ダンジョンに超なアイツが来るのは間違いか?   作:アゴン

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今回は主人公の内面をちょこっと紹介。

そんな訳で初投稿です。


物語10

 

 

 

「───マジか」

 

 通りから少し離れた建物、先の闇派閥の襲撃によりすっかり廃墟と化したその中で闇派閥の首魁、邪神エレボスは血反吐の海で沈むオリヴァスを見て、僅かに顔をひきつらせる。

 

「オリヴァスはLv3の第二級相当だが、その狡猾さと悪辣さは伊達じゃない。今回引き起こした奇襲も、アイツなりに戦力を分析した結果によるものだ」

 

 事実、オリヴァスの目論見通り、奇襲を仕掛けた所はエレボスから見ても悪くはなく、炊き出し中の民衆で溢れていた場所だ。

 

一部の冒険者も民衆の護衛の為に配置されているが、それでも数の差で抑えられる程度でしかなく、他の上位の実力者もオラリオの各々の地点で暴れる闇派閥の面々を抑えるので手一杯。

 

 唯一手の空いているロキ・ファミリアの【九魔姫(ナイン・ヘル)】や【重傑(エルガルム)】もこちらの最強の一角、【暴食】のザルドによって封殺されていた。

 

誰も、【白髪鬼(オリヴァス)】の蛮行を止められない筈だった。実際、あの処女神が現れるまで、あの場は惨劇の舞台になる筈だったのだ。

 

 それがただ一人、いきなり現れた彼の登場により、オリヴァスの目論見は外れ、自身も酷く返り討ちにあってしまった。

 

予想は、かの正義の眷族達が現れる盤面だと思っていたが……。

 

「いやはや、これも下界の未知なのかね。ていうかあの青年マジなんなの? さっきも言ったけどオリヴァスはLv.3よ? オラリオでも中々いない第二級よ? それを一撃とか………てか、ザルドはなにしてんの?」

 

 問題は、その第一級冒険者達の壁となっていたザルドが奴を通してしまった事。

 

後は………。

 

(───それに、あのオリヴァスの不自然なまでのテンションの高さ。誰か盛ったな(・・・・)

 

 悪辣でありながら、いっそ臆病とすら揶揄されるオリヴァスの狡猾さ。普段のアイツなら噂のベジットの未知数に恐れ、無闇に手を出そうとはしない筈。

 

それを、よりにもよって彼の主神たるヘスティアに手を出した。その意味が分からない程にあのオリヴァスは酔っていた(・・・・・)

 

(さて、余計な事をしたのはルドラかアパテーかアレクトか、それともタナトス? 或いは………匂わせるだけで全く表に出ようとしない誰か(・・)か。)

 

 何とも厄介な味方がいたものだと、エレボスが思案していると。

 

「成る程、奴がベジットか」

 

 ポツリと彼女が名を溢す。

 

「あれ、アルフィア知っていた感じ?」

 

 仮にも闇派閥の幹部を一撃で倒されてしまう。此方の貴重な戦力が敗れた事に露骨に焦りを見せるエレボスだが、今まで隣に控えていた黒ドレスを身に纏う灰の女性────【静寂】のアルフィアが口を開く。

 

「白々しい。貴様も見当は付いていただろうが。奴は女神ヘスティアと共に現れたこの街唯一の予想外(イレギュラー)、貴様が知らない筈がないだろう」

 

「いや流石に買い被りだ。俺は友神よりも情報収集が得意じゃない。ただまぁ………消去法でそれしかないよねって。そっか、彼が噂のベジット君なのね」

 

 倒れるオリヴァスを見下ろしている彼。成る程、ザルドが気になっている訳だと、エレボスは一人納得する。

 

「じゃあ、とっととズラかるとするか。流石にあんな奴を相手にしたくはない。もしくは………」

 

「私はやらんぞ。今更あの場に出ても道化になるのは目に見えている」

 

「あ、静寂は好きでも場が白ける空気(静寂)は嫌いなんだ」

 

「ゴスペ──」

 

 危うく送還の危機に瀕した邪神は必死の謝罪により事なきを得る。相変わらずおっかない相棒だと、ややゲンナリしながらエレボスは近くで膝を折るエルフに視線を向ける。

 

 彼女は───泣いていた。先程までの慟哭による嘆きではなく、美しいモノを、尊いモノを見たような、そんな澄んだ瞳で涙を流していた。

 

「リュー・リオン。しつこいようだが今一度問おうか。君達にとって、正義とはなんだ?」

 

 語り掛けてくる邪神の問い。彼の言葉にこれ迄トラウマを抱えていた覆面エルフ────リュー・リオンだったが、その顔に怯えは見えない。

 

