ソードアート・オンライン ~Done Dope Dreamer~ 作:逸喪 非渡理
今話ではオリキャラが全体に渡って登場します。とはいえ、SAOの世界には何ら関与しない予定でして、主人公の生きた現実世界がどんなものだったのかを描写するための措置となります。基本的にはずっとオリキャラは主人公のみのつもりです。タグと異なる内容となりましたので、予め注釈を入れさせていただきました。
追記:作中登場人物の名称が一部「谷垣」と表記されておりました。正しくは「軽部」になります。混乱させてしまった方々、申し訳ございませんでした。
―2022年 11月1日 火曜日
いつまで居座るつもりかと問い詰めたくなる夏の暑さがようやく過ぎ去った。
そう遠くないうちに、同様の問いを投げかけたくなるであろう長い冬を目前に、小さな秋がやって来る。近頃の地球は二季化とやらの進行が目覚ましいそうだ。
いつも世界は自分の与り知らぬところで刻々と変化する。
風が変わったな、と更科総司は木材を運びながら考えた。先月までは、呼吸をすることも億劫になるような熱風が、朝から夕方頃まで吹き続け、業務妨害甚だしかったのだが、ここ最近は、流れる風も随分と柔らかくなり、幾らか仕事がしやすくなった。
今度は冷えた汗で風邪をひかないようにしなければ、ようやく冷房要らずになったと思えば今度は暖房で電気代が嵩むな、一回エアコンのフィルターを掃除しておこうか……などと泡の様に湧いてくる悩みを、次から次に頭へ浮かべながらも、手は止めずに黙々と仕事をしていると、少し離れたところから声がかかった。
「総司ぃ、お前もうあがれ!」
木材を抱えたまま立ち止まり、声の方に視線を向ける。ずんずんと足音が聞こえてきそうな蟹股歩きと共に、声の主は総司のもとに寄ってきた。
「総司、18時だ!あがっていいぞ!!」と、眼前の人間に出す声量じゃないだろ、という胴間声で、再び声がかかる。総司は困惑気味に声を返した。
「棟梁……?あがっていいって、どういうことです?」
声の主は総司の働く工事現場の大工職のまとめ役、所謂棟梁だった。名は
しかし解せなかった。工事現場の作業終了時刻は通常19時。あと1時間ある。こんなことを言われたのは初めてだし、何か粗相をしたからと、早くに帰される覚えもない。棟梁から怒気のようなものも感じられなかった。
総司の言葉を受け、棟梁はふん、とでかい鼻息を一つ飛ばしてから口を開いた。
「働きすぎなんだ、お前」
棟梁の言うところによれば、週当たりの総司の労働時間が、結構な頻度で40時間を超過しているらしい。確かにこれは労働基準法に違反する。しかしこれまで作業現場は男の縦社会らしく、下っ端の総司は誰よりも早く来て、いつも一番最後まで残って働くのが当たり前であったし、総司自身もそういうものだと気にしたことはなかった。それが何故今回に限って、という総司の疑問は続く棟梁からの言葉で氷解する。
「最近労基が目を光らせてやがる。大人はいくらでも誤魔化しがきくが、未成年のお前が法を破ってまで働いてるとなれば色々不味いんだよ」
総司からすれば未成年だろうと成人していようと違法行為であることに変わりはないのでは、という気がするがそういう問題でもないらしい。外聞が悪いとかなんとか。社会というものは、不文律というのか、暗黙の了解というのか、『そういうもの』とされることが多くて厄介だ。
「ま、そんなわけだ。偶にはゆっくり休みな。お疲れさん」
と、血管の浮いた分厚く大きい手がバシバシ乱暴に肩を叩く。総司としてはこれ以上言われて無理に残る理由もないため、
「……ウス。お疲れ様でした。また明日よろしくお願いします」
と途中にしていた資材を運び終えて、他の作業員に挨拶を済ませて帰宅の準備をするのだった。
・・・・・・
「じゃあ、お先です」
彼は大工全員に挨拶をしてから、最後にぺこりと頭を下げて現場を後にした。
更科総司という人間は愛想があまり良い方ではない。笑顔を見せない、周りの空気に合わせない、全体の盛り上がりに乗らない、といった具合にだ。社会に出れば苦労すること請け合いのタイプなのは間違いないが、彼を見送る職人たちの眼差しは暖かい。
背中を向けている彼に届くことはないが、微笑ましく見守りながらひらひらと手を振っていると尻に衝撃が走り、思わず飛び上がる。
「痛って!!棟梁!?」
「
見れば先程彼を送り出した棟梁が後ろに立っていた。帰宅する彼をぼーっと眺めていたのをしっかりと見られ、蹴りを頂戴したらしい。
確かに悪かったけどさあ、先輩達だって作業してなかったじゃんかよ、とふと現場を見回せば、ほんの数秒前まで彼を見送っていた先輩方は、いつの間にか各々の作業に戻っていた。切り替えの早さというか、保身の巧みさにある種尊敬すら抱いてしまう。
この令和の世において、体罰など漏れなくパワハラ案件だが、その手の理屈が通用しないのが体育会系、男性社会、縦組織、時代錯誤の四拍子揃えた空間というものである。
内心の不満を押し殺し、「ウス!すんません!」と頭を下げて持ち場に戻ろうとする。
駆け出した軽部を棟梁が呼び止める。
「待て、軽部。お前そっちはいいからこっち来て俺の作業手伝って覚えろや。歳は上でもお前、総司より経験は短いんだからな」
というが早いか、返事を待たずにのっしのっしと歩き出したので、軽部は慌てて気の短い上司に追従する。ついて行った先で、棟梁の指示のもと作業を再開する。時折怒鳴られながらも資材を加工し、それぞれの用途に合わせた形にしていく。慣れない作業を丁寧に行ううちに、終業時刻は瞬く間にやってきた。
11月ともなれば、屋外は早々と夜空に包まれる。昼間よりも一層下がった気温に身を縮めながら身支度をして、さあ帰ろうというところで声がかかる。
「おう、頑張ったな。最近のにしちゃ根性あるぞお前」
振り返れば棟梁だった。手には缶コーヒーが2本握られており、うち一つを差し出してくる。こういうとこあるからこの人嫌いになれないんだよな、と思いながら礼を言って有難く頂戴する。
何とはなしに、棟梁と話ながら帰途に就くこととなった。
気温の話、不景気の話、メジャーリーグの話し云々、益体もない話題をつらつら並べて話しているうちに、そういえば、と気になっていたことを口にする。
「そういや棟梁、前から気になってたんスけど」
「ん?なんだ」
首は動かさず、ぎょろりとした眼がこちらを捉え、話の続きを促してくる。
「いやあ、さっき仕事してた時の話ですけど……。棟梁が総司君のこと、俺より経験長いって話してたじゃないスか。彼、今16歳でしょ?俺が入った時にはすでに働いてましたけど……この仕事、いつからやってるんスか?絶対本来働いちゃいけない年齢からっスよね」
軽部は初めて彼と会った日のことを振り返る。
・・・・・・
軽部は今年で二十三になる。四年間通った意味も、得た学びも特に無かった大学をどうにかして卒業したものの、これまでの生き方相応に、就職活動は全滅だった。親からは見限られ、家を出ること、就職して自立することを要求された。
