タイトルのリザレクションの意味は特に無いです()。
なんか語呂良いなって感じで付けました。
アーミヤとレイヴンは、aceの言った目印――赤い屋根に白い壁の家を探して廃街を進んだ。
瓦礫の山を越え、破壊された路地を抜けると、やがて目的の建物が視界に入った。
壁は灰にまみれて黒ずみ、ところどころ崩れ落ちている。
屋根も傾き、今にも落ちそうなほどに損壊していたが、確かに指定された特徴を備えていた。
「……ここですね。」
アーミヤが小さく息を呑んで呟く。
「早速入ってみろよ。」
レイヴンは特に緊張した様子もなく、アーミヤの後ろへ下がり、周囲を警戒しながら片手を軽く上げた。
アーミヤは頷き、ほこりの積もった扉をそっと叩く。
ギィ……と軋む音とともに扉が開く。
中を確認したオペレーターの一人が、驚いた顔で二人を手招きした。
「アーミヤ…!無事だったのか……。それに……ドクターも。」
「あっ……aceさん……!ドーベルマンさんまで……!」
室内は薄暗く、窓に貼られた板の隙間からわずかに光が差し込んでいる。
その中で、aceとドーベルマンが状況を把握するようにアーミヤへ駆け寄った。
「アーミヤ、無事で良かった。」
ドーベルマンの声は安堵と警戒が入り混じっていた。
「……そちらが例の人物か?」
「はい。ドクターです……でも、記憶がなくなっているんです。」
「……何ッ……」
ドーベルマンは目を見開いたが、すぐに険しい表情へ戻り、腕を組んだ。
「困ったな……指揮能力が戻らなければ作戦にも支障が出る。」
aceも黙って重々しく頷いている。
二人の会話を、レイヴンは少し離れた場所で静かに眺めていた。
(……俺の話だろうな。)
気まずさよりも、状況を探る冷徹な観察の光が彼の瞳に宿っていた。
レイヴンは特に声をかけられることもなく、ふらりと部屋の奥へ歩き出す。
合流地点の内部も、先刻の混乱をそのまま反映していた。
医療機器が無造作に転がり、床には子どものおもちゃや小さなベッドが横倒しになっている。
ここがかつて“誰かを助けるための場所”だったことは、一目で分かった。
「……ここは……」
反応する前に、背後から声がした。
「ここは闇病院。感染者の症状を抑えるための……非合法の診療所です。」
レイヴンが振り返ると、馬の耳を持つ少女フェンと、悪魔の角を生やした少年ニールが立っていた。
「お前らは?」
「俺はニール。こっちはフェン。」
ニールは控えめに手を上げた。
「アンタが噂のドクターなのか?」
「……悪いが、記憶がねぇんだ。お前たちのことも知らない。」
「……そう、なんですか。」
フェンは困惑を隠しきれないまま、それでも丁寧に頭を下げた。
「とにかく、よろしくお願いします。」
ニールは持っていた端末を閉じ、レイヴンの近くまで歩いてくる。
観察するようにじっと上から下まで視線を滑らせた。
「身体には異常がないみたいだな。それどころか……なんというか、不思議な気配がある。」
「……そうか……」
レイヴンは自分の胸や腕を軽く触り、何か引っかかるような感覚を探したが、すぐに首を横に振った。
「気のせいか。それより……ドクター、アーミヤが話があるってさ。
そう言い残して、ニールは元の場所へ戻っていった。
レイヴンは軽く息を吐き、アーミヤの元へ歩み寄る。
「どうしたんだ、アーミヤ?」
アーミヤは少し緊張した面持ちで、彼を見上げた。
「ドクターは……この世界のこと、どれだけ覚えていますか?」
レイヴンはしばらく沈黙し、目を細めて記憶を手繰った。
だが結局、何も思い出せず、ゆっくりと首を振る。
「……ドクター。私たちロドス・アイランドは製薬会社で、
「鉱石病?」
「
アーミヤは右手を胸に押さえた。
「感染すれば……非感染者から差別されてしまいます。時には迫害すら……」
語る言葉ひとつひとつが痛みを含んでいた。
