「あー...何やってんだろ俺...」
布団の上でそう呟き、窓の外を見た。
快晴、雲ひとつない空だった。
本来なら気持ちの良い清々しい程の晴天日だった。
なのに今の俺には、永遠に目を閉ざしていたい程眩しすぎた。
俺はこの自堕落でつまらない生活に嫌気が差していた。
「昼飯...食わないとなぁ」
こんな自堕落な生活をしていても空腹には抗えない。
鉛のような重い身体を立ち上げる。
いつものように脚に違和感を感じた。
俺は高校時代、絶対王者や天才と言われていた程の柔道選手だった。
高校3年の夏、インターハイ3連覇がかかっていた。
死ぬほど身体を鍛えた。
死ぬほど飯を食った。
死ぬほど相手の研究をした。
死ぬほど...努力した、したんだ...
ところが大会1週間前、乱取り稽古中に投げ足が脚に当たってしまい、当たりどころが悪く怪我をしてしまった。
前十字靭帯断裂
スポーツをしている者ならこの怪我の深刻さが伝わるだろう。
この怪我は治療可能だ、しかしこの怪我の恐ろしさは後遺症である。
膝の不安定感、そしてイップス...
これらが俺の身体、精神を蝕んだ。
心が弱いと言われるかもしれないが、柔道にとって膝とは要であり、頻繁に膝が抜ける感覚を味わってしまうと、また同じ怪我をしてしまうのではないか?次はもうないのではないかと恐怖が蝕んでしまう。
その恐怖が俺の中から消えることはなく、そのまま俺は柔道を引退した。
親の期待もあった、監督や仲間の信頼もあったが全部を捨てて、俺は逃げた。
それから俺は柔道がない大学に進学し今に至る。
時々、膝が抜ける感覚がありながら、俺は最寄りのコンビニへと足を進めた。
適当におにぎり2個、カップ麺、お茶を買って帰路についていた。
横断歩道付きの信号、赤になっていた。
周りの人も足を止めている...が、1つ飛び出す影...子供だった。
目の前には急ブレーキをかけているトラック、だがあの距離ではぶつかってしまう。
「クソッ...!」
俺は気付いたら走っていた、かなりぎこちない走りだろうが関係ない、俺は目の前の命のため走った。
「間に合えっ!!!!」
脚に力を込め全力で子供に向かい飛び出した。
子供はぶつかった衝撃で歩道まで突き飛ばされたが、トラックに轢かれるよりかは遥かにマシだろう。
「よかった...」
思わずそう口から言葉が漏れ、安堵した。
しかし子供は助かっても、トラックは止まってくれない。
キキッーー!!!!!!
「あっ...」
ドンッ!!!!!
強い衝撃が身体中を襲う。
恐らくは骨も数本折れているだろう。
ゴポッ...
口から粘度の高い血が出ている...考えたくもないが恐らく折れた骨が内臓に刺さっている。
「ハハッ...終わったなこれ...」
不思議と痛みはなかった、恐らくは過度に血を流しすぎたため痛覚が鈍っているのだろう。
「あー...クソつまらない人生だった...」
この世への未練より、嬉しさの方が勝っていた。
どうせどれだけ生きていても俺の過去は消えない。
あの日から俺の時間は止まっていたんだ...
「せめて来世は...」
俺の努力が報われる世界に...
意識が途絶えた。
これから永遠に目を覚ますことはないだろう。
そう思っていた。
「んっ...?」
瞼越しでも伝わる眩しさ
それに違和感を覚えた俺は目を開けた。
「なんだ...こりゃ...」
その言葉のまんまである。
俺は死んだはずだ、だけど身体中見ても傷一つない。
そして目の前には、夥しい木々が生い茂っていた。
「...これが異世界転生ってやつか...?」
ここは何処だ?見たことないな...まず日本なのか?
「...考えても仕方がない...とりあえず身体にも傷一つないしっ...てあれ!?」
立ち上がった瞬間、俺は驚いた。
脚の違和感が消えていた...
「試しに走ってみるか」
「走れる!ぎこちなくもなんともない!走れる!」
次は思いっきりジャンプをしてみる。
「ない!今までの不快感も何もない!」
今はこんなところに飛ばされた現状よりも、元に戻った自分の脚に歓喜していた。
しかし歓喜しているも束の間、草陰から音がした。
「ッ!?」
そうだここは恐らくは山の中、もしかしたら熊や猪といった獰猛な生物がいるかもしれない。
そう思い、自然と身体が全力で逃げ出す姿勢をとっていた。
ガサッ!!!
