ダンジョンに強すぎる冒険者がいるのは間違っているだろうか   作:マイペースライター

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読者の皆様こんばんは〜
大変お待たせしました!
今回は投稿主さえ忘れかけてた人の登場回です!
それと後書きにちょっと面白いもの載せてます!


月虹霧雨

 

朝の光が差し込む部屋で、エルとアフロディーテは静かに朝食を囲んでいた。

 

カチャリ、カチャリと皿の音が心地よく響く。食卓には温かいパンとスープ、簡単なサラダが並んでいる。アフロディーテが用意した朝食は、華美ではないがどこか心がほっとする味だった。

 

「そういえば今日って…」

 

ふと、エルが手を止めて小さく呟いた。

 

「エル、どうかしたの?」

 

スープをすくいながらアフロディーテが顔を上げて尋ねる。

 

「あ、えっと……実は今日、ある人と会う約束をしていたということを思い出しまして」

 

「あら、そう。誰なの?」

 

「椿さんという方なんですが…以前アフロディーテ様にお話していた、一緒に迷宮探索に行った人です」

 

「──ああ、ヘファイストスの所の子ね」

 

アフロディーテはふっと微笑んだ。

 

「ヘファイストスに聞いたわ。あなたの武器のことでしょ?」

 

「はい!」

 

エルの目がぱっと輝く。その期待の表情に、アフロディーテも満足げにうなずいた。

 

「それじゃあ、約束に遅れてもいけないし、早く食べて行ってきなさい」

 

「分かりました!」

 

そう言うなり、エルは急いで食事を平らげると、手早く身支度を整え、玄関へと走った。

 

「アフロディーテ様!行ってきます!」

 

「いってらっしゃい。気をつけてね」

 

アフロディーテの声が背中に優しくかかる。その声を背に、エルはオラリオの街を駆け抜けた。

 

──

 

朝のオラリオは活気にあふれていた。

 

行き交う冒険者たち、店を開く商人、遠くにはギルド職員の姿も見える。空は雲ひとつない青空で、オラリオにはいつもと変わらぬ日常が広がっている。

 

(やっぱり平和が一番だな…)

 

走りながら、エルは昨日の出来事を振り返りながら思った。

だが同時に、この平和の影でどれほどの努力や祈りが積み重なっているのかも、少しずつ理解していた。

 

やがて、目の前に巨大な塔──バベルが姿を現す。

 

(今回は…僕の方が早く着けたみたいだ)

 

前回は待たせてしまったことを思い出し、少し胸を撫で下ろすエル。

 

(椿さんでも、何度も遅れたらさすがに怒るかもしれないしね…)

 

そんなことを考えていた、そのとき──

 

「おお、エル!もう来ていたのか!」

 

背後から、元気いっぱいの声が飛び込んできた。

 

「つ、椿さん!おはようございます!」

 

驚いて振り返ったその先には、いつものように豪快に笑う椿の姿があった。

 

その背には、何か長い物を布で丁寧に包んだものがくくりつけられていた。

 

「うむ!では早速行こうか!今日もとりあえず12階層でいいか?」

 

「は、はい!よろしくお願いします!」

 

エルが頷くと、椿は満足そうに頷き返す。

 

こうしてふたりは、バベルの地下、迷宮へと足を踏み入れていった。

 

──

 

階層を降りながら、エルはずっと気になっていたことを口にした。

 

「椿さん、今日は…なんというか、荷物が少ないですね」

 

「うむ!」

 

椿は自慢げに胸を張った。

 

「今回の作品は自信作だ!お主の武器はこれしかないと手前は判断したからな。今日はこれしか持ってきていない!」

 

背負っていた布の包みを、ぽん、と叩いて笑う椿。

 

「な、なるほど……」

 

エルはそれを聞きながら複雑な心境だった。椿がわざわざ一振りだけを選び抜いて持ってきたという事実は、彼にとって誇らしいことであり、同時にプレッシャーでもあった。

 