どんな仕事でもいいから何かないか、と昨年冬にコンビニで求人雑誌を立ち読みしていると、大工仕事の募集があった。学生時代は野球部に所属し、体を鍛えていたこともあって肉体労働に抵抗はなく、そこそこ給料も良かったため、即電話をした。すると、一度の電話のやり取りで早々に採用が決まった。向こうも人手不足だったらしい。
今年春、就業初日、現場で棟梁から全体に向けて紹介された後、現場を回り業務内容の説明を聞きながら、下っ端としてその場にいた大工一人ひとりに挨拶回りをする。その中で、最後に挨拶をすることになったのが彼だった。
「更科総司です。今年で十六になります。一番下っ端なんで、気遣わなくて、大丈夫です」
初出勤の日、最後に挨拶した同僚が彼だった。
第一印象は「怖い」、次いで出てきた感想は「モデルかよ」、最後に「今16って言った?26じゃなくて?」というものだった。
此方に視線を向けるその二重眼は鋭く切れ長で、彼の無機質な視線を向けられてからは、自然と背筋が伸びていた。瞳の色は光の当たり方次第で灰色に見える、薄墨色をしていた。
目の下を通る鼻筋は、面相筆で一息に書いたような揺らぎのない正確さを内包する。形の良い
一文字に結ばれた、薄い唇からは厳格さや、確固たる意志の強さ、穿った見方をすれば、ある種の酷薄さを感じる。
髪はバックと下段サイドを刈り上げた状態で、肩近くまで伸ばした前髪を後ろに持っていき、うなじの辺りで縛っている。マンバンヘア、というのだろうか。髪色は瞳と同じく、薄い黒をしており、日差しの照り付ける屋外では角度によって透けて見えるようだった。
身長は180cm近くあると思われ、170cm少々の軽部は見降ろされることとなり、途方もない威圧感を感じる。
体型はどちらかといえば細身であるものの、全身には満遍なく筋肉がついており、盛り上がった胸筋は、彼の着る灰色のシャツの上からでも、くっきりと浮かんで見えた。
周囲がつい姿勢を正したくなるような、独特な空気感を纏った彼は、その少々現実離れしたルックスとスタイルも相俟って芸能人の様に見えた。
これまでの人生、20年生きていれば「怖い人」にも「かっこいい人」にも相応に出会ってきた。しかしながら、有無を言わせない迫力、恐怖と魅力両方を放つ、所謂「カリスマ性」というものを備えた人間を、直に見るのは初めてだった。
その後はこちらが6つ年上でありながら、動揺と緊張で碌に返事もできないという失態を犯し、取り繕うべく口を開こうか、というところで再び棟梁に引き摺られていったため、満足に会話できなかった。
彼は職人達の中でも一番年下で、雑用回りが業務の中心、時々先輩のサポートをする、という立場であったが、現場仕事の経験は非常に長いとのことで年上大工よりもキャリアだけなら上、ということも儘あるのだった。
少々特徴的な立ち位置の彼の振る舞いは常にフラットで、経験、年齢の有無を問わず何者に対しても驕らず、遜ることもなく、然してその在り方には敬意や誠意が不思議と感じられた。
それ故か、同僚達から向けられる、彼への信頼は非常に厚く、職場において、棟梁や社員といった業務や序列の枠から外れた場所である種の中心的な人物、と言えた。
軽部自身、彼には何度か助けられた。
働き始めの頃は大学の出が珍しいと、先輩職人達からは一定の距離を取られていた。
近年その風向きは変化しつつあるが、軽部が入社した会社の大工達は昔気質な、昭和、平成初期の気風を背負った者達ばかりだったのである。
軽部達が生活し、仕事を主に受ける地域一帯は、日本有数の治安の悪い場所だった。そのため暴力沙汰で退学になった最終学歴中卒の元ヤン、素行不良で契約を切られた元格闘家、中には逮捕歴がある者まで在籍していた。
そういった集団の中にあって、軽部は大学卒業という肩書持ち。軽部個人は碌な学びを得ていないが、彼らにとって大学は大学。自分達に縁のない世界の話であり、仕事は身体で覚える、が信条の彼らにとって軽部はまさしく「インテリ野郎」として映ったのである。そんな自分と彼らの間をそれとなく取り持ってくれたのが更科総司だった。
下っ端同士、共同で作業をすることがあれば偶に、ぽつりぽつりとではあるが話しかけてくれた。軽部の方から話を振っても邪険にせず対応してくれたのも、初めのうちは彼だけだった。
休憩時間、全員同じ場所で飯を食べる中、孤独感を感じながら一人所在無げに弁当を食べていたのが、彼が話を振ってくれたおかげで会話の輪に入ることが出来た。食事を共にするようになってからは、少しずつだが彼抜きでも会話をしてくれるようになり、2,3か月後には軽部は彼らの『仲間』として認めてもらえるようになった。閉鎖的なコミュニティともいえる空間で、ここまで受け容れてもらえるようになったのは、紛れもなく更科総司、彼のおかげだと思っている。
軽部に限らず、他の職人も似たり寄ったりで、彼についての話題となれば、話のオチは大概『世話になった』と『助けられた』のどちらかであった。
・・・・・・
そんなわけで、軽部は彼に随分と救われた身であるため、何か恩返しをしたい、力になれることはないかと考えてみるのだが、更科総司という人間は自身のことを全く語らないため、彼が求めていることがよく分からない。殆ど、ではなく全くである。
知らないのなら、向こうから語ってこないのなら、こちらから聞けばいいという話ではあるのだが、軽部から見た彼は、周囲との距離感を、常にある一定のラインで保とうとしているように、見えるのだ。彼は誰に対しても分け隔てなく、親しみを持って接する。だが決してもう一歩踏み込んだ場所に近づくことを許しはしない、そんな距離感を誰に対しても作っているように映るのは軽部の錯覚だろうか。
そこで、折角の機会だと、昔からの彼を知るという棟梁から話を聞いてみようと思ったのだ。
棟梁……熊山は星の見えない濁った夜空を見上げ、ややしばらく黙ってから口を開いた。
「アイツと俺が知り合ったのは、10年前だ。アイツが六歳の頃だった。働いてる俺に向こうから話しかけてきてな、『ここで働かせてくれ』ってよ。当時はまあ……さすがに驚いたな」
棟梁の驚きを10年越しに軽部も食らう。驚いて当然だ。バイト可能な年齢がどうという話ではない。六歳。幼稚園児ではないか。軽部は精々十三、四の頃からだと予想を立てていた。それでも違法は違法ではあるのだが。
驚愕をそのまま棟梁にぶつける。
「ろ、六歳って……!まさかそれで働かせたんスか!?」
「アホか!十にもならねえチビに何かさせるわけがあるか!怒鳴って追い返そうとしてやったわ。でもな、アイツが言うんだ。
『俺にはもう何も無い。親が先週死んだ。家も焼けた。頼れる身内なんていない。遺産も金もない。こんな街の警察や役所は信じない。学校に通ってる暇なんてない。どんなことでもやる。住む場所はいらない。路地で寝る。服もいらない。これを着続ける。だから、毎日の飯を手に入れる為の金が欲しい。働かせてください』ってな。一言一句忘れねえ。そう言ってアイツは頭を下げてきた。……これが六歳のガキの言う事だぜ?」
軽部は最早開いた口が塞がらなかった。いつしか歩く足を止め、完全に話を聞く姿勢になっていた。当人のいないところでする話ではないと分かってはいたものの、一度知ってしまった以上最後まで聞き終えたかった。
「そ、それで……どうしたんスか?」
