※くれぐれも“違和感”に気をつけて。
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転生
ある真夏の深夜、アレクサンドリアの城内の自室にて、私はやっとのことで明日締め切りの明晰夢に関するホラーを書き終えた。
「ん〜〜、やっと寝れるわ。今何時かしら、」
「23時⁉︎早く寝なくちゃ。」
そう思い、書き終えた原稿を片付け、布団に入る。
・・・
さっきから、ちょっとした物音や天井の模様が気になって、なかなか寝つけない。
さっきまで怖い話を書いていたからなのか、妙に気になる。
ふとした物音が足音に聞こえたり、天井の模様が顔に見えたりする。
いつもは怖くも何ともないはずなのに、なぜか今日は背筋に寒気がして、なんとなく怖く感じる。
落ち着きなさい。顔に見えるのは陰の叡智『シミュラクラ現象』によって、3つの点を顔かのように脳が認識しているだけ。
ただの模様よ。
そう、自室の見慣れた景色。
・・・
こんな時に限って、お手洗いに行きたくなってきた。
軽く運動して、交感神経を優位にすることでやわらげようかとも思ったけれども、それだと余計に寝れなくなって本末転倒なのでやめた。
「どうしたの?ベータ。」
そうこうしていたら、隣で寝ていたシャドウ様を起こしてしまった。
「申し訳ありません、シャドウ様。大変言いづらいのですが、」
「良いよ。」
そう言って、シャドウ様は付き添っていただくことを了承なさった。
「ありがとうございます。」
そうして、私とシャドウ様は暗い寝室を出て、明るい廊下を進んでいた。
しばらく歩いて、ようやくお手洗いの前にまで来た。
そこでシャドウ様には扉の前で待っていただき、私は手早く用を済ませた。
だが、扉を開けるとそこにシャドウ様のお姿はなかった。
「シャドウ様?」
廊下の暗闇へと語りかけるが、返事はない。
仕方なく、独りで寝室まで戻ることにした。
灯りのともっていない真っ暗な廊下を、壁の感覚を頼りに進む。
嫌な雰囲気の漂う廊下を震えながらも一歩一歩着実に進む。
あぁ、こういう時に限ってはこの王城の広さが煩わしく感じる。
アレクサンドリアの城くらいの大きさであれば、寝室までこんなにも遠くはなかったでしょう。
すると突然、後ろの方からコツコツと足音が響く。
きっと、シャドウ様が銀髪で涙袋のある可愛らしいエルフである私を助けに来てくださったんだわ。
そう思い、後ろを振り向いたが、
振り向いた途端に足音が止まり、シャドウ様らしい姿もなかった。
気のせいだったのだろうか。
気を取り戻して前を向くと、
ツインテールの人影が目の前に居た。
「!」
こちらが前に向き直った途端、その人影は鎌を振り下ろしてきた。
侵入者⁈
ひとまずその攻撃を何とかしようとスライムに魔力を通そうとしたが、
「魔力が練れない⁉︎」
防げないと分かった私は、何とか後ろに飛んで避けた。
まさか、城内に反逆者が入り込むなんて。
急いでシャドウ様に報告し、シャドウ様の裁きを。
そうこう考えていると、避けられたと分かった反逆者がさらに迫ってくる。
ひとまず、私は反逆者から走って逃げる。
それを見た反逆者も走って追いかけてくる。しかも速い。
全力で走っているものの、段々と距離が縮まってきているのが分かる。
そして、まさにその死神の鎌が振るわれそうになった瞬間、明るい部屋を見つけた。
寝室だわ!
その瞬間、その部屋へと転がり込む。
「うわっ!どうしたのベータ。」
「シャドウ様!」
ふと後ろを振り返るが、そこには先ほどの死神の姿はなかった。
それによって安心した私は思わず脱力し、その場に倒れ込んだ。
「おっと、大丈夫?」
それをシャドウ様が支えてくださる。
「とりあえず座りなよ。」
そうしてシャドウ様と向かい合って座り、心を落ち着かせる。
そのおかげで、さっきまでの恐怖は嘘のようになくなった。
「それで、何があったの?」
「はい。先ほど廊下で、鎌を持った謎の人影に追われたんですぅ」
「へぇ〜、それってもしかして、、、」
その瞬間、部屋の明かりが突如として消え、一気に寒気が押し寄せる。
『こんな感じ?』
そして、先ほどまでシャドウ様がおられた場所から聞こえてきた声はシャドウ様のものではなく、、、
その場所には先ほどと同じ鎌を持った死神のような存在がいた。
「ヒィィィィィ!」
咄嗟に窓を突き破ってその部屋から逃げ、何とか受け身をとって着地し、さらに走って逃げる。
後ろすら確認せず、とにかく走った。
普段はラムダが構成員達を鍛えている訓練場を一気に駆け抜け、さらに走る。
すると、月光に照らされて、前の方を誰かがテクテクと歩いているのが見えた。
あれは、、、イータだわ
「イータ!」
イータの側まで駆け寄り、一息つく。
イータであれば、魔力の代わりにアーティファクトで何とかしてくれるかも、
そう思い、顔を上げてイータの方を見ると、
スライムをこちらに放ってきている姿が見えた。
「⁉︎」
完全に気を抜いていて反応できず、イータのスライムに捕まった。
まるで金縛りにあったかのように、体が一切動かず、段々と視界が暗くなっていって、、、
・・・
ふと次の瞬間、視界が明るくなって朝日の差し込む部屋の光景が目に映った。
「なんだただの夢だったのね。」
夢だったとは言え、なんとなくどっと疲れたので、二度寝したい気分だったが、時刻を確認し急いで起きる。
手早く身支度を整え、学園の制服を着る。
そして部屋の扉を開けると、シド君がいた。
「今日は遅かったね。」
どうやら、いつもの時間に駅に居なかったから、女子寮まで迎えに来てくれたようだ。
「わざわざここまで来てもらって、すいません。」
「良いよ。彼氏だったら、このくらい普通でしょ?それより、体調とかは大丈夫なの?」
「はい。ちょっと変な夢を見たみたいだけなので、大丈夫です。」
「そ。じゃあ、行こっか。」
「はい!」
あぁ幸せだ。
さっきの変な夢の疲れも、彼と一緒に登校するだけでサーッと消えていく感じがした。
日々小説の締め切りに追われるなんて、嫌な夢だったわ。
・・・
・・・
最後にもう一度
“違和感”
に気をつけて