(あれからまたランクアップしてるし、また壊したらどうしよう……椿さんも相当苦労して作ったと思うし、申し訳ないな…)

 

そんな思いが胸を過ぎるが、刻一刻とふたりの目指す12階層が近ずいていた。

 

 

そして、ふたりは立ちはだかるモンスターを魔法で、武器で蹴散らし、とうとう12階層に到達した。

 

その謎の特性から淡い明かりに照らされた石の迷宮を抜け、開けた野原へ景色が変わる。

迷宮の中であることは変わりないがそれでも先程よりも視界ははっきりしている。

いつもと変わらぬはずのこの場所に、今日は少し違った緊張感が漂っていた。

 

「よし、到着したな!」

 

椿の朗らかな声が響く。だがその口調には、どこか隠しきれない興奮の色があった。

 

「は、はい!」

 

エルも思わず背筋を伸ばす。

 

「休憩は必要か?」

 

「い、いえ!大丈夫です!」

 

「では、早速実践といくか」

 

そう言って、椿は背にかけていた布包みを肩から下ろし、慎重に袋を解いていく。その動きはまるで宝物を扱うように、優しく、そして丁寧だった。

 

布が滑り落ち、中から現れたのは——

 

白き刀剣。

 

その美しさに、エルは思わず息を飲んだ。椿が日頃使っている極東の刀に似たシルエット。しかしそれは明らかに別格だった。刃の存在だけで周囲の空気がぴんと張り詰める。

 

「ほれ、お主の武器だ」

 

「は、はい!」

 

手渡された瞬間、空気が変わった。

 

指先に触れた柄は、まるで神衣のように高潔な白で巻かれていた。滑らかで柔らかな質感。それでいて、芯の通った力強さがある。その柄を握った瞬間、自分の掌と一体化するような不思議な感覚が走った。

 

(……なんだろう。すごく手に馴染む……)

 

巻き革の下から覗く鮫皮は、淡い灰色。だがその一粒一粒がまるで宝石のように光を反射し、刀に生気を与えている。光を受けたそれは、龍の鱗のようにも見えた。

 

鍔は黒銀。艶消しの直線的なデザインで、装飾を削ぎ落としたその美は逆に力強く、洗練された威圧感を放っていた。

 

白い鞘をゆっくりと引き、刀を抜いていく——

 

そして、その瞬間。

 

「す…すごい…」

 

刀身から流れ出すような銀光が、視界を包み込んだ。鎬は透き通るように澄みきり、まるで清水をそのまま金属にしたかのような質感。刃先には一切の迷いなく、鋭く伸びる白銀の刃。

 

だが、最も目を奪ったのはその輝き。

 

刀身から走る白銀の光。それはただの光の反射ではなかった。刀そのものが、まるで心を持っているかのように、静かに、けれど確かに発光していた。

 

(……これが……)

 

ただ持っているだけで、心が震える。

 

その神秘的な美しさに——そして、全てを断ち切るだろうという圧倒的な気配に。

 

「名は《月虹霧雨(げっこうきりさめ)》」

 

椿の声が、深く響く。

 

「月虹霧雨…」

 

エルはその名を繰り返す。意味は分からない。ただ、その音の響きだけで、椿がこの一振に込めた祈りや想いが、確かに伝わってくる気がした。

 

「つ、椿さんこの武器すごいです!」

 

エルは興奮を抑えきれずにいた。

 

「そうだろう!手前の自信作だからな!」

 

そして椿もエルの表情に満足したのか笑みをこぼす。

 

「あ、あの!早速この武器を使ってモンスターと戦ってみたいんですけど…」

 

「そうだな!だが、エル。まずはこの間の力を使ってみろ」

 

「……え?」

 

「あの虹の輝きを纏うやつだ」

 

一瞬、エルは思考が止まった。

せっかく椿が打ってくれた素晴らしい武器だ。

それなのに壊れるかもしれないというのにまたもあの力を使えという。

それに対してエルは戸惑いを隠せなかった。

 

「あ、あれですか…。え、えっと、でも……」

 

エルが躊躇したのを見て、椿はにやりと笑う。

 

「前回より強くなっているから、武器が砕けないか心配なのだろう?でも安心しろ。もちろんそれも想定してある」

 

(……気づかれてた!?)

