ブルアカかアークナイツかで迷ってましたがアークナイツになりました。
STORY.1:初めての再会
「…はあ…はあ…」
肺の奥が焼けるように痛み、喉はひしゃげた笛のように鳴っていた。それでも私は走り続けた。背後では、レユニオンの感染者たちが荒々しい叫びを上げ、銃火器を構えてこちらへ無差別に弾を浴びせてくる。
石畳を跳ね返る金属音が耳を打ち、風を裂く弾丸が頬を掠めた。
「うわっ!」
仲間の一人が悲鳴を上げ、弾丸に弾き飛ばされるように倒れ込む。伸ばした手が空を掴み、そのまま力なく落ちた。
「ぐわぁっ!」
また別の仲間が私を庇って前へ出た瞬間、肩口に深々と矢が突き刺さった。彼は痛みに歯を食いしばりながらも、私を後方へ押し返した。
倒れていく仲間の体温が手に残り、その度に胸が締めつけられる。
私たちの目的はただ一つ。
――“ある人”を救い出すこと。
「アーミヤさん! ここは行ってください!」
「ッ……!」
その叫びが最後の声になった。振り返る間もなく、彼は私の前に立ちはだかり、矢と銃弾の雨を一身に受けて崩れ落ちた。
仲間の足音が次々と消えていき、目的地へ辿り着いた頃、私の隣に残っていたのは一人のオペレーターだけだった。
「ここに……例の人が居るんですか?」
彼は息を荒げながら、薄暗い通路を見渡す。
「……あ……」
私の視界に、異様な存在感を放つものが飛び込んできた。
それは巨大な十字架のようでもあり、古い儀式用の棺のようでもあり、冷気を孕んだ金属の光がひどく不気味だった。
「これが……今回の対象……?」
オペレーターが言葉を紡ぎかけた瞬間、背後から複数の矢が一斉に飛来した。
彼の背に次々と突き刺さり、身体が震え、膝から崩れ落ちる。
「……っ!」
振り返ると、追ってきたレユニオンが再び現れていた。数は先程の倍はいる。狭い空間に殺気が渦巻き、足元の空気すら重く感じた。
このままでは全滅する。
私は棺の前に立ち、手を伸ばした。アーツを練り、震える指先で棺に触れる。
瞬間、低く響く機械音。
そして――棺は内側から光を溢れさせながら開いた。
「……ッ!」
眩い白光の中心から、ひとりの青年が姿を現した。
背が高く、雪のように白い髪。赤い瞳は、眠りから覚めた獣のように鋭かった。
「……“ドクター”…?」
私が掠れた声で呼ぶ。
「………」
青年は返事をしないまま、レユニオンの方へ走り込んだ。
動きは一瞬だった。
蹴撃で一人を吹き飛ばし、その体勢のまま敵の両手から剣を奪い取り、二本の刃を滑らかに構える。
次の瞬間には、複数の敵が床に倒れ伏していた。
「こっちだ!」
彼は私の手を掴み、強く引いた。反射的に走り出す。
地下施設の奥から外へ通じる通路を駆け抜け、ようやく地上の光を浴びた頃、周囲に敵の気配はなかった。
「……もう大丈夫だ。」
彼は剣を手放し、息を整えながら私を見つめた。
「……あなたは……ドクター?」
「ドクター……?」
青年は眉間に皺を寄せ、目を閉じたまま首をわずかに傾ける。
しばらく考え込むように沈黙し、そしてゆっくりと首を縦に振った。
「……うーん……思い出せねぇ。何か…大切な記憶のはずなんだが……」
その声音には、焦りとも諦めともつかない微妙な揺らぎがあった。
「……覚えてるのは……“レイヴン”っていう名前と、この剣の感触だけだ。」
私は短く息を呑む。
「………自己紹介が遅れました。私はアーミヤ。私たちは――あなたを探していたんです。」
「俺を?」
「はい。ドクターをロドスに連れ戻すために……ここへ来ました。」
彼は視線を逸らさず、じっと私の顔を見つめた。
