ダンジョンに超なアイツが来るのは間違いか?   作:アゴン

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なんか、SAOの新作が出るらしい。

ちょっと楽しみ。

そんな訳で初投稿です。


物語111

 

 

 

 誰かが言った。

 

 ヘスティア・ファミリアの団長───ベジットは、稀代の詐欺師であると。

 

 主神である女神を、処女神であるが故に口八丁手八丁で己の手の内に落とし込み、第一級冒険者ですらその類い希な話術で欺いて見せていると。

 

 Lv.1の身でありながら、その圧倒的とも言える話術により神々やギルドをも欺き、オラリオに磐石な立場を築いた怪物。

 

 そんな伝聞がオラリオで囁かれ始めたのは、一体いつ頃からだったのだろうか。

 

 神々を欺くなんて、そんな事は不可能なのに。

 

 天界に住まう神々は下界の人類(こども)達の嘘を見抜く。その嘘に悪意があれば尚更で、仮に騙されたとしても、それは可愛い人類達に付き合って騙されて(・・・・)あげてるだけ(・・・・・・)

 

 だから、新参者の神々は勘違いをした。あの哀れな処女神はベジットという悪い男に弱味を握られているのだと。

 

 だから、オラリオに来たばかりで日の浅い若輩者達もまた勘違いをしてしまった。ベジットという稀代の詐欺師は第一級冒険者すら騙し、己の手駒にしてしまったのだと。

 

 故に、今回の戦争遊戯で新興勢力の派閥、並びに冒険者達は歓喜した。これで、あの詐欺師の本性を暴けると。Lv.1でありながらギルドを騙し、神々を欺き、オラリオを掌握していた口だけの男を、その座から引き摺り落とせるのだと。

 

 そんな、淡い幻想を抱いていた。

 

 Lv.1の冒険者──【詐欺師(インポスター)】いつしか一部の冒険者の間で広まったベジットの異名。

 

 嫉妬と僻み、嘲笑と侮蔑の籠った二つ名。しかしこの日、アポロン・ファミリアとベジットを侮り続けていた者達の思惑は砕け散る。

 

 気付けた筈だ。分かっていた筈だ。

 

 ただのLv.1が第一級冒険者を従える筈がないと。

 

 話術程度で、神を御せる訳がないと。

 

 気付いていたのに、分かっていたのに、嫉妬と僻みで己の認知を歪ませた結果。惨劇が生まれた。

 

 我々は、思い知る。知った所でもう遅い。

 

 我々は、どうしようもなく間違えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「う、うん……私、気絶して……」

 

 失っていた意識に、微かな声が聞こえてくる。人の声か物音か定かではない騒音に意識を浮上させたダフネ・ラウロスは、自分が今まで気絶していた事を自覚する。

 

 何故、自分は石造りの地面に倒れているのか。意識が途切れる迄の経緯を思い出して……。

 

 目の前の光景に絶句した。

 

「イギャァァァッ!!」

 

 鮮血が舞う。

 

「ウギィヤァァァッ!?」

 

 同胞が舞う。城門が融解し、半分以上崩壊した砦の中で、主神の為に戦うと誓った筈の同じ派閥の同胞達が荒れ狂う嵐に呑まれ、まるで紙切れの様に吹き飛び、血の海に沈んでいく。

 

 嵐の中心に立つのは、小さな少女。小人と称される種族の少女が、自分の倍以上の背丈のある冒険者を切り刻み、塵芥の如く吹き飛ばしていく。

 

「く、クソ! 小人族(パルゥム)の癖に!」

 

 仲間が悉くやられ、血の海に沈んでいくのを目の当たりにした事で、激昂した虎の亜人の男が小人族の少女に突貫する。

 

 大型肉食獣の亜人らしく男の脚力は凄まじく、少女との間にあった距離はあっという間にゼロになる。背負っていた斧の柄に両手を伸ばし、その恵体に見合った巨大な刃を少女に向けて振り下ろす。

 

 少女は男に一瞥すらせず、見向きもしなかった。

 

 そこいらの岩なら両断せしめる一振。しかし男の放った一振は、小人族の少女に片手の───二本の指で摘まむように受け止められてしまう。

 

「軽いな」

 

「ッ!?」

 

 よそ見をしたまま受け止められ、男の顔が驚愕に歪む。どれだけ力を込めてもまるでびくともせず……。

 

