ダンジョンに超なアイツが来るのは間違いか?   作:アゴン

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今更ですがFGO、ストレンジフェイクのコラボ、おめでとうございます!

個人的にストーリーに参加して欲しい鯖は。

山の翁(初代)

エレシュキガルOrティアマト

イアソンOrケイローン

テスカトリポカOrククルカンOrケツァルコアトル



アマゾネスCEO

かな。




物語118

 

 

 

「「「アルフィアが歓楽街に乗り込んでくる!!??」」」

 

「声デッカ」

 

 アストレア・ファミリア本拠地(ホーム)【星屑の庭】。オラリオの秩序と市民の安寧を護る為に日々活動を続け、自分達の正義を掲げる集団。

 

 ガネーシャ・ファミリア程の規模はないが、正義を掲げている彼女達は一人一人が確かな強さを持つ実力者で、幹部連中に至ってはLv.6の一騎当千の強者達。

 

 そんな彼女達が目の前の小人族(パルゥム)からもたらされる情報によって、驚嘆の叫び声を挙げていた。

 

「あくまで可能性として、という話です」

 

「い、いやしかしそうは言うがリリルカよぉ、一体何だってそんな話になるんだよ。なんであの【静寂】と歓楽街が繋がるんだぁ?」

 

 本拠地の応接室。質の良いソファーに腰掛け、上品な紅茶を口に含んで喉を潤す。正義の眷族達からのもてなしに舌鼓を打ち、【狡鼠(スライル)】のライラの質問に答える。

 

「……誠にお恥ずかしい話なのですが、ウチの新人……ベル・クラネルがイシュタル・ファミリアにちょっかいを掛けられたみたいなのです」

 

「【リトル・ルーキー】が?」

 

「なんともまぁ……」

 

 副団長の輝夜とライラが呟く。彼女達の言葉には若干の呆れが混じっている気もするが、取り敢えず聞き流す。

 

「我が派閥は向こうから手出しをされない限り、迂闊に手を出さないよう慎重な姿勢を崩さないつもりではありますが、万が一があります。常日頃から何かとお忙しい皆様ですが、知っていると知らないとでは対応に雲泥の差が出ると思い、ベジット様の指示の下こうして馳せ参じました」

 

 正義の眷族であるアリーゼ達に“気”を覚えさせてからというもの、彼女達の公平さを保つために表向きは積極的な接触は控えてきたヘスティア・ファミリア。

 

 有事の際は協力を求めなくとも、話を通した情報を共有する程度の間柄である彼女達だが、今回のリリルカ・アーデが口にするのは協力の意味合いが少しばかり強くでている気がした。

 

 まぁ、相手が【静寂】とあらば仕方の無い話ではあるが……。

 

「ふむ。じゃあリリルカちゃんは万が一の時にはアルフィアの鎮圧に協力して欲しいと?」

 

「いえ、巻き込まれる歓楽街の人達の避難誘導にご協力戴ければなと」

 

「諦観の極地じゃねえか」

 

「しかも対応としては大正解だという」

 

 リリルカがアストレア・ファミリアにやって来たのは、アルフィアに対抗する為の戦力───ではなく、巻き込まれるであろう歓楽街の人々の安全を護って欲しい事。

 

「アルフィア様を止める際はベジット様が身を挺して止める予定ですので、その辺りはご心配無く」

 

「なんか、最近のベジットの旦那身体張りすぎてね?」

 

「我々のような未熟者が気にする筋合いはないが……大丈夫なのか?」

 

 ベジットの強さを知る輝夜達だが、彼女達が知るアルフィアもまた天井知らずの強者の一人。不治の病に侵され、半死人だった状態でも当時の自分達を圧倒する力を誇り、現在は病を克服し、Lv.8という上澄みの上澄みへ到達してしまっている。

 

 そんな彼女が甥っ子にちょっかいを掛けられたと知れば、嘗てのヘラの眷族という事も踏まえて、その怒りは想像することすら憚れる怖さがある。

 

 そんな彼女を己の身の一つで止めようと語るベジットには、流石のライラも心配の声が上がった。

 

「あ、はい。一応ベジット様も一度アルフィア様の最大攻撃魔法(ジェノス・アンジェラス)を耐えているので、大丈夫かと」

 

