ダンジョンに強すぎる冒険者がいるのは間違っているだろうか 作:マイペースライター
本当ですよ?
ペース配分を考えるのは体力10%切ってからですよねやっぱり。
女神アフロディーテに導かれ、あれから少し歩き、前を行く彼女がとある場所でその歩みを止める。
「さあ、ここが私の神殿よ!」
そういって彼女は胸を張り、目の前の建物に指を指す。
「神…殿、ですか」
エルは戸惑った。
その建物は…神殿と言うにはあまりにも…といういうより、神殿と言えるものなのかどうかすら分からないものだった。
目の前に建っていたのは、古ぼけた家。
エルが過ごした村に建つ、祖母と住んだ家よりも…古い…家。
「何よ?まさか、これが神殿に見えないっていうの?」
そういってアフロディーテは「なにか文句でも?」と言いたそうな面持ちでエルに圧をかけていく。
「い、いえ!それはもう!立派な神殿だと思いますとも!ええ!」
ここでエルは祖母の生前のとある言葉を思い出す。
女性の機嫌を損ねると関係を持ち直すのに大変な苦労をするんだ、と。
ここはどうにか機嫌を直して貰うべく、彼女の求める回答をしなくては、と言葉を発するエルだったが…。
「言っておくけど、私達神に嘘はつけないわよ?」
「うっ…」
またしても生前の祖母の言葉を思い出すエル。
幾ら上手く嘘をつこうとしても神には意味がないのに、ことある事に神に対して嘘をつくバカがいたな、と。
「まあ、いいわ。いつかあなたがここよりも立派な神殿を作ってちょうだい」
そういって、まるで悪戯に成功した少女のような可愛らしい微笑みを見せる女神アフロディーテ。
一瞬心が跳ねる感覚を憶えたエルだったが、ここでさらに彼女の機嫌を損ねる訳にはいかないと、
言葉を発する。
「はい!一生をかけて養わせて頂くと宣言しましたから!神殿もその内のひとつです!」
そういってエルは「任せてください!」と胸に拳をドンッと当てる。
「それは嘘じゃなさそうね。ええ、期待しているわ」
と今度は女神らしく微笑むアフロディーテに、
なんて感情豊かな女神なんだろう、とそう思うエルであった。
その後、アフロディーテに案内され神殿のとある一室に入っていく。
その部屋には、壁沿いに横長のテーブルがひとつ、椅子がひとつ、小さなベッドがひとつ置いてあり、見るからに寝室だろうなと思わせる雰囲気だった。
「アフロディーテ様、ここは一体…?」
男女が2人、ベッドが1つ…もしやこれが祖母から聞いたあの…とエルは思考を回転させていく。
「まあ、見ての通り寝室ね。とりあえず服を脱いで、あそこのベッドにうつ伏せになってくれるかしら?」
と女神は部屋奥のベッドの方に指を指す。
「裸になってベッドに!?アフロディーテ様、僕は、その…まだ心の準備がっ!それに僕たちまだ知り合って間もなくて…それに貴方様は女神様で…一生をかけて養うって言うのは別にそういう意味じゃ…」
と焦って何やら色々と語り出すエル。
アフロディーテは最初はエルが何を言っているのかさっぱり分からない様子だったが、状況を整理しようと考えた後、1つの答えを導き出し少し赤面する。
「あ、あなた、何をかんがえているのかしら?
と彼女は冷静を装いつつもぷいっと少し赤い顔を背ける。
「あっ、そういうことだったんですね。すぐに脱ぎますね、ごめんなさい」
自分の勘違いと失言の数々を思い出し焦り顔を真っ赤に染め上げるエルは、すぐさま話題を変えようと上の服だけを脱ぐ。
すると突然アフロディーテが声をかける。
「ふーん、服の上からだとあまり分からなかったけど、なかなかいい身体してるじゃない。まだ若いけど、今後が楽しみね」
とエルの上半身をまじまじと見つめる女神。
エルは幼い頃からの祖母との
そんな、自分の身体を見つめ褒めてくれるアフロディーテに対してエルは、
「アフロディーテ様、さっきのはやっぱりそういう…」
半分冗談で先程の話を持ってくるのだが、
「違うからさっさとベッドにうつ伏せになりなさい!」
「あっ、はい」
すぐに一喝され、ベッドに横たわりうつ伏せになるのだった。
その後アフロディーテは、テーブルの前にあった椅子を持ち、ベッドの横に置いて腰を下ろす。
「それじゃあ、これから恩恵を与えるわよ?感謝なさい」
と背中越しで、少し不貞腐れたような感情を見せるアフロディーテであったが、恩恵を授与される瞬間、アフロディーテは何やら小さな短剣で指先を切り、自身の血をエルの背中に落とした。
その瞬間、エルの体内に熱い力が湧き上がり、神の力が彼の体に刻み込まれる。
「これが、神の恩恵を授かる感覚なんですね…」
祖母や両親もこんな風に神の眷属となり冒険者になったのか、と感動を憶えつつ、自分の能力に期待を膨らませていくエル。
ステイタスが刻み終わり、エルの数値を見たアフロディーテは、一瞬驚きを隠せない表情を浮かべると、静かに「これは…」と呟いた。
「アフロディーテ様、僕のステイタスってどうなんでしょう?」
エルの問いかけに、アフロディーテはわざとらしく肩をすくめて微笑み、
「それは数値として見るより、先に自分で確かめてくるといいわ。これで晴れてあなたは私の眷属!アフロディーテファミリアの団員として、ギルドで冒険者登録をして
と言うだけだった。
彼女の言葉に、エルは少し困惑しながらも、彼女の期待に応えるべくダンジョンに挑む決意を固めた。
「ふふっ、帰ってきた時の驚いた顔が楽しみだわ」
旅支度をしにエルが部屋を出たあと、アフロディーテが笑みを浮かべながら小さく呟いた。