「ッ!?」

 

「そして、脆い」

 

 男の手にしていた斧は、自分よりも二回り以上小さい少女の手によって、握り砕かれてしまう。

 

 驚愕……よりも、恐怖の感情が男の体から噴き出してくる。これまでの冒険者として、幾度も窮地を潜り抜け、モンスターを倒してきた相棒。苦難も困難も共に乗り越えてきた相棒が、アッサリと砕かれる現実に目を見開くと……。

 

 その顔が少女の手で鷲掴みにされ、地に捩じ伏せられる。

 

「あ、ガァッ!?」

 

「どうした木偶の坊、お望みの力比べだ。確り抗え」

 

 ミシリミシリと頭蓋が歪む音を耳にしながら、男は必死の抵抗を見せる。自分よりも遥かに細い腕をへし折る為に、男は両手で少女の腕を掴むが……。

 

「なんだそれは? 抵抗のつもりか? 生まれたての赤子ですらもっと力強いぞ?」

 

 バゴンッ、地にめり込んでいた男の頭部が完全に地面に埋もれる。ピクピクと痙攣するそれを捨て置き、少女────リリルカ・アーデは太陽神の眷族(こども)達に向き直る。

 

「我等が主神、我らが団長の命令だ。一人も逃がさん。命乞いも、懺悔も聞かん。私が貴様等に望むのはただ一つ」

 

 リリルカ・アーデは誓った。あの日、傷だらけの自分を救ってくれた女神と彼に報いる為、派閥の先槍となる事を。

 

 リリルカ・アーデは誓った。女神と彼を、そして派閥の仲間(家族)を愚弄する(ゴミ)は例外なく撃滅───即ち、滅尽滅相であると。

 

 殺しはしない。殺すよりも、より惨い終焉をもたらす事を誓い立て、槍の乙女は二振りの槍を振るう。

 

「泣き叫べ。無様に喚き、地に這いつくばれ。それが、今回貴様等に許された末路だ」

 

 槍を振るう、戦場に鮮血が舞う度に絶叫が響き、断末魔が木霊する。

 

 誰一人逃れる事が許されない戦場にて、血よりも紅い眼光が敵を見据える。

 

 そこには嘗て搾取され続けてきた哀れなサポーターはもういない。戦場を駆け巡り、屍(死んでない)を積み上げるその姿は、正しく死神。

 

 とある四兄弟は言った。「俺達の希望、怖くね?」

 

 とある正義の眷族も言った。「正直チビった」

 

 そして、とある勇者はこう言った。「ファンになりました」

 

 あらゆる期待と一族の重圧を雑に担ぎ上げ、リリルカ・アーデは駆け抜ける。

 

 太陽神の眷族に、決して消えない恐怖(トラウマ)を刻み付けながら、容赦なくその槍を振るい続けていく。

 

 悲鳴は止まらない、断末魔は終わらない。

 

 受け止める懺悔の時は、とうに過ぎているのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ったく、リリ助の野郎。雑に暴れやがって、これじゃあ残飯処理じゃねぇか」

 

 リリルカがアポロン・ファミリアの大部分の冒険者を蹂躙してしまっている為、副団長であるベート・ローガは相対的にリリルカが取り零した奴の相手となってしまっている。

 

 ベジットがかめはめ波で砦を半壊させ、見通しが良くなった城壁から適当に攻めるつもりだったのだが。

 

『ベート様、どちらが先に攻め込むかジャンケンで決めません?』

 

 なんて、リリルカの提案に乗ってしまったのが運の尽き、ジャンケンに負けたベートはリリルカよりも一歩遅く戦場に足を踏み入れる事になった。

 

 お陰さまで完全に出遅れてしまい、現在ベートは恐らくリリルカがワザ(・・)と取り零したであろう残飯(雑魚)を処理する担当となってしまっている。

 

 まぁ、元々ベートには雑魚をなぶる趣味はないし、後輩が率先して掃除をしてくれると言うのなら、特に言うこともない。

 

 ただ一つ、不満があるとするならば……。

 

「ひ、ヒィィィッ!!」

 

「だ、ダメだ! 勝てる訳がねぇ!!」

 

 荒れ狂う暴力の嵐から、必死に逃れようと逃げる敵対者に対して、容赦なく力を振るう事……等ではなく。

 

「ゲブッ!?」

 

「ヒゲラッ!?」

 

