琴葉茜は甘き未来の夢を視るか?   作:DUN.ネコノカンリニン

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弐/コアユニット

「―――そして、突然ですが琴葉茜さん。あなたのVOXの修理の際に、仮死状態であった琴葉葵さんが死亡しました」

「は?」

 

 その言葉に、ウチは戦慄した。

 葵が……死んだ?

 

「嘘」

「嘘じゃないです。その原因も、私は知っています。

 ―――その原因は、茜さん。あなたです。あなたのコアユニットは、私が見たときにはもう壊れていました。だから、私が葵さんのコアユニットをコンピューターにつなげて問いました。―――あなたは、新しい体を得たいか。それとも姉のコアユニットとなるか、を。そうしたら、彼女はこう答えました。

『お姉ちゃんと一緒に生きたい』と」

 

 戦慄したウチに、ゆかりはさらに追い打ちをかけた。ウチの中に―――葵が、いる? しかもコアユニット? 死んだ原因がウチ?

 

「だからあなたに葵さんのコアユニットを移植しました。けど、大丈夫です。緊急時には、葵さんの人格が表に出るようになっているので」

「それってどういう……」

「つまり、葵さんはまだ死んでいないっていうことです。体は死にましたが、まだ思考できるほどの意識は存在しています。だから、実際のところは葵さんはあなたのなかで眠っているだけなのです」

 

 くらり、とした。

 なに? この状況。つまり、ウチは実の妹を犠牲にして、情けなく生き延びたってこと? ―――いやや。そんなん、絶対に嫌。ウチが死ぬのは構わへん。けど、葵がウチのために死ぬのは絶対に嫌や。

 情けない姉には、このぐらいの仕打ちがちょうどいい。

 そう思って、ウチはゆかりの基地―――「月の棺」の手の届く範囲にある刃物を手に取った。

 

「嫌や、ウチだけ生きるなんて、そんなん嫌や!」

「ちょっと、茜さん?」

「ウチは、今ここで死ぬ!」

 

 ウチは、刃物を頸動脈あたりに突きつける。そして意を決して―――首に刃物を突き刺す。

 

「―――あれ?」

「茜さん!」

 

 痛い。けれど、不思議なことに血は出ていない。あの雨の日のように、そこに血が垂れる、なんてことは起こらなかった。

 代わりに。折れた刃物がウチの足元に転がっていた。

 

「ばか、茜さん!」

「……なんで、ウチは死んどらんねん。クソ。ならもう一度や……」

 

 ―――パシン

 

 気持ちの良い音があたりに響く。

 呆然としていて、なにが起こったかわからなかったが、ようやく理解した。

 ウチは、ゆかりにビンタされたんや。

 

「あなた、何考えてるんですか! 何、勝手に死のうとしているんですか!

 良いですか、茜。葵さんはまだあなたの中で生きている。そう言いました。ええ、確かに言いました。それは保証します。けれど―――あなたが死ねば、葵さんも機能を停止します。眠っているだけとはいえ、眠っている間に心臓が止まれば、それは死んでいるというものです。しかも、あなた、葵さんの心臓を使って生きているのと同じなんですよ? それは、つまり故人の遺志を受け継ぐということです。あなたは、妹の、亡き妹の死を侮辱するだけでは飽き足らず、その意志まで踏みにじろうとしている!」

「……すまん。冷静になった」

「……そう、ですか。なら良かったです。それじゃあ、説明に入ってもいいですか?」

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