軽部に合わせて足を止めた熊山は、少し考え込んでから道を折れて、飲み屋街へと足を運んだ。軽部も後をついて行く。
こじんまりとした居酒屋に入り、向かい合わせに座る。
客席は少なく、常連客のみで成立しているような店だ。仕切りのある半個室があること、酒も料理もそこそこの値段であること、長時間居座っても何も言われないことから、軽部の同僚達も愛用している。
店内ではぎりぎり聞こえるかという音量でテレビが点けられ、バラエティ番組が流れている。
「最後まで喋るとなると長い話になる。ここで喋ろうや。酒は明日も仕事だから一杯までにしろよ。……総司のいねえところでべらべら話すのもまあ気が引けるが、お前がアイツと一番年が近い。アイツの過去を知ったうえで気にかけてやってくれたらと思ってな。……どこまで話したか?」
「どこまでも何も、棟梁の前に現れた六歳の総司君が『何もないから働かせてくれ』って言ったところで、多分序盤も序盤っス。それからどうしたんスか?」
熊山は頭をガシガシと掻いてああそうだった、と呟いてからジョッキのビールを飲み干す。ジョッキをテーブルに置くと、よく響く声で「生おかわり!!」と叫ぶとあいよー、と返事があった。
一杯までじゃなかったのかよと内心ツッコミを入れるうちに、棟梁が語り始めた。
・・・・・・
「……それからはずっと俺の下で……熊山組の一員として働いてるよ。随分と遠回りになっちまったが……お前の最初の質問『いつからうちで働いているのか』の答えは6年前から、ってことになるな。今年で6年目だ。うちの中でも中堅だよ」
言うべきことは言い切った、という風に熊山は酒臭い息を吐く。余りにも衝撃的な話で言葉が出ない。これが本当に現代日本の話なのか。軽部としては更に色々と詰めて聞いてみたい部分もあるにはあったが、これ以上は野次馬根性だな、と自制する。
『更科総司への恩返しのために、彼という人間をもう少し知りたい』という当初の目的はもう随分すぎるほどに達成できたのだから。
そこからは少々沈黙が続く。気まずい空気を打ち消すように、今度は軽部から口火を切った。
「そ、そんな感じじゃあ総司君、小さいとき碌に遊んだりしてこなかったんでしょうね……。も、もちろん働かせたのが悪いってことじゃ無いっスよ!本人の意思みたいですし……。ただ、こう、なんて言うんスかね。総司君、なんか趣味とかあるのかなーと思って」
軽部は、恩返し云々の前にまず今より距離を縮められないか、詰まるところ同僚としてではなく、友人として関われないかと考えたのだ。スポーツや音楽、何がしかの共通の趣味でもがあれば、そこを糸口に関われるのではないかと。しかし熊山からの返答は軽部の期待したものではなかった。
「それがなあ……。アイツ、そういうのとことん無いみてえなんだよ。無趣味っていうか無気力というか。爺さん婆さんに聞いても、家の手伝いばっかりして、やることがなくなればさっさと寝る。起きたら仕事に向かう、の繰り返しだとよ。爺さん婆さんと一緒にリビングでテレビ見るのが精々だそうだ。あの野郎、何回言ってもスマホすら持ちやしねえ。今時俺ですらスマホで動画見たりすんのによ。まあアイツも15だ。昔と違ってその辺の判断はアイツに任せちゃいるが……。
お前の言う通りアイツの生き方はアイツが選んだものだ。ガキの時分から働かせたことに後悔は無え。ただなんというかな、もう少し、同年代との関わり方とか、色んなモノを見て聞いて、実際にやって……。そういう物事に対しての『興味』ってもんを持てる生き方が大切なんだって、ガキの頃に教えてやりたかった。アイツの世界は毎日の仕事、家と職場の往復で完結しちまってる。そんなのは30.40過ぎてからで十分なんだ。若いうちしか得られない経験とか、学べない事ってのがある。世の中に対して関心を向ける必要さみたいなものに気付かせてやれなかった。そこんとこは後悔してるよ。アイツは精神面の成熟が早すぎた。初めはガキが、なんて思ってたのにいつしか周りもアイツを一人前の男扱いしちまったんだな……。いくら立派でも子供は子供だ。親面する気なんざ無えが、育て方として足りてなかった部分だったなってな。
そういうのもあって、歳の近いお前に気に掛けてもらえないかと思ったんだよ。丁度聞きたいこともあったしな。」
「総司君と仲良くするのは俺も願ったり、って感じスけど……。聞きたいことって何スか?」
軽部はここまでの話の重さから、何かとてつもない重責を課せられやしないかと内心焦った。が、予想に反して熊山はここまでの深刻な様子から転じて、幾らか砕けた表情で口調で語り始めた。
「アイツの誕生日な、もう少しなんだよ。今週の金曜日。
10年前、戸籍を作るとき、アイツが俺と出会った日を誕生日ってことにしたんだ。自分の人生変わった日だからってな。これまでは毎年何聞いても要らねえ、っていうもんで無理やり現金握らせてたんだが……。今年でアイツとの付き合いも10年だ。一個の区切りだし、なんか形になるようなもん渡してやりてえと思ってよ。ただそれはそれとして、俺もアイツも思い出に残るような、感傷的なのは好まねえ。手紙とか、花束とかな。今のアイツが楽しく生活できるようになる物がなんかあれば、と思ってな……。お前、なんか今時の若い奴の流行とか知らねえか?」
そういう話か。と軽部は安心した。随分と微笑ましい話題にホッとする。思い浮かんだ選択肢を片っ端から言葉にして並べていく。
「やっぱり一番簡単なのはスマホっスかねー。連絡取れるようになりますし、スマホ一つあれば音楽聞いたり動画みたり簡単にできますし。今時総司君ほどじゃなくても、趣味がないって人多いスけど、時間潰すのにスマホいじったりはよくしますよ。
形に残るものだと服っスかね。でも年齢的に自分で服とかは選びたかったりするんスかねえ。好みの問題もあるし、避けといたほうがいいかもっス。
パッと使っちゃえるものだとアーティストのライブチケットとか、スポーツの試合観戦チケットとかっスかねー。あとはそっスねー……」
そう話しながら他に何かないか、取っ掛かりになりそうなものはないかと周囲を見渡したり、自身のスマホを開いたりする。そうこうしていると、ふと居酒屋で流れるテレビの音が耳に入ってきたため思わず首を上げる。流れる映像を見ていると、アイディアが天啓のように閃いた。
「そうだ!これっスよ!間違いないっス!」
「うん?どれだ?」
こうして2人は相談やら計画やらでいつまでも居酒屋に滞在し、当初の約束は何処かに吹き飛んで、何度も酒を注文した。飲んでは語り、飲んでは語り、そうこうしているうちに、夜は更けていった。翌日出勤する際には二日酔いで痛む頭と足りない睡眠時間を恨めしく思うのだった。
・・・・・・
総司は元々民宿として営業していた、老夫婦の自宅の一室を間借りして生活している。棟梁からの紹介で住まわせてもらっており、以前は民宿の手伝いをしながら生活をしていた。現在は老夫婦の高齢化を理由に閉業しており、今となっては単なる民家である。以前のように民宿の仕事の手伝いをする感覚で家事手伝いをしようにも、『これくらい一人でできなきゃボケる』と家主の老夫婦に断られてしまうため、帰宅しても何もすることはなく、時間を持て余してしまいそうだ。