どこか寂しげで、しかし空虚ではない赤い瞳だった。
「俺が……そのドクターじゃなかったら、どうする?」
「私からしたら、貴方はもうドクターです。」
その言葉は自然と口をついて出た。
青年――レイヴンはわずかに目を見開き、そして静かに、どこか遠くを見るように呟いた。
「……そうか……」
……………………
そうして私は、レイヴンさん――いや、今は彼を“ドクター”と呼ぶべきなのだろう――と共に、散り散りになってしまった仲間たちとの合流地点を探すことになった。
歩き出してからしばらく、彼の足音と私の足音が廃墟の石道に乾いたリズムを刻む。
周囲は戦闘の余韻が色濃く残り、崩れた建物や焦げついた壁面が、さっきまでの混乱の激しさを物語っていた。
ドクターは以前までの記憶をほとんど失っていた。
指揮能力も欠損しているようで、少し困った顔をしながら私の説明を聞いていた。
だが、その代わりと言うべきか、彼の戦闘能力はあまりにも突出していた。
まるで、その力だけが彼の核として残されているようにすら感じられた。
私はその横顔を見つめる度、胸がわずかに痛む。
確かに彼は“ドクター”だ。
けれど……目の前にいる彼は、何処か、以前知っているドクターとは違う影を纏っている。
「……なんだよ。」
突然、赤い瞳がこちらを向いた。
気づけば私は無意識に彼を凝視していたらしい。
「あ、いえ……何も……」
慌てて視線を逸らしたが、彼はわずかに眉を吊り上げながらも、深追いはしなかった。
「……そういえば仲間が居るんだったよな。ソイツらを探せばいいんじゃないのかよ。」
「それもいい考えですが……どう探せばいいかが……」
話していると――通信機が突然震え、小さくノイズを撒き散らした。
私は反射的に取り上げ、音量を上げる。
『……こちらace……アーミヤ、聞こえるか?』
「えっ……Aceさん……!?」
雑音混じりの声だったが、確かに聞き覚えのある声だった。
私は安堵と緊張が同時に押し寄せるのを感じながら、耳に押し当てた。
『アーミヤ!俺たちは近くの建物に身を潜めている。レユニオンの連中はいまのところいないが……十分に警戒してくれ。』
後ろで別の誰かが短く咳き込む音がした。状況は良くなさそうだ。
『目印は赤い屋根に白い壁の家だ……そこで落ち合おう……』
通信はそこで途切れ、かすかな電波音だけが残った。
「……どうしたんだよ?」
レイヴンが私の表情をちらりと覗き込む。
「いえ。仲間が近くの建物に居るらしくて…… “赤い屋根の白い壁の家” だと言っていました。」
「だったら早くそこに行こう。敵がウロチョロしやがる。」
彼は周囲に鋭い視線を走らせた。
その目線を追うと、建物の影や瓦礫の隙間に、レユニオンの感染者たちが散発的に集まりつつあるのが見える。
彼らはまだこちらに気づいてはいないものの、油断すればすぐに包囲されてしまうだろう。
「……行きましょう。」
私たちは息を潜め、建物の影から影へと身を滑らせながら進む。
レイヴンは足音を一つも立てず、刃を抜く必要すらないほど静かに敵の視界を避けて歩く。
その姿は、以前のドクターよりずっと戦士らしく、そしてどこか危うかった。
この人は……本当に“ドクター”なのだろうか。
そんな疑念は、胸の奥で静かに燻り続けていた。
それでも――
仲間たちに会わなければならない。
真実を確かめるためにも。
私達は身を潜めて、敵にバレないように仲間達の元に合流する事にした。
アークナイツ×他の作品の要素マシマシの闇鍋みたいな作品ですが、是非とも評価してくださると嬉しいです。