アークナイツ リザレクション   作:サツキタロオ

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前回のあらすじ!
レイヴン石を取り込む。以上


STORY.7:エクステンド

その頃――

ジェスターとWは、荒野に点在する廃墟群のひとつへと向かっていた。

風に晒された鉄骨が軋み、砂塵が視界を薄く染めている。

 

「ねえジェスター。やっぱり変よ、アンタ。」

 

歩きながら、Wが横目で睨む。

「さっきから無駄口も叩かないし、顔色も冴えない。ちょっと調子悪いんじゃないの?」

 

「……気のせいだ。」

ジェスターはそう言い切り、足を止めずに歩き続ける。

 

「ふぅん。“気のせい”って言う時のアンタ、だいたい気のせいじゃないのよね。」

 

数秒の沈黙。

やがて、ジェスターがふっと足を止めた。

 

「……なあW。今回の件、タルラが絡んでると思うか?」

「は?」

 

Wは一瞬、意味が分からないといった顔をする。

 

「急に何言い出すのよ。アンタがそんな勘繰りするなんて珍しいじゃない。」

「だよな……。」

自分でも納得がいかないように、ジェスターは短く息を吐いた。

 

「……よし。とりあえず、スカルシュレッダーの所に行こう。」

 

「はぁ?なんでよりにもよって、あの爆弾坊やのとこなのよ。」

露骨に嫌そうな声を出すWを無視して、ジェスターは続ける。

「最近、あいつの元に“手配された物”があっただろ。」

「……あ。」

Wの表情が、わずかに変わる。

「コンバットフレームの事?」

 

コンバットフレーム。

レイジアン工業が開発した二足歩行装甲機。

本来は物資輸送や工事支援を目的として設計されたが、

武装転用が容易なため、現在では戦闘用途でも広く運用されている。

 

現行量産型は三種。

・準汎用型 「ニュクス」

・重装甲型 「グラモス」

・高機動型 「アラネア」

 

各国で正式採用されており、珍しい兵器ではない。

 

「あれがどうしたのよ。」

Wは肩をすくめる。

「ただのコンバットフレームじゃない。この前見たのも、ありふれた重装甲型のグラモスだったでしょ?」

 

だが、ジェスターは首を横に振った。

 

「確かに、1機2機ならな、だが……数が多すぎる。」

 

「……占拠作戦に使うだけなら、そこまで要らない…」

Wも、そこまで言ってジェスターを見つめる。

 

「…でしょ?」

そう聞かれたジェスターは静かに頷く。

 

 

「拠点防衛にしても過剰だ。前線を一気に押し潰す準備みたいな数だった。」

 

「……何よそれ。」

Wの目が細くなる。

 

「つまりタルラは、あたし達に何も言わずに何か始めようとしてるって事?」

 

「多分な。」

ジェスターは廃墟の影を見る。

風が吹き、砂埃が舞った。

 

「……嫌な予感しかしないわね。」

Wは笑うが、その目はまったく笑っていなかった。

「きっとロクな話じゃないだろうな。」

 

二人は無言で歩き出す。

 

…………………

 

「スカルシュレッダー。」

 

名を呼ばれ、

瓦礫の陰からマスクを付けた少年が姿を現した。

 

「ジェスター……それにWか。

何か用でもあるのか?」

 

その声には、警戒と苛立ちが混じっている。

 

「コンバットフレームが大量にあると聞いてな。」

ジェスターは真正面から切り込んだ。

「理由が知りたい。」

 

一瞬の沈黙。

そして――

 

「……知らないのか?」

 

スカルシュレッダーは淡々と言った。

 

「今月中に、龍門をコンバットフレームで攻略する。」

 

「……!」

 

ジェスターとWは、ほぼ同時に目を見開き、互いを一瞬だけ見合った。

 

「チェルノボーグを落とした今こそ好機だ。」

少年の声は熱を帯びていく。

「これだけの数が揃った。龍門は必ず――攻略できる。」

 

「待て。」

ジェスターが低く制止する。

「それは“攻略”じゃない。ただの――」

 

「……ジェスター。」

遮るように、スカルシュレッダーが名を呼んだ。

「お前は、家族を失った事があるか?

