アークナイツ リザレクション   作:サツキタロオ

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コロンビーナ!すり抜け!畜生!!!


Vol.2:悪性変異(後編)
STORY.28:任務の予兆


〜ウェントゥス視点.

 

任務も終わり、俺は自室の灯りを落としてベッドに横になった。

ロドスのこの区画は比較的静かで、機関音も遠い。落ち着いて眠れる場所だ。

 

……レイヴン達の区画は違うらしい。

両隣がうるさくて眠れない、と愚痴っていたのを思い出す。

まあ、あそこは人も多いし、仕方ないだろう。

 

天井を見つめながら、ゆっくりと息を吐く。

 

「……明日から、ロドスは本格的に任務を回し始める、か……」

 

独り言は、部屋の中で静かに消えた。

 

正式オペレーターになるためには、

成果を出すしかない。実力を示すしかない。

予備隊だから許されている甘さは、いずれ無くなる。

 

「……頑張るしかないな」

 

そう自分に言い聞かせ、目を閉じた――その時。

 

控えめなノック音。

 

「……?」

 

返事をするより早く、ドアが静かに開いた。

 

そこに立っていたのは、グラキエースだった。

パジャマ姿で、目元は少し赤い。

泣いた後なのは、すぐに分かった。

 

「ウェン……」

 

小さな声。

いつもの明るさはなく、子供のように不安そうだ。

 

「……また、怖い夢見ちゃった……」

 

少し間を置いて、彼女は続ける。

 

「一緒に……寝ても、いい?」

 

俺は一瞬だけ迷った。

だが、その表情を見て、答えは決まっていた。

 

「……分かったよ」

 

布団をめくり、空いたスペースを示す。

 

「ほら、来い」

 

グラキエース――ラキは、ほっとしたように小さく息を吐き、

そっとベッドに潜り込んできた。

 

「ありがと……」

 

体が触れると、微かに震えているのが分かる。

冷えているわけじゃない。

夢の残滓だ。

 

ラキは、ロドスに来てから、よく悪夢を見るようになった。

 

任務。

戦闘。

見知らぬ敵。

それらが、過去の記憶を呼び起こしているのだろう。

 

――詳しい話は、本人が話したがらない。

無理に聞くつもりもない。

 

俺にできるのは、

こうして隣にいることくらいだ。

 

「……ウェンは、あったかいな……」

 

ラキが、そう呟いて俺の服を少しだけ掴む。

 

「……そうか」

 

それ以上、何も言わなかった。

慰めの言葉も、励ましも、今は必要ない気がした。

 

………そうして、気付けば薄い光が部屋に差し込んでいた。

窓の外の色が夜とは違う。

どうやら、もう朝らしい。

 

「……もう朝か……」

小さく呟き、体を起こす。

隣を見ると、ラキはまだ寝息を立てていた。

安定した呼吸。悪夢にうなされている様子はない。

 

(ちゃんと眠れたみたいだな)

 

ベッドから抜け出し、ロッカーを開けて服を取り出す。

制服に袖を通しながら、頭を軽く振った。

まだ少し眠気が残っている。

「ん〜……」

背後で、小さな声。

振り返ると、ラキが目を擦りながら体を起こしていた。

 

「おはよ」

「おはよ〜……」

寝起き特有の間延びした声。

昨日の不安そうな表情は消えている。

「シャワー、浴びていい……?」

「ああ。早くしろよ」

そう言うと、ラキは素直に頷き、パジャマのままシャワー室へ向かっていった。

 

(……)

しばらくして、俺はラキの部屋へ行き、替えの服を一式持って戻ってくる。

 

「……ラキ。服、置いとくから来いよ」

返事は、シャワーの音に紛れて聞こえない。

だが、置いておけば分かるだろう。

シャワー室の横に服を置き、軽く伸びをしてからドアを閉める。

 

「……ふぁ……」

思わずあくびが漏れた。

任務明けの疲労が、まだ抜けきっていない。

 

(朝飯、食っとかないとな)

そう考えながら、俺は静かな廊下を歩いて食堂へ向かった。

 

食堂は、既に人で溢れていた。

まだ朝七時前後だというのに、ロドスは相変わらず朝が早い。

 

あちこちから食器の音と会話が飛び交っている。

 

「デュークー。一緒に食べようよー」

「いや、私と食べよう。いいだろ?」

「いやいや、デュークは僕と食べたいんだよね?」

 

「……あー!うるせーな!