というのも、思いがけず早く帰宅することになったため、時間の使い方に困っているのだ。更科総司という人間は働いていない時間、常に暇を感じている。家に帰っても何もすることがない。どうしたものかと思案しながら歩みを進めているうちに、気付けば総司の自宅についてしまった。
1時間睡眠時間が増えるだけか、と時間を有意義に使うことは早々に諦め、玄関の戸を開けて中に入る。靴を脱いで揃え、スリッパに履き替える。歩を進めて階段を登り2階へ。この家は元々民宿だった関係で、1階に客間や広間があり、2階が老夫婦と総司の生活場所だった。その為、今でもリビングが2階にあるタイプの家屋となっている。
リビングの戸を開けると、中にはこの家の家主、
彰の方は「おお……」と小さく反応して視線を新聞に戻す。ぞんざいなようだが、昔からこういった振る舞いが常の、多くを語らない無口な人間だった。
対して「あらーおかわりなさい随分早かったわねまだ夕食出来てないのよちょっと待ってね今日は筑前煮なのよ久々に筍が安かったのよ最近だったらなんでも高くて嫌になるわ」とこちらが返事をする間もなく喋り続け、話したいことを話し終えると再び調理作業に戻るのが香だった。
対称的な夫婦に向かって、食事までに風呂に入って、その後は部屋にいる旨を告げ、部屋に向かう。
一旦職場に持っていく荷物を自室に置いた後、畳んだ布団の上に置いてある、鏡餅の蜜柑ように小さく畳んだ就寝着を回収して、洗面所へ向かう。服を脱いで髪を結っていたヘアゴムを解く。耳を隠すようにバサッと長い髪が肩に降り注ぐチクチクとした感覚を感じながら、脱衣所から浴室に移動した。
シャワーを全身に浴びながら汗を流す。感情に乏しい総司でも、一日働いた後に浴びるシャワーには得も言えぬ心地良さがあった。
手早く入浴を済ませて洗面所へ戻り、体を拭いて部屋着に着替えてから髪を乾かす。前の方の髪だけとはいえ長髪は乾かすのに時間がかかる。できることなら総司は丸坊主が良いのだ。しかしいくつかの事情から止むを得ずこのヘアスタイルにしている。
それから髪に温風を当て続けること数分。髪に触れればまだわずかに冷たく、完全に乾ききってはいないがこれ以上は面倒であるためドライヤーを停止する。コンセントからプラグを抜いて片付ける。髪を再びオールバックにして縛りながら、自室に向かう。
自室に入ると、総司は電気を点けずに窓から差し込む僅かな光を頼りに、部屋の隅に片づけられた布団を敷き始める。部屋は和室で5畳。大型家具は箪笥と本棚一つずつのみで他には何もない。本棚には幾らか本が収納されているものの、僅か数冊で、立てて並べられないため全て横にして積まれている。
布団を敷き終えると総司は寝転ぶ。眠いわけでも疲労で横になりたかったわけでもない。することがない以上、総司の自室での姿勢はこれが常だった。
天井を向いて寝ると、紐電球の紐がぷらぷらとしているのが視界に入る。目を逸らして窓を眺めると水中に墨を混ぜたような、濁りながらもどうにか先は見通せる程度の、半端な闇が空を覆っていた。
何もすることがないと、つい思索に耽ってしまう。今日のような、イレギュラーのあった日や、どこか人を不安にさせるこんな空模様の夜は特に。
・・・・・・
深い思考の海に身を沈めていると、部屋がガラガラっと空く。ハッとして起き上がり振り返ると香が立っており、「ご飯だって何回も呼んだのよ返事がないから寝てるんだと思って直接呼びに来たのよ電気も付けないで寝ちゃってもうちゃんと暖かい恰好しないと風邪ひいちゃうわよもうご飯冷めちゃうから早くきなさいよ先食べてるからね」
と一息に話し終えた後、ずかずかと総司の部屋を出ていった。
あれで70過ぎだというのだから逞しい。これからもどうぞ健康に、と念じてからゆっくりと立ち上がる。暗い部屋の中で枕もとに転がしてある目覚まし時計を拾う。暗闇でも光る、蛍光の針の位置から時刻は既に20時近くになろうとしていることを知った。どうやら総司が思っていた以上に時間が経っていたらしい。廊下の電気を点けると自室との光量の差に思わず目を閉じる。軽く瞼を揉みこんでから、再度電気を消して、暗い廊下をゆっくりと歩き、リビングへと向かった。
それからは白老夫婦と食事を摂り、しばらくはリビングのテレビを3人で視聴した。流れるニュース番組が終了したのを区切りに就寝準備をする。といっても精々歯磨きする程度だが。最後に夫婦に自室に戻ると声をかけ、挨拶をしてから部屋に向かう。
時刻は21時半を回ったところだった。電気を点け、布団の上に座ったが寝ることはせずに、毎日の
然程眠たくもないが、目を瞑り心を空にする。しばらくしていると微睡が彼方からやってきた。意識が底に沈む感覚に身を委ね、総司は意識を手放した。
これが『更科総司』という人間が目指すべき人生の一片、日常の形である。些細な変化はあれど、基本に忠実にこの
備えようが、構えようが、逃げようが、いずれ変化は訪れるだろう。それが幸かどうかは不明だが。今はただ、それを待つ。
・・・・・・
2022年 11月 2日 水曜日
今日はここ数日に比べると随分と暖かだった。これくらいの気温が、記憶にある『秋』の姿なのだが、近年はそれを感じられる日数が短くなっているように感じる。
今日も今日とて、いつもの繰り返しだった。余力を残しつつも周囲が認めるだけ働き、総司の求める必要量のコミュニケーションを他者と取り、周囲からの心象を昨日と寸分違わぬものにする、そんな
少々気になったことは、棟梁と、新卒の軽部が妙に浮ついていたような気がすることだ。どちらも午前中は頭痛を堪える姿が見られた。酒が抜けきっていなかったのか。とすればあの二人で飲んだという事なのだろうか。繰り返しの日常の中に差異があると際立って目につく。しかし、業務に差し障りがあるのであれば、話を聞いてみるところだが、今のところ特に弊害は生まれていないようなので、何事もなかったかのように振る舞うことにした。
帰宅して夕食を摂っていると、香氏から明日は外で食べてくるように頼まれた。明日は町内会主催の旅行に1泊2日で行ってくるらしい。白老夫婦はその手の活動に積極的で、2,3月に一度こうして一日家を空けることがある。そのような日は、総司は外食するのがお決まりだった。
あなたの誕生日までには帰って来るからと告げられ、特に気負わず了承した後、各々就寝準備に移ったことで今日の団欒は終了した。寝る用意を終え、部屋に戻る。目覚まし時計をセットして布団に横たわる。いつもならこのまま眠りに落ちるところだが、少しだけ今週金曜のことを考える。金曜は誕生日―本当の出生日とは異なるが、『更科総司』の人生が始まった日だ。棟梁と出会って10年。また今年も無理やり財布に金を捻じ込まれるのだろう。必ず断っているが、それが通用した試しはない。面倒だ、と思いながらも心が少し軽くなった。
・・・・・・
2022年 11月 3日 木曜日