 

不意打ちだった。

ジェスターは言葉を失う。

 

「俺は失った。」

少年は続ける。

「全員だ。感染者だったという理由だけでな。」

 

マスクの奥から、歪んだ憎悪が滲む。

「それ以来、俺はレユニオンに入った。以前の名も、過去も、全部捨てた。」

 

(……そうだったわね。)

Wは思い出す。

(スカルシュレッダーが加入したのは、ロドスが“ドクター救出”を行った、ほぼ同じ時期。)

 

視線を横にやると、

ジェスターは何も言わず、ただ少年を見ていた。

 

「俺はロドスを……非感染者を許さない。」

 

声が震える。

 

「必ずこの手で――根絶やしにしてやるッ!!」

 

叫び捨てるように言うと、

スカルシュレッダーは踵を返し、元の持ち場へと戻っていった。

 

その背中は、怒りと悲しみで歪んでいる。

「……確かアイツ、姉も居たんだったわよね。」

Wがぽつりと呟く。

 

「ああ……。」

ジェスターは、少年の後ろ姿から目を離さなかった。

「家族、か……。」

 

失った者の怒りは、時に正義を装い、時に全てを焼き尽くす。

(このまま進めば――レユニオンは…)

 

ジェスターの胸には、先ほどから消えない違和感が重く沈んでいた。

 

…………………

 

その頃、レイヴン達はチェンの元へ戻っていた。

 

「……ですから。本当なんです。」

 

アーミヤは、

例の石――“碑文”がレイヴンの体内に取り込まれた経緯を、できる限り冷静に説明していた。

 

だが――

 

「……。」

 

チェンは腕を組んだまま、一言も発さない。

その沈黙は、明確な“不信”だった。

 

「いやぁ……どうしたら信じてもらえるんだろうねぇ……」

 

エクシアが頭の後ろで手を組み、軽い調子で呟いた、その瞬間。

 

――ズズ……ッ

 

「……?」

 

レイヴンの胸元が淡く光り、

次の瞬間、黒紫の光を帯びた存在が“押し出される”ように飛び出した。

 

『おいおい。これで満足か?』

 

空間が歪むような声。

「――ッ!?」

 

チェンは即座に半歩下がり、手を剣に掛ける。

一方で、テディスは目を輝かせていた。

 

「す、すげぇ……!ドクター!どうやったんですかそれ!?」

 

「知らねぇよ。勝手に出てきたんだ。」

レイヴン自身も困惑したまま答える。

『ところで――』

スケィスの視線が、真っ直ぐチェンに向けられる。

 

『チェン、とか言ったな。なんでそんなに俺を狙ってる?』

 

「……。」

『どうせ俺だけじゃない。他の“碑文”も探してるんだろ?』

 

「……スケィス以外にも、碑文が存在するのか!?」

レイヴンの声に、明確な驚きが混じる。

『おいおい……。言ってただろ。“第一の碑文”だって。』

 

レイヴンが驚いた顔をすると、

スケィスは露骨に呆れた気配を漂わせた。

 

『まったく……。とにかくだ。』

 

『アンタらの“上”に、こう伝えとけ。』

 

一瞬、空気が張り詰める。

 

『――「舐めんな」ってな。』

その言葉を残し、

スケィスは再びレイヴンの体内へと吸い込まれていった。

 

「……入った……。」

テディスは思わず、そう呟く。

「……と、とにかく。」

沈黙を破るように、デュークがレイヴンの肩を軽く叩いた。

 

「ひとまず、任務自体は終了したと見ていいんじゃないか?」

 

「………デューク。」

低く名を呼んだのはテキサスだった。

 

「敵が撤退してる。しかも――同じ方向に。」

「なんか逃げ方が揃ってるよね〜?」

エクシアも頷く。

 

「……拠点がある可能性が高いな。」

チェンは即座に判断し、振り返って命じた。

「テディス。ホシグマに連絡を入れろ。」

「はい!」

 

通信を始めるテディスの背を見届け、

チェンはレイヴンへと視線を戻す。

 

