アークナイツ リザレクション   作:サツキタロオ

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忙しくなくなったのでまた再開です。


STORY.33:爆撃機破壊作戦

その頃――

 

別区画では、すでに戦況は泥沼に陥りつつあった。

 

粉塵が舞い、崩れた外壁の残骸が道路を塞ぎ、あちこちで爆ぜる音が反響している。通信機は断続的にノイズを吐き、援護の要請もまともに通らない。

 

その中心で、ジェスターは片手に起爆装置を握りながら舌打ちした。

 

「不味いな。数が多い。」

視界の先には、装甲を纏った精鋭兵が波のように押し寄せてくる。統率の取れた動き。無駄のない連携。明らかに烏合の衆ではない。

 

「これじゃあジリ貧だぜ!」

テディスが叫びながら、突進してきた敵兵を横蹴りで吹き飛ばす。重装の兵士が数メートル転がるが、その隙を埋めるように次が踏み込んでくる。

 

口では劣勢を嘆きつつも、テディスの動きは鋭い。

ジェスターも同様だ。爆発物の扱いに一切の迷いはなく、敵の進路を的確に塞いでいる。

 

だが――数が違う。

包囲はじわじわと狭まり、弾薬も体力も確実に削られていく。

「ああもう!このままじゃアイツらよりアタシらがくたばっちゃうわよ!」

ウィシャデルが荒い息を吐きながら叫ぶ。額には汗が滲み、動きもわずかに鈍っている。

 

チェンも肩で息をしていた。

彼は敵の攻撃を受け流しながらも、周囲の状況を冷静に観察している。

「囲まれてる。突破は難しいな……」

銃声、金属音、爆ぜる衝撃。

塵と火花が舞う戦場は、もはや一種の地獄絵図だ。

「でも流石にキツくなったな……」

ジェスターは素早く視線を走らせる。そしてある一点で止めた。

 

通りの角に建つ高層ビル。すでに外壁は損傷し、柱の一部が露出している。

「よし、ウィシャデル!あそこのビルを狙え!」

「分かったわよ!……そらっ!」

ウィシャデルが敵の射線を一瞬だけ押し下げる。その隙に、ジェスターは爆弾を全力で投擲した。

回転しながら飛んだそれは、露出した柱に正確に命中する。

 

――一拍。

次の瞬間、爆音が空間を引き裂いた。

轟音と共に、柱が内側から砕け散る。構造の均衡を失ったビルは、ゆっくりと、しかし確実に傾き始めた。

「やべ!」

テディスが叫ぶ。

敵兵も一斉に混乱する。

 

「伏せろ!」

チェンの怒号が響いた。

 

四人は即座に近くの簡易塹壕へと飛び込む。

直後、地面を震わせる衝撃が襲った。

 

ドォォォォン――!!

 

ビルが完全に崩落する。

鉄骨が悲鳴を上げ、コンクリートが砕け、粉塵が津波のように押し寄せる。視界が完全に白く染まる。

塹壕の中で、衝撃波が身体を叩きつける。

耳鳴りが止まらない。肺に入り込む粉塵。視界はゼロに近い。

 

数秒か、十数秒か。

やがて、轟音が遠ざかり、振動が収まっていく。

 

静寂。

崩落音の余韻だけが、遠くで軋んでいる。

チェンが慎重に顔を上げる。

粉塵の向こうに広がる光景は、先ほどまでとは一変していた。

 

道路は瓦礫で埋まり、ビルは完全に横倒しになっている。

その下敷きとなった敵部隊の姿は、ほとんど見当たらない。

 

かろうじて動いている者もいるが、戦闘を継続できる状態ではない。

 

「……やったな。」

テディスが呟く。

 

「精鋭兵の殆どは巻き込めたはずだ。」

ジェスターは塹壕から這い出し、周囲を確認する。

 

だが、彼の表情は晴れない。

「これで終わりなら楽なんだがな。」

遠くで、別の爆発音が響く。

そして――空気が揺れた。

 

地面の下から、何かが脈打つような振動。

チェンの目が細くなる。

「まだ来るぞ!」

瓦礫の向こう側。

煙の中から、ゆっくりと立ち上がる影があった。

 

