ダンジョンに超なアイツが来るのは間違いか?   作:アゴン

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誰か、ヒロアカのデク君が主役のダンまち書いてくれないかな。

そんな訳で初投稿です。


物語11

 

 

 

「いやぁ~、疲れたよ! 都市外に通じる創設神(ウラノス)用の秘密地下通路(抜け道)を往復する毎日は!」

 

 闇派閥の襲撃を見事撃退したその夜、アストレア・ファミリアの本拠地にてアストレアとヘルメスが来賓の為の一室にて対面していた。

 

豊穣神(デメテル)と協力して、彼女の《隠れ家》に保管してある大量の食糧を運搬する………重要とはいえ、今までの厄介事(仕事)の中で一番地味だった」

 

「ご苦労様、ヘルメス。でも、都市を包囲している闇派閥(イヴィルス)には気付かれなかった?」

 

「そこは抜かりないさ。ベオル山地の麓の抜け道を出入りしたのは、オレを含め、旅人に扮した下級冒険者(ローリエ)達だけ、敵に察知されないよう細心の注意を払った。ま、少数だったが故に運搬を終えるのに今日まで時間が掛かってしまった訳だが」

 

 最初の襲撃で、オラリオの勢いを削いだ闇派閥は、そのままオラリオを包囲する形で陣を展開し、冒険者を中にいる民衆共々追い詰めていった。

 

オラリオの危機に備え、ギルド創設時より用意されていた極秘の抜け道。それを利用して最悪の飢餓を回避する為に、旅人の加護神としても知られるヘルメスが、食糧の運搬役に抜擢された。

 

 ………本音を言えば、都市外から援軍の類いを連れて来たかったのだが。

 

「済まない。同じ理由で援軍を連れてくることは出来なかった」

 

とは言え、それでも彼の貢献は多大なモノに違いはなく。

 

「いいえ、十分よ。お陰で都市の民、全員に食糧が行き届く。それに医療具や道具(アイテム)まで持ってきて貰った。困窮していた者達にも活力が戻る。これで私達は戦えるわ。本当にありがとう、ヘルメス」

 

 天秤の女神、アストレアは申し訳なくしているヘルメスに心からの感謝を口にした。

 

そして、相手も神。故に、ヘルメスはこれを期に悪ノリをし始める。

 

「ふ、ふぇ~、アストレアママ~、僕頑張ったんだよぉ~、膝枕して、ナデナデしてぇ~!」(きったねぇ裏声)

 

 全力の赤ちゃんプレイである。何処から出したのかおしゃぶりを口にして、ル◯ンダイブをぶちかます。

 

天然であるアストレアはそれが一瞬何なのか理解できず、目を丸くさせると、横から割って入ってきた水色の旋風が、男神の横っ面を蹴り飛ばした。

 

「ぶへらぁ!?」

 

 ヘルメス君、吹っ飛んだァッ! 宙を舞い、弧を描いて落ちるヘルメス。危うく天界に送還仕掛けた彼の前に、仕事疲れのOL(鬼神)が仁王立ち。

 

「────死にますか? ヘルメス様」

 

 ニッコリと年頃の少女らしい満面の笑みを浮かべ、可憐である筈のその顔中に青筋を浮かべる己の眷族(アスフィ)に、ヘルメスは己の死を覚悟して。

 

「………色々と、スミマセンでした」

 

 その昔、自分をこれでもかと使いパシりにしてくれたゼウス(糞爺)直伝、ジャンピング土下座でこれ迄の諸々について誠心誠意謝り倒すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうか、ベジット君が………初めて目にした時からタダ者ではないと感じたけど、それ程だったとは」

 

それから、自分が外へ出ていた間に起きた出来事を、アストレアとアスフィから聞かされたヘルメスは、腫れた頬を冷やしながら神妙な顔付きになる。

 

「お陰で、一時は民衆が騒動起こして大変でしたよ。幸いガネーシャ様がその場を収めてくれたから、どうにかなりましたけど………」

 