「あーあ、完全に俺の出番喰われたな、こりゃ」

 

 自分のヘスティア・ファミリアでのデビュー戦。何気に戦争遊戯自体初参戦であるベートにとって、非常に面白味のない展開で終わりそうな所。

 

「せめて幹部の一人くらい相手出来れば良かったのによぉ……面倒くせェルール付けやがって」

 

 逃げ惑う敵対者の顎を蹴り砕き、退屈なベートは一人愚痴る。

 

「おら、テメェ等も冒険者なら腹括れや。俺達に手を出したんだ。五体満足で終われると思うなよ?」

 

 阿鼻叫喚の戦場にて、灰色の狼が嘲り嗤う。

 

 逃げ場はない。そう語るベートの微笑みにアポロン・ファミリアの眷族は絶望の海に沈む。

 

 

 

 

 

 

 

 

「何よ、これ、こんなの………虐殺じゃない」

 

 眼下に広がる地獄絵図。どれだけ悲鳴をあげようと、どれだけ絶望に泣き叫ぼうと、二人の暴力の化身は聞き入れようとはしない。

 

 一方的。仮にあの場に自分達のような幹部がいても、何一つ敵う事なく切り刻まれ、血の池に沈められる。一方的というには慈悲の欠片もない光景に、意識を取り戻したダフネは顔を青くして言葉を失う。

 

 そんな彼女のもとへ、一人の同胞が駆け付ける。

 

「ダフネちゃん!」

 

「か、カサンドラ……」

 

 必死に逃げてきたのだろう。体が無数の擦り傷と土埃にまみれながら、それでも構う事なく自分の腕に抱き付いてくる同じ派閥の顔馴染みに、ダフネは少しだけ安堵した。

 

 自分の知り合いがまだ無事である事実に、ダフネの気力が僅かに回復する。

 

「逃げようダフネちゃん! もう、私達に出来ることなんてないよ!!」

 

 眼に涙を貯めて、一緒に逃げることを命乞いの様に提案してくるカサンドラ。普段から悪夢の類いを正夢と信じ、今回もヘスティア・ファミリアとの戦争遊戯を強く反対していた彼女。

 

 曰く、“蒼白い極光が太陽の威光を消し飛ばし、狼と鼠が貪り、白い兎が太陽を落とす。”とのこと。

 

 今も彼女の言っている夢の意味は理解できないが、今目の前の彼女が口にしている言葉は理解できる。

 

 自分達に出来ることはない。それは正味その通りなのだろう。足掻くことも、微かな抵抗することもできないのであれば、最早自分達に待つ末路は“終わり”しかない。

 

 任された魔導師隊の指揮という役目もかなぐり捨てて、逃げるべきだと唆すカサンドラにダフネが頷き掛けた時。

 

「何処へ逃げるって?」

 

 心臓が跳ねた。呼吸が止まり、動悸が加速度的に速くなる。溢れ出る冷や汗を拭いもせず、カサンドラと一緒に声のあった後ろへゆっくりと視線を向けると……。

 

「よぉ、ダフネ・ラウロスとカサンドラ・イリオンだな?」

 

 黄金色に逆立った髪と翡翠の瞳、風変わり且つ特徴的な衣服に身を包んだ………ヘスティア・ファミリアの団長のベジット。

 

 Lv.1の身でありながら、第一級冒険者を従えて率いる処女神の最初の眷族が、腕を組んで崩れ掛けの壁に寄り掛かりながら……ダフネ達を見据えていた。

 

 砦の城壁を余波だけで崩壊させる大規模攻撃。魔法とも、魔剣による攻撃でもない一撃をブチ込んでおきながら、息一つ乱していないベジットにダフネは世の中の理不尽を呪った。

 

「………ふざけないでよ。あれだけの魔法(?)を惜しみ無くブチ込んでおいて、なんで息一つ乱していないのよ。普通ああいう大規模な技って、相応の対価を支払うのが定石でしょ!?」

 

 悲痛な迄のダフネの訴え、いっそ八つ当たりとも言える彼女の言葉にベジットは一瞬目を丸くさせるが、途端にクククと愉快そうに笑みを溢す。

 

「そりゃあ、本気で出し惜しみのない一撃だったらそうもなるだろうよ」

 

「………は? 何を、言って?」

 

「あの程度のかめはめ波は、俺の全力には程遠い。と、言ってるんだ」

 