「だが、敵が多過ぎる。ここは退散だ!」

ジェスターの即断に、誰も異論はなかった。

四人は瓦礫地帯を抜け、路地を伝い、追跡を振り切る。

やがて辿り着いたのは――

 

半壊した門扉が立つ、広大な敷地。

「ここは……?」

 

ウィシャデルが見上げる。

崩れた校舎、弾痕だらけの壁。

だが、建築様式にはどこか品格が残っている。

 

「……ヴィクトリア王立前衛学校だ。」

チェンが静かに答えた。

 

「偏差値は94。軍学、戦術理論、兵站、サバイバル技能……前衛指揮官を育成するための学校だ。」

「やけに詳しいわね。」

一瞬の沈黙。

 

「……私の母校だからな。」

短い言葉だったが、そこには複雑な感情が滲んでいた。

 

かつて未来を学んだ場所。

今は戦火に晒された廃墟。

 

チェンは迷いなく進み、やがてとある場所へ辿り着く。

「……よし、ここだ。」

隅に設けられた、頑丈な鉄扉。

非常用保管庫だ。

 

チェンは転がっていたバールを拾い、

隙間に差し込んで力を込める。

「……くっ……硬い……!」

長年放置され、歪んだ扉はびくともしない。

「ここは任せろ。」

ジェスターが前に出る。

 

一歩下がり――

タックル一発。

 

蝶番ごと扉が吹き飛び、内側へ倒れ込む。

「す、凄いな……」

チェンが呆然と呟く。

ジェスターは肩を押さえながら言った。

「……でも痛い。」

 

中には棚が並び、そこには大量の段ボール箱が積まれていた。

 

保存食。

医療キット。

簡易フィルター。

携帯発電機。

 

チェンは静かに頷く。

「……全部は持っていかれてなかったようだな。」

 

「なんだこれ?」

テディスが箱を持ち上げる。

「備蓄用品だ。緊急時用の兵站物資。」

チェンは周囲を見渡す。

 

「こういう時に、必要だろう?」

その言葉は、かつてこの学校で叩き込まれた教義そのものだった。

 

――戦いは力だけで勝つものではない。

――勝敗を分けるのは、準備と持久力。

 

ウィシャデルが苦笑する。

荒廃した学園の中で、四人は束の間の補給と休息を得る。

「……よし、みんな。そろそろレイヴン達と合流だ!」

ジェスターが箱を閉めながら宣言する。

「何処にいるのか分かるの?通信機、調子悪いわよ?」

ウィシャデルが機器を叩く。ノイズしか返らない。

「問題ない。アイツにはGPS付いてるから分かるんだ。こっちだ!」

「なんでドクターにだけ追跡装置付いてんのよ!」

「前科が多いからだ!」

ジェスターは即答し、そのまま全力疾走。

「待て!説明が雑だ!」

チェン達も慌てて追いかける。

 

やがて辿り着いたのは川辺。

静かな水面。

平和そうな風景。

 

そして――

「海老うめー!」

 

川の中からレイヴンが飛び出す。両手には大量のスジエビ。

「ド、ドクター!?」

アーミヤが岸辺で慌てている。

「アーミヤ!」

「チェンさん!それに皆さんも!」

チェンは川を覗き込む。

「……ドクターは何をしているんだ?」

アーミヤが小声で説明する。

「お腹が減って川に潜ってスジエビをひたすら捕まえて食べてるんです……」

 

「こんな時にか……」

ジェスターは腕を組む。

 

「……なるほど。だからGPSが必要なんだ。」

テディスが真顔で頷く。

「行動が読めねぇ。」

レイヴンがひょこっと顔を出す。

「アーミヤ達は腹減ってないのか?」

「まあちょっと空いてますけど……」

 

川辺に、束の間の静けさが戻っていた。

 

ジェスターは無言のまま、抱えてきた段ボール箱を地面に下ろす。濡れた砂利の上に置かれたそれは、戦場には似つかわしくないほど無機質で、ただの備蓄食品に過ぎないはずだった。

「備蓄食品持ってきたから食っとけ。」

淡々とした声だったが、その中には確かな配慮があった。

アーミヤは両手で箱を受け取り、小さく頭を下げる。

 