「そうか。………ガネーシャ、良い仕事をしてくれたな」

 

「そうね。あのまま放置してたら、きっと彼はオラリオの英雄に奉り上げられていた。本人の望みとは反対に」

 

「え?」

 

 今日の出来事中で、最も劇的だったのはやはりベジットという一人の冒険者による大立ち回りだろう。自身の主神の危機に瞬時に駆け付け、襲い掛かる悪を蹴散らす様はまさしく物語に出てくる英雄のソレ。

 

 英雄とは、この世界に生きるすべての人間の憧れであり名誉であり、この上ない栄光である。事実このオラリオにもそういった英雄に憧れて冒険者になった者も少なくない。

 

 しかし、二柱の神の言葉からは、まるでベジットが英雄を忌避している様にさえ感じられた。

 

二柱(お二人)は、ベジット氏が英雄になるのを拒んでいると、そうお考えなのですか?」

 

「……そうだな。少なくとも、俺にはそう見えたな」

 

 あの日、ヘルメスはバベルでベジットと僅かに絡んだ際、彼の内に秘めた細やかな願望を見抜いていた。

 

 アレは過分な富や名声に拘っている者の目ではなく、どちらかというと平穏を求めていた。確かに強さを求める求道者染みた欲求はあるだろうが………それでも、周囲を巻き込む程の混沌は望んでいない筈。

 

 そんな彼にとって、英雄なんて肩書きは悪目立ちな看板にしかなり得ないし、場合によっては最悪、その看板を捨てるためにオラリオから逃げ出しかねない。

 

「アスフィ、その彼が英雄云々の話は何処まで広がっている?」

 

「え? いやその………どういう訳かガネーシャ・ファミリアだけでなくロキ・ファミリアも事の沈静化に当たっていましたので、其処までではないかと。ただ、ベジット氏の活躍をまるで無かった事にしているのが少し気になります」

 

「ロキが? ………いや、成る程。【勇者(ブレイバー)】の指示だな。やはり彼もベジット君の異質さを肌身で感じたか」

 

 恐らくは、彼もバベルの中央広場でベジットと対面した時、その人となりを分析したのだろう。

 

 ベジットという男は、あまりにも普通(・・)だ。持ち合わせている力とは不釣り合いな程に凡庸で、それでいてその感性はこの時代にはそぐわない程に稀有。

 

 アレ程の力を持っていながら、不自然な程に謙虚だ。そこに一切此方を見下した素振りは無いのだから、かの勇者も分析に苦労した事だろう。

 

 なんの見返りも求めず、ただ人を救う。それは力ある者の宿命であり責任なのだろうが、それでも彼は異質に見えた。

 

「彼の人間性()尊ぶべきもの。あまり詮索するのは良くないと思うわ」

 

 そんなヘルメスの思考を止めるように、アストレアが呼び掛ける。それもそうだなと一息吐いたヘルメスは、首を傾げるアスフィに笑みを向ける。

 

「なんでもないさ。それよりもアスフィ、ロキ・ファミリアも協力してるって聞いたけど、具体的にはどんな?」

 

「主に避難誘導を主軸に行っています。ヘルメス様達が運んで下さった食糧も手渡し、それぞれ別区画へ……」

 

「その際、民衆から不満の声は?」

 

「ありません。充分な食糧と家族が一緒に過ごせるという事で、みんな昼の事など既にそっちのけですよ。全く、単純なんだから」

 

 ほんの数時間前まで新たな英雄の誕生に喜んでいた癖に、既にそんな事など忘却している民衆に、アスフィは呆れの溜め息を漏らす。

 

 そんな彼女とは反対に、ヘルメスとアストレアの神は、安堵したかのように胸を撫で下ろした。

 

 しかし、二柱がそうなるのも当然だろう。民衆は、人は、人類は、時に英雄にさえ牙を剥く。

 

 自分達を助けてくれる事を当たり前だと思い込み、同じ人間である筈の英雄を、まるで機構(システム)の様に扱い始める。

 

