ダンジョンに強すぎる冒険者がいるのは間違っているだろうか 作:マイペースライター
今回もちょっと日常回になります。
それではどうぞ〜
夕暮れ時、エルは神殿に帰り着いた。扉を開け広間にたどり着くと帰ってきたという心地よい気持ちになり、そしてすぐに彼を迎えるように柔らかな声が響いた。
「あら、おかえりなさい、エル」
「ただいま戻りました、アフロディーテ様」
いつものように軽く頭を下げ、エルは今日の出来事を報告する。椿からついに完成した武器を受け取ったこと。その武器を手に戦った結果、今までの武器では斬れなかった魔物に対しても余裕をもって挑無ことができ、その尽くを切り裂けたこと。そして、自分の力に耐えうる武器を手に入れたことによって、更なる未知への挑戦が出来ると感じたこと。
そんなエルの話を聞いてアフロディーテは頬に手を添え、彼が手に持つ武器を見つめながら小さく微笑んだ。
「あら、いい武器ね」
その声音には確かに称賛が込められていた。だが、次にエルへと目線を移した時、彼が宝物のように刀を見つめる横顔を見た瞬間、胸の奥にざらついた感情が広がる。椿という女から授けられたものを、これからずっと冒険の相棒として肌身離さず持ち歩く――その事実に。
女神は唇を少し尖らせ、声を張る。
「……でも、武器なんて所詮は道具よ。そんなものより、もっと大切なものがあるわ。そうよね、エル?」
「え?」
不意に向けられた真剣な視線に、エルは瞬きをする。アフロディーテはわざとらしく咳払いをして、椅子から立ち上がった。
「さあ、エル。一旦その武器のことは置いておきましょう。今日もたくさん戦ってきたんでしょう? ――ステイタス更新、したくないかしら?」
耳を疑って、エルは目を見開いた。
「なんだか、アフロディーテ様いつもと違いますね。いつもなら『痛いから嫌』『成長が早すぎて怖い』って更新を先延ばしにするところなのに」
「う、うるさいわね! いいから、早く準備しないとステイタス更新してあげないわよ!」
頬を赤らめてそっぽを向く女神の姿に、エルは思わず苦笑した。
「そ、それは困ります! お願いします、アフロディーテ様!」
慌てて上着を脱ぎ、ベッドに横たわる。
「ふふ、そうやって素直にしてればいいのよ」
そしてアフロディーテがエルの横へと座りいつも通りの手順でステイタスの更新を進めていく。そしてエルの背中に刻まれたステイタスが新たに書き換えられていく。
やがてステイタスの更新が終わり、アフロディーテの口から、ため息に近い言葉が零れた。
「……本当にとんでもない成長速度ね、あなた」
そういいながら彼女は手に持つ羊皮紙にエルのステイタスを書き移していき、それが終わるとエルを起き上がらせ、彼を隣に座らせる。
「さあ、エル。見なさい」
アフロディーテが差し出した羊皮紙を、エルは恐る恐る覗き込む。並んだ数値は、またしても常識を逸した成長を物語っていた。
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エル・フィリウス
Lv.3
«基本アビリティ»
力:M2000 → M2950
耐久:M2000 → M2469
器用:M2000 → M2831
敏捷:M2000 → M2902
魔力:M2000 → M2846
«発展アビリティ»
剣術:M
格闘:M
魔導:M
魔防:M
精癒:M
治癒:M
耐異常:M
【魔法】
«
・無詠唱魔法。
・集中攻撃魔法。
・広範囲攻撃魔法。
«
・無詠唱魔法
・魔力による不可視の鎧を自分または対象とする者に纏わせる。
・鎧の強度は魔法使用者の魔力ステイタスに依存する。
・複数同時発動可能。
・発動後、魔法使用者が解除、または鎧が破壊されない限り効果は持続する。
【スキル】
«
・早熟する。
・昇華緩和。
・限界突破。
・神の恩恵獲得、昇華時、初期能力値に超高補正。
«
・発展アビリティ『剣術』、『格闘』、『魔導』、『魔防』、『精癒』、『治癒』、『耐異常』獲得。各補正値は本人の能力に依存する。
«
・発動時、全能力値を倍にする。
・発動中は常に少量の精神力を消費し続け、精神力が尽きるまで効果は持続する。
・瀕死時、発動、未発動に関わらず強制的に効果を発動し、体力と精神力を僅かに回復させる。
