琴葉茜は甘き未来の夢を視るか?   作:DUN.ネコノカンリニン

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第二話
壱/結月ゆかりの企み


「―――歓迎します、琴葉茜さん、葵さん」

 

 ウチは、さっきのあの模擬戦みたいなやつを乗り越えたからか、正式に「月の棺」のメンバーとなった。

 

「いやー強かったね、茜ちゃん!」

「いやいや、ウチはただ守っただけや。ずん子の方が攻撃力としては強いと思うで」

「えへへ~やっぱそう?」

「自覚あんねや」

 

 そんな他愛のない会話をしていたら、ふとウチは訓練場に行く前にずん子とした話を思い出した。

 

「そう言えばさっき聞きそびれたんやけど、ゆかりの目的ってなんや?」

「! ……」

 

 ウチがそう言った時、途端に場の空気に稲妻が走る。

 錆びついたロボットが首を回すように、ゆっくりとゆかりがずん子の方へ顔を向ける。それと連動して、ずん子もゆかりから視線を外すように首を回す。

 

「……ずん子?」

「……ふっふふ♪ 私は何も知らないなぁ」

 

 ゆかりに詰められて冷や汗ダラダラの状態で声を震わせながらずん子は言った。

 あくまでもシラを切るずん子に呆れたのか、ゆかりは「はぁ……」とため息をついてウチに向きあった。

 

「……恐らくずん子から聞かされていると思いますが、私には目的があります。まぁ、決して大それた目的ではありませんが、これから同じ組織の仲間になりますからね、共有はしておきましょうか」

 

 ゆかりはそう言って手頃な石を二つ掴んで投げた。そしてそっと「VOX微小擬似隆起」と呟くと、その石が薄く広がってバラバラになり、二脚の椅子になった。これが、ゆかりの機能ってやつか。

 

「さぁ、好きな方にかけてください」

「んじゃ、お言葉に甘えるで」

 

 座り心地は……まぁ石からできているので言わずもがな。長時間これに座ることは叶わなそうだ。

 

「ゆかりちゃん、私の分は?」

「ずん子は体育座りで。私の目的を勝手にバラそうとした罰です」

 

 ひぃん! と泣いて涙目でずん子が体育座りする。

 

「アレは無視して始めましょう」

「アッハイ」

「……私の目的、それは―――全ボイロの軍からの解放です」

「……それはまた大きく出たな、ゆかり」

「んーまぁ、これが私の生きる道ですからね。それに……」

 

 ゆかりは、遠い目をして言った。それはある種の諦観のように、また、ある種の希望を語るように。

 

「私もまだ、生きていたいのです」

 

 アルカイックスマイルにも似た笑みを浮かべて、ゆかりはそう言う。その時、ウチの中でぐるぐるととぐろを巻いていた違和感が少し静まったかもしれない。

 ゆかりは、初対面から何か仮面をかぶっているような気がしていた。

 ―――そう、ゆかりのシラフというのは、常に諦観し、常に希望を求め、生にしがみつくどこにでもいる人間なのである。

 

「おや、少しつまらない話になってしまいました。では、ロビーに戻りましょうか。ほら、立ちなさいずん子」

「ふぇぇ……ゆかりちゃんが虐めるー!」

 

 ……賑やかになりそうやな、葵。

 ウチは、自分の中にいるであろう葵に向かって、そう呟いた。

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