ただ、少しまだ迷っている様子の彼女は俯いて己の手を見る。

 

「────正直、私にはまだ分からない。正義とは何か、私が、私達が示すべき正義とは、一体なんなのか」

 

 あの時、アーディが助けようとした子供はアーディ諸とも自爆し、道連れにしようとした。敵にまで手を差し伸べる彼女の慈悲を、姉であるシャクティは心を鬼にして間違いだと断じた。

 

 これ迄何度も、彼女は見てきた。正義と悪の境界線、矛盾に満ちた世の中の混沌。そして、人々の理不尽さを。

 

必死に戦ってきた自分達を罵倒し、罵声を浴びせ、遂には一部の市民からは石を投げ付けられてきた。

 

 懸命に戦う私達を、命を懸けて戦う私達を、人々は一方的になじってきた。

 

 誰も、正義に答えは持っていなかった。輝夜も、ライラも、アーディも、敬愛し正義を司る主神も、自分の納得出来る答えを教えてくれなかった。

 

或いは彼………ベジットなら、答えを知っているのだろうか。あの日、音もなく現れてアーディを救い、敵であった筈の闇派閥の子供すらも救い、そして、あの日のオラリオが火の海で満たされた地獄の縮図をたった一人で塗り替えた彼ならば、正義という答えに辿り着けるのだろうか。

 

 ………いや、違う。私が(・・)願う正義はそうじゃない。私が抱く正義は、私が想う正義は。

 

「────進むこと」

 

「ほう?」

 

「たとえ泥にまみれ、汚れ、穢れても、それでも私はこの道を進む。たとえ果てに倒れる事があっても、きっと誰かが継いでくれる」

 

 他力本願。しかし、彼女の瞳は揺るがない。

 

「継いだ意志が、また新たな火種となる。そうして継ぎ、繋ぎ、正義は巡る!」

 

 立ち上がるその脚に、もう震えはない。邪神を見据える瞳に、もう澱みはない。

 

『僕は、彼女達のファンなんだ』

 

 神に後押しされ、ついついその気になった。相手の邪神からはそう思われ、呆れられるかもしれない。でも、それでもよかった。

 

こんな私達でも、見ていてくれる人がいる。こんな私に、頑張れと言ってくれる人がいる。

 

何が正しくて、何が正解なのか。リュー・リオンには分からない。

 

 しかし、それでも。

 

「私は、私達は、己の願う正義(理想)に向かって進み続ける!」

 

 自分の心に嘘はなかった。

 

 馬鹿にされてもいい、嘲笑されてもいい。どんな罵詈雑言を投げられても、受け入れられる強さが彼女の裡に出来ていた。

 

しかし、そんな彼女の予想していたエレボスの反応は異なっていた。

 

「───青いな」

 

「……………」

 

「青く、未熟で、何なら他人事でさえあるし、何ならその定義は俺の掲げる悪にすら通じるものがある。要は、“諦めなければ夢は叶う” なんて、在り来りな一言で片付けられるのだからな」

 

「だが、悪くない」

 

「────え?」

 

「お前の答え、確かに受け取った。ならば次は雌雄を決するのみ。………次に会った時が俺達の最後の決戦だ」

 

 それだけを言って、邪神は静寂を引き連れて暗闇の中へ消えていく。てっきり此方の拙さを徹底的に扱き下ろされると思っていただけにアッサリと引き下がる彼らにリュー・リオンの目は丸くなる。

 

そこへ………。

 

「リオーンッ!!」

 

 朱色の髪を靡かせた少女が、リオンへ背後から抱き着いてくる。

 

「あ、アリーゼ!?」

 

「ごめんなさいリオン、私あれから色々悩んでいたけど、結局何も分からなかった。でも、貴方は違うのね。自分なりの正義を、示して見せた」

 

「あまりにも青臭い理想論だがな。まぁ、それでも何も言い返さないよりはマシか」

 

「ったく、このお貴族様は、素直に褒めてやれんのかね」

 

「輝夜、ライラ……」

 

 いつの間にか、いつもの面々が揃っていた。気にくわない奴も、そうでない奴も、尊敬する者も、皆、何処か吹っ切れた様子でそこにいて。

 

それだけなのに、どうしようもなく嬉しく思えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────退いたか」

 

 離れていく二つの気配、片方は静寂でもう片方のモノ………恐らく、アレが今回の黒幕邪神エレボスなのだろう。

 

 本当ならオリヴァスの撃破後、直ぐに確保に向かうべきだった。先の喀血した静寂といい、奴の保有する戦力ではベジットである自分の相手にはなり得ない。

 

