Fate/SamuraiRemnant異聞 伊×槍決闘譚   作:葛轍偲刳

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あけましておめでとうございます。
箱イベからのレイド2連戦、皆様お疲れ様でした。
私は当初の目標の300を遥かに超える750箱を開けることができ、その上レイド戦でも前半も後半も共に200周以上も回れたので大満足です。
正月休みの間に可能な限り話を進めたいと思っています。

短いので、今日も二話連続投稿です。


漆:川崎大師

「あら、まだ生きていたの。アサシンが見立てを誤るなんて、これは一体どういうことかしら」

 

 その声は憤懣や驚愕などよりも、むしろ興味深い現象を発見した学者の如く静謐で淡々としていた。

 

「腕の良い医者に知り合いでも…いえ、それはないわね。それほどの医者がいれば、他にもアサシンの操る蛇に噛まれた者が回復していないのはおかしい。となると、他に解毒が可能な者が…」

 

 沈思する女魔術師は、それが癖なのか小さく独り言を呟いている。傍らのアサシンを信頼してのことなのだろうが、それを不意に遭遇した敵である伊織たちの目の前で堂々とやってのける豪胆さは見上げたものだった。

 

「なあ、嬢ちゃん。考え事の途中で悪いが、セイバーのマスターの行方を知ってたら教えちゃくれねえか」

「――」

「それを私が知っていたとして、アナタに教えて何か良いことがあるかしら」

 

 無遠慮に切り出した槍兵にアサシンは無言で目を向け、そして思考を切り上げたドロテアは肯定も否定もせずに問いを投げる。

 

「少なくとも、この場で斬り合わずに済む」

「へえ、そう?」

 

 脅迫とも威圧とも取れる伊織の言にも、女魔術師は動じない。

 

「いずれ戦う相手だもの。以前の続きをしても構わないわよ、私は」

「ははは。気が合うじゃねえか、嬢ちゃん。そういう気の強いところ、オレは嫌いじゃねえぜ」

「あら、ありがとう。あの大おろちを倒すほどの英霊にそう言ってもらえるのは光栄だわ。ただ、今は――」

 

 美丈夫の辞に同じく社交辞令の笑みを返したドロテアは、しかし、ふと視線を傍らの怪人に向けた。その目に一つ頷きを返したアサシンが低く呟く。

 

「――海が、やけに騒がしい。嵐が来るやもしれん」

「嵐?」

 

 昨日の雨が上がって、爽やかに晴れ渡った空が広がっている頭上を見上げて伊織が問い返す。そういう意味ではないと、ドロテアは物分かりの悪い生徒に講義をするように続けた。

 

「地脈、霊脈。そういうモノがあるでしょう? 流れる魔力に異常が見受けられるのよ。東から西へ、膨大な魔力が流れ込んでいる」

 

 女魔術師の目が、その魔力の流れを追うように地面をねめつけている。

 

「宮本伊織。アナタは正規の魔術師じゃないから、わからないでしょうけど。私にとっては、目を見張るような状態よ」

 

 伊織は傍らの槍兵に目を向ける。美丈夫は軽く首を横に振った。

 

「キャスター霊基のオレなら、もうちょっと調べようもあるが。さすがに今は無理だな」

「東よ。ここよりずっと東。そこに陣取った何者かが、神奈川方面に向けて、大魔術を行使しようとしている」

「大魔術とは?」

「言葉の通りの大掛かりな魔術。何が起こるのかは、起こってみないことにはね?」

 

 白い繊手を腰に当てて、韜晦するようにドロテアは微笑んで見せた。果たして本当に知らないのか、ある程度の予想はついていても口に出さないだけなのかはわからない。

 

「けれどまず間違いなく、盈月の儀を勝ち抜くためのモノには違いない」

 

 その一言で伊織にも想像はついた。未だ姿も顔もわからぬ最後のサーヴァント。キャスターが関わっているに違いないと。

 

「ドロテア」

 

 忠告めいた響きを帯びた語調でアサシンが促すと、やや喋り過ぎたことに気付いたようで女魔術師は話を切り上げた。

 

「ええ。お喋りはここまで。そういうわけで――もう、私たちは行くわ」

 

 踵を返したドロテアが肩越しに横顔を垣間見せる。

 

「次は決着をつけましょう。アナタたちの敗北、という幕引きでね」

 

 追うか、という槍兵からの問いかけの目線に伊織は小さく首を横に振る。

 既に逸れのキャスターからの助言によって次に向かうべき場所はわかっている。ドロテアの言は、何らかの異常が間近に迫っているという点で決して軽視は出来ないものの、カヤの行方に比べれば優先度は高くない。全てはカヤを救い出してからの話である。

 

「貴重な情報に感謝する。いずれまた会う時まで、貴殿が無事であることを祈る」

 

 前に向き直りかけた女魔術師は、その背にかけられた伊織の言葉に再び横目を背後に流す。

 伊織の言葉に嘘はなかった。いずれ決着をつけるためには、まず互いが無事であらねばならない。相手が死んでしまっては決着をつけることも出来ないのだから。

 

「そちらもね。東洋のお侍さん」

 

 それがわかったのだろう。ドロテアの横顔は楽しそうに笑っていた。

 

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