「ドクター。君たちも同行しろ。」

「……いいのか?」

「この件、もはや無関係とは言えん。」

 

アーミヤが一歩前に出る。

「行きましょう、ドクター。」

「……おう。」

 

こうして、

レイヴンとロドス、そして龍門近衛局は同じ方向へと動き出した。

 

しばらく歩くと、オリジニウムの採掘場にやってきていた。

「おーい!こっちこっち〜!」

先行していたエクシアとテキサス達が手を振ってくる。

「敵も考えたな。オリジニウムの採掘工場なんて誰も近付かないからな。」

「よし、ドクター。敵を殲滅する。いいな?」

「いつでも。」

レイヴン達は準備をして警戒する。

するとエクシアが双眼鏡を見ながら驚く。

「んっ!?まずいよリーダー…見て見て。」

エクシアから双眼鏡を借りて指さされた場所を見つめる。

「……ロボットだな。」

レイヴンがそう言うと、アーミヤ達も覗き込む。

「コンバットフレーム・グラモスタイプ…しかもあんなにたくさん…」

「あんなロボット数体相手だと、こっちがやられるな。」

「…とにかくだ。アイツさえ壊せればいいんだろ?だったら都合がいい。ここで全機ぶっ壊してやろうぜ!」

レイヴンがそう言うとテディスとデュークが賛同した。

「乗ったぜレイヴン。」

「俺も行きます!」

「おいおいテディス。お前には近衛局…」

「大丈夫!後はアーミヤちゃんに任せるから、」

二人は乾いた笑いが出るが、気を取り直して三人で行動する事になった。

 

「……コンバットフレームの弱点は腕だ。武器系統は全部、あそこに集中している。」

デュークの声は冷静だった。

 

「足とかじゃないのか?」

レイヴンが岩陰から覗きながら返す。

「足を壊せば確かに止まる。だが、その間に撃たれる確率も上がる。それに――」

 

デュークはグラモスの脚部を一瞥する。

「グラモスは足が硬い。正面から壊すのは割に合わん。」

 

「じゃあ――」

テディスが剣を構え、目を輝かせる。

「さっさと腕を壊しちゃいましょう!」

 

「景気がいいな。」

デュークも剣を抜く。

三人は一瞬だけ視線を交わし、次の瞬間――同時に動いた。

 

だが、それを待っていたかのようにグラモスがこちらを向き、リボルバーカノンが唸りを上げる。

 

「来るぞ!」

次の瞬間、轟音と共に弾丸が叩き込まれた。

 

「くそっ、なんで即攻撃なんだよ!」

 

レイヴンは咄嗟に岩陰へ飛び込む。

しかし――

 

シュゥゥゥ……!

 

「ミサイル!?」

直後、誘導弾が岩に直撃。

爆発と共に、遮蔽物が粉々に吹き飛んだ。

 

「チッ……!」

砂塵の中、レイヴンは歯を食いしばる。

(隠れてても意味ねぇ……だったら――)

 

「一気に行く!」

レイヴンはリコイルロッドを強く握りしめた。

片方のロッドを地面に向け、チャージ。

 

反動と爆発的推進力で、レイヴンの身体が空中へと叩き上げられる。

 

「はっ――!」

宙を舞いながら、もう一方のロッドを構え、グラモスの頭部へと狙いを定める。

そしてレイヴンのロッドが、グラモスの頭部装甲を貫いた。

 

「入った!」

金属が悲鳴を上げ、

火花と警告音が爆発する。

 

だが――

 

「まだだ!」

頭部を破壊されても、グラモスは止まらない。

残った腕が、別の武装を展開しようとする。

 

「レイヴン!右腕だ!」

デュークの叫び。

 

「了解!」

着地と同時に、レイヴンは体勢を崩さず踏み込む。

 

しかし――

上空から落下してきた金属音の違和感に、レイヴンは咄嗟に反応した。

 

「――ッ!」

 

反射的に地面を蹴り、身体を横へ投げ出す。

次の瞬間、彼が立っていた地点で炸裂音が弾け、破片と砂塵が舞い上がった。

 

「上から!?」

 