寒すぎる。なんだというのか。思わず自分の体調がおかしくなったのかと、我ながら珍しく不安に駆られた。しかし同僚達も寒い寒いと叫んでいた様子をみるに、自分の身体がどうにかなったわけではないらしい。暑かろうが寒かろうが、今更文句を垂れる気にもならないが、せめて日毎の気温の変化は微々たるものしてもらえないだろうか。こういった願い事は何処に頼めば聞き届けてもらえるのか。天か、神か、はたまた総理大臣辺りか。
体調の異常は総司の勘違いだったが、こちらはどうも見間違いではないらしい。というのも、総司以外の大工の様子がおかしいのだ。具体的には、職場そのものにどこか浮ついた空気が漂っており、それは昨日の軽部と棟梁の様子と瓜二つだった。それに加えて今日はこちらを見ながらの内緒話をあちらこちらでされていた気がする。その証拠に、こちらが近づくと慌てたように解散して、こちらの耳に入らないように振る舞っているのだ。
はっきり言って不気味でしかない。何より奇妙なのが、普段そのようなことがあれば工事用の重機の駆動音よりも大きな声で怒鳴りつける棟梁が、周囲を叱ることなく、昨日から引き続きその浮ついた輪の中にいることだ。
釈然としないものを感じながらの業務は正直やり辛かった。日頃は受け身の総司だが、明日も同様なら訳を訊いてみようか、と思いながら退勤した。
帰宅すると、いつものように入浴をする。いつもと少し違うのは、本日のこれからの行動である。風呂上がりはいつも、就寝用のシャツとルームパンツに替えるところだが、本日は外出用のシャツとデニムに着替え、ジャケットを羽織ってから鍵と財布だけ持って外に出た。
冷たい夜風がまだ濡れた髪をより一層
店員を呼んで野菜炒め定食を注文し、暫く待つ。店の天井隅には小さなテレビが備え付けられており、歌番組が流れている。知らないアーティストの知らない曲を聴くこと数分。厨房奥から店員が料理を運んでくる様子が見えたため、一旦視線を外して料理を受け取る。礼を言ってから食べやすいように皿の配置を変える。心の中でいただきます、と呟いてから本日の夕食を開始する。豚肉と野菜をひとまとめに口に運び、咀嚼しながら顔を上げると、変わらず放送している歌番組で、アイドルグループが丁度今流行りの曲とやらを歌い終えたところだった。番組としても一区切りついたようで、カメラが引いていくと共に、CMに切り替わる。目線を外して今度は白米を口に運ぼうと思ったが、流れるCMに気を引かれ、一旦箸を持つ手を止める。テレビでは『新時代のゲーム体験』というナレーションと共に、一つのガジェットが紹介されていた。
第二世代フルダイブ型VRマシン、『ナーヴギア』。
流線型のヘッドギアを装着することで、ユーザーはギアと脳とを直接接続される。それにより、本来目や耳で受け取れる情報は、脳に直接電気信号となって送信される。反対に、脳から体に向けて出力される情報を遮断することで、受け取る情報は全て、仮想世界のモノとなる。
従来の電子機器と一線を画すこの機械は、完全なる仮想現実を実現した。全感覚を別世界に持っていく様は、このナーヴギア開発会社によってこう命名された。⦅
この話は総司も知っていた。半年ほど前に発売され、当時は随分と騒がれた。近代ガジェットなどとは到底縁のなさそうな同僚達ですら、何かと話題にしていたのだ。だがなぜ今になって?と総司が疑問を抱くうちに、そのまま次のCMへと切り替わった。
後に、これが狂った人生を始める第一歩だったのではと回顧することとなる。
テレビには、巨大な石と鉄の城が映っていた。続けて国や文化の違いを感じさせる、様々な街並みが映し出される。今度は幾らか厳かな雰囲気の、地下道のような映像と、そこを闊歩する様々な姿の化け物が見られる。再び画像が切り替わる。
次はそれらの化け物に男が剣で切りかかり、打ち倒す様子が流れた。様々な剣技を、壮大なBGMと共に魅せつけた後、再び巨大な城が画面中央に映る。
最後にナレーションが流れ、CMは終了した。
―VRMMORPG⦅ソードアート・オンライン⦆、と。
しばし画面から目を離せずに固まっていた。周囲の音が遠くなる。鉄の城、剣、こことは違う世界。
「はい麻婆豆腐!」と隣のテーブルに店員が料理を置く声で我に返る。周囲の音が戻ってきた。急にどうしたというのか。自分の意識が飛んでいた理由も分からないままに食事を再開した。何となくこれ以上テレビを眺めていたくなかったため、視線を料理に固定して、顔を上げずに野菜を頬張った。黙々と料理を口に運んでいると、隣の席の声が聞こえる。初めは不明瞭だったものの、耳を傾けたことでか、次第に言葉が輪郭を帯びていった。
「しっかし最近のゲームはすごいよなあ、とうとう全身別世界に飛ばせるってよ」
「俺達の時代じゃ考えられないよな。ゲームっつたら友達の家のテレビの前に集合してやるもんだった!」
「ホントによ。……しかし、面白そうだったなあ。このゲーム、ソードアート・オンラインって言ったな。これを始めたら、ガキの時傘振り回したみたいに、剣でモンスターと戦えるんだろ?ナーヴギアも揃えて始めてみようかなあ」
男達は酒の肴に先程のCMについて言及しているようだった。総司はそろそろ食事を終えるところだったが、食事ペースを少し落とし、二人の会話を盗み聞きする。
「無理無理。俺もちょっとやりたいなと思って色々調べたもん。そしたらまあ、値段がどうの騒ぎじゃなかったよ」
「どういうこと?」
「買えないの!ゲームもハードも人気すぎて。まずナーヴギアの方。販売台数20万台って言ったかなあ。何年か前に発売したPS5ですら初期生産ウン百万台用意したってのに全然流通しなかっただろ。あれは転売問題とかコロナで工場停止とか半導体不足とか……まあ他の要因も色々あったけど。にしてもそれの数十分の一の出荷台数だ。まともに手に入らん。」
男の言葉に、もう一人がうええと小さく悲鳴を上げる。彼はこの時点で諦めつつある様子だった。男は話を続ける。
「更にがっかりさせてやろう。ナーヴギアが運良く手に入ったとして肝心のゲームソフトだ。これがなんと、1万本しか作られてない。その中でも千本は体験プレイの抽選に当選した人が優先的に購入できるらしいから、実質流通するのは9千本だな。まあその体験プレイ勢……ベータテスター、っていったかな。その中に、購入権を転売している奴もいたみたいだから実際の数字は微妙に前後するかもだけど……。オークションサイトで今200万まで値がついているらしい。いずれにしても買えないよ。
ネット上でもデカい電気屋やらゲームショップに3日前から並ぶって宣言してるやつや、通販で買うために、少しでも通信が良くなるように、高性能PCと自宅回り電気系統まるまる買い直したなんて投稿している奴もいたし。まあ、これくらいの熱量がないと買うのは厳しいってコトよ」
この言葉に完全に止めを刺された形で、話を聞いた男は項垂れる。
「ゲームの内容も流通状況も俺達の知ってるゲームのソレじゃないな。はー、そんなんならいいや。土日は子供たちとSwitchやるので十分かな」
この言葉を皮切りに、男達が家族の話題に映ったのをみて、総司は席を立つ。会計を済ませ、店を出た。夜風を浴びながら道を歩く。
先程自分に去来した、奇妙な感覚の正体を探る。冷静になった頭で考えればすぐに分かった。俺は恐らく、あの世界に魅入られたのだ。少しだけ、ほんの少しだけではあるが。 こことは違う世界。今ある