ゆっくり食わせてくれよ!」

 

三方向から絡まれるデュークの叫びが、食堂に響いた。

その様子に、思わず苦笑する。

 

(朝から元気だな……)

 

俺はカウンターで注文を済ませる。

 

「カツ定食、キング盛りで」

 

受け取った番号札を手に、空いている席へ腰を下ろした。

 

「相変わらずよく食べるねー」

 

声をかけてきたのはグムだった。

トレイを持ったまま、呆れ半分、感心半分といった顔をしている。

 

「よく言われるよ」

 

それだけ返すと、グムは肩をすくめて笑った。

 

しばらくして運ばれてきた定食を、黙々と平らげる。

味を噛み締める余裕はない。

今日は、任務開始の日だ。

 

食事を完食すると、食器を返却し、すぐに司令室へ向かった。

 

司令室には、既に何人か集まっていた。

壁際のモニターが静かに光り、室内には独特の緊張感が漂っている。

 

「……あ」

扉が開き、ラキが少し息を切らせて入ってきた。

「遅れた?」

「ギリセーフ」

そう言うと、ラキはほっとした表情で俺の隣に並んだ。

間もなく、全員が揃ったのを確認して、ケルシー先生が前に出る。

 

視線が一斉に集まる。

「……では、任務の詳細を説明する」

その一言で、空気が切り替わった。

 

雑談は終わり。

ここからは、オペレーターとしての時間だ。

 

………………

〜三人称視点.

 

司令室に、ケルシーの声が静かに響いた。

 

「よし、全員揃ったな。本日から正式に任務が開始される」

 

その一言で、室内の空気が一変した。

ざわり、と小さなどよめきが広がる。

待っていた言葉だ。誰もが、それを理解している。

 

「いよいよって訳ね」

ウィシャデルが腕を組み、薄く笑みを浮かべる。

ケルシーは一度だけ頷き、視線を室内全体に巡らせた。

「前回、ドクターや行動予備隊A2の活躍により、エリア・ゼロの調査は想定以上に進展した」

モニターに、エリア・ゼロの簡易マップと調査済み区域が映し出される。

 

「この調子で進めば、全域調査も現実的な範囲に入るだろう」

その言葉に、数名のオペレーターが小さく息を呑んだ。

「じゃあ、今回はその調査チームを編成して、各区域を本格的に調べるということですか?」

アーミヤが一歩前に出て問いかける。

「その通りだ、アーミヤ」

ケルシーは即座に答えた。

「これより、調査チームを編成し、段階的にエリア・ゼロの調査を実施する」

 

室内が静まり返る。

「チームは四つに分ける。編成表は、各自の端末に送信した資料を確認してくれ」

ほぼ同時に、オペレーター達の端末が小さく振動した。

「作戦開始時刻は、午後一時」

一拍置き、ケルシーは言い切る。

「それまでに各自準備を整えろ。以上だ――解散」

 

その言葉を合図に、張り詰めていた空気が一気に動き出した。

椅子が引かれ、足音が重なり、ロドスは再び“任務モード”へと移行していく。

 

エリア・ゼロ。

未知と危険が眠る場所へ、再び踏み込む時が来た。

 

そうして、予定時刻。

 

ロドス内部の各区画で、調査チームがそれぞれ編成され、装備を整え始めていた。

エリア・ゼロ調査――それはもはや予備調査ではなく、本格的な踏み込みを意味する。

 

