琴葉茜は甘き未来の夢を視るか?   作:DUN.ネコノカンリニン

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参/音声到達負荷機能

「―――では、説明に入ります」

 

 ゆかりはそう言って、語り始めた。にわかには信じがたい、空想(ユメ)のような話を。

 

「まず、私達ボイロは機械を埋め込まれた半人造人間です。その機械の名はVOICE-VOX。そこまではさっき解説しました。問題は、VOXの移植というのは前代未聞と言うことです。だから、私達はあなたの機能を知らない。そしてあなた自身も自分の機能を知らない。となると……実戦で知るしかないわけです」

「……長い! 要するになんや?!」

「要するに、戦っていただこうかなと。ほら、ちょうど()()が帰ってきたので」

「ん?」

 

 やはりユメである。戦うなんて言う非現実的なことは起きるわけ……

 ガチャっと扉が開く。そこにいたのは深い緑の髪が特徴的な少女。自分の記憶にある姿が正しいならば、アレは、そう。メチャクチャ危険だ。

 離反する際に軍の一個師団を壊滅させた(ミドリ)の悪魔。脅威度最大クラスの戦闘用ボイロ。その名は―――

 

「たっだいまー、ゆかりちゃん!」

「ぎゃああああああああああ! 東北ずん子ォォォ!」

 

 ………………

 ……………

 …………

 ……

 

「へへ、ごめんね。まさか新しい子がいるなんて知らなくて」

「い、いや。ウチも悪かった。急に驚いて叫んだりして、ごめんな?」

「いいよいいよ~。ま、私もそういう風な反応されるようなことやってきたからね」

 

 落ち着いたウチらは「月の棺」の中にある居間でお茶を飲んでいた。ついでにずんだ餅を添えて。(ゆかりは何か準備があるとか言ってどっかに消えていったが)

 

「……」

「……」

 

 き、気まずい! 会話が詰まってしまった。……ウチから切り出さなければ。

 

「なあ、ずん子……さん」

「ずん子でいいよ、茜ちゃん」

「あ、ああ……ずん子って、なんで軍から離脱したん?」

 

 ずん子は少し考えるような素振りをして、ウチに言った。

 

「うーん……それはね、私がゆかりちゃんの信念―――というか、目的に賛同しちゃったからかな」

「ゆかりの、目的?」

「うん。それはね、」

「―――みなさん、準備ができました。今から訓練場に行くので着いてきてください……って、どうしたんですか、こちらをじっと見て」

 

 間の悪いことに、当の本人が帰ってきてしまった。ウチとしては、そのゆかりの信念やら目的やらを聞いてみたかったのだけど。

 ま、しゃあないか。

 

「あっちゃー、それじゃあこの話はまた後で。茜ちゃん、行こうか」

「せやな」

 

 ウチはずん子に誘われて重い腰を上げた。……正直、訓練に行きたくないというのが本音である。

 そんなことは言えるわけもなく、ウチは訓練場へ連行された。

 

 

「ここが、私の基地『月の棺』の訓練場です。あまり耐久性はないので、暴れないようにしてくださいね」

「ほえー……この都会の交差点みたいなとこが訓練場って、どうなっとるんや。これ、もしかしてゆかりが一人で作ったんか?」

「ええ。私の機能を使えば時間と資源はかかりますが、ガワを真似るくらいなら、そこら辺の石をそういう風に『結』んで『断』てばそれなりになりますよ」

 

 すごっ。ここで暴れるのか。

 ずん子はもうなんか隣で弓みたいなの構えてるし。

 

「ふむ。もうずん子さんはやる気のようなので……早速始めてしまいましょう。茜さん、あなたの機能を、見せてください」

「なんか腹痛くなってきたんで帰ってもええか?」

「ダメです。それじゃあ、始めますよー」

 

 ウチに慈悲はないんか。

 ゆかりが指を三つ立てて、一つずつ折りたたんでいく。

 

「さん、にー、いち……では、始めてください!」

「行くよ、茜ちゃん! 兵装接続、VOX微小疑似隆起、エーテル生成、機能起動! ”広範囲報復兵装ZUNDA”、発射用意!」

「ちょちょちょ、ちょい待ってや!」

『茜さん、落ち着いてください』

 

 この声は―――

 

「ゆかり?!」

『修理するときに通信装置を取り付けました。いいですか、私がナビゲートします。あなたはそれに従ってください』

「お、おう。わかったわ」

『では前提なんですけど、今のあなたのコアユニットは葵さんのモノです。なので―――あなたは自分の中の葵さんを手探りで探して気のせいでもいいので接続してください。以上です』

「はぁ?! ちょ、ゆかり! おい、返事せえや、ジブン!」

 

 ぷつり、と糸電話の糸が切れたようにゆかりの声は無くなった。……シバいたろか、ほんま。

 というかなんやねん、葵を探せって。……そんなの、

 

「本気にせんと、お姉ちゃん失格や!」

 

 探す、探す、探す。

 雲をつかむように。火を食らうように。水を斬るように。夢を渡るように。

 ずっとずっと、奥へ。

 ウチの奥へ、

                                  ―――私の近くまで

 潜っていく。

                               ―――お姉ちゃんが来てる。

 そして遂に

                                  ―――そしてようやく

 見つけた! ウチの中に眠る、葵の残滓。それが幻であっても、ウチはようやく見つけたのだ。

 それに、優しく触る。

 知らないようなことばが、とめどなく流れ込んできて止まらない。だけど……それは、葵からの最後の贈り物なんだって。ウチは信じてる。

 

「―――VOX、疑似接続。機能低出力起動。……行くで」

「―――”広範囲報復兵器ZUNDA”、発射!」

「機能……『操作』、壁を作る!」

 

 ずん子が持つ弓から、緑色の光線が放たれる。見てわかるほどに弱々しい光であるが、それでも油断ならない。

 ()は、手のひらを地面につけ、地面のコンクリートに干渉する。

 それは一瞬のうちに壁を形成し、ずん子の光線を防いだ。

 

「そこまで! 二人とも、よい動きでした。しかし茜さん、あなたの機能、中々有能ですね。どうですか、私と一緒に『月の棺』の拡張工事を行う気はありませんか?」

「あー、ない、かな。私―――ん? ウチはメンドイことはせぇへん主義やから」

 

 一瞬、葵の口調が移ったかな。

 

「む、残念です。……まぁ、良しとしましょう。これで晴れてあなたも私たちの仲間です。ようこそ、世界の未来をつなぐ秘密結社『月の棺』へ。歓迎します、琴葉茜さん、葵さん」

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