だがしかし。そこにいくためには山ほど現実的な課題を乗り越えなければならないようだった。その上、それらすべてのハードルを飛び越え別な世界にまで行けたところで、ヘッドギアを外せば目の前の現実は何も変わっていない。夢の国自体はそこにあり続けても、時間と金が尽きれば出ていかなければならないのと同じことだ。
結局のところ、こういうものは愚直にそれを追い続ける探求者のような者か、でなければ選ばれるべくして選ばれた、特別な星の下に生まれた人間にのみが享受できる幸せなのだろう。自分とは縁のない世界だ。馬鹿馬鹿しい。本当に、馬鹿馬鹿しい。
何も、変わらない。自分の生活に変化は訪れない。だがそれでいい筈だ。それこそが幸福だと、10年前に知った筈だ。酒の席の話題に気を漫ろにされるなど我ながらどうかしている。体が冷えるからと自分に言い訳し、その日はいつもより早足で帰路についた。
・・・・・・
2022年 11月 4日 金曜日
ここ数日の振れ幅大きい気温に負い目を感じたか、再び落ち着いた気候と気温に戻った。
天気の話はこれくらいでいいだろう。本当にもう、大変なことになった。
昨日一昨日とは打って変わって、同僚達は不気味なほどに静かだった。まるでここ数日の天気の移り変わりの様に。皆粛々と仕事をこなし、淡々と業務が進行する。総司としては願ったりの筈なのだが、昨日の今日であるため困惑せずに入られなかった。午前の仕事が終わり、休憩をはさむ。午後の業務を開始するが、様子は変わらない。妙な雰囲気のまま時間は進んでいった。
その後は特に何もなく、繰り返しの一日をなぞるのだった。
19時を回り、終業時刻になったため、総司は道具を片付けた後、着替える。ジャケットを羽織っていると、棟梁がやってきた。
棟梁は「おう総司、ちょっとこっち来てくれ」と目を逸らしながら話す。
何事かと思い、「どうしたんです?」と尋ねるも、棟梁は歯切れ悪く、
「いやまあ、なんだ。ちょっとお前にしてもらいたいことがあってな、詳しい話は後でする。とりあえず来てくれ」と一方的に話すときびきびと奥まで歩いて行った。慌てて後を追いかける。到着すると、棟梁はプレハブ小屋の前に立っていた。普段休憩室として利用する仮設の建物だ。中は暗い。棟梁にドアを引かれ、「入れ」と促される。これ以上疑問を抱えていても仕方がないため、言われるままに歩みを進めた。
部屋に入ると同時にパッと部屋に明かりが灯る。よく見えるようになった大した広さもないプレハブ小屋の中には、同僚達が揃って並んでいた。何事かと目を瞬かせた途端に、
「総司君、16歳誕生日おめでとう!!」の掛け声とともに、大量のクラッカーが鳴らされた。予想外の連続に脳がフリーズする。何だか最近ペースを崩されてばかりだ、という感想はややしばらくして冷静さを取り戻してから抱くのだった。
我ながらよくここまで気付かなかったな、と己の疎さ、考えの足りなさを恨めしく思う。ここ数日の妙な空気はどうやら自分のサプライズパーティーの為の準備をしていたらしい、と遅まきながら気づく。今日が何の日か、何故誰も彼も最近はそわそわしていたのか。考えればわかりそうなものだった。
総司の反省をよそに、同僚の軽部が嬉しそうに、部屋の脇に置いてあったクーラーボックスを運んでくる。別な大工がプラスチックのテーブルを部屋の中央にてきぱきと組み立てる。狭い部屋がより一層狭くなる。が、そんなことはお構いなしに職人達は嬉しそうにクーラーボックスの行方を見守る。軽部が蓋を開ける。総司が中を覗き込むと、中には大量の保冷剤、そして白い箱が2つ納められた。
察しの悪い総司でも流石に予想がついた。軽部がクーラーボックスから白い箱を取り出して、中をあけると、そこには大きめのホールケーキがあった。目の前の光景に総司が言葉を失っているうちに、紙皿、プラスチックのコップ、そして大量の缶ビールと酒のつまみが並べられる。
ひとしきり宴の準備が済んだようで、軽部が前に出る。
「ごめん、びっくりした?実は今週の頭くらいから計画していたんだ。日頃世話になっている総司君へのお礼。慣れないことしたからあんまりお祝い感はないけど許して!」
これでも結構頑張ったんス!と照れ笑いする軽部を、周りの職人達が肩を叩いたり声を掛けて囃し立てる。その光景に、総司は堪らず深々と頭を下げた。
「皆さん。本当に……本当にありがとうございます……。俺みたいなのの為に……」
これ以上何を言えばいいのか分からない、嬉しいような、面倒なような、有難いような、こんなこと頼んでないと叫びたくなるような。ない混ぜになった感情を胸中に漂わせていると、背中に衝撃が走る。
「頭なんか下げるな!皆日頃世話になってるお前への礼だとよ。胸張って受け容れろ!」そういや後ろに棟梁立ってたんだった、と背中の痛みに顔を歪めながら考える。
「いや、でも……本当に、嬉しいんですけど、その、なんて言っていいか……」
珍しく言葉に詰まる総司の頭を熊山が掴みぶんぶんと振り回す。熊山としては頭を撫でているつもりなのだ。眼を回しそうになる総司に熊山が言葉を続ける。
「そんなもん『ありがとうございます』で十分なんだよ!!というかお前ぇ、あれだな。照れてんだろ!こういうの慣れてないからな!!」
ガハハと笑う声につられて周囲も笑い出す。自分が、照れる?慣れない感情に理性が追い付かない。いつもより上手く周囲に振る舞えない総司を連れて、盛り上がりは加熱していった。
それから1時間と少し。全員に程よくアルコールが回り、場が十分すぎるくらい盛り上がったところで、軽部が声を張る。
「それじゃあ大分皆さん盛り上がってきたんで、プレゼントタイムと行きたいと思います!つっても今回は一人ずつからのプレゼントじゃなくて、、皆で金を出し合ったものを、代表して棟梁から渡してもらいまっス!!」
うまく頭の回らない総司は、もう内心でもツッコミが追い付かなかった。プレゼント?金じゃなくて?熊山のオッサン変な気遣わなくていいのに、と考えるのが精々だった。総司の乱れた内心を他所に、軽部の視界は進行していく。
「それじゃあプレゼントです!棟梁お願いします!」
「お前なあ、煽りすぎだっつうの。小っ恥ずかしいわ!渡すモン渡すだけだ!」
いつの間にか姿を消していて、戻ってきたときには大きな紙袋を抱えた棟梁が現れた。
熊山の声に周囲がまたまたぁ、と煽る。ここで騒いだものは明日の棟梁からのシゴきが増すことを、今は誰も知らない。
周囲の視線を振り切るようにずかずかと総司の前に来た後、「気に入るかどうか分からんが、まあ、中々にいいもんだと思うぞ。俺以外にもここのやつらや、色んなのが協力してくれて手に入った。後でちゃんと礼言っとけ。……誕生日おめでとう」
そう言って手渡された紙袋は中々の重量感があった。周囲からの期待の眼差しが痛い。正直帰宅してから一人で開けたい気分だが、逃げられない空気なのは総司も理解しているため、先ほどまでケーキのあった場所に紙袋を置き、紙袋から商品を取り出す。
特にラッピングなどされていないため、外箱のデザインが取り出すと同時に露わになった。白い外箱は簡素なデザインをしており、中央に商品の写真がプリントされ、右下に商品名が記載されていた。