テディスが叫び、視線を上へ向ける。

崩れかけた高台の縁。

そこに立っていたのは、仮面で顔を覆い、異様な圧を纏う男と、その背後に控える複数の構成員だった。

 

「……俺はスカルシュレッダー。」

 

低く、歪んだ声が響く。

「ロドスのゴミ……ここで死ねぇ!」

 

次の瞬間、スカルシュレッダーは躊躇なく高台から跳び降りた。

空中でグレネードランチャーの銃柄が変形し、内部に仕込まれた刃が鈍い金属音と共に展開する。

 

「チッ――!」

 

レイヴンはリコイルロッドを構え、迎撃に出る。

 

金属と金属がぶつかり合い、火花が散る。

だが、拮抗は一瞬だった。

 

背後から、グラモスの砲身が唸りを上げる。

 

「くそっ――!」

 

回避が間に合わない。

衝撃と共に、レイヴンの身体は宙を舞い、地面へと叩きつけられた。

 

〜レイヴン視点.

 

……視界が、揺れる。

地面の冷たさと、肺から無理矢理空気を吐き出される感覚。

全身が軋み、思うように指一本動かせない。

(……やべぇな。)

 

起き上がろうとするが…

その瞬間――

 

――重い足音。

 

グラモスが、ゆっくりと、確実に、俺を狙って照準を合わせていた。

 

(……マジかよ。)

 

視界の端で、

デュークとテディスが必死に敵を引き剥がそうとしているのが見える。

 

だが、数が多い。

余裕が無いのは、誰の目にも明らかだった。

 

「これで終わりだ。」

 

スカルシュレッダーの声。

 

見上げると、

奴はグレネードランチャーを俺に向け、躊躇なく引き金に指をかけていた。

 

(……このままじゃ――)

 

負ける。

 

そう、はっきり分かった。

 

(ちくしょう……こんな所で終わるのか……?)

 

脳裏に浮かぶのは、曖昧な記憶の空白と、取り戻せていない「自分」。

 

(まだ……何も思い出せてねぇってのに……)

 

歯を噛み締め、

拳で地面を叩く。

(ちくしょう……畜生……!!)

 

その瞬間――

耳鳴りのような音が、頭の奥で響いた。

『……力が欲しいか?』

 

(……ッ!?)

 

聞き覚えのある、低く不敵な声。

(スケィス…)

『俺の力を使えば――お前の大事な奴らを守れる。』

視界が、僅かに歪む。

『コイツらを倒せる力も、手に入るぜ?』

胸の奥が、熱を帯びていく。

 

だが――

 

『その代わり……その力で、後悔するかもしれねぇぜ?』

 

一瞬の躊躇。

 

だが、仲間が傷つく未来を思い浮かべた瞬間――

答えは、もう決まっていた。

 

俺は地面を強く握り締め、声を絞り出すように呟く。

 

「……頼む。」

呼吸が荒くなる。

「俺に……力をくれ……!」

顔を上げ、叫ぶ。

「その力……俺に寄越せッ!!」

 

――ドクン。

 

心臓が、異常なほど大きく脈打った。

 

次の瞬間……

身体の奥底から暴力的なまでの力が溢れ出す。

 

「な、何――!?」

スカルシュレッダーの声が、驚愕に歪む。

白く、眩い光がレイヴンの身体を包み込み、衝撃波となって解き放たれた。

「ぐぁッ――!!」

スカルシュレッダーの身体が吹き飛ばされ、周囲の瓦礫が宙を舞う。

 

「うわぁぁぁぁぁっ――――!!」

 

叫びと共に、地面が震え、空気が震撼する。

やがて、光が収まる。

 

……静寂。

 

俺は、ゆっくりと自分の腕を見つめた。

服装が変わっている事には、正直どうでもよかった。

 

それよりも――

(……なんだよ、これ。)

身体の内側から溢れる、圧倒的な力の感覚。

 

恐ろしいほど、馴染む。

「……へっ」

小さく、笑みが漏れる。

「さぁて……」

顔を上げ、敵を見据える。

 

「こっから――本番だ!」

 




名前が違うだけで実質昇格です。
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