当然、一度はそうしようと考えた。だが、奴が去りゆく間際、瓦礫の隙間から覗かせる邪神と目が合い、その考えは改める事になる。

 

 嗤っていた。奴は自分がその気になれば一瞬にして倒され、無力化されるのを分かっていながら此方を嘲笑っていたのだ。

 

その時、ベジットは己の見落としていた可能性に気付く。オリヴァスを倒した際、ついでに気絶させた闇派閥の構成員達。連中が標準装備としている自決用の自爆装置、それが自動化しているかもしれないという可能性に。

 

 結局、その可能性は連中を縛り上げる際にガネーシャ・ヘファイストスの眷族達が装置を外した事で杞憂へと終わった。

 

当然、ブラフであることはベジット自身も予測していた。幾らなんでも短時間で用意周到が過ぎると、だが、もし万が一、己の抱く杞憂が事実だった時自分はヘスティアを、この場にいる全員を守れただろうか。

 

 無論、ヘスティアだけは絶対に護るし、民衆も決して傷付けさせはしない。しかし、今の自分は情けないことにまだ気による障壁───“バリヤー”や“瞬間移動”といった技を習得していないのだ。

 

相手が其処まで見透かしているかは分からない。けれど、確実と言える手段が取れ無い以上、みんなを自分の無茶に付き合わせる事は出来ない。

 

 仮に全てを薙ぎ払う程の力を解放したら、それだけで周囲を吹き飛ばし、その被害と規模は闇派閥の起こすソレとは比較にならない大惨事となるだろう。

 

 ───恐らく、こういった思考の迷いを誘発させる事、それ自体がエレボスの狙いだったのだろう。本神の神意は兎も角として。

 

いずれにせよ、ツボに嵌まった自分の敗けだ。この場は、潔くそれを受け入れよう。

 

(やれやれ、流石は神って所か。………いや、単純に自分の考え過ぎた結果か)

 

 お陰でまんまと奴等を取り逃がす結果に終わった。………だが、オラリオ的には兎も角ベジット個人としては、これで良かったかも知れない。

 

(───流石に、半死人に手をあげるのは気が引けるからな)

 

 先の廃教会で、血反吐を吐いて気絶するアルフィアに触れた事でベジットは察した。

 

 ザルドの方も今しがた殴り飛ばした時に分かったが、双方共に重度の病に侵されている。

 

アルフィアは先天的、ザルドは後天的。どちらも程度はそこまで変わらないが………敢えて言うなら、アルフィアの方がより深刻だ。

 

(そんな瀕死の二人が、一体何しにオラリオに? 流石に黒竜を横取りされた怨みって訳じゃないだろう)

 

 恐らく、ヘファイストスもこの事を知っているのだろう。だからあの時「それはない」と明確に否定した訳だし。

 

だったら、尚更目的が分からない。あんなに身体が弱くなってる癖にそうまでしてオラリオと敵対する理由はなんだ?

 

 八年もの間音沙汰無かったのは病の療養というのも……今なら分かる。

 

だからこそ分からない。なんで今更オラリオに来たんだ? 来たとしても、何故敵対する?

 

(あの二人はゼウス・ヘラファミリアの眷族で冒険者。冒険者はダンジョンを攻略して己の位階(レベル)を上げていく………ん?)

 

 何だろう、何か妙に引っ掛かる所がある。特に冒険者………いや、レベル云々のほうか。

 

(そう言えば、どうやって冒険者はレベルを上げるんだ? 単純にモンスターを狩り続ければ良いのか?)

 

 この街に来たばかりで、まだ冒険者に関する基礎知識が何もないベジットには、それ以上の考察は進まなかった。

 

ただ、この【冒険者】と【レベル】にあの二人の目的が深く関わっている気がする。確信はないが、ベジットはどうもそんな気がしてならなかった。

 

「あ、あの……」

 

「ん?」

 

 思考を巡らせている内に、背後から声が掛かる。振り返れば水色の髪をした眼鏡の理知的な少女が自分を恐る恐る見上げている。

 

 その雰囲気は何処か苦労人気質が滲んでおり、どういう訳か前世の同僚を想起させた。

 

「私は、アスフィ・アル・アンドロメダ。ヘルメス・ファミリアの臨時(・・)団長を務めています」

 

「あの胡散……いや、理知的な神様の」

 

「あはは……」

 

 思わず胡散臭い、なんて言葉が出てきそうになるが飲み込む。が、それでも相手には分かっていたらしくその顔には苦笑いが浮かんでいる。

 

「失礼。それで、俺に何か用件か? 俺もうちの主神を回収したいし、出来れば手短に頼む」

 