総司は先程までの浮かれた熱が、急速に冷めていき、頭が冷静さを取り戻した。
何故なら、その箱にプリントされていた商品は、メタリックな塗装を施されたヘッドギアであり、商品名はこう記されていたのだから。⦅NerveGear⦆―ナーヴギア、と。
言葉も無く立ち尽くす。震えた手で箱を持ち上げ、見間違いではないか、はたまた妙な海賊品でも掴まされたのではないかと何度も商品を凝視する。
その様子に周囲はにやにやしていたものの、何かに気付いたようで、
「ちょ、棟梁!あれももってこなきゃダメです!これだけじゃあ……」と話している。まだ何かあるのか、困惑すると、熊山が慌てたようにもう一つ紙袋を持ち出してくる。今度は随分と小さな袋だ。
熊山は総司に近づき、「すまんすまん忘れてた。こっちも渡さなきゃダメだわな」と小さく笑って紙袋を寄越してくる。一旦ナーヴギアの箱を置き、紙袋を受けとる。今度はその正体の検討がついた。だが、そんな筈がない。まともに手に入らない、ネットで数百万で取引されていると言っていたじゃないかと、焦燥に駆られ、中央に貼られたテープを煩わしく思いながら、急いで袋を破いて中身を取り出す。
中身は小さなプラスチックケースだった。ケースには、空中に浮かぶ、巨大な石と鉄の城が描かれ、そのすぐ下には⦅Sword Art Online⦆の文字があった。
できることならこのまま黙りこくっていたい。だが、そうも言ってられなくなってきた。
小さく天井を仰ぎ見てから、自信満々にしつつ、ちらちらとこちらを見てくる熊山に声を掛ける。
「これ……どうした……?」意識しないうちに声が震える。
熊山はよくぞ聞いてくれました、というようにふふん、と鼻息を噴いてから、朗々と語り始めた。
「今年は何か形になるものを渡してやりたくってな。一番年の近い軽部に相談したんだよ。そしたらまあ、これを提案されたわけだ。俺はよく知らないが、なんでもゲームの世界に行けるっていうんだろ?今流行りみたいだし、どうにか用意したんだよ。想像以上に大変だったぞ」と自慢げに語る姿を見て、総司は堰を切ったように声を上げる。
「なんでそこまでした!?これ、ネットで数百万するとか言われてたんだぞ!……てか、これまだ発売日じゃねえだろ!?正規のルートで手に入れてねえな……。そこまでのこと求めてねえよ!!毎年みたいに現金くれたら十分だった!皆もそうだ!一人当たりでも相当な額出してるだろ!ここまでされても俺は何も返せなァッ!?」
捲し立てるうちに熊山の喜色前回の表情が陰りを帯び、分かりやすく『怒』に切り替わる。それに気づかず語る総司に拳骨を食らわせた。
「ごちゃごちゃ抜かすな!プレゼントってのはこっちの気持ちだ!値段なんぞ気にするな!!お前が『要る』か『要らない』か!それだけだ!!要らねえなら売っちまえ!!いい金になるんだろ!?要るんなら受け取れ!!そんで、俺は何て言えっつった!?」
痛む頭を抑え、今日の熊山の言葉を振り返る。人の厚意になんと返せばいいか。そんなものは……
「『ありがとうございます』……!本当に……!!俺、俺、」
昨日夜風に飛ばしてあの時は無かったことにした、自分の本心を吐露する。
「これ、欲しかったん、です。テレビのCMで見て、やってみたいな、って思ってました。本当に、本当に嬉しいです。皆さん、ありがとうございます……!!!」
棟梁が笑う。「それでいいんだ。気に入ってもらえてよかったよ。総司」
下げた頭を上げられなくなった。今の自分の顔を人に見られたくない。
そんな総司の内心を知ってか知らずか、軽部が音頭を取る。
「じゃあ総司君も喜んでくれたってことで!俺達の頑張りに、もう一回乾杯!」
乾杯!!の合唱からパーティの第二部が始まり、それは随分と遅くまで続いた。
実際の重量以上の重みがある紙袋を手に帰宅する。白老夫婦を待たせてしまった、と焦って帰れば、夫婦は食事を摂らずに待っていてくれた。事前に熊山から連絡済だったらしい。いつもより豪華で、若者が好みそうな料理が並べられた食卓に着き、遅めの夕食を開始する。その日の団欒はいつもよりもりあがった気がする。
就寝準備を済ませ、布団に入る。周囲からは早く遊べよ、とせっつかれたものの、今日はもう遅い。翌日から2日休みであることも踏まえ、明日から始めることにして、今日は眠りについた。いつもより早く、そして心地よい眠りが総司に訪れ、夜は更けていった。
・・・・・・
2022 11月 5日 土曜日
今日の天気はよく覚えていない。晴空だったような気がする。
日中はナーヴギアを使うための周辺機器、主にコード類を購入してきた。総司はそういったものにとことん疎かったのだが、それを見越してか軽部がついて店を回ってくれた。心なしか、商品の購入時に店員から睨まれていたような気がした。店を回った後、休憩のためフードコートで食事をする際に軽部に話してみると、
「あー多分店員さん察しちゃったんスねー。ナーヴギアに使うコードって他のゲーム機とかPCとちょっと違いますから。『こいつナーヴギア持ってるのかよ、このタイミングで買うってことは、まさかソードアート・オンラインを手に入れたのか!?』ってなったんだと思うっスよ」とのことだった。
ゲーム一つで見ず知らずの人間を憎めるというのだから、アレの影響力は途轍もないな、と一夜明けて改めて実感する。
店を出て電車に乗り、駅で降りる。帰り道が別方向のため、ここで分かれることとなった。総司は軽部に礼を言う。
「軽部さん、今日は本当にありがとうございました。」
軽部は顔の前で手を振る。
「いやいや、何もいいんスよ!ソードアート・オンライン、是非感想聞かせてくださいね!」
その言葉にしっかりと首肯する。
「はい、今日明日で沢山やって、感想伝えます。それじゃ」
そう言って二人は解散した。
帰り道を歩く途中、軽部はふと先程の総司の言葉を振り返る。
「今日明日遊ぶって言ってたっスけど……。ソードアート・オンラインのサービスが明日からなのは流石にわかってます、よね?」
想像以上に総司が何もわかっていなかったので、もう少し色々と教えてあげた方がよかったかもしれない、と思ったが今時のゲームはその辺りのサポートが手厚い。分からなくても指示に従っていればどうにかなるだろう、と軽部は考えを打ち消して帰宅するのだった。
・・・・・・
帰宅して白老夫婦と食事をする。食後3人でテレビを視聴する。
ニュース番組ではソードアート・オンラインの特集が組まれていた。白老夫婦が好んで視聴するニュース番組は国営放送のチャンネルであるため、こういった俗っぽい話題の取り扱う優先度は低めである。にも関わらず、こうして大々的に取り上げているのだから、単なるゲームのお遊びではなく、最早社会現象なのだろう。
ニュースによれば、大手通販サイトは数秒で完売、店頭販売は、大手ゲームショップや家電量販店に、発売日の3日前である昨日から人が大挙して並んでいるそうだ。
「……とんでもないな」という彰氏の呟きに、頷くことで同意を示す。
本当に、とんでもないものを受け取ってしまった。ゲームなどこれまでの人生で一度もやったことがない。どれほど楽しめるか分からないが、せめて今日明日くらいはしっかりと遊んで彼らに感想を伝えたい。