 軈ては自分達の期待に添えない英雄を、或いは脅威に感じ、身の危険を感じた権力者は、英雄を廃する為にあらゆる手段を講じ、追い詰めていく事だろう。

 

 時には英雄の愛する人を罠に利用し、時には英雄の在り方を辱しめる。過去に同じことを繰り返してきた人類だからこそ、二柱(二人)が危惧した可能性。

 

 その芽がまだ小さい内に摘むことが出来た。指示を出したガネーシャと勇者に、万が一の事態が脳裏に過ったヘルメスは心の底から称賛の言葉を送りたかった。

 

「───アスフィ、覚えておくといい」

 

「は、はい?」

 

「世の中には栄誉を求めず、ただ植物の様に生きていたい、そんな人種も存在するのだと」

 

 植物は言い過ぎだけどね。未だ理解出来ていないアスフィに、ヘルメスはウィンクして誤魔化した。

 

(───やれやれ、予定より多めに持ってきて良かったよ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 バベル。オラリオ全土を見渡す程に高く聳え立つ迷宮都市の象徴。商業施設、公共施設、迷宮(ダンジョン)で得た換金所等、様々な施設設備が整った文字通りダンジョンの楔。

 

 そこの10階の会議室に、ベジットは訪れた。

 

「やぁベジット、来てくれて感謝するよ」

 

「おう、さっき………いや、もう昨日か。そっちも無事で安心したぜ」

 

 円卓のテーブル。そこに待ち構えていた者の一人、ロキ・ファミリアのフィン・ディムナが親しみの笑顔を浮かべて出迎える。その隣には彼等の主神であるロキが控えていた。

 

「そちらも、無事で何よりだ。………女神ヘスティアは大丈夫かい? オリヴァスに叩かれたって聞いたけど」

 

「あぁ、今はガネーシャ様の所で預かって貰ってる。今は疲れが溜まっているのか、ぐっすり眠ってるよ」

 

「ケッ、あのドチビが。チビの癖に生意気に身体張るからそうなんねん」

 

「………済まないベジット、うちの主神が失礼した」

 

「あぁ、いいって。その悪態もロキ様なりの気遣いなんだろ? 分かってるって」

 

「んなっ!?」

 

 女神ロキの態度こそ悪いが、その口ぶりは言う程棘はなく、寧ろヘスティアの身を案じている様にさえ思えた。

 

「は、はぁ!? ウチがドチビの事を心配!? 自分、何を適当言うとんねん」

 

「あれ? 違うのか?」

 

「当たり前や! 何でウチがあのドチビの事を心配せなあかんねん! あくまでウチとドチビは敵同士や! そこんとこ、勘違いすんなや!」

 

 まぁなんてテンプレ(王道)なツンデレなのだろう。そう思っても決して口にしないベジットだが、それでも言い足りないのか、細目を見開いてロキが指を差してくる。

 

「大体、なぁんで自分がウチのアイズたんとヨロシクやってんねん! アイズたんはウチのお気に入りの可愛い娘、手ェ出したら承知せんからな!!」

 

「あ、そうだ。フィン、俺がダンジョンに潜る際、アイズと一緒に行く約束してたんだけど……」

 

「あぁ、リヴェリアから話は聞いてるよ。その時は此方こそ頼むよ、知っての通り、ヤンチャな娘だから」

 

「勿論、そちらの大事なお子さんを預かるんだ。無茶はしねぇよ」

 

「無視すんなや!?」

 

 すっかり井戸端会議と化した会話、ロキからのキレッキレなツッコミを受けた後、目の前のフィンはベジットに席に座るよう促し、改めて話を始めた。

 

「話は他でもない。ベジット、君の力を僕達に貸して欲しい」

 

「あぁ、良いぜ」

 

 これ迄の流れを見て、少し渋るかと思っていたベジットが、即答で了承してくれた事にフィンの目が丸くなる。

 

「───即答、なんだね」

 