「来る!!」
走り出そうとした瞬間、このようなところでは絶対聞くことはないであろう声が聞こえた。
「ねえ...お兄さんは」
「食べてもいい人間????」
そう言って出てきたのは、恐らくは10歳くらいであろう金髪に赤いリボンを付けた女の子。
本来なら警戒すべきものではない、でもいま俺は警戒している。
だっておかしいだろう、こんな山奥であろう場所に女の子が1人で居るのだ。
しかも「食べてもいい人間?」とまで言う始末だ。
「お前...何者だ...?」
警戒しながら俺は目の前の異常者にそう問いかける。
「私はね〜ルーミアって名前なのだ〜!」
「お兄さんは何てな...「違うッ!お前は何者なのか聞いている!!」あ〜そういうことなのか〜」
「私は闇の人喰い妖怪なのだ〜お兄さん美味しそうな匂いだから食べてもいい?」
「それで「食べていいよ」って言う馬鹿がいるかよ...!」
普通は信じない、けど状況的に信じざる負えない状況に俺は混乱していた。
「ん〜確かに!じゃあ妖怪らしくお兄さんを襲えばいいのか〜!」
そうルーミアという化け物が言った瞬間、物凄いスピードでこちらに向かってきた。
「ッ!!」
俺はもはや反射で掴みかかる左腕を掴み、自分の左腕をルーミアの服の襟を持ち、勢いのまま横にスライドさせぶん投げる。
所謂、払腰という柔道の技である。
ドンッ!!!
強い衝撃がルーミアを襲う。
「痛いのだ〜!!!」
「ダメージは...無さそうだな」
あんなに勢いを付けてぶん投げたのにまるで効いていない。
普通は衝撃で動けなくなるか、脳震盪を起こしているであろう。
それがルーミアは化け物なのだとつくづく感じさせた。
「む〜!!!絶対許さないのだ〜!!!」
そう言ってもう一度襲いかかるアイツに、もう一度払腰をかける。
「何なのだ〜!その技〜!!!!!」
「俺たち人間が、編み出した偉大な武術だよ!!」
そうカッコつけて言うが、あと何回あの速度に合わせられるか分からない。
逃げなければ...
「次こそは食べてやるのだ〜!!!」
そう言って次は低い姿勢で襲いかかるルーミア
うわぁ...もう対策してやがる...
どうするか...と思考を巡らせていると
「あらそんなところにいたのね...」
何処からか女性の声が聞こえると思った瞬間、俺は山の中からギョロッとした目玉が大量にある空間にいた。
「何だ...ここは...気持ちわりぃ」
思わずそう呟くと
「あら、そんな酷いこと言わないでくださる?」
目の前に突然、金髪の女性が現れた。
綺麗だ...そう見惚れていると
「貴方ね、幻想郷に迷い込んだ異物は」
「ッ」
その言葉には、今まで感じたことの無い圧があった。
笑っているはずなのに、目が笑っていない。
「異物って何だよ...まず幻想郷って聞いた事のない地名何だけど...」
少しでも震えているのを隠すため、少し強気に質問する。
「あぁ...幻想郷とは忘れられた者たちの最後の楽園、そして貴方はその楽園の規律を乱す異物よ」
「そんな異物は今から私に消されるの...これで満足?」
そう冷たく言い放つ謎の女
「それでなるほどなってなる訳ないだろうがよ」
せめてもの抵抗でそう言い放つ
「物分かりが悪い馬鹿は嫌いよ」
「俺もお前みたいな冷酷な女は嫌いだよっ」
「...塵にしてあげる」
そう言い放つ女に俺は思い切り懐に向い踏み込んだ。
「ッ!?」
動揺する女に構わず、俺は女の顔に手をやり、袖を持ち得意技の大外刈の体勢に入る。
この技に懸けるしかない!!!
大外刈とは素人ならば後頭部を強打するような威力の強い技だ。
それに加えこの大外刈は顔に手を置くことで、更に頭にダメージを与える。
「あらあら凄い踏み込みね」
そう聞こえたと思えば、女はいつの間にか俺の後ろに居た。
「何でだ...?何でお前は俺の後ろにいる?」
「それはわたくしの能力のせいかしら」
そう笑う女は俺の隣に移動していた。
「貴方...面白いわね、興味が湧いたわ♪」
「私は八雲紫、この幻想郷では賢者と呼ばれる妖怪よ♪貴方は?」
「俺は皇...皇燈だ」
戸惑いながらも俺は答える。
「燈ね!いい名前だわ♪貴方のことを駆除する予定だったけど無しにしてあげる」
上機嫌に言う紫に俺は問う。
「何でいきなり敵意を消した...俺はお前を投げようとしとんだぞ?」
「それよ...その貴方の怯えていてもわたくしに立ち向かう胆力に興味が湧いたの」
「そんなことで...」
「そんなことで気分が変わるのが妖怪よ♪」
紫はそう言うと、床に穴が空いた。
「燈...あなたはこれからこの幻想郷で生活しなさい、この穴から落ちたら貴方の生活をサポートしてくれる人の家の前に行けるわ♪」
「いや...いきなりそんなこと言われてもそうですかってなるかよ!?」
「うるさいわね〜早く行きなさい!」
「えっ?」
俺の真下に穴が空いた。
「うおぉぉお!?」
俺はそのまま穴に落ちていった...
「燈、貴方ならこの幻想郷に更なる彩りを与えてくれそうだわ...期待しているわよ」
そう言って紫は穴を閉じた。
まじで疲れた...ほんとに疲れた...
これから頑張って投稿しますのでよろしくお願いします〜