アークナイツ リザレクション   作:サツキタロオ

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メインキャラクター大体出てきました。
今回でメインキャラクターは大体出尽くすと思います。


STORY.5:レユニオンの影

 

龍門近衛局と共に、アーミヤたちは指定されたスラム地帯へと足を踏み入れた。

「……ここがスラムか……」

レイヴンは思わず眉をひそめる。

つい先ほどまで煌々と光る摩天楼を眺めていたのが嘘のように、ここは荒れ果てた廃墟群が連なる無機質な谷底だった。

 

「……酷い場所だな……」

「はい……想像以上です。」

 

アーミヤは端末を操作しながら周囲を確認する。

しかし、同行者の気配が一つ足りないことに気づくのはすぐだった。

 

「ドクター。しっかりついてきてくださいね——……ドクター?」

 

振り返る。

いない。

影も形も、気配すらない。

 

「……ま、まさか……」

 

アーミヤは頭を抱え、冷や汗をつたい落とした。

 

 

一方そのころ、当の本人。

 

「迷ったぁぁぁぁぁ!!!」

 

レイヴンの叫びがスラムの広間に虚しく響いた。

路地裏の迷路構造は、通り慣れた者でさえ見失うレベルだ。初見の男など瞬殺である。

 

「ったく……迷いやすい構造してやがる……アーミヤはどこだぁ……!」

舌打ちしつつ周囲を警戒していると——

視界の端で、淡く瞬く光が揺れた。

 

「……ん?」

 

近づいてみると、ノイズめいた粒子に包まれた小さな球体。

まるで電子の残滓が凝縮したかのような奇妙な物体だった。

 

「なんだコレ……金目のもの…じゃなさそうだよな?」

触れた瞬間。

 

スッ……

 

「!?…俺の中に!?」

慌てて手を振り払うが、既に消え失せている。

身体にも痛みはない。熱もない。

 

……あるのは、不気味な感覚だけ。

 

「……な、なんもねぇ……?」

しばらく震えていたが、結局“気のせい”扱いにして歩き出した。

 

 

迷いに迷った末、レイヴンはふと一つの建物に辿り着く。

周囲の廃墟とは違い、そこだけ比較的整備されており、倉庫とガレージが併設された小規模な拠点だった。

 

「なんだ……ここ?」

 

その瞬間、背後から冷たい鉄が喉元へ。

 

「……お前、誰だ?」

剣先が軽く触れた。動けば切れる距離だ。

「……迷子。」

「……泥棒じゃないよな?」

「来たばっかだ。盗む時間もねぇよ。」

「……どうやら本当に迷子らしいな…」

 

刃が下ろされる。

振り返ったレイヴンの目に映ったのは、落ち着いた目つきのループス——青年だった。

 

「俺はペンギン急便のトランスポーター、デューク。あんた……ロドスの人間か?」

 

「ああ。俺はレイヴン。よろしくな。」

 

互いに握手を交わす。

騒がしいスラムの中で、束の間の穏やかな邂逅が生まれた。

 

「レイヴンだっけ?ドクターって風貌じゃねぇな。」

「うるせぇよ。」

 

 

……………………

 

 

「……言った通りだ。例の物を見つけ次第、すぐに撤退だ。」

ジェスターはスラムの通路内で仲間を集めてそう話す。

「よし、散開だ。以上。」

そう言って仲間達はバラバラに分かれて行った。

「…相変わらず淡白ね。」

Wはそう言って後ろから抱き付く。

「いや…ちょっとな。」

「……そっ…か。」

そうして二人で歩きながら目標物を探しに行く二人。

「ねえ、例のドクター見つけたらどうするの?」

「レイヴンの事か?さあな。考えた事は無い。」

「……Wはどうするんだ?」

「……私に聞かないでよ。」

そう言って二人は歩き出す。

通路の奥は湿り気を帯び、古い鉄の匂いが鼻を刺した。

薄暗い照明が点滅を繰り返し、まるでスラム全体が不吉な予兆を告げているようだった。

 

Wはひょいと物陰から顔を出し、レユニオンの構成員たちを眺める。

普段なら、見張りの緩さや立ち位置の乱れで誰が新人か、誰が疲れているかすぐに分かる。

しかし今は、誰一人として呼吸すら乱していない。

妙な静寂だけが、逆に不自然だった。

 

「…何、アイツら…」

彼女の声には、珍しくわずかな警戒が混ざっていた。

 

ジェスターは額に汗を一筋流しながら、じっと彼らの動きを観察した。

「様子が…変だ。」

 