レイヴンは黙って見つめているだけだったが、その赤い瞳の奥で何かがわずかに揺れた。
「……アーミヤ。お前……頑張ってんだな。」
レイヴンの声は普段より幾分か柔らかく、彼自身も気づかないほど自然に滲み出たものだった。
「そんな……まだまだですよ。私は……」
アーミヤはかすかに首を振り、耳がしゅんと垂れる。
だがその仕草を見たレイヴンは、少しだけ目を細めて言葉を重ねた。
「俺からしたら、スゲェ頑張ってるよ。」
アーミヤの肩が微かに震える。
その表情には、励まし慣れていない彼の言葉だからこそ響いたような、控えめな安堵が浮かんでいた。
しばし沈黙が落ちる。
レイヴンはふと視線を落とし、腕を組み、次の疑問を口にした。
「……なぁ、感染したら治せないのか?」
アーミヤは口を結んだまま小さく頷いた。
「それに関しては……まだ治療の術が見つかっていないんです。私たちができるのは……症状を抑えることだけで……」
声が次第に弱くなる。
しかし、アーミヤはそのまま視線を逃がさず、しっかりとレイヴンを見据えた。
「でも、いつかは……いつかは治療を可能にして……この世界から差別や迫害を無くしたいです。」
幼い願いではない。
世界の重さを背負った者だけが口にできる、静かな決意だった。
「……そうか。」
レイヴンは短く答えた。
だがその声音には、ただの相槌ではない、重みのある共感が宿っていた。
――その時。
「みんな。」
ドーベルマンの鋭い声が室内の雑音を断ち切った。
壁に背を預けていた隊員たちが一斉に顔を上げる。
「ニアール隊やScout隊からの連絡が依然として途絶えている。状況は悪い。三分後にはここを離れ、脱出ルートを探る。全員、準備を整えろ。」
緊張が室内を縫うように広がった。
aceは拳を握り、フェンとニールもそれぞれ装備を締め直す。
ドーベルマンは最後にレイヴンへ視線を向けた。
その眼差しには警戒も、期待も、両方が混ざっている。
「ドクター。お前は指揮能力を失っているが……戦闘能力はあると聞いた。いざとなったら自衛は任せるが、いいか?」
レイヴンは肩を回し、軽く首を鳴らしながら答える。
「分かった。指示を聞くぜ。」
その声音は短く、迷いがない。
彼が記憶を失っていても、戦う覚悟だけは曇っていなかった。
……………………
霧は、気づけば足首を飲み込み、膝元まで這い寄っていた。湿り気を帯びた冷気が皮膚にまとわりつき、視界は急速に白く濁る。
「……おい。なんか変だぞ。」
レイヴンが短く呟く。その声音には、ただの違和感ではなく“危険を察知した者の勘”が滲んでいた。
アーミヤも辺りを見回すが、霧が立ち込める音すら聞こえてきそうなほど静まり返っている。
「……確かに。さっきより濃く……」
「敵のアーツの可能性がある。隊列を円形に。全周警戒だ。」
ドーベルマンの指示は低く鋭く、隊員達は迷いなく動いた。霧の向こうは完全に見えず、ただ白と影だけがゆらめく。
―バンッ。
空から突然の破砕音が響き、隊員達が反射的に頭上を見上げる。霧越しでもはっきり分かる爆光。偵察ドローンが火花を散らしながら落ち、代わりに黒い外殻のドローンがいくつも高度を下げてきていた。
「総員!木陰に退避、急げ!」
aceの声が鋭く飛び、全員がほぼ条件反射で木々の根本へと散る。レイヴンだけは飛来するドローンを正面から睨み上げ、腰の剣を静かに抜いた。刃が霧の白に溶け込みつつも、確かな存在感を放つ。
「威嚇射撃……誘導か。」
独り言のように呟いた声には、敵の意図を素早く読み取った者特有の確信があった。
アーミヤも警戒して霧の向こうへ視線を走らせるが、白すぎる視界には輪郭らしい輪郭すら見えない。距離感も方向も怪しい。胸の奥にざらりとした不安が積もっていく。
その時、背後からドーベルマンの低い声が飛んだ。
「アーミヤ。aceの部隊が敵からの攻撃を受けている。こちらから信号弾を上げる。他の隊員を連れて援護に――」