「もうあの人なんなん?」

 

「いや待て、仮にそれでベジットさんが大丈夫でも、オラリオの方は無事ではすまないんじゃあ……」

 

 ノインとネーゼから尤もな質問を投げ掛けられるが、リリルカはニンマリと笑って誤魔化す。

 

「………解せません」

 

「リュー?」

 

「リュー様、何か不明な所が?」

 

「リリルカ・アーデ。貴女が仕える女神ヘスティアは純潔を重んじる処女神の筈、彼女からすれば歓楽街は嫌悪の対象になるのでは?」

 

 正義の眷族(アストレア・ファミリア)の中でも人一倍正義感の強いエルフの魔法剣士、リュー・リオンの言葉は確かに正論を突いていた。

 

「あ、はい。それは勿論そうですよ。ですが我等が団長であるベジット様も、決して歓楽街の存在は悪ではないと仰っております」

 

 リオンの問いにリリルカはベジットも語った歓楽街の存在意義とその重要性を説いた。歓楽街は性の娯楽に留まらず、冒険者達の抱えるストレスやら性欲の解消する場であり、性犯罪を抑止力する防波堤でもある。

 

 更に言えば訳有りで表社会に出れず、身寄りのない女性の最後の受け皿でもある。万が一に歓楽街が滅んだら後のオラリオの社会に対する負担や混沌具合は今の比ではない。

 

 歓楽街という存在の重要さ、それを懇切丁寧に説明するリリルカにリオンは反論できる余地は無くなっていた。

 

「───以上の事から、歓楽街の存在はオラリオにとっても必要であるとベジット様は断じております。ここまでで質問はありますか?」

 

「………いえ、ありません……」

 

 理路整然と語るリリルカにリオンは俯くしかなかった。

 

「全く、少しは成長したかと思いましたのに、相変わらず潔癖症、一度そこいらの男に抱かれてきたらどうだ?」

 

「そう言うなよ輝夜。リオンだって別に歓楽街を全否定している訳じゃねぇよ、単に処女神であるヘスティア様の眷族が歓楽街を肯定しているのが意外に思っただけだろ」

 

 ライラの言う通り、別にリオンは歓楽街という場所を悪と断じている訳ではない。世の中には諸事情で表社会に出れなくなった人間というのは少なからず存在している。

 

 親の借金や過去に犯してしまった犯罪、他にも致し方のない事情で娼婦に身を窶した女性だっているし、そんな彼女達を護るという意味でも歓楽街の存在は必要であると、リオンも納得はしていないが理解はしている。

 

 ただ、そんな歓楽街に対して仮にも処女神の眷族………特に、自分達の師とも呼べるベジットが、一定以上の理解を持ち合わせている事が、少なからずショックだっただけだ。

 

「何はともあれ、リリちゃんの言いたい事は分かったわ。その時が来たら私達も協力するから、遠慮無く声を掛けて頂戴!」

 

「ありがとうございます。アリーゼ様」

 

 団長であるアリーゼ・ローヴェルから了承を得て、その時が来たら遠慮無く頼って欲しいという頼もしい返事を受けたリリルカは感謝の言葉を口にして深々と頭を下げる。

 

 これで後はガネーシャ・ファミリアにも同様の内容を伝えれば、万が一に対する保険の代わりにはなるだろうと、内心で安堵する。

 

「………所でアストレア様、私も一つお聞きしたいんですけど」

 

「あら、どうしたの?」

 

 その一方で、アリーゼは意味深な顔付きでこれ迄黙って様子を見守っていた己の主神に振り返り……。

 

「イシュタル・ファミリアの眷族達はみんな胸が大きいと聞くのだけれど………本当かしら?