 

どうして、とエルは考えたが、前回も椿に力を見破られていたし、今回もその観察眼によってエルの成長に気づいたのだろうと納得した。

そして、そんな観察眼をもつ椿が言うなら、とエルは椿のことを信じ、力を解放することにした。

 

「わ、分かりました!」

 

気持ちを切り替え、エルは大きく息を吸って構えを取る。

 

「──神器解放!」

 

瞬間、エルの体が虹色のオーラに包まれた。前回よりも濃密な力。身体の奥底から溢れ出すそれは、明らかに進化している。

 

「よし、ではその力を武器にも流せ」

 

「は、はい…!」

 

躊躇いながらも、エルは力を刀へと流していく。

 

すると——

 

白銀の刀身が、虹の光をそのまま受け入れたかのように静かに輝き出す。

 

虹色の輝きが刃に沿って流れ、まるで鼓動のように脈打っていた。

 

「こ、これって…」

 

驚きを隠せないエルに、椿が言う。

 

「言っただろう?想定済みだと」

 

光が抵抗なく、刀へと溶け込んでいく。まるで武器の方が、エルの力を歓迎しているかのようだった。

 

「力を流しても、武器が壊れないなんて…!」

 

「この刀の素材には、魔力伝導率の高いミスリル、そしてオリハルコンを使ったからな。壊れず、力を吸収して威力を高める。正に無駄のない一振りだ!」

 

「ミ、ミスリルに……オリハルコン!?こ、これ…僕にはもったいない武器なんじゃ…」

 

エルの顔が青ざめる。冒険者でなくともその価値を知る、伝説級の素材。

 

(こんなの、持ってるだけで命が危ないんじゃ…)

 

「むしろお主が使わないと力を発揮しないぞ、それは」

 

「……え?」

 

「この刀は、確かに耐久性と切れ味は最高峰だ。その点だけ見れば、他の第一級の武装と遜色ないだろう」

 

そう言ってから、椿は言葉を区切った。

 

「──しかし、それだけだ。特別な能力や効果もなければ、攻撃力自体も第一武装にしては低すぎるくらいだ」

 

エルが驚いたように刀を見る。

 

「だが、お主の“際限のない魔力”を流し込めば話は別だ」

 

椿はニヤッとする。

 

「そ、それじゃあ…」

 

「うむ!お主の魔力を通せば真の威力を発揮する。正にお主専用の武器という訳だ!」

 

そして椿は腕を組み、晴れやかな笑みを浮かべた。

 

「使い手を知り、その者に合う武具を制作する。それが手前の鍛治師としての信念だ。誰にでも扱えるように作っている訳では無い。この一振は、お主のためだけに鍛えた。だからこそ、この武器は持ち主のお主に応えてくれる」

 

(僕の……ためだけに…)

 

刀を見つめるエルの胸に、温かいものが宿る。

 

それは誇りだった。椿の技術と信頼が込められた唯一無二の武器。そして、それを受け継ぐ資格を、確かに自分が得たのだという実感。

 

「椿さん…ありがとうございます!」

 

「うむ!それで思う存分斬れ!」

 

「…はいっ!!」




遂にエルくんの武器登場です!
流石椿さんですね!
そして前書きに書いてあった面白い物!それは!
月虹霧雨のイラストです!
chatGPTくんに作ってもらっていたんですがなかなか納得いく物できなくて…(これのせいで更新しばらく止まってたなんて口が裂けても言えない)
挿絵とか初めてなんですがこのタグで見れるようになってるといいな…
ではまた次回〜


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