「……ドクターが居ません…!」
アーミヤは反射的に周囲を探した。つい先ほどまですぐ隣にいたはずだ。視界に白い霧がかかる直前まで、その気配を確かに感じていた。
だが、今はどこにもいない。
足跡も、影も、気配すら、霧に食われたように跡形がない。
「何……?さっきまで一緒にいたのか……!?」
ドーベルマンの眉が険しく歪む。彼女ほどの観察眼をもってしても、レイヴンの消失に気づけなかったという事実が、逆に事態の異常さを物語っていた。
だが判断するには、あまりにも視界が悪すぎた。
……………………
霧の中に足を踏み入れたと思った次の瞬間、視界が白く弾け、気づけば背後を取られていた。腕を捻じられ、首元に冷たいものが押し当てられる。
「……誰だてめぇ……」
「見つけたぞ…」
振り向けぬ角度で囁くような女の声。赤い髪が肩越しに揺れ、血のように鮮やかな赤い瞳が横目でこちらを射抜いていた。口元は黒いマスクで覆われているが、その目だけで敵意が十分伝わる。
「動くな。騒げば殺す。」
刃がさらに喉元へ深く近づく。肌がひりつくほどの距離。
俺はわずかに呼吸を整え、筋肉の張りを計算しながら“反撃可能な瞬間”だけを探っていた。
「私は人を探してるんだ。忘れたとは言わせん……!」
「何も覚えてねぇんだよ……!」
素直にそう返すと、女は明らかに苛立ちを増した。刃先が喉の皮膚を掠め、薄い血の線が滲む。
その瞬間だった。
「困るなぁ……ここは僕の担当区域だろぉ?勝手に動くなら、報告しなきゃいけないよねぇ……クラウンスレイヤー?」
霧を裂くように軽い声が響き、銀髪の少年が影の中から歩み出た。
その笑顔は笑っているのに、目の奥だけがまったく笑っていない。
クラウンスレイヤーは舌打ちをし、俺の首から刃を離す。
「……チッ。お前が惨めに負けるのを楽しみにしてるよ。」
吐き捨てるように言うと、体を霧へ溶かすように消え去った。
束の間の沈黙。霧が揺れ、アーミヤ達が木々の間から姿を現す。
だが、銀髪の少年はその全てを計算していたかのように、ゆったりと両手を広げた。
「さて、皆さんお揃いで……歓迎するよ?」
その声に応えるかのように、霧の奥からレユニオンの構成員たちが音もなく現れ、円を描くように包囲を狭めてくる。
周囲の気配が一気に“敵”で満たされる。
「くっ……コイツら……!」
ace達が警戒して後退するが、包囲は逃げ場を塞ぐように形を変え続ける。
「僕はメフィスト。……今から僕と“ゲーム”をしないかい?」
軽い声。しかし、その奥底で蠢いているのは楽しげな狂気。
「何ぃ……」
「白髪の君、そう――君だよ? ドクター、と呼ばれているんだよね?」
俺を指で示し、嬉々とした声が続く。
「石棺から出てきた君のことが気になって仕方がないんだ。どうやってあんな場所で生きてた?どうやって命を繋ぎ止めていたんだい?……あぁ、知りたいなぁ。」
完全に“観察対象”を見る目だった。
そして、メフィストがひとつ手を振ると――
「始めようか。」
周囲の構成員の中から一人が前に出て、謎の攻撃を放った。空気が強制的に振動し、紫の光がフェン達の足元を薙ぎ払う。
「っ!?なんだ今の!?」
俺は突然の事で驚いた。
「アーツです……!源石の力を利用した攻撃……!」
アーミヤが叫び、仲間を下がらせ、敵の動きから距離を取る。
俺は反射的に踵を返し、迫る構成員を蹴り飛ばす。骨の軋む感触と、敵が倒れる重い音が霧の中に吸い込まれていった。
「説明が遅れてすみません……!今はとにかくここから脱出しましょう!」
アーミヤが短く指示し、全員が散開しながら脱出経路へ走り出す。
俺の胸の奥には、霧よりも重たい感覚が残っていた。
灰を飲み込んだような、喉奥にこびりつく嫌なざらつき。
“――まだ、何かが始まったばかりだ。”
その感覚だけが、不気味に確かなものとして残っていた。
プライム会員なったのでアニメ見ながら作ってます。