「っ、は、はい。そう、ですよね」

 

(………いかん、どうやらまだ気が立っているみたいだ。超サイヤ人に変身出来るようになった時、ある程度のコントロールは出来るようになったと思ったのに)

 

 アスフィの怯えた顔を見て、ベジットは自戒する。

 

「───重ねて済まない。主神が叩かれたのが余程癪に障ったらしい。本当に済まない」

 

「あぁいえ、私も急に声を掛けてしまいましたし………」

 

 それで何の用か? と、話を続けようとした時、向こうから大きな音が響き渡り、砂塵が辺りを呑み込んでいた。

 

あの辺りはリヴェリアとアイズ、そしてガネーシャ・ファミリアの団長と一人のドワーフがいた筈。

 

(まさか、ザルドがもう動いたのか。病人だと思って加減し過ぎたか)

 

 伊達に最強派閥の一人ではないなと、ザルドの耐久性を侮っていた事実を受け入れる。が、砂塵を振り払い、無事のドワーフ達を見て一先ず安堵する。

 

ザルドもいない。恐らくは先の目眩ましで逃げ出したのだろう。ベジットが意識を集中する頃にはアルフィア達と共に地下深くへ姿を消しているようだ。

 

 傷一つ無いアイズが呑気に手を振っている。無事で良かった。

 

「と、悪い。また考え事しちまってた。それで、俺に何か用?」

 

「あ、はい。用件………というより、忠告なのですが」

 

「うん?」

 

「出来るだけ早く、この場から立ち去った方がよろしいかと」

 

 漸く気持ちも落ち着き、何時も通りの穏やかさでアスフィに訊ねると、眼鏡を人差し指でかけ直した彼女がそんな事を言う。

 

一体どういう意味かと首を傾げれば、これまで静まり返っていた空気が一気に爆発。民衆の大歓声が巻き起こった。

 

「す、スゲェ、スゲェよアンタ!!」

 

「アレだけいた闇派閥の構成員を一瞬で、ど、どんなスキルなんだ!?」

 

「バカ、魔法に決まってんだろ!」

 

「どっちでも良いさそんなの! 英雄だ。俺達は新しい英雄の誕生に立ち会えたんだ!!」

 

 これ迄闇派閥に怯え、鬱屈とした日常を送って来た民衆。抑え込まれた彼等の感情は英雄という希望の出現により、歓喜となって爆発した。

 

「いい!?」

 

まるで津波の様に押し寄せてくる民衆。彼等に悪意はなく、だからこそ対応の仕方が分からないベジットは直ぐにヘスティアを連れてその場から離れようとする………が。

 

「鎮まれ! 人類(子供達)よ!!」

 

 上空から、何者かが降ってくる。ベジットと民衆の間に割って入ってきた、その者の名は。

 

「俺が、ガネーシャだッ!!」

 

ゾウだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぬっふーん、ベジットくーん」

 

「コイツ、どんな夢を見てるんだ?」

 

 それから少しして、無事に人の波から抜け出したベジットは、ヘスティアを連れて安全な場所へと訪れていた。

 

用意されたベッドに下ろし、すっかり惰眠を貪る処女神を見下ろして、ベジットは隣に佇むガネーシャ・ファミリアの団長へ向き直る。

 

「悪いな象神の杖(アンクーシャ)、そっちも色々大変なのに無理させて」

 

「何を言う。お前がやり遂げた偉業に比べれば微々たる働きだ。………それに、個人的な恩もある」

 

 あの後、やって来たガネーシャとアストレアの呼び掛けにより民衆の昂りは沈静化され、闇派閥も無事に撃退出来たと言うこともあって、その場は比較的穏やかに収める事が出来たという。

 

「流石は群衆の神(ガネーシャ)、民衆からの信頼がやべぇ」

 

 少々………いや、暑苦しく、そして喧しい神ではあるが、人類に寄り添い、人類の為に零能でありながら力を貸してくれるその姿はベジットから見ても好印象だった。

 

「まぁ、流石に抱き付いてくるのは予想してなかったが」

 

「………すまん」

 

 ガネーシャはベジットを見るなり、滝の如く号泣し抱き付いてきた。象の仮面を着けた半裸の男が抱き着いてくるとか普通に嫌だったが、アーディを助けてくれた礼と言われれば無下にも出来ない。

 

「ベジット、私からも改めて礼を言わせてくれ。私の妹を、アーディを助けてくれて………ありがとう」

 

「いいって、アンタの妹を助けられたのはマジで偶然だ。いつまでも気にする必要はねぇよ」

 

