ダンジョンに強すぎる冒険者がいるのは間違っているだろうか 作:マイペースライター
また深夜に投稿失礼します〜
あ、それとまた沢山の方に読んでいただけてるようでありがとうございます!
今後も妄想を膨らませながらマイペースに頑張っていきますね〜
まぶたが重い。視界がゆっくりと開いていく。
目を開き、周りを見てみるが人はいない。そしてそこは自分の知らない空間だった。
「……ここは……?」
身体を起こそうとして、ようやく自分がふかふかのベッドに寝かされていることに気づく。白く整えられたシーツは高級感があり、肌触りも柔らかい。ふと目線を動かすと、部屋の壁には彫刻が施された柱や、黄金に縁取られた装飾品が並んでいた。天井からは小さなシャンデリアが吊るされていて、ガラス細工のような光がきらきらと揺れている。
自分のファミリアの拠点である、神殿という名のボロ家とは雲泥の差だった。
「すご……」
ぽつりと、思わず声が漏れる。
その時だった。重厚な扉がゆっくりと開かれる音が響き、すぐに聞き覚えのある声が飛び込んできた。
「エル! 起きたのね!」
声の主は、眩い金髪を揺らしながら駆け寄ってくる──自分の主神、アフロディーテだった。
「アフロディーテ様……ここは、一体……」
身体を起こしきる前にそう尋ねた瞬間、扉の向こうからさらに別の人物が入ってきた。
「おお、エル! 起きたんか! みーんな心配しとったんやで!」
明るい声と共に現れたのは、赤髪を逆立てたロキだった。彼女はひょうきんそうな笑顔を浮かべながら、エルの顔を覗き込んでくる。
アフロディーテが説明を引き継いだ。
「エル、ここはロキ・ファミリアのホームよ。あなた、怪我がひどかったから、ロキの眷属の中で回復魔法が使える子に手当てしてもらってたの」
「そう……だったんですね。ありがとうございます……」
深く頭を下げるエルに、ロキは腕を組んで満足そうにうなずいた。
「礼なんてええんや! むしろウチらの方が助けてもろたしな!」
その言葉に、少しだけ肩の力が抜けた。けれど、エルの中にはどうしても気になることが残っていた。
「そ、そういえば…!モンスター達は!それとアイズさん達はどうなったんですか!?」
問いかけにロキは「あー」と唸り、腰に手を当てて答えた。
「あの後な、あんたのおかげで体力がまだ残っとったアイズたんが、残りのモンスターを見事に殲滅してくれたで。他の子らも無事や!今は皆休んどる」
「アイズさんが…さすがですね…それに皆さん無事で良かった…」
「あ、せやけどな、あの時──」
少し目を細めロキが続ける。
「ダイダロス通りに、シルバーバックが一体逃げとったんや。ウチとアイズたんが急いで駆けつけたんやけど、その時にはもう倒されとった。」
「えっ……?」
「倒したんは、確かーーああ!あのあんた店で一緒やった白髪の子や。名前はベルっちゅうてたか?」
「ベル……! ベルは大丈夫だったんですか!?」
身を乗り出すように尋ねたエルに、ロキは少し驚いたような顔をしてから、くすりと笑った。
「大丈夫や!怪我はしとったけど見かけた時、意識はしっかりあったで。今頃はアイズたん達と同じく自分のファミリアのホームで休んどるんやないか?」
「そ、そうですか!良かった……」
胸を撫で下ろすエル。その顔に、心からの安堵がにじんでいた。
「それにしてもや、エル」
突然、ロキが視線を鋭くする。じっと、エルを値踏みするように見つめてきた。
「アンタ……あんた何もんや?」
「……え?」
「アイズでも苦戦しとったモンスターやで? それも複数体。そんなんを魔法一撃で吹き飛ばすなんて、うちのレベル6でも簡単にはできへん芸当や」
そう言って、ぐいっと顔を寄せるロキ。
「あんた……どないなステイタスしとるんや?それともステイタスやなくて、あの時纏ってたオーラみたいなやつが強さの正体か?スキルか?魔法か?」
「え、えっと……」
エルが戸惑って言葉に詰まる。その時、アフロディーテがひとつ咳払いをして割って入った。
「ロキ、あまり詮索されても困るんだけど」
「お、おっと、せやな! すまんすまん!」
ロキは先程までの真剣な表情を消し、肩をすくめて笑った。
「駆け出しって聞いてた割に、あまりにも規格外で、ついな!」
「規格外……まあ、そうですよね……」
エルが曖昧に笑うと、ロキも笑い返す。
「もう詮索はせんから! な、ディーたんもそんな睨まんといて!」
アフロディーテはふんっと顔を背けたが、すぐにエルに目を戻す。
「それよりエル、もう動ける?」
「は、はい!アフロディーテ様」
「そう。なら、ロキ、エルを治療してくれたこと感謝するわ。でも、そろそろ私たちは行くわね」
「おおっと、ちょっと待ってや! エルに渡す報酬がまだやった!」
慌てて部屋を飛び出すロキ。数十秒も経たないうちに、両手でずっしりとした袋を抱えて戻ってきた。その袋は揺れるたびに金属音を立てていた。
「ほい! 約束の報酬や! 一応見合った額を用意したつもりやけど、足りんかったら言ってな!」
エルが袋を受け取ると、その重みで腕がわずかに沈んだ。
「ま、まさか……この中身、全部お金……ですか?」
「せやで! 一千万ヴァリス入っとる!」
「「一千万ヴァリス!?」」
絶叫が重なる。アフロディーテですら目を剥き、エルは袋を落としそうになっていた。