 

「真顔でトンでもないこと言い出したぞこのバカ」

 

「おいバカ団長、一体何を考えている? お前止めろよ? 絶対バカな事をするなよ!?」

 

 団員達の総ツッコミに愉快に笑う赤髪のアリーゼ。ここの人達も相変わらずだなと思いながら、リリルカ・アーデは御茶請けの菓子を頬張るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 ピシュンッ。人気の無い場所に軽い音と共に現れたのは、ヘスティア・ファミリアの団長ベジット。

 

 瞬間移動でアルフィアが宿泊している旅館の裏手にやって来たベジットは、アルフィアの気を辿り表通りに出る。

 

 日の光がベジットの顔を照らし、港町特有の潮の香りが鼻腔を擽る。人の多い通りを歩いていると、とある露店の前に佇むアルフィアがいた。

 

 前のような水着ではなく、露出の控えたワンピース。彼女の美貌と整ったスタイルと合わさって、周囲の男共の視線は彼女に釘付けになっていた。

 

「よぉアルフィア。おはよう、今朝はよく眠れたか?」

 

「あぁ、お陰さまでグッスリだとも。腹立だしい程にな」

 

 開口一番に憎まれ口を叩かれるが、目の前の女が塩対応なのはいつもの事。変わりない様子の彼女に安堵しながら、ベジットは他愛のない話を続けた。

 

「ちゃんと朝飯食ったか? おっちゃーん! その肉饅頭二つくれ!」

 

「兄ちゃんこんな別嬪さんと知り合いかよ! 一人にするとか随分と余裕じゃねぇか!」

 

「綺麗な華には棘があるって言うだろ? 余り干渉すると機嫌を損ねるから、適度に距離置いてんのよ」

 

「かー、それっぽいこと言いやがって! はい、肉饅頭二つ!」

 

 露店の店主と軽口を言い合い、金を渡して品物を受け取る。熱く蒸された肉饅頭の一つを頬張って、ベジットはアルフィアにもう一つを差し出した。

 

「……私は要らんぞ」

 

「言いから食っとけ、今日はニョルズ様ン所の眷族を鍛える約束してるからな。お前にも手伝って貰うかもしれん」

 

「だとしても、丸々一つは多すぎだ。私はお前のように大食漢じゃないんだぞ。朝食も食べたばかりだし……」

 

 両手に包まれた肉饅頭を見下ろし、途方にくれているアルフィアを仕方なく思ったベジットが手を伸ばして半分に割る。白くもっちりとした生地の中から見える肉の餡、その香ばしい匂いが朝食を食べたばかりだと言うのにアルフィアの胃を刺激する。

 

 人混みの中をぶつからないように進みながら、二人は歩く。

 

「どうせ、そんなに朝食も食べてないんだろ?」

 

「……別に、体型維持に気を付けているだけだ」

 

「だとしたらもう少し肉付けろ。出るとこ出てるのも良いが、もう少しふくよかになった方が男受けは良いらしいぞ」

 

「うるさい」

 

 本来なら折檻のゴスペルが飛んできてもおかしくない筈なのに、飛んでくるのは背中を殴り付けてくる拳の感触くらい。

 

 それも本気で殴ってくるのではなく、ポカポカと痛みの伴わない程度。アレ? コイツこんな反応する奴だっけ?

 

(まぁ、まだ朝だからな。そういう時もあるだろ)

 

 アルフィアの殊勝な反応を朝の時間帯ゆえのモノだと一人納得し、ベジットはアルフィアを伴ってニョルズ・ファミリアの本拠地へ向かう。

 

 なるべくアルフィアを歓楽街から遠ざけ、話題にも触れさせない。今頃ヘスティアはタケミカヅチと何らかの話し合いの場を設けている頃だろうし、その話し合いが終わる迄にメレン港に足止めしておくのが、今回のベジットの目的である。

 

(イシュタル・ファミリアの狐人(ルナール)か。個人的には戦争遊戯だけでなく、ベートがスキル使って攫ってくるのも一つの手段ではあるんだろうが……)

 

 ベートのスキル【時飛ばし(タイムスキップ)】を使用すれば、犯行の痕跡を残す事もなく対象を攫う事はできるだろう。

 

 ただ、件の狐人の貴族令嬢は相当大事に囲われているらしく、当時逃げ回るだけで精一杯だったベルにはイシュタル・ファミリアの本拠地の何処に幽閉されているか、まるで見当が付かないという。

 

 気に精通したある程度の実力者であれば、一目でもその顔を拝めば相手の気を把握し、居場所を特定出来るが、逆を言えば余程独特な気の持ち主でない限り、なんの情報も無しに探し当てるのはベジットでも難しいという事。