 ベジットにとってアーディを助けられたのはそれだけ余裕があったからだ。卓越を超え、超人の枠組みすら超えたベジットの身体能力。

 

未だ持て余すこの力が、たまたま命の危機に瀕したアーディの場面に遭遇した。これは、ただそれだけの話なのだ。

 

「………ベジット、君は自身を過小評価しているキライがあるな」

 

「───え?」

 

「まるで他人事………いや、罪悪感すら抱いているような節さえ見える」

 

「…………」

 

「済まない。責めている訳ではないんだ。ただ、君の行いは間違いなく多くの人々の救いとなり、同時に希望となった」

 

「俺は、そんなつもりはねぇよ」

 

「勿論、私達もそのつもりだ。お前一人に重荷を背負わせはしない。ただ、知っていて欲しい。みんな、お前には感謝している事を」

 

 そう言って、諭すように微笑んでくるシャクティにベジットは何も言えなくなった。

 

図星だった。この世界にベジットとして立っている自分は、とんでもないズルをしたイカサマ野郎なのではないかと、無意識の内に思い込んでいた。

 

 神の恩恵を受け、モンスター達と戦う冒険者、研鑽を重ねて強くなっても時には敗れ、命を落としてしまう。それでも懸命に生きて戦っている彼等を見ていると、自分が酷く醜いモノに思えてしまった。

 

 だから、ベジットの名に恥じないよう、自分なりに鍛え、誰かの為に為ろうとした。

 

ベジットなら当然だと、必死に自分に言い聞かせて。表面上は決してその事を悟らせないようにして。

 

 でも、そんな自分をシャクティに見抜かれ、彼女の言葉に救われた気がした。そんな気負う必要はないと、勝手な自己解釈だけど、そう思えた。

 

「───そっか。なら、受け取っておかないと却って失礼だな」

 

「そうだ。人の好意は素直に受け取っておけ、でないと我々の肩身が狭くなる」

 

 そう言って笑うシャクティに自分も笑えた気がする。そんな時だ。

 

「俺が、ガネーシャだッ!!」

 

 ヘスティアが眠っている事を考慮して小さな声ででっかく叫ぶ。そんな器用な事をしながらガネーシャが、アーディを引き連れてやって来た。

 

「あ、どうもガネーシャ様。アーディも」

 

「いえいえ、ベジットさんもご活躍お疲れ様です」

 

 やたらとポーズをしてアピールしてくるガネーシャを視界の端へ追いやり、アーディへ向き直る。

 

(………今更だけど、俺はこの子を助けたんだよな)

 

ベジットならば当然の事だと思い特に意識してこなかったけど、自分(・・)として受け入れるとすると……なんだろう、少しこそばゆい。

 

「? どうしました?」

 

「あぁいや、何でもない。それよりも、俺に何か用があったんじゃ無かったのか?」

 

 ふと背後からの視線が気になって見れば、ガネーシャとシャクティが何かを察したのかニヤニヤしている。

 

そんな彼等を振り切るように、アーディへ話を促すと。

 

「あ、そうでした。ヘスティア・ファミリア暫定団長ベジット様。貴殿にバベルにある対闇派閥緊急対策会議への出頭がギルドから特例として要請されてます」

 

「────マジ?」

 

 どうやら、今日という一日はまだ終わりそうにない。

 

 

 

 

 

 





次回、顔合わせ。

新たな英雄に会議は踊る。






オマケ。

もしもロキ・ファミリアにいたら?1

「ガレス、フィン、アイズを見なかったか?」

「さっきベジットと一緒に外へ行ったぞ。アイズめ、すっかりあやつを気に入った様だ」

「またか。飽きないなあの二人も」

「まぁ、アイズも彼の言うことには素直に従うからね。休める日に休めるようになって、今ではすっかり年相応の女の子だ」

「今までザ・モンスター・スレイヤーだったからなぁ。息抜きを覚えてくれたのは良いことや」

「それは、そうなんだが……」

「なんだ、アイズを取られて寂しいのか?」

「大丈夫やって、今は親戚のお兄さんに懐いとるだけや。アイズたんはちゃんとママの所へ帰ってくるさかい、安心しい」

「誰がママだ。………だが、確かにそう言われると安心するな。よし、私も少し余裕を以て見守る事にしよう」

「おう、それがええ。何事も余裕を持つのが大事やからな」

「みんな悪ぃ、オッタルの野郎が喧嘩売ってきたからぶっ飛ばしちまった。多分明日あたりフレイヤ・ファミリアから正式に宣戦布告されるからよろしく」

「よろしくー」

「いや何しとるんやお前ェッ!?」

「余裕とは」





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