ダンジョンに強すぎる冒険者がいるのは間違っているだろうか 作:マイペースライター
文章力なくて字数が少なかったり手直しに時間は掛かってますが、書きたい欲は冷めずアイデアも出てきて、ちょこちょこ描き続けています。
これからもマイペースにゆっくり書いていきますよ〜
確かに手に入れた力に対しては不安がある。
しかし、だからといってこの力から逃げるのは違う気がした。
思い出すのは祖母が話してくれていた物語に登場する英雄。
彼は血のにじむような努力を経て、屈強な肉体と強靭な精神を手に入れ、数々の困難に立ち向かってきた。
あんな英雄になりたい、そう憧れてこの道を歩んでいる自分に、今欠けているものは何なのだろう?
エルは深く考え込み、拳を軽く握りしめた。
「そうか…先に力を手にしちゃったなら…」
特別な力が先に宿ったなら、後は努力で屈強な肉体と精神を手に入れればいいじゃないか。
そう気づくと、覚悟が決まる。
簡単な道ではないだろうが、祖母の期待を裏切らないように、そしてアルバートのような英雄になるために、歩み続けよう。
「どうしたの、エル?」
ふと、彼の表情に気づいたアフロディーテが、首をかしげて尋ねた。
エルは我に返り、慌てて返事をする。
「いえっ!少し気持ちの整理をしたくて」
アフロディーテはエルの顔をしばらく見つめてから、小さく頷いた。
「そう。それよりもエル?あなたには一つ、言っておかなければいけないことがあるわ」
エルは一瞬、アフロディーテの真剣な声色に少し緊張し、姿勢を正す。
「はい、なんでしょうか、アフロディーテ様」
「あなたの力は、強大すぎるわ。詳細はあまり言いふらさないこと。いいわね?」
エルはその言葉に驚きつつも、静かに頷いた。
彼の中で、自分の力への不安が再び蘇るが、それでもこの力を受け入れる覚悟も固める。
「はい、アフロディーテ様」
「それじゃ、話もまとまったことだし、夕食にしましょうか」
「え?夕食…?」
首をかしげるエル。
そういえば、ここに来てから食事の気配すら感じなかったけど…。
そんなエルの反応に気づいたアフロディーテは、部屋の隅へ歩み寄り、手にふたつの包みを持ち近づいてきた。
「きっと疲れて帰ることはないと思ったけど、お腹はすくと思って、近くで買っておいたわ」
アフロディーテがにっこりと微笑みながら、エルに見せるのは…。
「そっ、それは!?」
エルの目が驚きに見開かれる。
彼女が持っているのは、昼にお金を持ってなくて苦渋の決断で我慢したオラリオの名物ジャガ丸くんだった。
「近くの屋台で知り合いが店を出していたのよ。お金はあまりないけど、これくらいなら買えると思って」
「あの…あの有名な…ジャガ丸くん…」
また今度にしようと渋々見送った憧れの食べ物が、今まさに目の前にある。
エルは感激のあまり、思わず拳を握りしめ、目頭が熱くなるのを感じた。
「そうよ?というかあなた、そんな顔してどうしたのよ?」
エルの表情に戸惑ったアフロディーテが、訝しげに尋ねた。
今にも泣き出しそうな顔に、笑いがこぼれる。
「あっ、いえ!女神様!!凄く感謝しています!本当にありがとうございます!このご恩は一生をかけて返させてください!」
「ジャガ丸くん一個でそんなに喜ばれるなんて、なんだか複雑だけど…。まあいいわ。それを食べてさっさと寝ましょう」
エルは大切にジャガ丸くんを味わい、ふとベッドを見やる。
「あれ?アフロディーテ様、僕は一体どこに寝たらいいでしょう?」
「何を言ってるの?ベッドがあるでしょう?」
「え…じゃあアフロディーテ様は…?」
「だから、何を言っているの?ベッドに決まってるじゃない」
「えっ!?えぇええ!?」
エルの動揺に、アフロディーテは面倒そうにため息をつく。
「面倒くさい男ね。あなたはもう私の眷属、子供みたいなものでしょう?そんなの気にせず寝なさいよ」