 

 ベートやリリルカに頼もうにも、二人ともオラリオでは知らない者がいないと言う程の実力者であり有名人だ。もしその狐人を探していることがバレたら、イシュタル・ファミリアに余計な警戒心を抱かせる事になってしまう。

 

(……そうなったらもう【戦争遊戯】を仕掛けた方が話は早いかな。最悪、タケミカヅチ・ファミリアを巻き込んで)

 

 タケミカヅチ・ファミリアの眷族達はベルのダンジョン探索に於いて、必要なパートナーとなっている。主神同士が友好的で、場合によっては他派閥でありながら助け合う事も辞さない責任感の強いファミリアだ。

 

 だが、同時に遠慮がちで自分達の問題に巻き込ませたくないという頑固な一面もあったりする。

 

 ヘスティアにはそんな武神タケミカヅチとその眷族達の心の壁を是非とも解きほぐして欲しい所だ。

 

「おい、おいベジット」

 

「ん? あぁ、悪い。ちょっと考え事してた。何かあったか?」

 

 後ろから服の裾を掴んで引っ張ってくるアルフィアによって、思考の海から戻ってきたベジットは、彼女が指差す方角へ視線を向ける。

 

 そこは海沿いの浜辺、二組のアマゾネスが凄まじい勢いで戦っているのが見えた。

 

 というか、ロキ・ファミリアのヒリュテ姉妹と昨日アルフィアがボコボコにした二人だった。まだ早朝だというのに、元気な事だ。

 

「あれま。もう()り合ってんのかよ。元気だねー」

 

「朝から騒々しい。ベジット、どうする?」

 

 本当にコイツは俺の知るアルフィアなのだろうか? 何時もなら騒音雑音は不快だと、所構わずゴスペルをブッパしてくるのに、今日はなんだかやたらと低姿勢な気がする。

 

 なんか悪いものでも食べたのだろうか? ベジットは割と真面目に心配になった。

 

「あー、一応あの周辺一帯はロキ・ファミリアが警戒しているみたいだし、ここら辺りよりは静かなんじゃないか? ニョルズ様の所も予定までまだ時間はあるし」

 

 遠回しに様子を見てみようと提案する。向こうではロキ・ファミリアの二軍以上の面々があの辺り一帯を封鎖状態にしている為にここらより静かだと思うし、実際にニョルズ・ファミリアとの約束の時間はまだ余裕がある。

 

 ベジットも闘国のアマゾネスの実力がどれ程のものか興味あったし、もしアルフィアが良ければ………という前提で話を振ると。

 

「───まぁ、確かにここらの市場よりは喧騒は少ないか。良いだろう」

 

「あ、そう?」

 

 意外な事に、アルフィアはベジットの提案に乗り気だった。戸惑いながらも共に跳躍し、ロキ・ファミリアの包囲網を突破。二組の争っているアマゾネスの側で見知った気を感じ取った二人はその人物達のもとへ降り立つ。

 

「よぉフィン、お前も来てたのか」

 

「やぁベジット。お陰で今日は寝不足だよ」

 

 恐らくはあの後、リヴェリアの指示で直ぐに本拠地へ報せが届き、急いで駆け付けてきたのだろう。欠伸を噛み締め、目尻に涙を浮かべるフィン。その隣ではやはりリヴェリアが佇んでいた。

 

「リヴェリアもおはようさん。やっぱこうなったか」

 

 相手は昨日の時点でヒリュテ姉妹と何らかの因縁があるとは聞いていたが、まさかこんな早朝から始めているとは思わなかった。

 

「あぁ、お陰で朝からここのギルド支部に嫌な顔をされたよ」

 

 疲れた様子のリヴェリアにベジットも苦笑う。メレン港のギルド支部長であるルバートは性根が粘着質で陰険な事で有名らしい。

 

 普段からオラリオから出向してきた事を根に持ち、ニョルズ・ファミリアやメレン港の街長であるボルグ・マードックと不仲なのだとか。

 

 リヴェリアはそんなルバートに決闘の場の提供の為に街の一部を貸して欲しいと交渉したが、その様子からどうやら相当嫌味を言われたようだ。

 