「あぁ、ヘスティアを危険に晒して漸く理解した。今、この街は非常に危機的状況に置かれている。神々から目を付けられるとか、保身に走っている場合じゃねぇ。この状況は一刻も早くケリを付けるべきだってな」

 

「ほーん? 随分と吹っ切れたみたいやな。なら、遠慮なく宛にさせて貰うで」

 

 フィンもロキも、ベジットが尋常ならざる力を持っている事は薄々気付いていた。嘗て古の時代の頃、下界の人類は神の恩恵も無しに大穴(ダンジョン)から這い出るモンスターを相手に戦ってきた歴史がある。

 

 時には神々の贈り物(精霊)の力を借りて、困難を打ち砕き、窮地を乗り越え、歴史にその生き様と足跡を刻んできた。目の前のベジットもそういう生まれながらの【英雄】の素質を持つ者、神々のシステムから逸脱した存在なのだと、そう思っていた。

 

 ただ、嘗ての最強(ザルド)を一蹴する程とは、流石に予想外だったが。

 

「ただ、一つ我が儘言わせて貰うとしたら……」

 

「君の武勇を、極力広めないようにする。そういう事だろ?」

 

「分かるのか?」

 

「殆ど勘だけどね。君はこれ迄、あまり力を誇示しようとしなかったし、リヴェリアからも君の謙遜ぶりを耳にしていたからね」

 

「面倒な注文をしているのは理解している。だから出来れば、の範囲で良い」

 

「まぁ、確かに今のドチビは零細ファミリアやからなぁ、如何に兄ちゃんがツヨツヨでも、流石に護りきれへんか」

 

 否。ベジットの力を以てすれば、オラリオの有数派閥は愚か、オラリオそのものをダンジョンごと破壊する事が可能。オラリオに蔓延るあらゆる害意、悪意の類いをまとめて消滅出来るのは、言うに及ばない。

 

 そうしないのは、偏にベジットが良心的で至極………或いは、稀有な程にマトモな倫理観の持ち主だからに他ならない。仮に、万が一そうなれば世界は混沌を越えた大混乱の時代を迎え、そこから派生して多くの悲劇が産み出されてしまうのは想像に難しくない。

 

 尤も、目の前のロキ・ファミリアの団長とその主神は、そこまで想像出来ていないのだが………こればかりは仕方がない。

 

 それになにより、そんな事をすればヘスティアが悲しむ。それだけは御免だ。

 

 尤も、万が一の時はそうなる前にオラリオから逃げ出せば良いだけだから、ぶっちゃけそこまで真剣に悩んではいない。

 

  あくまでも“出来れば”の話。たとえ予想外の事態が起きて、ベジットに衆目が集まっても、ベジット本人は誰かを恨むつもりはなかった。

 

「本音を言えば、このままロキ・ファミリアとは仲良くさせて欲しい所だ」

 

「それは………同盟、という意味かい?」

 

「うんにゃ、単に仲良くしたいってだけさ。アイズとも約束したしな」

 

 ファミリアとしての繋がりではなく、ベジット個人としての付き合い。派閥の利益や損得勘定とは別に、ご近所付き合い的な意味合い。

 

 それが、どれだけこのオラリオでは相手に付け込まれる要因になるのか、果たしてベジットは理解しているのだろうか。

 

 ………いや、そういった(しがらみ)を度外視しているからこそ、彼の人格が好ましく見えるのだろう。

 

「そうだね。僕個人としてもファミリアとしても、君達と敵対するのは避けたい。アイズも悲しむからね」

 

「ま、そうなったら無条件に降伏するかもしれんしね。ホラ、ヘスティア・ファミリアって文句無しの弱小零細ファミリアだから」

 

「文面上はその通りやから腹立つなぁ」

 

 今後、ヘスティア・ファミリア……もとい、ベジットはオラリオにて飛躍の時を迎えるだろう。最弱(Lv.1)の身でありながら、どんな冒険を成し遂げていくのか、フィンは他人事でありながら何処かワクワクした気持ちになった。