「ありがとうございます。」

川から上がったレイヴンの服から水が滴り落ちる。先ほどまで野生じみた姿で川底を漁っていた人物とは思えないほど、その表情はすでに戦闘態勢へと切り替わっていた。

 

その瞬間、沈黙していた通信機が低く震えた。

ノイズが走り、やがて回線が安定する。

「各員に告げる。この近くに爆弾を積んだ輸送機の存在を確認した。急いで破壊……又は無力化をして欲しい。」

空気が一変した。

つい先ほどまで漂っていた緩さは消え、全員の視線が一点に収束する。

レイヴンは濡れた髪をかき上げ、短く言い放った。

「丁度いいじゃねぇか。行くぞ!」

説明も確認もない。

それでも誰も止めない。

 

彼らは走り出した。

情報はアーミヤの端末に次々と流れ込む。

「情報によると、どうやら近くの廃工場に確認されています!」

「ここからだと近いな……急ぐぞ!」

廃墟群の間を縫うように駆け抜ける。崩れた壁、散乱する鉄骨、焦げ跡。かつて産業の心臓部だったであろう区域は、今や戦争の残骸でしかない。

やがて視界に入ったのは、半壊した巨大な工場施設だった。屋根は崩れ、壁面は剥がれ落ち、内部の骨組みがむき出しになっている。

その中央。

異様な存在が佇んでいた。

 

鋼鉄の装甲に包まれた大型フォルスロイド。

その背部には、不釣り合いなほど巨大な爆弾が固定されている。

 

導火系統はすでに起動状態。起爆装置のランプが不気味に明滅している。

 

「むっ!何奴!?」

低く、重い声が工場内に響いた。

フォルスロイドがゆっくりと振り返る。

レイヴンの目が鋭く細められる。

「あいつは……トータス・ゲンブレム!」

厚い装甲は亀の甲羅のように重なり合い、全身が要塞じみている。防御特化型。それでいて背負っているのは大量の爆薬。

 

ゲンブレムは胸を張り、誇示するように宣言した。

「今からこの爆弾をロドスにそのままぶつけるのであります!」

 

空気が凍る。

 

「何だと……」

レイヴンの声が震えた。

もしあの規模の爆弾が直撃すれば、被害は甚大では済まない。

 

ゲンブレムは続ける。

「そして、これで邪魔をする者は居ないのであります!」

その言葉は確信に満ちていた。

周囲を見渡せば、確かにこの区域には他の部隊の気配はない。孤立。支援なし。

爆弾のカウントダウン表示が、無情にも時を刻み始めていた。

レイヴンは一歩前に出る。

 

濡れた衣服がまだ重いはずなのに、その歩みは揺るがない。

 

「……残念だな。」

低く、静かな声。

「邪魔をする者なら、ここにいる。」

 

風が吹き抜ける。

崩れた鉄板が軋み、砂塵が舞い上がる。

爆弾を背負った要塞と、疲労を抱えた少数部隊。

数も、装備も、時間も足りない。

 

それでも。

止めなければならない。

 

廃工場の空気が震えた。

 

「でやぁ!」

 

叫びと共に、レイヴンが地面を蹴る。

握られたリコイルロッドが鈍い軌跡を描き、鋼鉄の巨体へ叩きつけられる――はずだった。

 

しかし。

 

ゲンブレムの巨大な前腕が滑るように動く。

打撃は甲殻状の装甲に触れた瞬間、力の向きを逸らされ、空を切った。

 

「無駄無駄ァ!」

低重音の嘲笑と同時に、逆側の腕が振り抜かれる。

 

衝撃。

 

レイヴンは間一髪で身をひねるが、衝撃波だけで数歩後退を余儀なくされた。床のコンクリートが亀裂を走らせる。

間髪入れず、アーミヤが前へ出る。

 

「なら、これで!」

空間が淡く歪み、圧縮されたアーツが一直線に奔る。光の奔流がゲンブレムを包み込む――

 

だが。

ゲンブレムはわずかに体勢を傾け、装甲の縁でそれを“流した”。

 