「ボルグ・マードックや神ニョルズは快く返事をしてくれたがな。ルバート氏には小言を言われたよ」

 

「それは……どうもお疲れ様です」

 

 ベジット(■■)も前世の教訓からそういった根回しには酷く労力を強いられるのは知っているし、その為にはある程度の社交性が必要であることも知っている。

 

 その為にリヴェリアの苦労は痛い程よく分かるため、ベジットは今度彼女に何かしら奢ってあげようと決めた。

 

「所で、貴様らの主神はどうした?」

 

「やぁアルフィア。僕達の主神はそこで寝ているよ」

 

 アルフィアの問いに若干呆れた様子のフィンが親指で指し示す。見れば公共の長椅子に横たわっている悪神が寝息を立てていて、酒瓶を抱えている様子から完全に不審者に見えた。

 

「おいおい、仮にも主神様が眷族が戦っている横で居眠りかよ」

 

「まぁ、不安要素の無い平和な決闘だからね」

 

 平和な決闘。一見すれば矛盾に満ちた言葉だが、ヒリュテ姉妹の戦いぶりを見れば、その言葉の意味も頷けると言うもの。

 

 終始、決闘はヒリュテ姉妹の有利な展開が続いていた。相手のアマゾネスはLv.6らしく、その圧倒的な身体能力でヒリュテ姉妹に襲い掛かるが、オラリオでの強敵と戦い続け、新たな力の概念である“気”を練り続け、突き詰めてきた。

 

 未だ極めたとは言い難い二人だが、それでもLv.6になって日が浅いにも拘わらず、その実力は既に襲い来る二人を簡単にあしらう程度には身に付けていた。

 

「相手は闘国(テルスキュラ)。確かカーリー・ファミリアだったか?」

 

「あぁ、戦うことに特化し、強い眷族を生み出す為に長年殺し合いをさせてきた恐ろしい派閥さ」

 

 出てくる言葉は恐ろしいのに、それを口にしているフィンには全く恐れている様子はなかった。

 

 闘国は確かに恐ろしいファミリアだ。アマゾネスだけで構成し、強い眷族を育てる為だけに幼い頃から戦いを経験させ、更には蠱毒の様にアマゾネス同士に殺し合いをさせるサイヤ人でもやらない蛮族っプリを見せている。

 

 そんな地獄を経験し、踏破してきたカーリー・ファミリアのアマゾネスは、確かに闘争に秀でた実力を持っているのだろう。

 

 しかし。

 

「悪いけど、その程度じゃウチのコ達は倒せへんよ」

 

 いつの間にか起きていたロキが、その場にいる全員の心境を代弁する。

 

 蠱毒の如く、互いを喰らい合わせてきた闘国とは異なり、ロキ・ファミリアは常に強くなる為に自分を磨き続けてきた。互いが負けたくないライバルであり、互いが支え合う仲間。

 

 ただ勝つだけでなく、己自身にも負けず強くあり続ける事を誓い、互いを高め続ける関係を求めた。

 

 極め続け、自身の限界を超え続ける。フレイヤ・ファミリアとは異なるロキ・ファミリアの在り方は眷族達を新たな段階へ押し上げた。

 

「「セェェェェイッ!!」」

 

「おっ」

 

「決まったかな」

 

 白い炎を纏い、出力を向上させたヒリュテ姉妹の拳が、カーリー・ファミリアのLv.6のアマゾネス、それぞれの腹部にめり込む。

 

 渾身の一撃を受け、意識を保てず崩れ落ちる二人。無傷とはいかなかったが、それでも随分な余裕を以て相手を打ち倒したティオネとティオナは互いの健闘を讃え合うようにハイタッチを交わす。

 

「やれやれ、流石に無傷とはいかなかったか」

 

「一応相手はカーリー・ファミリアの頭領姉妹だからね。意地もあったんだろ」

 

「ティオネの方は良いとして、ティオナの方は……ありゃ毒か。ロキ様、一応オレ解毒ポーション持ってるけど?」

 

「あ、ホンマ? なら代金渡すからティオナに渡して貰ってもええか?」

 

「悪いねベジット。手間を掛けるよ」

 

「かまへんよ」

 