精神力の消費力が増える代わりに能力値の増幅効果を通常発動時のさらに倍にする。
«
・生物以外のあらゆる物を収納可能な異空間を出現させる。収納可能量は本人の魔力ステイタスに依存する。
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「え、えっと……今日はすごい沢山のモンスターと戦ったので……」
エルは頬をかきながら苦笑する。
「はぁ……もう驚きはしないけど。ほんと、あなたって規格外ね」
アフロディーテは溜息をつきながらも、どこか誇らしげに微笑んだ。
「あの、アフロディーテ様。これだけのステイタスがあれば、僕、中層で戦えますかね?」
控えめに問うエルに、女神は少し驚きつつも答える。
「あら、中層へ行くの?そうね…」
アフロディーテはしばらく考えるように目をつぶり、目を開くとにやっと笑って言葉を続けた。
「戦える、というより――中層のモンスターならなんの苦労もなく倒せるんじゃないかしら?普通のレベル3なら少しは手こずるでしょうけど、あなたはもう第一級冒険者に近い能力をもってるし一人で対処できるはずよ」
さらりと告げられた評価に、エルは思わず息を呑む。
「そ、そうなんですね……」
「ええ。そもそも今のあなたなら、深層でも戦えるはずよ。――試しに明日、行ってみたら?」
と突然アフロディーテから投げられた衝撃の言葉に、エルは慌てて首を振った。
「そ、それはちょっと……エイナさんにも怒られそうですし、それにダンジョンでは何が起きるか分かりませんし……」
「ふふっ、冗談よ」
アフロディーテは口元に笑みを浮かべる。
「あなたにもしものことがあったら困るもの。まだ今のあなたには、少人数での深層攻略の許可は出せないわ。中層までで今は我慢することね」
「は、はい…」
アフロディーテの先程とは打って変わった真剣な声音に、エルも真剣な表情で小さく頷いた。
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「あ、そういえばアフロディーテ様、言い忘れていました」
エルがふと思い出したように口を開く。
「どうしたの?」アフロディーテが首を傾げる。
「今日の帰りにギルドで中層への進層許可を貰いに行ったんですが…」
とダンジョンから戻った後、椿とギルドに立ち寄った時のことをアフロディーテに話す。
「僕、レベル2になった時も、最近レベル3になってからもランクアップの報告をしていないので、早めに申請書を出すようにって職員さんに言われたんです」
「ああ、そのことね」
女とアフロディーテは軽く笑みを浮かべる。
「わかったわ。明日書いてあなたに渡すわ」
「わかりました!」
安心したように笑うエルに、アフロディーテは、にやっと目を細める。
「それじゃあ、ステイタス更新も終わったことだし――ご飯にしましょうか」
「は、はい!」
どこか浮き立つような足取りで椅子に座るエルに、女神がいたずらっぽく問いかけた。
「さて、今日の晩御飯はなんだと思う?」
「えっと……なんでしょうか……お肉とかですか?」
「違うわね」
アフロディーテは口元に笑みを忍ばせる。
「あなたが好きなものよ」
エルの瞳が一瞬で輝く。
「そ、それってもしかして!」
「答えがわかったかしら?」
「ジャガ丸くんですか!」
「ふふ、そうよ」
女神は得意げに胸を張る。
「さっき少し出かけた時に、ついでに買っておいたの。あなたの好きな小豆クリーム味よ」
「小豆クリーム!?や、やったー!!ありがとうございますアフロディーテ様!大好きー!!」
子供のように歓声をあげるエルを見て、アフロディーテは思わず頬を緩めた。
二人は仲良く並んでジャガ丸くんを頬張り、笑い合いながら一日の疲れを癒していく。新しい味に目を輝かせるエルを眺めつつ、女神の心は不思議なほど満たされていた。
そしてその夜、満ち足りた気持ちのまま二人は静かに眠りについた。
やっぱりステイタス書くのは楽しいですねぇ…厨二心をくすぐるというかなんかいいんですよね!
手なわけで嫉妬女神とエル君の更なるパワーアップ、そして久々のジャガ丸くん登場回でした!
次回はいよいよ中層に向けてって感じですかね〜
お楽しみに!