「あっ、子供みたいな…。そっちだったんですね、なんだ」
エルは肩の力を抜いて安心するが、その反応にアフロディーテはジト目で見つめた。
「あなた、またバカなことを考えてるの?ジャガ丸くんの恩があるんでしょう、大人しく主神の命令に従いなさい」
「はい!アフロディーテ様!」
こうしてエルは女神と共に眠りにつき、夜が明ける。
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翌朝、エルは昨晩の決意を胸に再びダンジョンへ挑む準備を整え、アフロディーテのもとに向かった。
武器が砕けてしまったこともあり、一抹の不安を抱えつつも、再び迷宮に挑む決意は変わらない。
「アフロディーテ様、今日は改めて迷宮に潜ってみようと思うのですが」
アフロディーテは少し驚いたように目を見開き、微笑む。
「そう、覚悟は決まったのね。まあ、あなたの能力なら上層程度は問題ないけど、気をつけなさい。あと、ギルドに寄っても能力の詳細は誰にも教えちゃだめよ」
エルはその言葉に頷き、ギルドへ向かう。
カウンターではエイナが彼を見て安心した表情で微笑んだ。
「おはようございます、エイナさん。今日も迷宮に行ってきます」
エイナはエルの決意を見て表情を少し心配そうなものに変えながら首をかしげる。
「エルくん、昨日モンスターから必死に逃げたって言ってたでしょう?それにその時武器も落としたって言ってたし、武器もないんじゃないの?大丈夫?」
エルは軽く苦笑し、肩をすくめた。
「実は昨日、ステイタス更新で格闘スキルが強化されたんです。だから、1層で稼いで次の武器を買うまでなら、しばらくは武器がなくても大丈夫かと」
「そう…それなら1層だけなら大丈夫かもしれないど、無理はしないでね。それと、一応これを持っていって」
エイナはやや心配げな顔をしつつ、どこからか処分予定の古びた短剣を持ってきて手渡した。
「ありがとうございますエイナさん!いってきます!」
エルは感謝しながらその短剣を受け取り、迷宮に向かう。
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再びバベルの地下迷宮へと足を踏み入れたエルは、
早々に1層の怪物に出くわした。
相手はゴブリン、一体だ。
「昨日は怖かったけど、今日の僕なら大丈夫なはず…!いくぞっ!」
そんな意気込みをしたものの、いざゴブリンと対峙するとエルの力は圧倒的だった。
ゴブリンが彼に向かって攻撃を仕掛けると、軽々とそれを避け、エルの拳が風を切り、地を鳴らす。
振り下ろされる一撃でゴブリンは飛ばされ、粉砕された。
その圧倒的な力に、少し遠くの方で戦闘をしていた周囲の冒険者たちも次第にエルに注目し始める。
「アイツは一体…?」
「あんな上級冒険者いたっけ?どこのファミリアだ…?」
そんな中、エルは周りの視線や会話に気づくことなく、今度は一度立ち止まり、試しに魔法「
手をかざし、集中すると、周囲の空気が熱を帯び、火の粉が舞い始める。次の瞬間、彼の手から爆発が起き、一点を炎の熱戦が走り抜ける。
集中力の制御次第で威力や範囲を自在に変えられることがわかる。
集中的に力を注げば、一点に獄炎を発生させ、広範囲であれば広がる火の海を展開することができる。
エルは何度も試し、たまに近づいてくる怪物に向かって放ち、次第にその調整に慣れていった。
「この威力と範囲、上手く調整できるようになれば色々な戦い方ができるようになるな」
そう確信したエルは、これで十分だろうとそこで探索を終え、怪物たちがドロップした魔石などを手に、満足げに来た道を逆方向に進み、帰路に着く。
Lv1の時点でなかなかのチートっぷりなエルくん。
そして念願のジャガ丸くん、食べられてよかったね。