Wが軽い足取りで前へ出る。

その背中はいつも通り軽薄そうに見えたが、ジェスターにはわかっていた。

Wが警戒を解いた“フリ”をして相手の反応を引き出す、その癖を。

「アンタら、命令聞いてなかった? 散開しろ…」

 

その瞬間だった。

 

まるで反射のような速さで、一人が剣を振り上げる。

迷いも、怒りも、憎しみもない。

ただ、感情の切り落とされた“動き”だけがそこにあった。

 

「って…」

 

「W!」

ジェスターの双剣が閃き、乾いた金属音とともに構成員の剣が弾かれた。

反射神経だけで動いたような速さ。

だがそれでも、彼の表情には焦りが滲んでいる。

「大丈夫か。」

Wは唇を噛んだまま、胸に手を当てる。

「う、うん。それより…アンタら急に何よ! 仲間に攻撃するとか正気じゃなくなった?」

 

構成員たちは返事をしない。

返すべき言葉の概念そのものを失ったように、無機質な視線だけを二人に向ける。

 

「コイツら…何か違う。」

 

ジェスターの低い声は、戦場で鍛えられた直感が警鐘を鳴らしている証拠だった。

 

「どうすんのよ。」

 

「ひとまず抑え込む。W、援護は任せる!」

 

「はいはい!」

 

Wは肩をすくめながらも、素早く二本のナイフを抜く。

軽い身のこなしで構成員の懐へ踏み込み、関節を狙って刃を滑らせる。

いつもなら、悲鳴か怒声のひとつは上がる。

だが――

 

「っ……!?」

 

皮膚が裂けた瞬間、Wは息を呑んだ。

流れ出すはずの血はなく、代わりに光沢のある黒いケーブルが覗く。

 

同時に、ジェスターの双剣が別の構成員を切り裂いた。

その胸部から溢れたのは金属片、基盤、安っぽいチップの塊。

 

「……コイツら、アンドロイドなのか……」

 

ジェスターは刀身を構えたまま、しばし動きを止めた。

正気でいられないほどの違和感。

レユニオンに、これほど精巧な擬態機械を量産できる技術など存在しないはずだ。

 

Wは切り裂いた構成員の中身をつま先でひっくり返し、眉をひそめた。

「でも……なんで? アンドロイドでも良いけど、襲いかかった理由が分かんないわよ?」

 

ジェスターは周囲を見渡しながら、静かに息を吐いた。

「……命令じゃない。これは“反応”だ。」

「反応?」

「俺たちを“標的として認識した瞬間”に攻撃してきた……そんな動きだ。」

 

Wの背中に寒気が走る。

彼女は冗談めかして肩をすくめるが、声にはわずかな震えが混じった。

 

「……ねえ、アンタ。それってつまり……」

ジェスターは視線を前方の闇へ向けた。

暗がりの奥で、何かが起動する微かな電子音が響く。

 

「レユニオンの中で…何かが始まってるんだ…。」

 

……………………

 

「テディス、遅いぞ。」

 

「す、すいません!!」

 

路地裏にチェンの鋭い声が響き、青年は慌てて駆け寄ってくる。

青髪に赤い瞳、龍の角と尻尾。

確かにチェンと似た面影はあるが、彼の仕草はどこか小動物めいて落ち着きがない。

 

アーミヤは並んで立つ二人を見比べて、小さく首を傾げた。

 

「チェンさん。こちらは?」

「コイツはテディス。私の部隊に入った新人だ。」

 

紹介がやけに素っ気ない。

チェンの態度には“必要最小限”という線引きが露骨にあった。

 

「はい。アーミヤさんでしたっけ? よろしくお願いします!」

 

テディスは笑顔全開で深々と頭を下げる。

声には若さと素直さが満ちている。

アーミヤも思わず柔らかく微笑んだ。

 

「…足を引っ張るなよ。」

チェンの冷たさは氷点下だった。

 

「はい!もちろんですよチェン隊長!」

「……ッ」

チェンは僅かに目を伏せると、返事を無視して歩き出す。

テディスは慌ててその後ろに続く。

 

アーミヤは二人の様子を眺めながら、胸の内で静かに呟く。

 

(チェンさん……テディスさんに、何かあるんでしょうか?)

 

嫌悪とも心配ともつかない微妙な空気。

チェンの不機嫌さは、単なる新人に対する苛立ちではない。

もっと深く根のある、触れづらい感情の影があった。

 

(でも……チェンさんは自分からは話してくれないだろうな……)

 

アーミヤは歩く二人の背中を見つめる。

チェンは前だけを見て歩き、テディスは彼女の背中に懸命に付いていく。

その距離は物理的には近いのに、どこか遠かった。





新登場のテディス君(21)です。
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