その中でも、ひときわ視線を集めていたのがAチームだった。

 

編成は以下の通り。

 

レイヴン。

ジェスター。

テディス。

ウェントゥス。

イグニス。

 

――火力、機動力、前線対応力。

どこをどう見ても“前に出る”ことを前提とした構成だった。

 

「……火力過多じゃないか?」

武器ラックの前で、レイヴンが苦笑交じりに言う。

 

「だよなぁ」

ジェスターも同意するように肩をすくめた。

「このメンツで調査って言われても、敵が出たら殲滅する未来しか見えないんだけど」

 

「そんなにかなぁ?」

テディスは首を傾げながら、自分の装備を確認している。

本人に自覚はないが、彼も十分すぎる戦力の一角だ。

 

「そうだって」

即座にウェントゥスが突っ込む。

「俺とイグニスはまだしも、レイヴンとジェスターが前に出たら、調査対象が残らない」

 

「それ、褒めてる?」

「半分はな」

そんなやり取りを横目に、最後に口を開いたのはイグニスだった

「任務でしょ?火力が多いのは悪いことじゃないし、さっさと行こうよ」

 

その言葉に、自然と全員の動きが揃う。

 

レイヴンはチェーンロッドを肩に掛け直し、

ジェスターは軽く手首を鳴らす。

テディスは装備の固定を確認し、

ウェントゥスとイグニスは視線を交わして頷いた。

 

「よし」

 

レイヴンが短く言う。

 

「Aチーム、エリア・ゼロ調査に出るぞ」

冗談交じりの空気は、いつの間にか消えていた。

五人の表情には、共通した緊張と覚悟が宿っている。

 

その頃――Bチーム。

 

編成は五名。

アーミヤ。

ウィシャデル。

チェン。

グラキエース。

フラム。

 

Aチームとは対照的に、指揮・支援・切り込みのバランスが意識された構成だった。

 

「ウィシャデルさんやチェンさんと同じチームになるの、久しぶりですね」

アーミヤが周囲を見渡しながら言う。

「アタシとチェンは独立部隊同士で、よく組んでたけどね」

ウィシャデルは肩をすくめ、少し懐かしそうに続ける。

「アーミヤを含めて、ってなると……確かにあんまり無かったか」

 

「ウチらは?」

グラキエースが即座に割って入る。

「あんまないよ、ラキ」

フラムがあっさり切り捨てた。

 

二人は揃ってチェンの方を見る。

今回のBチームのリーダーはチェンになった。

チェンは一歩前に出ると、短く咳払いをする。

 

「よし、みんな聞いてくれ」

声は落ち着いており、現場指揮官としての顔だった。

「私たちはBチーム。先行するAチームの行動を追従し、必要に応じて援護・増援を行う」

 

「つまり?」

ウィシャデルがにやりと口角を上げる。

「大好きな男達の援護をしろ、ってことね」

「………………」

一瞬の沈黙。

 

「……まあ、そんな……ところだな」

チェンは目を逸らし、小さく呟いた。

分かりやすいほどの照れを、誰も指摘しない。

「よーし!」

グラキエースが拳を握る。

「ウェンの援護、しっかり頑張るよ!」

 

「イグニスの手助けは、幼馴染であるこの私がやらないとね!」

フラムも即座に続く。

 

「え、えっと……」

アーミヤだけが、若干気まずそうな表情を浮かべる。

だが、空気は止まらない。

 

「……全員、準備はいいな」

チェンが端末を確認しながら言う。

「Bチーム、出るぞ。Aチームの後を追う」

 

そうして五人は歩き出した。

役割は違えど、目的は一つ。

 

――エリア・ゼロで、誰も欠けさせないこと。

 

Aチームの背中を追うBチームの足取りは、静かで、しかし確かだった。

 




アレス・バサラシードDLC、コロンビーナと茲白の確保。

やる事が…やる事が多すぎる!
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