 

「ハハ、了解した。僕も君の要望に可能な限り答えよう」

 

「頼む。その代わり、俺もアンタの指示には従うようにするからよ」

 

 互いに歩み寄り、握手を交わす。

 

「それで、アンタは俺になにを頼みたいんだ? やっぱり向こうの最高戦力を相手にするのか?」

 

「いや、それは僕も考えたが……」

 

「失礼します!!」

 

 突如、扉を勢いよく開けて入ってきたギルドの職員が現れる。酷く慌てた様子から余程の事態なのだろう。

 

「た、たった今確認が取れました! 目標は、全ての階層を(・・・・・・)破壊しながら(・・・・・・)進行中です!」

 

「っ!」

 

「やはりか………」

 

「ん? ん?」

 

 突然現れた新情報。ロキとフィンは訳知り顔で戦慄しているが、一人ベジットは置いていかれており。

 

(───もしかして、下から昇ってくる奴(・・・・・・・・・)の事言ってる? でも違ったら恥ずかしいし………黙っとこ)

 

 それでも気付く辺り、流石と言えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、フィンは残った戦力をかけ集め、動ける冒険者を派閥問わず中央広場へと集めた。恐らくは決起するための士気を上げる為なのだろう。

 

 フィンに言われるがまま、取り敢えずベジットも広間へと来ていたが、既に広場には屈強の冒険者達が数多く集まっていた。

 

「あ、ベジットさーん! こっち、こっちよー!」

 

「君は………アリー()だったか?」

 

「「混ざってる混ざってる」」

 

 偶々一緒にいたアストレア・ファミリアの面々とガネーシャ・ファミリアのアーディ、彼女の隣には団長のアリーゼがいたから、つい呼び方を間違えてしまった。

 

 悪い悪いと謝りながら、見知った相手の所に歩み寄っていく。

 

「改めて挨拶しておくぜ、俺はベジット。つい先日このオラリオに来たばかりの新入りだ。ヨロシク頼むぜ」

 

「此方こそ、貴方の事は頼りにしてるわ」

 

 紅い髪が特徴的な少女、アリーゼ・ローヴェル。彼女の側にはピンク髪の小人族のライラと極東出身者らしい和服の黒髪少女が控えていて、その後ろには………。

 

「あ、覆面事案エルフ」

 

「んなァッ!?」

 

 隠れるように控えていた覆面のエルフ、そんな彼女がつい目に入った為、思わず口に出してしまった。

 

「そ、そそそその呼び方は適切ではない! 訂正を! 断固として訂正を求めます!!」

 

「つっても、俺お前の名前を知らないぞ?」

 

「リュー! リュー・リオンです!! はい、これで名前は教えました! お呼びの際は是非そちらの方で!! はい! リピート、アフター、ミー!!」

 

「リュオン?」

 

「略すな!?」

 

「スゲー、早速リオンを弄り倒してるぞこの兄ちゃん」

 

「と言うか事案とか、何をしでかしたんだこのポンコツエルフは……」

 

「でも、リュオンってちょっと格好いいアダ名よね」

 

 顔を真っ赤にして抗議しているリオンを横に追いやり、次々とアストレア・ファミリア団員達がベジットへ声を掛ける。

 

「よう、ベジットの兄ちゃん。一応あたしからも挨拶させてくれよ。アタシはライラ、こっちの無愛想なのが輝夜だ」

 

「誰が無愛想だ。誰が。………ベジット氏、貴方の底抜けの強さには敬意を表する。あの白髪鬼(糞野郎)をぶちのめした瞬間の光景は当分忘れそうにない。胸がすく思いだ」

 

「お、おう。スゲーいい笑顔してんな」

 

 恐らくはあの場にいたのだろう。血反吐をぶちまけ、倒れ伏すオリヴァスを思い出した輝夜は、麗しい笑みを浮かべている。

 

「と言うか、オリヴァスって誰だ?」

 

