちどうさま!」

 

 「うわぁ!!美味しそう!ありがとうございます!」

 

 「毎度あり!」

 

 エルは両手に大事そうにじゃが丸くんを抱え、足取り軽くアフロディーテの元へと戻る。

 

 「よくやったわエル!これはすごく美味しそうね!」

 

 「はい!早速食べましょう!」

 

 二人は屋台の隅に腰を下ろし、買ったばかりのじゃが丸くんを一つずつ手に取る。熱々の表面をふうふうと冷ましながらかぶりつき、その濃厚な味に思わず目を見開く。

 

 そうして味に驚きながらも、さらに祭りを堪能するべく、再び街中を並んで歩いていく。

 時折、露店の店主と顔なじみのようにアフロディーテが親しげに言葉を交わす姿に、エルは驚きと尊敬を覚えていた。

 

 「・・・神様たちってやっぱり纏う雰囲気は違うんですけど、こうして一緒に歩いてると、まるで僕たち人間と同じに見えますね」

 

 突然そうつぶやいたエルに、アフロディーテは少し目を細めて答えた。

 

 「あら、嬉しいことを言ってくれるじゃない。確かに私達は神だけど、この地では人間の子供たちと同じ立場で生きられるように、特定の力以外は使えないようになっているの。だから人間と大差はないわ。貴方ともね?」

 

 そう言いながら彼女が一歩近づき、エルとの距離が急に縮まったことで、彼の心臓が跳ねる。

 

 「ア、アフロディーテ様!近いです・・・!」

 

 「ふふ・・・ねえ、エル。次はどこを回りましょうか?」

 

 「……そ、そうですね、この祭りのメインイベントが闘技場でそろそろ始まる時間なので、それを見に行きませんか?」

 

 「じゃあそこに決まりね。早速行きましょうか」

 

 二人は連れ立って歩き出す。

 街の中央を抜け、石畳の坂を上っていくと、やがて遠くに巨大な円形闘技場の外壁が姿を現し始める――

 

 「あれ? エルくんじゃん!」

 

 振り向いた先から、元気な声が空気を突き破るように届いた。

 

 以前出会った冒険者、ティオナ・ヒリュテが、大きく手を振りながら駆け寄ってくる。彼女の後ろには、以前豊穣の女主で見た記憶のある二人の姿があった。一人はティオナに雰囲気が似ているが、より大人びた印象を持ち、髪型や体格も異なるアマゾネス。もう一人は小柄な体に山吹色の髪を一つに束ねた、繊細な印象のエルフだった。

 

 「あら、あの子たちは確かロキのところの」

 

 アフロディーテが少し考え込んだ後、ぽつりとそう呟いた。

 

 「こんにちは、ティオナさん。それと・・・」

 

 「ああ!こっちは私のお姉ちゃん、ティオネ!それともう一人は同じロキファミリアの団員のレフィーヤだよ!」

 

 「あぁ、この間の酒場の子ね。ティオネ・ヒリュテよ。よろしくね」

 

 「レ、レフィーヤ・ウィリディスです。よろしくお願いします」

 

 「エル・フィリウスです。あの時はご迷惑をお掛けしました」

 

 軽く会釈を交わし、それぞれが名を告げる。その直後、ティオナが目を輝かせて話しかけてきた。

 

 「ねえねえ!そんなことよりエルくんは何してたのー?デート?」

 

 「ティ、ティオナさん!こちらは僕の主神のアフロディーテ様です!一緒に祭りを回ってて」

 

 「え、えー!?女神様!?ごめんなさい!気づかなくて」

 

 「ふふ、いいのよ。デートというのもあながち間違いではないし」

 

 「アフロディーテ様も冗談はやめてください!」

 

 そのやりとりにティオナが目を丸くし、ティオネは「へぇ」と興味深そうにエルをじっと見つめる。レフィーヤだけがわずかに顔を赤らめて視線を逸らしていた。

 

 「そ、それでティオナさんたちは何をしてたんですか?」

 

 「私達わねー!これから闘技場でモンスターテイムを見に行くところだったんだー!」

 

 「そうだったんですね!実は僕たちもなんですよ!」

 

 「えー!やっぱり怪物祭の名物だもんね!」

 

 「はい!オラリオに来て初めてのお祭りなので、メインイベントは見ておきたくて」

 

 「じゃあ私達と一緒にいこーよ!ね!ティオネとレフィーヤもいい?」

 

 「私はいいわよ」

 

 「私も大丈夫です!」

 

 「あ、えっと・・・アフロディーテ様、大丈夫ですかね?」

 

 「ええ、みんなで行くのも楽しそうだし、いいわ」

 

アフロディーテの許可も降りたところで、ティオナは拳を上げながら声を発する。

 

 「やったー!じゃあ皆で闘技場ヘ!しゅっぱーつ!」

 

 「は、はい!よろしくお願いします!」

 

 こうして、五人はにぎやかに笑い合いながら、怪物祭の名物、モンスターテイムを見るために、闘技場へと向かって歩き始めたのだった。




どっちの方向に持っていくか結構悩んだんですが、こっちにしました!
わかる人にはわかるかもですね!
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