白老夫婦に挨拶をして自室に戻る。いよいよナーヴギアを起動する。予め専用のプラグ等の周辺機器は、帰宅前に買い揃えた。ナーヴギアにソードアート・オンラインのゲームソフトをセットし、ヘッドギア型のデバイスを頭に嵌め、布団に横たわる。柄にもなく逸る気持ちを抑えて、丁寧に電源を付ける。
ごく僅かな沈黙の後、真っ暗だった視界がパッと明るくなり、目の前に⦅Argus⦆と開発会社のロゴが表示され。続けて⦅NerveGear⦆の文字が踊る。これがゲームというものか、と人生初の経験を味わう。
しかし気になるのは、体の感覚が仮想世界に飛んでいないという事だ。布団に沈んだ肉体の感触、リビングから微かに聞こえる白老夫婦の話し声、いずれも現実のものだ。どういうことかと考えていると、機械的な女性の声が耳に響く。
『只今より、ナーヴギアのセットアップを開始します。』
この言葉より数十分、総司は慣れない作業に没頭しなければならなくなる。
初めにインターネット設定。分からない。インターネットが何かは何となく分かるものの、スマホも持たない総司には縁の無い代物で、ここで早速頓挫しかけた。幸い、元民宿ということで、客が利用するためのネット環境がそのままになっていたため事なきを得た。というか、一旦ナーヴギアを外して彰氏に対処してもらった。彰氏はサービス業を営んでいた関係上、こういった多くの人間が触れるコンテンツへのアンテナが敏感で、時代に即応できるタイプの人間だった。
現代の若者が70過ぎの老人にゲームを遊べるようにしてもらうというのは、流石に少々、いやかなり恥ずかしかった。
軽部もまさか高校生の孫―のようなものより祖父―のようなもの、の方が昨今のネット事情に詳しいとは思わなかっただろう。
続いて視界の表示エリアの調整、電源オプション、システムソフトウェアの使用許諾同意、ソフトウェアのシステムアップデート……。この時点で総司はゲームを少し辞めたくなっていた。やはりこういうものは手慣れている人間しかできないような敷居の高いものなのでは、と打ちひしがれる総司に追い打ちをかけるように、次の案内が表示される。
『アーガスネットワークにサインインしてください。』
総司は再びナーヴギアを外して別室の老人に泣きつくことになった。どうやらパソコンやスマホを駆使して、ゲームで遊ぶうえでアカウント、なるものを取得しなければならなかったらしい。アカウント取得に必要なメールアドレスも、携帯を持っていない総司にはどうしようもなく彰氏のものを利用させてもらった。礼を言って退出しようとすると、
「……また頼ってくれ。でも、もう少し世の中のこと知っとかんと、苦労するぞ」
と優しい忠告をもらってしまった。
恥ずかしいやら悔しいやらで、もう訪室しなくて済むように、ホント頼むぞ、と念じながら3度目のナーヴギア装着をする。次に分からないことがあればもうやめよう、そう心に決めて、白く晴れた視界を見据えるが、どうやら先程のアカウント登録にて、必要な作業は終了したらしい。これで遊べる、と息を吐く。
心臓の鼓動が加速する。全身の体温が上がるのが分かる。興奮しているのだ。これから行くのは剣と戦いの世界。こことは違う、解放された世界。期待を込めて、事前説明にあった魔法の言葉を口にする。
即ち―「リンクスタート」、と。
『ソードアート・オンラインは11月 6日 13時からサービスを開始いたします。サービス開始まで今しばらくお待ちください。』
総司は寝た。
・・・・・・
2022 11月 6日 日曜日
―――
午前中は特に何もしなかった。いや、いつも休日は言葉通り何もしていないのだが、日頃とは些か趣が異なり、来るべき予定に備えた、何もしない時間であった。
昼食を済ませる。完全ダイブの前の食事は軽めがいいらしいっスよ、とは軽部の言葉だ。忠告通り小さめのカップ麺だけで今日は終わらせて部屋に戻る。当人が気づいていないだけで、今日の彼は非常に浮足立っており、老夫婦は孫代わりの青年の、そんな姿を微笑ましく見つめるのだった。
・・・・・・
枕もとの時計の針が、12時58分を指す。総司はナーヴギアを装着して枕に寝転んだ。昨日出鼻を挫かれたため、興奮は随分と収まってはいるが、未知なる世界への期待は変わらない。そろそろ時間かな、というところでナーヴギアを起動する。およそ15時間ぶりに、昨夜と同じ言葉を呟く。
もしも、彼のゲームへの期待度が低く、サービス開始と同時ではなく、少し遅れてから始めていれば。
もしも、室内に時間を示す唯一の道具であった目覚まし時計が故障しており、今より遅い時間を示していたら。
もしも、ナーヴギアのセットアップを生真面目に昨日のうちに済ませず、今日から始めていれば。
もしも、もしも、もしも。
こうだったら、ああであれば、悲劇は訪れなかったのだ。しかし、そのifの未来は選ばれなかった。否、彼自ら選び取らなかったのだ。
変化はいずれやってくる。備えようが、構えようが、逃げようが。それが、それこそが今日だったのだ。彼は覚悟していた筈だ。理解していた筈だ。抗いようのない変化は不幸であると。変わらない日常こそが更科総司の求めるべき幸せだと。
果たして結果はどうなるのか。次に来る変化は、誰にも、もう予想できない。
―――「リンク・スタート」
変化無き日常が、城に囚われた日である。
最後までお読み頂きありがとうございました。いかがでしたでしょうか?
感想お待ちしております。
何故2万字越えてしまうのか……。プロローグ(笑)を読まなくても良いように書いたつもりだったのですが……謎です。私にも分かりません。
キリトさんがクラディールに麻痺薬飲まされた場所までアスナが間に合った理由とか、ヒースクリフにシステム的に動けなくされたアスナがキリトさんを庇うために動けた理由と同じくらい分かりません。
あれは愛の力が起こしたんでしたっけ?羨ましい限りです。
この分だと次話も同じくらいの文量になるかと思われます。
まあいずれモチベが減衰して1話40文字前後になり、大変読みやすく、お客様の為を思い、美味しくなってリニューアルするかと思いますので気長にお待ちください。
また、今話では、意図的に描写を省いた箇所がございました。
主人公の幼少期とは?何故髪を伸ばしているのか?彼の独特な価値観とは?
この辺ですね。今回は敢えて書かずに飛ばしてみました。
元々は書いてたんです。でもですね…超えてしまったんです。3万文字。
いくら馬鹿な筆者でもさすがにやべえなと思ったので、丸々削ることにしました。いずれタイミングがあれば(話の続き書くモチベない時が来れば)番外編として差し込もうかと思います。
また何か質問等ございましたら、感想欄の方から気兼ねなくお尋ねください。返信させて頂くか、他の方にも周知した方が良さそうと判断したことにつきましては、前書き等にてお答えさせていただきます。
続きが気になる、という方はよろしければお気に入りに入れていただけると嬉しいです。
また、感想いつでもお待ちしております!尋常じゃないほど励みになります。
では次話を気長にお待ちください!それでは!