そして二人の脳内には、同時にある一つの考えが浮かんでいた。
(ジャガ丸くん、一体何個買えるんだろう……)
「ロ、ロキ……何よ、そのバカみたいな金額は……」
「そ、そうですよ! いくら何でも多すぎると思います……!」
ロキはにかっと笑って、まるで当然だと言わんばかりに言った。
「そうかー? ウチの大事な子たちを大怪我してまで守ってくれた恩人に対する報酬としちゃ、少ないことはあっても、多いことはないはずやで?」
その言葉に、エルとアフロディーテは顔を見合わせ──
(やっぱり大派閥ってすごい……)
と、ただただ圧倒されるのだった。
──
その後、エルとアフロディーテが部屋を出て、廊下を進んだ刹那──
「…?」
目の前からやって来た三人の人物と、ばったり鉢合わせになった。
一人は、翡翠色の髪を腰まで垂らし、気品ある姿で歩くエルフの女性。姿勢も歩き方も一切の隙がなく、その美しさは見る者を圧倒する。
もう一人は、かつて豊穣の女主人でエルとベートの喧嘩を仲裁した、小柄ながら堂々とした雰囲気を纏う小人族の男性。その眼差しには知性と誠実さが宿っていた。
そして──
「あぁ!?なんでコイツがここにいやがんだぁ!!」
最後に声を荒げたのは、あの夜喧嘩になった張本人。銀髪の乱れた髪を逆立て、鋭い牙を剥き出しにした狼人族の男、ベート・ローガだった。
彼はエルの姿を見るや否や、殺気を露わにして身を沈める。
戦う気だ。
「ベート!やめろ!」
瞬時に間に入ったのは、翡翠の髪を持つエルフ──リヴェリア。怒気を孕んだ鋭い声が空気を裂く。
「止めんじゃねぇリヴェリア!こいつとはケリつけなきゃならねんだ!」
「恥を知れ!」
言うが早いか、リヴェリアの手に持っていた銀の杖が、ベートの額を正確にゴンッと叩いた。
「ぐっ…!何すんだてめぇ!!」
頭を抑えて悶えるベートに向かって、リヴェリアは一歩も引かぬまなざしで告げる。
「この者がアイズやティオネ、ティオナ、そしてレフィーヤを守ってくれた張本人だ。命を賭して仲間を守った者に対し、感謝こそすれ、喧嘩を売るなど私が許さない!」
「クソが…!フィン!てめぇも知ってたのかよ!」
ベートは歯ぎしりをしながら、後ろで静かに様子を見ていた小人族──フィンに怒鳴った。
しかしフィンは冷静に首を横に振る。
「いいや?アイズ達を助けた冒険者の怪我をリヴェリアが治療していたことは聞いていたが…まさか彼だとは知らなかったよ」
「……けっ、そうかよ」
ベートは肩を上下させながら、何とか怒りを飲み込もうと深呼吸をする。
代わりにフィンが一歩前に出て、穏やかに微笑みながら手を差し伸べた。
「改めて、僕はフィン・ディムナ。ロキ・ファミリアの団長をしている。よろしく」
「は、はい!エル・フィリウスです。よろしくお願いします!」
「今回は本当にありがとう。それと、この間はベートがすまなかったね」
「い、いえ!最初に手を出したのは僕の方ですし…」
「ふふ、君のような懐の広さ、ベートにもぜひ見習ってほしいね」
「ちっ、余計なお世話だっての…」
舌打ちしてそっぽを向くベート。それでもどこか以前とは違い、無意味な攻撃はしないよう自制しているのが分かった。
続いて、リヴェリアも一歩前に出て、まっすぐな瞳でエルを見つめた。
「リヴェリア・リヨス・アールヴだ。副団長を務めている。リヴェリアと呼んでくれて構わない」
「は、はい!よろしくお願いします、リヴェリアさん!」
「傷の具合はどうだ?」
「は、はい!リヴェリアさんが治してくれたおかげで、もう大丈夫です!本当にありがとうございました!」
「礼を言うのはこちらだ。君がいなければアイズたちは危なかっただろう」
「い、いえ…そんな、大したことは…」
「それで、これからどうするのだ?」
「えっと、神様と一緒にファミリアのホームに帰ろうかと」
「そうか。確かに、ここでは心までは休まらないだろうからな。それなら帰って、ゆっくり体を休めるといい。それと、困ったことがあれば、いつでも言ってくれ。今回の礼がしたい」
「い、いえ…!報酬は神ロキから頂きましたし、それだけでもう充分です!」
「ふむ、謙虚なのだな。尊敬に値する人間だ。だが礼をせねば私の気が済まん。遠慮するな」
「は、はい…それじゃあ、もし何かあれば…ありがとうございます」
「うむ」
その横で再びフィンが微笑みながら口を開く。
「僕からも、改めて感謝するよ。君ならいつでも歓迎するから、また遊びに来てくれ」
「フィンっ!てめぇ…また適当なことを…!」
「ベート?君は少し黙ろうか」
「ちっ…!」
ベートは忌々しそうに舌打ちしながら壁にもたれたが、先程のようにすぐに噛み付いてこようとはしなかった。
「で、では僕たちはこれで失礼します!」
エルがぺこりと頭を下げると、フィンは手を振る。
「ああ、女神アフロディーテ様も道中お気をつけて」
「ええ、ありがとう」
そうしてエルとアフロディーテは、ロキ・ファミリアの団員たちに見送られながら廊下を歩き始めた。
高鳴る胸の鼓動と、確かに築かれた新たな絆を胸にその場を後にするのだった。
ベート…まさに飼い犬状態…
ベートは別に嫌いではなくて、寧ろ生き様とかキャラ的に大好きまであるんですが…なんかいじりたくなるんですよね…てへ
それではまた次回〜