「ベジットさんがぶちのめした白髪の男ですよ。あ、私はネーゼ・ランケット、ヨロシク!」

 

 白髪の男を思い出して「あー」と、間の抜けた声が漏れる。

 

「そう言えば、そのオリ何とかって奴はどうしたんだ? 情報とか吐かせられたら良いんだけど……」

 

「それは無理ですね」

 

 あのオリヴァスが闇派閥の幹部なら、雑兵とは違いそれなりの情報を持っている筈。何とか口を割らせて聞き出せないかと頭を悩ませていると、背後から声が掛けられる。

 

「お、アミッドちゃんか。医療従事、おつかれさん」

 

「“ちゃん”はいりません。それよりも、白髪鬼(オリヴァス)の件ですが、首から下、凡そ人体の殆どの骨が粉状に砕かれています。完治するには回復薬(ポーション)でも、私の治癒術でも難しいかと思います」

 

 銀髪の少女、その外見からしてアイズより少し大人びた少女はベジットを恨めしそうに見上げる。

 

「こ、粉状?」

 

「え、なんでそんなんで生きてるの?」

 

「アレを、果たして生きていると言うのでしょうかね」

 

 遠い目で空を見上げるアミッド、その目元には隈が出来ていることから、相当大変な目に遭っていたのだろう。

 

勇者(ブレイバー)の指示で、可能な限り癒そうとはしましたが、如何せんダメージ量が桁違いです。というより、普通に致命傷です。知ってますか? 人間は彼処まで骨が砕けると、軟体動物みたいにフニャフニャになるんですよ………フフフ、ディアンケヒト様も驚いていました。なんで生きてるんですかね、あの人」

 

 そして、その一端はどうやら自分にもあるらしい。顔は笑っているのに目は全く笑っていない。余計な仕事を増やしたベジットに恨み節を語るアミッドに、ベジットは今後極力怒らせないようにしようと、心に誓った。

 

 そして。

 

「諸君、決戦だ!!」

 

 勇者が用意された壇上に降り立ち、その時を告げる。

 

 






次回、決戦。


「やることが、やることが多い!!」byベジット




オマケ。


もしもロキ・ファミリアに属していたら?2

 その日、俺は強者に出会った。何処までも傲慢で、何処までも不遜。神々ですら手に負えない、天下無敵の最強を。

「おっし、そんじゃあベート。俺から離れんなよ」

「舐めんな。テメェこそ、チンタラしてると後ろから蹴り飛ばすぞ」

 ロキ・ファミリアの遠征の際、50階層より行われる第一級冒険者だけに赦された特別行事(イベント)

それは、ベジットという規格外の強者(Lv.1)に追随すると言う、ロキ・ファミリア独自の催し物。

 彼についていけばダンジョンの深奥を、地獄を目にすると同時に更なる強さを身に付けられるというこの特別行事は、過去にフィン達を更なる境地(Lv.7)へとおしあげた。

今回の参加者は、ベートただ一人。アイズやアマゾネス姉妹の反対を押しきり、一人で参加した凶狼はその顔に強い決意を滲ませる。

(俺は、俺は絶対に強くなる。過去のテメェ(自分)をぶち殺せる程に)

 ベート・ローガは、強さを求める。弱者を嫌い、弱者に憎悪する彼は、誰よりも己自身が弱者だと知っているから。

「ベジット」

「あん?」

「テメェからの施しは一切受けねぇ。だから、真っ直ぐ突き進め」

「………へぇ?」

 自殺行為とも呼べる宣言。しかし、そんな彼の啖呵をベジットは笑みを深くさせ。

「なら、俺に本気を出させてみるんだな」

「上等だ!」

 駆ける。その背中に多くの仲間の声援を受けて。

(認めさせてやる。俺を、ベート・ローガを! ただの護られる弱者じゃねぇ事を、今日、ここで!! 証明させてやる)

 雄叫びを上げ、遥か先を往くベジットを追う狼の背中には───憧憬の輝きが刻まれていた。



 


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