直撃したはずのエネルギーが逸れ、背後の鉄柱を貫いて爆ぜる。

「コイツ、どんな攻撃も受け流すみたいね。」

 

冷静な分析が飛ぶ。

真正面からの攻撃は、すべて“角度”で処理されている。力を殺すのではない。逸らしている。まるで熟練の武術家のように。

「だが、弱点はある筈だ! テディス!」

「はい!」

チェンが抜刀する。

鋭い踏み込み。床を蹴る音が乾いた銃声のように響く。

 

銀閃が走る。

だが、その斬撃もまた受け流された。刀身は滑り、火花だけを散らして逸れる。

 

「そこだ!」

直後。

テディスが後方から剣を構える。

刃の中心部に埋め込まれた発振器が光り、次の瞬間、収束ビームが放たれた。

 

光線は受け流し動作を終えた直後のゲンブレムの胴体へ直撃する。

装甲の一部が焦げ、巨体がわずかに後退る。

 

「……そうか。」

レイヴンの目が細められる。

「受け流した後は無防備という訳か。」

ゲンブレムの機構は、防御に特化している。だが完全ではない。

力を逸らす動作の直後、姿勢制御が一瞬だけ遅れる。その刹那こそが隙。

 

「レイヴン! ここは一気に行くぞ!」

ジェスターが並び立つ。

互いに視線を交わす必要はなかった。

「あいよ。」

 

二人は武器を軽く打ち合わせる。

金属が鳴り、短い火花が散る。それは合図だった。

 

次の瞬間、同時に地を蹴る。

左右からの挟撃。

レイヴンのロッドが高所を狙い、ジェスターの一撃が低部を抉る。

ゲンブレムは反射的に上方を受け流す。装甲が滑り、衝撃が逸れる。

 

だが。

下方からの一撃が、逸らし動作の終端へ重なる衝突音。

装甲が軋む。

ゲンブレムの体勢が崩れた。

 

廃工場の空気が、さらに重く沈んだ。

 

「くっ……ここまでやるとは……!」

 

装甲の隙間から火花を散らしながら、ゲンブレムが低く唸る。

その声には、これまでの余裕はなかった。

 

やがて、巨大な腕がゆっくりと胸部の装甲を開く。

複雑な回路と黒く脈動する結晶体が組み込まれた装置。

「ならば、ここで八つ裂きにするまでッ!」

ゲンブレムはそれを握り込み、胸部へと接続する。

 

直後、異様な波動が空間を震わせた。

 

「な、なんだ!?」

低周波のような唸りが耳鳴りを起こす。

空気が歪み、床の鉄片が震え始める。

「ダークユニット……素晴らしい!」

装甲の隙間から、紫黒の光が漏れ出す。

 

「これならば、貴様らは抹殺できるであります!」

ゲンブレムは四肢を引き込み、甲羅の中へと完全に籠る。

重装甲の巨体が、竜巻のように回転しながら一直線に突撃してきた。

「来るぞ!」

レイヴンとジェスターが左右に分かれて迎撃の構えを取る。

 

しかし速度が違う。

防御形態のまま推進力を得た突撃は、もはや質量兵器だった。

回避が一瞬遅れる。

 

轟音。

 

二人は同時に弾き飛ばされ、コンクリート壁へ叩きつけられる。

「ドクター!」

「ジェスター!」

 

アーミヤとウィシャデルの叫びが響く。

瓦礫の中で、レイヴンがゆっくりと起き上がる。

ジェスターもまた、血を拭いながら立ち上がる。

 

「……レイヴン。」

ジェスターの声は低く、しかし揺らがない。

「ここまで来たら、負けられないぞ。」

「分かってるよ……」

レイヴンは息を吐く。

「上等だぜ。」

二人は視線を交わす。

言葉は要らなかった。

戦場で何度も背中を預けてきた者同士の、無言の了解。

 

その瞬間。

二人の間に、淡い光が生まれる。

最初は小さく。

 

だが次第に強く、密度を増し、渦を巻くように二人を包み込んでいく。

「この光は……!」

アーミヤが息を呑む。

次の瞬間、光が弾ける。

その中心から、ひとつの影が飛び出した。

 

「――ソウルユニゾン……ジェスターソウル!」

 