 ティオネの傷の方は普通のポーションで癒えるとして、ティオナの毒は中々に手強そうだ。主神(ロキ)に許可を取り、団長(フィン)から頼まれたベジットは、ティオナに向けて解毒用のポーションを渡す。

 

「あ、ベジットさん! 見ててくれたんだ!」

 

「おう、随分腕を上げたな。同じLv.6相手に余裕の勝利とはな」

「うーん、あり得そうなのがなんとも……」

 

 ベジットからポーションを受け取り、豪快に毒のついた腕を洗う。ダメージも其処まで酷くなさそうだし、この分なら自然治癒だけでもどうとでもなりそうだ。

 

 ティオネもそそくさとフィンの下へ駆け寄って勝利の報告をしている。誰一人ロキ・ファミリアのヒリュテ姉妹の勝利を疑わない中。

 

「───まだじゃ」

 

「あん?」

 

「アルガナとバーチェはまだ生きておる。闘争は、決闘はまだ終わってはおらぬぞ」

 

 カーリー・ファミリアの主神、女神カーリーが決闘の続きを促してくる。

 

 闘国の掟は弱肉強食。強いものは生き、弱きものは死ぬ。覆してはならない自然の摂理。

 

 しかし当然、勝者である二人がそんな掟に従う道理はない。

 

「嫌よ。私はロキ・ファミリアのティオネ・ヒリュテ。カーリー・ファミリア(アンタ等)の掟なんて知った事じゃないわよ」

 

「カーリー、もう止めよ? アタシはもうバーチェと戦いたくないよ」

 

 傷付き、倒れている二人にトドメは刺せない。自分達はもうロキ・ファミリアの一員だと、嘗ての主神に否を叩き付ける。

 

 彼女達の意思は折れることはない。しかし。

 

「それでは困るのだ」

 

「───ん?」

 

 雰囲気が変わる。一見小柄で骨の仮面を顔に付けた女神が、闘争と殺戮を何よりも愛する………冷酷で、恐ろしい女神へと変わる。

 

 その刹那、ベジットの嗅覚は確かにその香りを捉えた。

 

(これは、葡萄酒の香り………か?)

 

 闘争の後の濃い血の臭い、その中から確かに感じた微かな葡萄酒の香り。

 

「起きろアルガナ! バーチェ! ソナタ等の闘争はまだ終わってはおらぬぞ!!」

 

 女神が叫ぶ。それに呼応するように黒い炎がアルガナとバーチェと呼ばれるアマゾネスの身体から噴き上げる。

 

「嘘でしょ!?」

 

「まだ立ち上がれるのかよ!」

 

 その足取りは屍人のようで、されどその目は歪んだ殺意に満ちている。ダメージも回復していない身体でそれでもなお戦おうとする頭領姉妹の瞳には、正気は跡形もなく消え去っていた。

 

「さぁ! 闘争の宴は終わらぬ! お前ら全員が殺し合い! その中の唯一の生き残りが更なる高みへ至れるのじゃ!!」

 

 女神が猛て、吼える。闘争に終わりはないと、この殺戮に逃げ場はないと。

 

 戦え、戦え! 狂った様に嗤いだす女神を前にして……。

 

「させねぇよ」

 

 風が吹き、ロログ湖の水面が僅かに震える。

 

 ティオネもティオナも、全く彼の動きは見えなかった。フィンもリヴェリアも、アルフィアさえも倒れ伏す頭領姉妹に何が起きたのか理解できず眼を見開き──。

 

「深酒は身体に悪いぜ、女神様」

 

 闘争と殺戮の女神カーリーも、何が起きたのか理解できないまま、額にベジットの指先が触れた瞬間糸の切れた人形の様に崩れ落ちるのだった。

 

 

 

 

 

 





Q.今回のヘスティア・ファミリアのスタンスは?

A.取り敢えずタケミカヅチ・ファミリアとの話の摺合せが終わるまで此方からは手を出さない事。

 万が一の事態に備えて、ガネーシャ・ファミリアとアストレア・ファミリアには事情を伝えて情報の共有を図る。

Q.ベジットの役割は?

A.アルフィアにこれ等を気付かせない事。

 多分無理。

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