 そもそも、本気の全力でかめはめ波をブッパすれば、それだけで砦は蒸発し、アポロン・ファミリアの眷族全員が消滅していただろう。

 

 自分達がしているのは神々の代理戦争である【戦争遊戯(ウォー・ゲーム)】。そう、遊戯なのだ。

 

「たかが遊戯(・・)で、死者を出すわけにも行くまい?」

 

「─────」

 

 何処までも上から目線。自分達をただの遊び相手程度しか認識していないと豪語するベジットに、ダフネの僅かな矜持(プライド)が刺激される。

 

 遠くから聞こえてくる仲間達の声、痛みと苦悶に満ちた断末魔をあげさせておきながら、遊びの範疇だとベジットは笑う。

 

(分かっている。これは八つ当たりだ。この私の怒りはこの人達にとって筋違いも良いところだ)

 

 一方的に敵視し、止めろと言っても利かない仲間達。ベジット達が気を遣わせて穏便に済ませようと下手に出てくれていたのを良いことに、好き放題振る舞った此方の落ち度。

 

 全体的に見ても非は此方にある。でも、それでも……!

 

「これでもさ、ウチはこの一団の幹部だ。仮に団長達がおかしくなったとしても、果たさなければならない責務がある!!」

 

「だ、ダフネちゃん!?」

 

「行くよ、ベジットッ!!」

 

 カサンドラの制止を振り切って、ダフネは腰に差した剣を手にベジット(Lv.1)へ突貫する。冒険者としての自分、恨んでいたが今日まで不自由ない暮らしをさせてくれた主神に対する僅かな恩義に報いる為、ダフネは決死の覚悟を以てベジット(最強)に挑む。

 

「ヤァァァッ!!」

 

 裂帛の気合いと共に刃を突き立てるダフネに対して。

 

「その意気や良し」

 

 ダフネが放つ渾身の一撃を僅かな動作で避け、ベジットもまた背中に差している大剣、その柄に手を伸ばす。

 

 重厚で、太く、大きい大剣。竜をも屠る故に“ドラゴンころし”。ベジットの膂力であれば、雑に振り切るだけで容易く挽き肉に出来るであろう必殺の一撃。

 

 ダフネが死を覚悟した次の瞬間。

 

「ほい」

 

 ベチィィィィッン!!

 

「ッ!?!?」

 

 剣の腹の部分がダフネの臀部に強襲。痛みと衝撃で吹き飛ぶ彼女は、僅かに残っていた比較的無事な城壁に直撃。

 

「だ、ダフネちゃぁぁぁぁんっ!?!?」

 

 そこには、立派な()が実っていた。

 

 あまりにも無残、あまりにも無慈悲。相手が女性であろうと平等に尊厳を破壊するベジットにカサンドラはガクガクと震え……。

 

「そら、お友達も付き合ってやれよ」

 

「ファッ!?」

 

 当然、そんな隙だらけの彼女をベジットが見逃す訳もなく、戦争遊戯の空に再び肉の弾ける音が木霊した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なぁ、ベル」

 

「……なんだい、ヴェルフ」

 

「俺達の団長、凄いな」

 

 ベジットの指示に従い、彼の背後を追従していたヴェルフは呟く。凄いという一言に、あらゆる意味と感情を込めたヴェルフに対し、ベルは頷いた。

 

「うん、僕達の団長は……凄いんだ」

 

「おーい、あんまりはぐれんなよー」

 

「「はーい」」

 

 それは諦めか、それとも呆れか。どちらとも言えない感情を抑えて二人はベジットの後を追う。

 

 二人の背後に並ぶ、壁に咲いた二つの()から必死に目を逸らして。

 

 この光景を目の当たりにしたオラリオに住まう冒険者と市民、そして神々は口にする。

 

「「「人の心とかないんか?」」」

 

 処女神は固く口を閉ざしたという。

 

 





Q.アポロン・ファミリア、地獄じゃね?
A.逃げる事も、隠れることも出来ません。

Q.リリルカさん、凄い気合い入ってるね。

A.恩人であるベジットと恩神であるヘスティアに少しでも報いられる数少ない機会だからね。
張り切ってます。

Q,そんなリリルカさんの野望は?
A,アリスに取られたマスコットキャラ枠を取り戻す事。


次回、真価。

 ベル・クラネルの真価が公の下に晒される。

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