姿はレイヴン。

だがその装備は変質していた。

黒と蒼を基調とした軽量の服。腰部には高速機動用の推進翼。両腕に持っているのは鋭利な双剣。

ジェスターの戦闘特性が、完全に融合している。

「ソウルユニゾン!? なんでありますかそれは!」

ゲンブレムの回転が止まり、再び突撃体勢へ入る。

「そのような力を使おうとも、貴官の前では無力であります!」

再度の高速突進。

しかし、レイヴンはわずかに身を傾けただけで、その軌道を外す。

重装甲がすぐ横を掠め、衝撃波だけが通り過ぎる。

 

「……!」

レイヴン自身が、驚きを覚えていた。

「身体が軽い!」

地面を蹴った感触が違う。

反応速度が段違いだ。

 

ジェスターの精密な間合い管理、加速感覚、瞬間判断。

それらが、自分の思考と完全に同期している。

再びゲンブレムが旋回する。

だが今度は違う。

 

その動きが――遅く見える。

レイヴンは低く構える。

「さあ、要塞野郎!」

瞳に宿るのは、確信。

「その甲羅こじ開けてやる!」

 

崩れかけた工場の床を蹴り、レイヴンは一瞬で間合いを詰めた。

 

「神速撃!」

視界がぶれるほどの速度で、連続の蹴りが叩き込まれる。

脚部装甲へ、側面へ、関節部へ――正確無比な多段打撃。

 

衝撃は確かに伝わる。

だが、重装甲に包まれたゲンブレムは大きくは揺らがない。

「……効いてはいるが、決定打じゃねぇか。」

装甲の亀裂は浅い。内部機構には届いていない。

レイヴンは即座に判断を切り替える。

 

「なら……!」

剣を抜き放つ。

刀身にエネルギーが集束し、蒼い光が渦を巻く。

 

ジェスターソウルの特性――

加速、瞬発、そして一点突破の爆発力。

レイヴンは一気に跳躍する。

天井近くまで跳び上がり、空中で身体を捻る。

 

「トルネードスラッシュ!!」

 

振り下ろされた剣から、巨大な竜巻が解き放たれた。

圧縮された回転エネルギーがゲンブレムを包み込み、装甲を削りながら強引に持ち上げる。

「テ、テレシス様ッ!」

制御を失った巨体が、背後へと吹き飛ぶ。

 

その先にあったのは――

爆弾を積載した輸送機。

 

衝突。

次の瞬間、閃光。

爆炎が工場を呑み込み、衝撃波が外壁を吹き飛ばす。

轟音の中、ゲンブレムの姿は爆炎に呑まれ、跡形もなく消えた。

爆弾ごと、完全に。

やがて爆煙がゆっくりと晴れていく。

 

レイヴンは振り返らない。

静かにコートを翻し、歩き出す。

 

その背に、戦いの終わりを刻む風が吹く。

 

そして――

身体を包んでいた光が解ける。

ジェスターソウルが解除され、光の中からジェスターが姿を現した。

「やったな。」

「ありがとな、ジェスター。」

レイヴンは素直に言う。

ジェスターは軽く肩を回す。

 

「気にするな。……しかしソウルユニゾンか。」

少しだけ苦笑する。

「なんだか、不思議な感じだったぜ。自分で動いてるのに、自分じゃないみたいでな。」

「でも、悪くなかっただろ?」

「ああ。」

短く、だが力強い肯定。

レイヴンは改めて向き直る。

「ジェスター。お前のソウルユニゾン、しっかり使わせてもらうぜ。」

「ああ!」

二人は硬い握手を交わす。

そこに割り込むように、通信機が鳴った。

 

『みんな、一旦ロドスに戻ってきてくれ。改めて補給などを済ませて欲しい。』

冷静で落ち着いた声。

ケルシーからの連絡だった。

 

爆炎の残り火を背に、全員が頷く。

 

戦いは一区切りついた。

だが、これは終わりではない。

彼らは急ぎ足で廃工場を離れ、次なる戦いに備えるためにロドス本艦へと帰還した。




ソウルユニゾンが出たから本格的にロックマンみたいになってきたな。
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